個人事業主が押さえておきたい「業務委託契約書」の読み方

2015/05/12

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個人事業主が押さえておきたい「業務委託契約書」の読み方

「業務委託契約」は、スモールビジネス事業主にとって馴染みの深い言葉ではないでしょうか。IT業務やコンサルなどを「業務委託契約」として受けた経験のある人は多いはずです。
「業務委託契約」は、法律上は委任契約か請負契約です。そして委任契約と請負契約は、デフォルトルールが異なります。これらのデフォルトルールの違いや、「業務委託契約書」の読み方について説明します。


POINT
  • 業務委託契約は「委任契約」か「請負契約」のどちらか
  • 委任契約か請負契約かによって法律のデフォルトルールが異なる
  • 契約書上でデフォルトルールと異なるルールを決めることもできる

委任契約と請負契約の違い

まず重要なポイントとして、「業務委託契約」というのは、法律上の用語や分類ではありません。法律上は、「業務委託契約」は、委任契約か請負契約、どちらかに該当することが多いものです。契約書に「●●の業務を委託する」などと書いてあれば委任契約、「●●を請け負う」などと書いてあれば請負契約、と考えておけば、少なくとも原則として間違いありません。

そして、委任契約と請負契約は、共に業務遂行を目的にする契約なのですが、以下のように、仕事を受けた側が約束することに違いがあります。

  • 委任契約......業務遂行を行うという行動自体について契約する
  • 請負契約......業務遂行の結果として何かを完成させることについて契約する

シンプルな説明としては、委任契約なら頑張れば良いが、請負契約だと完成させないといけない、ということです。
ただ、上記のように書いてしまうと、「完成を約束しなくて良いから、委任契約の方が気が楽だ」と思うかもしれませんが、そうとも言い切れません。「完成さえさせれば途中経過を問われないから、請負契約の方が楽だ」とも言えるからです。例えば、委任契約では、業務遂行の経過状況を聞かれたら直ちに報告するという義務(報告義務)が生じますが、請負契約なら途中経過の随時報告は不要。「納期までに完成させれば良い」のです。

デフォルトルールと契約書の関係

もっとも、委任契約では報告義務がある、と言っても、契約書上で

第●条
経過状況に関する報告は不要とする。


と書いてあれば、報告は不要です。どういうことかというと、

  1. たしかに委任契約のデフォルトルールとしては、報告は必要
  2. しかし、この契約においては契約書上でデフォルトルールとは違うルールが決められている

となるからです。「デフォルトルール」は、あくまでデフォルトルール。契約上でデフォルトルールと異なるルールを決めることも可能なのです。
別の言い方をすれば、契約書上で報告について何も決めていない場合、委任契約だと報告義務があるけど、請負契約なら報告義務はない、ということです。

委任契約と請負契約とでは、報告義務の有無以外も、様々な点でデフォルトルールが異なります。

例えば、仕事を受けた側が「ミス」をするとどうなるのか。
委任契約の場合、仕事を受けた人は「善管注意義務」という義務を負います。簡単に言えば、「ちゃんと頑張る義務」です。仕事にミスがあると、善管注意義務違反を問われることになります。
請負契約だと、完成して納品したものに「瑕疵」があるかどうかが問われます。「欠陥」のような意味です。瑕疵があった場合は、納品後であっても修補等を行う必要があります。

また、委任契約の場合、デフォルトルールとしては、仕事を頼んだ側も受けた側も、原則的に自由なタイミングで途中解約を行うことができます。
しかし請負契約の場合、仕事を頼んだ側は相手に金銭を払えば自由なタイミングで途中解約を行うことができますが、仕事を受けた側は、自由に途中解約を行うことができません。

「業務委託契約書」の読み方

「業務委託契約」で仕事を受ける際には、ここまで書いてきたような委任契約と請負契約の違いを踏まえ、その契約がどちらのタイプなのか判断して下さい。
どちらのタイプなのかが分かれば、デフォルトルールが分かります。デフォルトルールが分かった上で、契約書で決められているルールを読めば、例えば報告を行う義務があるのか、途中解約はできるのかなどを判断することができるのです。

相手に渡された契約書にサインすると、報告義務は発生するのか、自分の側からの途中解約は可能なのか。きちんと契約書を読み解き、納得した上で契約と業務遂行を行いたいですね。

photo:Thinkstock / Getty Images

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この記事の執筆者

河瀬季
河瀬季

コスモポリタン法律事務所(東京・音羽)所属。東京大学法科大学院卒業。起業支援など企業法務を得意としており、中小企業などのスモールビジネス事業主に対する、資金調達や労働問題などを含む各種の法務アドバイスなどを行っている。また、エンジニアやテック系ライター、ITベンチャー執行役員の経験がある元IT関連フリーランス・理系出身者であり、特許法などの知的財産法や、電子商取引・ドメインを巡る紛争など、IT法にも強い。個人サイトは「tokikawase.info」、Twitterは@tokikawase

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