「源泉所得税のある請求書」の発行の仕方と取引の仕訳方法

2021/03/31更新

この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

事業として取引を行ううえで基本となる請求書の発行業務。請求書のフォーマットは文具屋さんやネットでさまざまなものが手に入りますが、ライターやカメラマンなど源泉徴収が必要な収入の場合、どのように記載したらよいか迷ってしまいますよね。
今回は、源泉所得税のある請求書の発行と経理上の仕訳に関して、主に税務上の観点から気をつけておきたいところを見ていきましょう。

POINT

  • 消費税の計算ために必要な記載事項がある
  • 源泉所得税は計算方法を確認しておくこと
  • 取引の仕訳は源泉所得税を経費にしないのがポイント

税務の上で必要な記載事項

請求書には売上代金だけでなく、様々な記載事項があります。今回はクラウド請求管理サービス「Misoca(ミソカ)」を利用して請求書サンプルを作成してみました。ここで、税務の上で必要な記載事項を確認してみましょう。
消費税法では、消費税の計算で入税額控除について帳簿への記載のほか、請求書等の保存も要件となっていますが、その請求書等の記載事項をつぎのように定めています。

税務の上で必要な記載事項
  • 書類作成者の氏名または名称
  • 取引年月日
  • 取引内容
  • 取引金額
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

サンプルで囲っている番号の箇所がそれに該当します。内容としては記載してあって当然のものではありますが、少なくともこれらの記載もれがないようにしておきましょう。
なお、今回は説明を省きますが、2023年10月1日以降は、この区分記載請求書等の保存に代えて、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が導入されます。免税事業者等の請求書については経過措置も設けられていますので、国税庁や財務省のサイトなどでチェックしてみてください。
また、「請求書のどこにマイナンバーを書いたらよいのでしょうか」と質問を受けたことがあります。マイナンバーは例えば、税務署に提出する「報酬・料金等の支払調書」など行政関係へ提出する書類に記載するために必要なものであり、自分のマイナンバーであっても請求書などに記載してはいけませんので注意しましょう。

源泉所得税の計算方法あれこれ

さて、源泉所得税の記載方法ですが、まずは相手先に源泉徴収の計算方法を確認しておいたほうがよいです。というのも、源泉徴収額の算出方法には、源泉徴収税率の10.21%(100万円以下の場合)をどの金額にかけるかなどで、いくつかの方法があるからです。

①税込金額にかける方法

消費税を含んだ総額から源泉徴収税額を算出するもっとも簡単な方法です。
本体価格20,000円、税込21,600円(消費税率8%)の場合
税込21,600円×10.21%=2,205円が源泉徴収税額となります。

②本体価格にかける方法

請求書上で本体価格と消費税とを明確に分けている場合は、消費税抜きの本体価格に源泉徴収税率をかけることができます。
本体価格20,000円の場合
本体価格20,000円×10.21%=2,042円が源泉徴収税額となります。

③手取契約の場合

税引き後の金額で取り決めをする手取契約の場合は、税引き前の金額を逆算しなければなりません。例えば
手取り20,000円で消費税込みの場合
20,000円÷0.8979(※1)=22,274円が総額となり、
22,274円×10.21%=2,274円が源泉徴収税額
22,274円-2,274円=20,000円という計算になります。

  • (※1)100%から源泉徴収税率10.21%を引くと89.79%になるため、この掛け率になります。

会社によっては「こちらで計算するから源泉徴収税額は書かないでほしい」と言われることもあるでしょう。
また、相手が個人事業主の場合はそもそも源泉徴収義務者であるかどうかの確認も必要ですね。なお、請求書に源泉徴収額を入れて請求書を発行しておくと、先方から支払調書をもらえなくても金額を確認できるので、確定申告をするときラクになるというメリットがあります。

取引の仕訳方法

では、発行した請求書を帳簿にはどのように付けたらよいのでしょうか。
基本は売上取引を相手先ごとに記帳する売掛帳を利用するのが未回収残高なども管理しやすくてよいです。
やよいの青色申告 オンライン」を利用した場合、図のように金額には税込総額を入力し、「うち源泉徴収税額」にチェックを入れて源泉所得税を入力すると簡単に登録できます。

取引の仕訳方法

売掛帳の上では税引き後の手取金額が登録されていますので、入金時の取引を追加すると残高はゼロになります。

取引の仕訳方法

複式簿記の仕訳を紹介すると次のようになります。

①請求時
売掛金  19,558 / 売上高 21,600
事業主貸  2,042 /

源泉所得税は経費でないため事業主貸としますが、「仮払税金」など別の項目を作って管理するのが決算時にはラクですよ。間違っても源泉所得税分を「租税公課」などとしてしまわないように注意しましょう。
なお、「やよいの青色申告 オンライン」の場合はわかりやすいようにあらかじめ「事業主貸」の部分が「受取報酬の源泉徴収税」として登録されますが、青色申告決算書を出力するときには「事業主貸」となりますのでご安心ください。

②入金時
普通預金 19,558 / 売掛金 19,558

もちろん、代金が入金されたときに直接売上を入れて入力を1回で済ませる方法もありますが、この場合は年度末で未回収のものを追加で計上する必要があります。
なお、白色申告の場合は収入金額がしっかりと記帳されていればよいのですが、源泉徴収税を引かれた後の手取りで記帳している方を見かけます。収入はあくまでも税引前の総額ですので間違えないように気をつけましょうね。また、「やよいの青色申告 オンライン」と請求書作成サービス「Misoca」を連携させると請求書発行から仕訳の手順がとても容易になりますので、ぜひ試してみてくさい。

まとめ

いかがでしょうか。源泉所得税の計算が入ってくることで請求書の表示が難しくなりますが、基本さえ押さえてしまえば同じことの繰り返しです。請求書を基に帳簿をつけておくことで思わぬ回収もれなどを防ぐことにもつながりますので、帳簿づけにもチャレンジしてみてくださいね。

Photo:Getty Images

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この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

宮原裕一税理士事務所新規タブで開く」代表税理士。弥生認定インストラクター。
弥生会計を20年使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。経営者のサポートメンバーとして会計事務所を営む一方、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。

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