令和6年(2024年)分の扶養控除等(異動)申告書の書き方と注意点

2024/03/01更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

年末調整にあたり、従業員が企業に提出する書類の1つが「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。企業は、その年の最初の給与を支払うときまでに、従業員からその年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を受け取ります。つまり、企業は毎年12月ごろに、従業員に給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記入と提出を依頼しなければならないということです。なお、実際は年末調整を12月に行うため、企業側から従業員へは11月頃に給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記入を求めます。また、その際に翌年分の記入も求めます。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の内容は従業員の所得税額などにも関わるため、内容を正しく理解し、従業員などから質問を受けたときには適切に対応できるようにしておきましょう。

ここでは、2023年の年末に回収する「令和6年(2024年)分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の書き方について、作成時の注意点と共に詳しく解説します。

【初年度0円】クラウド給与計算ソフトで大幅コスト削減【全機能無料でお試し】

【初年度0円】給与明細をかんたん作成・スムーズ発行【法令改正に自動対応】

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書とは?

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(以下、扶養控除等申告書)とは、従業員(給与所得者)が、扶養控除や配偶者控除などを受けるために必要な書類です。

所得税には、納税者の個別の事情に応じて税負担を軽くする所得控除の仕組みがあります。扶養控除等申告書は、そうした控除を受けるために必要な書類の1つです。従業員は、扶養家族の有無や配偶者の所得などを記入して勤務先に提出します。

企業は、従業員に扶養控除等申告書を配付し、その年の最初の給与を支払う前日までに回収する必要があります。そのため、多くの企業では、年末調整の際に、翌年分の扶養控除等申告書の提出を受けます。なお、新卒入社や中途入社の場合は、入社後、最初の給与支払日の前日までに提出してもらうことになります。

扶養控除等申告書で確認できる所得控除には、下記のような種類があります。

扶養控除

納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合、扶養控除として一定の金額の所得控除が受けられます。

配偶者控除(配偶者特別控除)

配偶者の所得が一定額以下などの要件を満たした場合は、配偶者控除または配偶者特別控除が受けられます。

障害者控除

納税者自身や配偶者、扶養親族が所得税法上の障害者に該当する場合、障害者控除が適用され、一定金額の所得控除が受けられます。

寡婦控除

寡婦控除は、納税者本人が寡婦であり、所定の要件を満たした場合に適用される所得控除です。寡婦とは、夫と離婚または死別した後再婚せず、独身でいる女性のことをいいます。

ひとり親控除

独身で子供を育てている人のうち、所定の要件を満たす場合はひとり親控除が適用され、一定金額の所得控除を受けられます。

勤労学生控除

納税者自身が勤労学生であるときに、勤労学生控除が適用されます。勤労学生に該当するかどうかは、所得額などの要件があります。

年末調整の対象者全員が提出する扶養控除等申告書の注意点

扶養控除等申告書を提出するのは、毎月の給与を源泉徴収税額表の課税区分の甲欄で計算する全ての従業員です。パートやアルバイトでも、甲欄適用者なら、扶養控除等申告書を提出してもらわなければなりません。

また、控除対象の扶養親族や配偶者がいない場合も、控除の有無を確認するために提出が必要です。扶養控除等申告書に関する注意点には、下記のようなものがあります。

副業・兼業者は1か所にのみ提出

扶養控除等申告書は、同時に複数の勤務先に提出することはできません。副業や兼業など、2か所以上から給与を受け取っている人は、メインの勤務先である1か所のみに提出することになります。

副業・兼業をしている従業員が、既に他社に扶養控除等申告書を提出している場合は、自社での回収は不要です。ダブルワークをしている従業員に対しては、自社で提出の必要があるかどうかを、年末調整前に必ず確認しましょう。

扶養控除等申告書は一般的に年末調整時に回収

扶養控除等申告書は、一般的に年末調整のタイミングで回収します。まず企業は、年末調整の時期に、当年分と翌年分の扶養控除等申告書を従業員に渡します。つまり、2023年の年末調整時には、「令和5年(2023年)分」と「令和6年(2024年)分」の扶養控除等申告書を渡すことになります。

当年分の扶養控除等申告書は、従業員が前年の年末に記入したもので、当年の年末調整の計算に使用します。従業員によっては、結婚や出産があったり、配偶者の所得が変化したりして、記入時点とは状況が変わっているケースも少なくありません。受け取った従業員は、当年分の内容に訂正や追記の必要がないかを確認し、もし変更点がある場合は修正のうえ再提出します。

