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個人事業主の帳簿とは?内容や付け方、インボイス制度との関連を解説

2023/12/25更新

この記事の監修齋藤一生(税理士)

個人事業主は、事業において生じた取引でのお金の動きを帳簿に記録して、一定期間保存をしなければいけません。個人事業主にとっての帳簿の役割や種類、つけ方について理解を深め、正しい記帳と帳簿の保存を行いましょう。

本記事では、2023年10月からスタートしたインボイス制度や、2022年1月に施行された電子帳簿保存法改正による個人事業主の帳簿への影響と併せて、詳しく解説します。

帳簿は個人事業主の他、すべての事業主が付ける必要がある

帳簿の作成はすべての事業主の義務です。白色申告や青色申告をしている個人事業主も法人も、事業を行っているのであれば、帳簿を付けなければいけません。また、副業をしている場合でも、副業を事業所得として確定申告をする方は、帳簿を付けて保管しておく必要があります。

その理由は、確定申告をする資料の元として帳簿が必要になるからです。事業の売上や収入、経費など、日々の取引が帳簿に記載されていないと、正しい申告ができません。スムースな確定申告のために、帳簿の作成は必須といえるでしょう。

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個人事業主が帳簿を付けるメリット

個人事業主は、帳簿を記帳することで事業に関するお金の流れを確認できるようになります。帳簿がなければ、売上がいくらで経費がいくらなのかといった詳細がわかりません。儲かっていると思っていても、実は赤字だったということもありえるでしょう。帳簿を付けることで、事業の取引や損益を正しく把握して、経営や資金繰りの判断材料として活用できます。

また確定申告する際、事業所得として申告するためには、帳簿を作成しなければいけません。雑所得ではほかの所得と損益通算ができなかったり、事業所得なら青色申告を選択できるなど違いがあります。個人事業主の青色申告では、青色申告特別控除が大きなメリットの一つです。青色申告特別控除とは、所得金額から最大55万円(一定の要件を満たす場合は最大65万円)または最大10万円を控除できるので、節税効果が大きいのです。

帳簿の記載方法

帳簿の記載方法には、「複式簿記」と「単式簿記」の2種類があります。どちらで帳簿付けをするかは個人事業主の任意で選択できますが、記載方法によって利用できる申告方法などが変わる点に注意が必要です。

複式簿記:最大65万円もしくは最大55万円の青色申告特別控除に必須

複式簿記は、1つの取引を2つの勘定科目を使って記帳する方法です。55万円または65万円の青色申告特別控除を利用する個人事業主には、複式簿記での帳簿付けと保存が義務付けられています。

例えば、1万円の売上があり、普通預金口座に代金が振り込まれた場合、複式簿記では「1万円の商品を売った」「普通預金残高が1万円増えた」という、2つの動きがあったと考えて、これを原因と結果に分けます。この場合は「1万円の商品を売った」という原因と、「普通預金残高が1万円増えた」という結果です。この原因と結果をそれぞれ該当する勘定科目にあてはめて、仕訳帳に記録します。

そのため、仕訳帳の借方と貸方の残高は必ず一致します。一致しないときは、記帳が間違っているということになり、ミスに気づきやすいのも特徴です。

複式簿記による仕訳帳の記帳例
日付 借方科目 借方 貸方科目 貸方
20XX.4.1 普通預金 10,000 売上 10,000
20XX.4.1 仕入 50,000 現金 50,000
20XX.4.3 現金 3,000 売上 3,000
20XX.4.10 消耗品費 600 現金 600

上記のように、仕訳帳には普通預金の変動も現金の変動も一緒に記載されています。仕訳帳を見ただけでは、普通預金や現金の残高がいくらなのかはわかりません。

仕訳帳をもとに勘定科目ごとの集計をすることで、普通預金残高や現金残高、仕入の合計額といった細かい費目別の変動が明らかになります。なお、費目別に集計した帳簿のことを総勘定元帳と呼びます。

単式簿記:白色申告または最大10万円の青色申告特別控除

単式簿記とは、1つの取引について1つの勘定科目を用いた記録をする記帳方法で、複式簿記よりも単純な方法です。白色申告事業者と、最大10万円の青色申告特別控除を利用する青色申告事業者は単式簿記での記帳が可能ですが、55万円や65万円の青色申告特別控除を受けることはできません。

