青色事業専従者給与とは?家族の給与を経費にする方法を解説
2024/01/24更新
この記事の監修者岡本匡史(税理士)
事業者が家族に支払う給与は、原則として経費にはなりません。しかし、青色申告をしていて一定の条件を満たせば、青色事業専従者給与の特例が適用され、家族従業員に支払った給与を経費に算入することが可能です。
本記事では、青色事業専従者給与の特例適用のための届出手続きや、青色事業専従者給与の金額の決め方のポイント、扶養控除・配偶者控除との関係などについて解説します。
青色事業専従者給与は家族への給与を経費に算入できる制度
青色事業専従者給与の特例とは、一定の条件を満たせば、青色申告をしている事業者が家族に支払った給与を経費として算入できる制度です。白色申告にも、家族に支払った給与の一部を経費に算入できる事業専従者控除の特例がありますが、内容は多少異なります。青色事業専従者給与として認められる条件や、白色申告の事業専従者控除との違いについて解説します。
青色事業専従者給与として認められる条件
青色事業専従者給与として認められるには、以下の条件をすべて満たした上で、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出している必要があります。
青色申告者と生計を一にする配偶者または親族
青色事業専従者給与として認められるには、給与を支払う相手が青色申告者と生計を一にする配偶者または親族である必要があります。配偶者または親族が事業に専従せず、別の仕事で安定した収入がある場合は、青色事業専従者給与として認められません。
当該年の12月31日に15歳以上
専従者として申告する人は、15歳以上でその他の仕事をしていないことが条件です。ただし、高校生や大学生は事業に専従することができないため、青色事業専従者とは見なされません。また、会社員や個人事業主として働いていたり、毎日長時間のアルバイトをしていたりする場合も認められません。
青色申告者の事業に6か月を超える期間専従
専従者として申告する人は、6か月超の間、青色申告者の事業に専従している必要があります。仕事を短期間手伝ってもらったといった場合は認められません。
給与設定が労務の対価として妥当な金額
専従者の給与が一般的に妥当かという点にも注意しておきましょう。仕事内容に対して妥当か、他の従業員の給与と比べて高すぎないかという、複数の観点からの検討が必要です。業務の価値を正しく評価した上で、誰が見ても妥当と判断できる金額設定にすることが大切になります。
白色申告の事業専従者控除との違い
青色事業専従者給与と、白色申告の事業専従者控除との違いは控除される金額です。青色申告専従者控除は、適正な金額であれば制限はありませんが、白色申告の事業専従者控除には金額の制限があります。
専業専従者控除も、事業者と生計を一にしている配偶者、または15歳以上のその他の親族で、事業に専従している人に支払った給与が経費に算入できる点は変わりません。ただし実際に支払った金額ではなく、次のどちらか低い方の金額になります。
白色申告の事業専従者控除に適用される金額
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1. 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者1人につき50万円
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2. この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額
青色事業専従者給与は、事前に届出に記載した範囲であり、労務に対して妥当な金額であれば、実際に支払った金額の全額を経費に算入できます。
専業専従者控除については別の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
青色事業専従者給与と扶養控除・配偶者控除との併用は不可
青色事業専従者給与の特例の適用を受けるにあたり、青色事業専従者給与の特例と扶養控除・配偶者控除は併用できない点に注意が必要です。
配偶者控除の控除額は最大で48万円、扶養控除の控除額は控除対象となる扶養親族の年齢や特性によって変わり、最大63万円なので、親族に支払う給与の金額によっては、扶養控除・配偶者控除を利用した方が、税額を抑えられる可能性があります。
青色事業専従者給与の特例の適用を受ける際は、どちらの方が税額を抑えられるのか、しっかり確認しましょう。
青色事業専従者給与の特例適用のための届出手続き
青色事業専従者給与の特例の適用を受けるには、事前に納税地を管轄する税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。届出書は、国税庁Webサイトでダウンロードできるほか、e-Taxでの書類の作成・提出も可能です。
青色事業専従者給与に関する届出書
- ※国税庁「A1-13 青色事業専従者給与に関する届出手続」
提出方法
「青色事業専従者給与に関する届出書」はe-Tax税務署への持ち込み、郵送で提出が可能です。それぞれについて解説します。
提出方法 | 詳細 |
---|---|
e-Taxの申請 | パソコンからe-Taxソフトで届出を作成し、e-Tax上で提出する |
税務署への持ち込み | 届出書に必要事項を記載して、直接税務署の窓口で提出する |
郵送 | 届出書に必要事項を記載して、管轄の税務署宛に郵送する |
提出期限
届出書の申請期限は、青色事業専従者給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日までです。ただし、同年の1月16日以後に開業した場合や新たに専従者を追加する場合などは、その開業の日や専従者が追加された日から2か月以内に提出しましょう。提出期限が土日祝日にあたる場合は、翌平日になります。
青色事業専従者給与の金額の決め方のポイント
青色事業専従者給与の金額は、労務に対して妥当な額であることが重要で、高く設定するほどメリットがあるというものでもありません。決め方には2つのポイントがあります。2つのポイントについて解説します。
源泉徴収税を徴収しない範囲に収める
青色事業専従者給与の金額を決める際、源泉徴収税を徴収しない範囲に収めることが重要です。青色事業専従者給与も源泉徴収の対象となるので、ひと月の給与がおよそ8万8,000円以上になると、事業者に源泉徴収の義務が発生します。また給与を受け取る家族には、年間の給与が100万円を超えると住民税、103万円を超えると所得税が課税されてしまいます。
同業他社の給与を参考にする
青色事業専従者給与の金額を決める際には、同業他社の給与を参考にするとよいでしょう。給与が他社の従業員に比べて高すぎる場合は、一般的に相当とみなされる金額しか経費として認められない可能性があります。
従業員を雇用する場合の手続き
親族以外の従業員を雇う場合は、青色事業専従者給与の特例は適用されませんが、支払った給与は「人件費」として全額経費に算入できます。ここでは、親族・親族以外を問わず、従業員を雇用する場合に必要となる手続きについてご紹介しましょう。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書を提出する
青色事業専従者給与の特例の適用を受ける場合を含め、従業員を雇うには「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」という書類を、管轄税務署に提出する必要があります。提出期限は、従業員を雇用した日から1か月以内です。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出する
源泉徴収を行うことになる場合は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も一緒に提出しておきましょう。源泉所得税は、原則として徴収した日の翌月10日が納付期限となっていますが、この手続きを行うことで、年2回にまとめて納付できるようになります。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
親族に給与を支払っている場合は青色事業専従者給与の特例を検討しよう
青色申告をしている事業者は、青色事業専従者給与の特例を使うことで、親族に支払った給与を経費に算入することができます。親族に支払った給与を経費に算入できれば、それだけ支払う税金の額は少なくなるので、親族といっしょに事業を行っている場合は、青色事業専従者給与の特例の適用を検討しましょう。
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この記事の監修者岡本匡史(税理士)
「岡本匡史税理士事務所」の代表税理士。
1979年和歌山県生まれ。滋賀県立膳所高校、横浜国立大学経営学部卒業。城南信用金庫、公認会計士事務所勤務を経て、2012年に豊島区池袋にて岡本匡史税理士事務所を設立。
低価格で手厚いサポートを行うことを目標としており、特に開業前~開業5年目の法人・個人事業主の税務会計が得意。
毎年、市販の確定申告本や雑誌の監修にも携わっている。