何が総収入金額で何が必要経費?不動産所得の基本

2021/03/30更新

この記事の執筆者浦田泉

基本的な不動産所得の金額の計算方法は、「総収入金額-必要経費」と至ってシンプルです。しかし実際に不動産オーナーとして活動してみると「この入金は総収入金額に入れていいの?」「この支出は必要経費にしていいの?」という疑問が出てくるかと思います。総収入金額、必要経費に入れられるもの・入れられないものについてご説明します。

POINT

  • 注意!家賃等を収入として認識する時期
  • 返さなくてよい入金は総収入金額へ!
  • 貸付資産に係る費用は必要経費へ!

毎月の家賃収入、こんな点にご用心!

総収入金額の代表例、といえば貸付けによる賃貸料収入、いわゆる「毎月の家賃」です。
マンション等の賃貸の場合、家賃に加えて共益費等(電気代、水道代、掃除代など)もあわせて徴収することが多いかと思いますが、この共益費等も家賃同様に総収入金額に算入する入金になります。

注意すべき点は、契約や慣習などにより家賃等支払の日が定められている場合、家賃や共益費などは、その約定日に総収入金額として認識することになる、ということです。

例えば、賃貸住宅等に関する契約で、「翌月分(当月分)を毎月25日まで」といった形で家賃等の支払い期日に関する取り決めがなされていた場合、たとえ25日に家賃等が払われなかったとしても、支払われたものと考えて総収入金額に含めなければいけません。
万一、家賃滞納者が多い場合は、入金はないのに総収入金額だけはどんどん増えていく、ということになりかねませんので注意が必要です。

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こんな収入も「総収入金額」になる!

不動産賃貸をしていると、毎月の家賃等の他にも入金されてくるものがあるかと思います。よくある例と、その取り扱いは次の通りです。

1. 更新料、名義書換料、承諾料、頭金などの名目で受け取るもの(原則として受け取り後は返還しない約束になっているもの)

…総収入金額に含まれます。
ちなみに、総収入金額に算入するタイミングは、貸し付ける資産の引渡しを必要とするものは引渡しのあった日、引渡しを必要としないものについては、契約の効力発生の日となります。(入金のあったとき、ではありません)

2. 礼金、敷金や保証金などのうち返還しなくてよいもの

…総収入金額に含まれます。
主に関西などでよく見られる「敷引き」(契約で借り主に返還しなくてもよい部分)に相当する金額も、これに該当します。
総収入金額に算入するタイミングは、1の更新料等と同じです。

3. いわゆる敷金や保証金(原則として返還するもの)

…原則として総収入金額には含みません。
返還するまでの間、一時的に預かっているだけの「預り金」という取り扱いになるため、総収入金額には算入しません。

ざっくりしたイメージは、「返さなくてよい入金は総収入金額に算入、返さなくてはいけない入金は総収入金額に入れない」という感じです。

こういう支出は必要経費になる!

必要経費とすることができるものは、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分できるもので、貸付資産に係る次のような費用が挙げられます。

1. 一般的な管理費等

賃貸資産や入居者管理に直接係る費用は、必要経費に算入できます。例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • 不動産管理会社への管理委託費、入居者募集の広告料など
  • 共用部分の水道光熱費、清掃費など
  • 損害保険料(掛け捨てのもので、数年分を一括で支払った場合はその年分のみ)
  • 租税公課(いわゆる税金。賃貸資産に係る固定資産税、賃貸資産を取得した際の不動産取得税、印紙税など。ただし住民税、所得税は必要経費ではありません)
  • 交通費、会議費、消耗品費などの諸費用(物件を見に行くための交通費、管理会社との打ち合わせ食事代など、賃貸資産に係るものに限る)
  • 税理士や司法書士等、専門家への報酬(賃貸資産に係るものに限る)

・・・など

2. 貸付資産購入のための借入金利息

一定の条件のもとで、必要経費に算入できます。

3. 減価償却費

賃貸資産が建物等の場合、その取得に要した金額(ざっくり言うと購入価格)を一定の計算方法によって各年分の必要経費として配分(減価償却)できます。ただし土地は減価償却できません。

4. 修繕費

貸付資産の修繕費で、通常の維持管理や修理のために支出されるものは必要経費になります。(例:おおむね3年以内の期間を周期として行われる修理・改良など、一つの修理・改良等の金額が20万円未満のもの・・・など)
ただし、資本的支出(資産の使用可能期間を延長させたり、資産の価額を増加させたりする部分の支出)は修繕費には含みません。

まとめ

以下の点を確認しながら、確定申告をすすめていきましょう。

  • 家賃等は原則として、入金の有無にかかわらず、契約に定められた約定日をもって総収入金額として認識する。
  • 更新料、礼金、頭金、敷引き(契約で借り主に返還しなくてもよい部分)など、返さなくてよい入金は総収入金額に算入し、敷金、保証金などで借り主にいずれ返還する入金は貸借対照表の預り金に計上する。
  • 必要経費は、賃貸資産に係る一般的な管理費の他、貸付試算購入のための借入金利息で一定のもの、減価償却費、資本的支出ではない修繕費などが計上できる。

photo:Thinkstock / Getty Images

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この記事の執筆者浦田泉

税理士。会計事務所、コンサルティング会社を経て2003年「いずみ会計事務所新規タブで開く」を開業。自身の起業経験から、特に女性経営者の起業、会社経営、成長戦略などのお手伝いが得意分野。また、新人の経理担当者でもすぐに使えるようになる弥生会計は、顧問先への導入、指導の実績が多数ある。

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