単式簿記による現金出納帳の記載例
日付 勘定科目 収入 支出 残高
20XX.4.1 売上 10,000 510,000
20XX.4.1 仕入 50,000 460,000
20XX.4.3 売上 3,000 463,000
20XX.4.10 消耗品費 600 462,400

単式簿記では上記のように、お金が変動する取引を行った際に、その原因と金額を記載します。お小遣い帳をイメージするとわかりやすいでしょう。

帳簿の種類

帳簿には仕訳帳や総勘定元帳の他にも、さまざまな種類があります。ここでは、「主要簿」と「補助簿」の2種類に分けて、帳簿の種類と特徴を解説します。

主要簿:青色申告で最大65万円・もしくは55万円の控除を受けるために必要

主要簿とは、仕訳帳と総勘定元帳のことです。最大55万円または最大65万円の青色申告特別控除を適用する青色申告事業者は、主要簿を作成しなければいけません。一方、白色申告事業者と、10万円の青色申告特別控除を利用する個人事業主は、主要簿を作成する必要がありません。

仕訳帳

仕訳帳は、すべての取引を日付順に記録する帳簿です。借方と貸方の2つの勘定科目を使って記帳します。仕訳帳に勘定科目別のお金の流れを記録していくことで、青色申告に必要な貸借対照表の作成ができるようになります。10万円の青色申告特別控除を受ける場合は、貸借対照表の作成は不要です。

仕訳帳は手書きで作成することもできますが、会計ソフトを活用するのが一般的です。自動計算機能や自動仕訳機能を活用することで、記帳の手間を削減できます。日付順への並び替えも自動でできるため、後から取引を追加したいときにも便利です。

総勘定元帳

総勘定元帳は、仕訳帳の内容を勘定科目ごとに集計した帳簿です。仕訳帳は日付順にすべての取引が記録されますが、総勘定元帳では、勘定科目別に取引の借方と貸方の金額をそれぞれ示します。

総勘定元帳を見ることで、勘定科目別の資金の流れを確認できます。例えば、普通預金残高がどのように推移したのかといったことを確認できるのが総勘定元帳です。

補助簿:青色申告・白色申告いずれも必要

補助簿とは、取引の詳細を記録しておくための帳簿で、主要簿の内容を補足する役割があります。補助簿にはさまざまな種類がありますが、すべての帳簿を作成しなければならないわけではありません。

例えば、掛売をしていない個人事業主は、売掛帳を作成する必要はないでしょう。取引の内容に応じた帳簿を作成しましょう。補助簿は大きく、補助記入帳と補助元帳に分けられます。

補助記入帳

補助記入帳は、取引の発生状況に応じて記載していく帳簿のことです。現金出納帳や預金出納帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳などが該当します。

現金出納帳には、発生順に現金の入出金の動きを記録します。個人事業主の場合、個人のお金と事業のお金を混同してしまわないよう記録しておかなければいけません。また、預金出納帳には、預金残高の入出金の動きを記録します。事業用の口座が複数あっても預金出納帳を作成すれば、それぞれの口座の資金の動きを把握できるでしょう。

その他、固定資産や売掛金、買掛金が生じる個人事業主は、固定資産台帳や売掛帳、買掛帳を作成して管理を行います。

補助元帳

補助元帳とは、勘定科目別の取引の詳細を記載する帳簿です。商品ごとに繰越商品と仕入を記録する商品有高帳や、仕入先ごとの買掛金を記録する仕入先元帳(買掛金元帳)、得意先ごとの売掛金を記録する得意先元帳(売掛金元帳)などの種類があります。

補助元帳を作成することで、得意先別の売掛金残高などを一目で確認できるようになります。必要に応じて作成しましょう。

帳簿の会計処理の方法は発生主義・現金主義・実現主義の3種類

帳簿を付ける際の会計処理の方法には、「発生主義」「現金主義」「実現主義」の3種類があります。例えば、「4月5日に商品の注文があり、4月20日に納入、4月30日に請求書を発行、5月31日に入金された」というとき、売上日がいつになるのかは、会計処理によって変わってきます。なお、青色申告をするのであれば、原則として発生主義での記帳が必要です。