一方、翌年分の扶養控除等申告書は、翌年1月以降の給与から源泉徴収する所得税の計算に使用するものです。そのため、翌年1月分の給与計算をするときまでに提出があれば、実務上は問題ありません。しかし、提出漏れなどを防ぐため、当年分の扶養控除等申告書や年末調整に必要な他の書類と併せて回収することが一般的です。

扶養控除等申告書を提出しないと不利益が生じる

給与から源泉徴収(天引き)される所得税の税額は、源泉徴収税額表によって決定されます。源泉徴収税額表の課税区分には甲欄と乙欄があり、扶養控除等申告書を提出した従業員は甲欄、未提出だと税額が高くなる乙欄が適用される仕組みです。そのため、扶養控除等申告書を提出していない従業員は、給与から源泉徴収される所得税額が大きくなってしまいます。

また、扶養控除等申告書を提出していない従業員に対しては、企業は年末調整を行うことができず、従業員本人が確定申告を行わなければならなくなります。従業員にはこのようなリスクを説明し、必ず提出してもらうようにしましょう。

源泉所得税についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
源泉所得税とは?申告所得税との違いや税額計算法、年末調整手順を解説

扶養控除等申告書の書き方

ここからは、2023年末に従業員が記入する令和6年(2024年)分の扶養控除等申告書の書き方について解説します。具体的な記入項目は、令和5年(2023年)分と同様です。では、項目ごとに見ていきましょう。

令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の構成

(1)基本情報

一番上の段には、従業員本人の氏名や住所などの基本情報を記入します。なお、個人番号(マイナンバー)については、「従業員本人や、控除対象配偶者・扶養親族の氏名およびマイナンバー等を記載した帳簿を備えている場合」など、所定の要件を満たしていれば、記入を省略することができます。マイナンバーの記入が不要な場合は、事前に従業員に伝えておきましょう。

(2)源泉控除対象配偶者の情報

源泉控除対象配偶者がいる場合は、その情報を記入します。源泉控除対象配偶者とは、合計所得金額が900万円以下の人と生計を一にする配偶者で、合計所得金額が95万円以下の人を指します。ただし、配偶者が青色事業専従者や白色事業専従者の場合は、源泉控除対象配偶者には該当しません。

源泉控除対象配偶者であるかを判断する基準は、本人や配偶者の所得であり、収入ではない点に注意しましょう。例えば、従業員本人も配偶者も共に給与収入しかない場合は、本人の収入が1,095万円以下(所得金額調整控除を適用しない場合)、配偶者の収入が150万円以下であれば、源泉控除対象配偶者の要件を満たすことになります。

(3)控除対象扶養親族の情報

控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の人を指します。扶養親族とは、下記の要件を全て満たす親族のことです。

扶養親族の要件
  • 納税者(従業員)と生計を一にしている
  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人
  • 年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
  • 青色申告者の事業専従者や白色申告者の事業専従者ではない

この欄に記入するのは、控除対象扶養親族、つまり16歳以上の扶養親族だけです。16歳未満の扶養親族については、後述する「住民税に関する情報」欄に記入します。

(4)障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生の情報

障害者控除や寡夫控除、ひとり親控除、勤労学生控除の要件にあてはまる場合は、該当する箇所にチェックを入れ、必要情報を記入します。

障害者欄
従業員本人や同一生計配偶者、扶養親族が一般の障害者、特別障害者または同居特別障害者に該当する場合は、障害者欄にチェックを入れます。「同一生計配偶者」とは、納税者(従業員)と生計を一にする配偶者(青色事業専従者や白色事業専従者を除く)で、合計所得金額の見積額が48万円以下の人を指します。なお、障害者控除の対象となる扶養親族は、控除対象扶養親族とは異なり、16歳未満の人も含まれます。
障害者欄にチェックを入れた場合は、右側の「障害者または勤労学生の内容」欄に、対象となる人の氏名や、障害の状態または交付されている手帳の種類、手帳の交付年月日、障害の程度(等級)などを記入します。
寡婦欄
従業員本人が寡婦である場合、寡婦欄にチェックを入れます。寡婦とは、その年の12月31日時点で「ひとり親」に該当せず、「夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人」もしくは「夫と死別した後婚姻をしていない、または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人(この場合は扶養家族の有無は問いません)」のいずれかにあてはまる人を指します。
ひとり親欄
従業員本人が、「事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない」「生計を一にする子(その年の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない)がいる」「合計所得金額が500万円以下」のひとり親の要件を全て満たす場合、ひとり親欄にチェックを入れます。
勤労学生欄
従業員が「給与所得などの勤労による所得がある」「合計所得金額が75万円以下で、かつ、上記の勤労による所得以外の所得が10万円以下」「大学、高校、一定の要件を備えた専修学校、職業訓練法人など、特定の学校の学生、生徒である」の勤労学生欄の要件を全て満たす場合は、勤労学生欄にチェックを入れます。併せて、「障害者または勤労学生の内容」欄に、通っている学校名や入学年月日、その年の所得の種類、所得の見積額を記入します。