ここでは、3種類の会計処理の方法について、詳しく見ていきましょう。

発生主義

発生主義は、費用や収益が発生した時点で記帳をする会計処理方法です。例えば、4月30日に取引があって請求書を4月30日に発行し、入金日が5月31日である場合、売上日は請求書を発行した時点の4月30日になります。その後、取引先の倒産などによって売掛金の回収見込みがなくなった場合は、貸倒金として処理します。売掛金が生じる個人事業主が発生主義で会計処理をした場合、年間の売上額と入金額は一致しません。

現金主義

現金主義は、金銭のやりとりが実際に発生した時点で帳簿に記録する方法です。例えば、4月30日の売上が5月31日に入金された場合、現金主義では5月31日に記帳します。現金主義は、飲食店や小売店のように、現金のやりとりが頻繁に行われる業種に便利な会計処理方法です。

下記の要件に当てはまる場合には、特例として現金主義での帳簿付けが可能になります。

現金主義での帳簿付けが認められる要件

  • 青色申告者であること
  • 前々年分の事業所得と不動産所得の合計金額(青色事業専従者給与または事業専従者控除額を差し引く前の金額)が300万円以下であること
  • 適用を受けたい年の3月15日まで(1月16日以後に新たに事業を始めた方は事業開始から2か月以内)に「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を提出すること

現金主義や発生主義についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

実現主義

実現主義は、費用や収益が実現した時点で帳簿に記録する方法です。発生主義と似ていますが、発生主義よりも現実に即した記録ができるのが実現主義です。

例えば、100万円の商品を受注して10万円の手付金を受け取った場合、発生主義では契約時点で100万円の売上を立てます。しかし、手付金が放棄されて契約解除になる可能性もあるでしょう。実現主義では、商品の納入が完了し、収益が確実になった時点で記帳を行います。

帳簿を付ける手順

帳簿の付け方の手順は、記載内容の整理、記帳、転記、損益の計算というステップに分かれます。各手順について詳しく見ていきましょう。

1. 領収書や通帳などの記載内容を整理する

領収書や通帳など、記帳のもととなる書類やデータの記載内容を整理します。例えば、領収書の場合、何を買ったのかによって勘定科目が変わります。また、現金払いなのか、クレジットカード払いなど銀行口座を経由して支払っているのかといったことも確認しておきましょう。

2. 帳簿を付ける

複式簿記の場合、日々の取引内容を勘定科目ごとに仕訳して、仕訳帳に記載していきます。取引が多い場合など、まとめて作業しようとすると膨大な時間を要し、ミスも発生しがちなので、日々時間を見つけて作業しておきましょう。

3. 関係帳簿に転記する

複式簿記の場合、仕訳帳の取引内容を総勘定元帳に転記して帳簿を作成します。現金で支払った内容は現金出納帳に、銀行口座を経由して支払った内容は預金出納帳に転記して記帳するなど、必要な補助簿も作成します。

4. 利益・損失を計算する

最後に、総勘定元帳などをもとに収支計算を行い、利益や損失を求めます。年間の利益額や損失額は、確定申告で申告することになります。

個人事業主の帳簿や領収書等の保存期間

帳簿や帳簿作成に利用した領収書などの書類は、一定期間の保存が法律で義務付けられています。個人事業主の帳簿や書類の保存期間は下記のとおりです。2023年10月からスタートしたインボイス制度による保存期間の変更点も確認しておきましょう。

青色申告の場合

青色申告をしている個人事業主は、確定申告期限の翌日から7年間、帳簿類を保存しなければいけません。これには、仕訳帳や総勘定元帳のような主要簿も、現金出納帳や売掛帳のような補助簿も含まれます。領収書や預金通帳のような現金預金取引等関係書類と決算関係書類も、同様に7年間保存します。

一方、請求書や見積書、契約書のような取引に関連して作成した書類の保存期間は5年間です。前々年の事業所得や不動産所得が300万円以下の青色申告事業者は、領収書などの現金預金取引等関係書類の保存期間が5年間になります。

白色申告の場合

白色申告事業者は、収入や必要経費を記録した法定帳簿を確定申告期限の翌日から7年間保存しなければいけません。業務に関連して作成したそれ以外の任意帳簿や決算関係書類、領収書、請求書などについては、5年間の保存が義務付けられています。

適格請求書発行事業者の場合

2023年10月1日にスタートしたインボイス制度で適格請求書発行事業者は、自社で発行した適格請求書(インボイス)の控えと、受け取った適格請求書を7年間保存します。

個人事業主の場合も適格請求書発行事業者の場合は、適格請求書に該当する書類は、発行・受領ともに保存期間が7年間ですので、注意しましょう。

帳簿の作成には領収書・レシート・請求書の管理が重要

帳簿の作成は、領収書やレシート、請求書といった、取引に際して受け取ったり発行したりする書類をもとに行います。書類はこまめに整理して、その都度記帳を行い、適切に保存しておきましょう。

インボイス制度では、適格請求書発行事業者の義務として、自社で発行した適格請求書や適格簡易請求書にあたるすべての証憑書類の写しを保存する必要があります。さらに2024年1月から、電子帳簿保存法の電子取引のデータ保存の完全義務化により、電子取引で証票データが届いた場合には要件に従って、電子データで保存することが必要です。

確定申告前に「溜め込んだ領収書の整理が終わらない」といった事態に陥ると、そもそも何に使ったのか明確でなかったり、領収書を紛失してしまっていたりする可能性が高まります。そうなると、正確な記帳ができず、帳簿をもとに申告する確定申告や消費税の申告の正確性も失われてしまいます。

確定申告書に領収書を添付して証明する必要はありませんが、もし税務調査が入った場合、領収書の提示を求められる可能性があるため、日頃からきちんと管理しておくことが大切です。

帳簿を付けなかった場合のペナルティ

帳簿を正しく付けていなかった場合、ペナルティを受ける可能性があります。具体的にどのようなペナルティがあるのか把握しておきましょう。

令和4年度税制改正で、帳簿の不保存や記載不備を未然に抑止するため、過少申告加算税・無申告加算税の加重措置が講じられました。令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する申告所得税、法人税・地方法人税、消費税から適用されるので、個人事業主の場合、2023年(令和5年)分の所得税・消費税の確定申告から対象です。

2023年(令和5年)分の確定申告に対する修正申告等から、売上げに関する帳簿を保存していなかったことや帳簿の売上げについて記載が不十分であったことなどが税務調査において把握された場合には、帳簿に記載すべき事項に関する申告漏れに対して通常課される加算税(過少申告加算税・無申告加算税)の割合に5%又は10%が加重されることとなりました。

過少申告加算税

過少申告加算税とは、本来納めるべき金額よりも少ない金額で申告や納税をした際に加算される税金です。帳簿を正しく付けず、申告額が本来の額よりも少なくなってしまった場合、過少申告加算税が課せられます。新たに納めることになった税金の10%相当額が加算されますが、新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%になります。ただし、みずから修正申告をした場合は対象外です。

また、売上に関する帳簿が保存されていなかったり、不備があったりすると、申告漏れに対して課せられる過少申告加算税が最大10%加重される可能性があります。対象帳簿は、仕訳帳や総勘定元帳の売上に関する項目や、売上帳、現金出納帳などの売上金額を確認できる帳簿です。

重加算税

重加算税とは、申告内容を意図的に隠したり、虚偽の申告をしたりして脱税したりした際に加算される税金です。過少申告の場合は過少申告加算税に代えて本来納める税額の35%が、無申告だった場合は無申告加算税に代えて40%が加算されます。電子データによる改ざんだった場合、さらに10%が加重されます。

青色申告事業者の認定取り消し

青色申告は一定水準の記帳を行い、帳簿にもとづく正しい申告をする事業者を対象とした制度です。帳簿を付けずに青色申告をしていると、認定が取り消される可能性があります。そうなれば、青色申告特別控除などの税制メリットを得られなくなります。

インボイス制度による個人事業主の帳簿作成への影響

2023年10月1日にスタートしたインボイス制度によって、個人事業主の帳簿作成手順にも変化が生じます。ここでは、インボイス制度の概要や、インボイス制度スタート後の領収書や請求書の取り扱いについて知っておきましょう。

インボイス制度の概要

インボイス制度とは、複数税率に対応して消費税の計算をするための制度です。従来、課税事業者は課税売上にかかる消費税額から仕入れにかかる消費税額を控除(仕入税額控除)して消費税の納税をしていました。しかし、インボイス制度導入後は、適格請求書が発行されないと仕入税額控除が認められません。