(5)他の所得者が控除を受ける扶養親族等の情報

同一世帯に2人以上の所得者がいる場合、同じ人をそれぞれの所得者の扶養親族として重複して申告することはできません。例えば、共働き世帯で子供がいる場合、子供を扶養親族として申告できるのは、夫と妻のどちらかだけです。この場合、夫が子供を扶養親族としたら、妻の方は、「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」欄に子供と夫の情報を記入します。

また、共働きで、夫が長子、妻が次子など、同世帯の他の所得者と扶養親族を分けて控除を受けることも可能です。この例で従業員が夫の立場だった場合、自分が控除を申告しない次子と、他の所得者である妻の情報をこの欄に記入します。

(6)住民税に関する情報

16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象外ですが、住民税の計算には反映されます。そのため、16歳未満の扶養親族がいる場合は、「住民税に関する情報」欄に必要事項を記入します。

また、配偶者や扶養親族の退職所得についても所得税には影響はありませんが、住民税では計算対象となります。住民税の控除の適用漏れを防ぐために、退職手当を有する配偶者や扶養親族がいる場合は忘れずに記入が必要です。

扶養控除等申告書は記入ミスのないように注意

扶養控除等申告書は、年末調整で従業員から提出を受ける大切な書類。扶養控除等申告書に記入漏れやミスがあると、源泉徴収税額にも影響するため注意が必要です。期日までにスムースに回収するためにも、扶養控除等申告書の書き方や注意点をしっかり押さえておくことが重要となります。また、年末調整では、書類の回収以外にも数多くの作業が発生するため、早めに準備を進めておくことが重要です。

弥生の給与計算ソフト「弥生給与」と「弥生給与 Next」「やよいの給与計算」は、給与計算業務に必要な機能を網羅し、給与・賞与計算、社会保険料の計算、年末調整を確実にできるうえ、給与支払報告書の電子提出にも対応しています。
また、給与・賞与明細の発行までで十分という場合は、クラウドソフト「やよいの給与明細 Next」のような給与・賞与明細の作成・発行に特化したソフトもおすすめです。
自社に合った給与計算ソフトを活用して、年末調整業務を効率良く進めましょう。

無料お役立ち資料【「弥生のクラウド給与サービス」がよくわかる資料】をダウンロードする

弥生のクラウド給与サービスなら給与計算・年末調整がスムーズに

弥生給与 Nextは、初心者でも給与・賞与計算から年末調整まで、"かんたん" に行えるクラウド給与ソフトです。

勤怠情報を入力すれば残業代や社会保険料などは自動計算で、給与明細書の作成はラクラク。
また作成した給与明細書は、Web配信で従業員のスマホ・PCに配付することができます。
さらに年末調整に必要な控除申告書の回収、法定調書の作成、源泉徴収票の従業員への配付もオンラインでスムーズです。

年末調整、何から始める?担当者必見!年末調整ガイドのダウンロードはこちら

年末調整を委託されている方は、「やよいの給与明細 Next」をお試しください。

関連記事

弥生給与、やよいの給与計算で年末調整に対応しましょう

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

中小企業を経営する上で代表的なお悩みを「魅せる会計事務所グループ」として自ら実践してきた経験と、約3,000社の指導実績で培ったノウハウでお手伝いさせて頂いております。
「日本で一番喜ばれる数の多い会計事務所グループになる」
この夢の実現に向けて、全力でご支援しております。
解決できない経営課題がありましたら、ぜひ私たちにお声掛けください。必ず力になります。

初心者事業のお悩み解決

日々の業務に役立つ弥生のオリジナルコンテンツや、事業を開始・継続するためのサポートツールを無料でお届けします。

  • お役立ち情報

    正しい基礎知識や法令改正の最新情報を専門家がわかりやすくご紹介します。

  • 無料のお役立ちツール

    会社設立や税理士紹介などを弥生が無料でサポートします。

  • 虎の巻

    個人事業主・法人の基本業務をまとめた、シンプルガイドです。

事業のお悩み解決はこちら