インボイスが発行されるかどうかは、仕入先が適格請求書発行事業者かどうかによって決まります。適格請求書発行事業者とは、事前に適格請求書発行事業者登録を行った課税事業者のことです。適格請求書発行事業者が発行したインボイスを受領し、内容に沿った記帳とインボイスの保管をすることで仕入税額控除ができます。

なお、3万円未満の公共交通機関の交通費など、一部インボイスが不要な取引もあります。詳細は国税庁のウェブサイトをご確認ください。

インボイス制度によって変わる帳簿付けと領収書・請求書の取り扱い

インボイス制度がスタートしたことによって、受け取った領収書や請求書の取り扱いが変わります。「適格請求書発行事業者」「免税事業者」「小規模事業者に該当する適格請求書発行事業者」のそれぞれの立場別に対応方法を解説します。

適格請求書発行事業者

課税事業者のうち、実際の仕入れ額に対する消費税額を仕入税額控除する「本則課税事業者」は、受け取った領収書や請求書がインボイスの要件を満たしているかどうか確認する必要があります。記帳する前に、請求書や領収書の記載項目に不足がないかどうかと、記載された適格請求書発行事業者番号が正しいかどうかの確認を行いましょう。

なお、売上にかかった消費税額に、業種ごとに定められたみなし仕入率をかけて控除を行う「簡易課税制度」を利用している課税事業者は、上記の確認が不要です。2026年9月30日までの特例である「2割特例」を利用する場合も同様です。

免税事業者

免税事業者については、これまでと対応方法を変える必要はありません。

小規模事業者に該当する適格請求書発行事業者

適格請求書発行事業者のうち、前々年の課税売上高が1億円以下、または前年1月から6月までの課税売上高が5,000万円未満の小規模事業者は、「少額特例」を利用できます。

少額特例とは、税込1万円未満の課税仕入れはインボイスが保存されていなくても、「課税仕入れを行った相手の名称」「取引年月日」「取引内容(軽減税率の対象になる場合はその旨がわかるようにする)」「課税仕入れの額」を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けられる制度です。この特例は、2023年10月1日から2029年9月30日まで適用されます。

インボイス制度についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

電子帳簿保存法による個人事業主の帳簿作成への影響

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿や国税関係書類を電子データとして保存するための要件を定めた法律で、1998年に成立しました。その後、複数回改正が行われていますが、2022年の改正によって、電子取引のデータ保存が義務化されています。

改正電子帳簿保存法の施行後、個人事業主を含むほぼすべての事業者は、電子取引でデータとして受け取った国税関係書類をデータのまま要件に従って保存が必要です。ただし、2023年12月31日までは宥恕(猶予)期間ですが、2024年1月1日以後の電子取引からは完全義務化になります。

例えば、下記のような書類を受け取った場合、データのまま保存しなければいけません。

電子データの保存が義務となる書類例

  • メールに添付されていたPDFの請求書
  • クラウドシステムを通じて発行された発注書
  • 通販サイトからダウンロードした領収書
  • チャットツール上で送信された支払通知書

記帳を行う際に、領収書や請求書を紙に印刷して保管し、一定量がまとまってから記帳する事業者もいるかもしれませんが、電子帳簿保存法改正後は、データで保存する必要があります。

また、電子帳簿保存法では、「国税関係帳簿書類の電磁的記録(電子帳簿等保存)」により、電子的に作成した帳簿類も、データとして保存できます。仕訳帳や総勘定元帳、売掛帳、買掛帳などの国税関係帳簿の他、貸借対照表や損益計算書といった国税関係書類も電子帳簿保存法の対象です。ただし、「国税関係帳簿書類の電磁的記録(電子帳簿等保存)」は任意ですので義務ではありません。

なお、データで受け取った書類を電子的に保存する場合も、帳簿をデータで保存する場合も、電子帳簿保存法が定める要件を満たさなければいけません。知らず知らずのうちに問題のある運用をしてしまわないように注意しましょう。

電子帳簿保存法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

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この記事の監修者齋藤一生(税理士)

東京税理士会渋谷支部所属。1981年、神奈川県厚木市生まれ。明治大学商学部卒。

決算書作成、確定申告から、起業(独立開業・会社設立)、創業融資(制度融資など)、税務調査までサポート。特に副業関連の税務相談を得意としており、副業の確定申告、税金について解説した「副業起業塾 新規タブで開く」も運営しています。

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