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14.消費税計算での対価の返還と貸倒れの場合の処理

公開日:

執筆者:大野 修平(公認会計士・税理士)

ビジネスをしていると商品の返品を受けたり、値引きや割引きを行うことも出てきますし、仕入についても返品や値引きなどがあります。また、得意先が倒産し、売掛金が貸倒れたりすることもあるでしょう。これらももちろん消費税の計算に影響を与えます。今回は、こうした場合の処理について説明いたします。



売上にかかる対価の返還等

売上の返品や値引きは、売上のマイナス項目にあたります。そのため、消費税計算においては、課税標準額に対する消費税額から、その分の消費税額を控除することができます。
こうした、売上のマイナス項目を「売上にかかる対価の返還等」といい、具体的には以下のようなものが該当します。

  • 売上返品・値引き・割戻し・割引き
  • 現金払いの販売奨励金
  • 組合等の事業分量配当金の支払い

一方、以下のものについてはもともと課税取引ではなく、販売時に消費税を納税していない取引のため、控除しません。

  • 輸出免税売上にかかる返還等
  • 非課税売上にかかる返還等
  • 免税事業者であったときの売上にかかる返還等

売上にかかる対価の返還等の処理

売上にかかる対価の返還等にかかる消費税額は、該当する課税資産の譲渡等を行った課税期間(※注)ではなく、返還等を行った課税期間に調整を行います。

(※注)課税期間とは、消費税の納付税額を計算する期間のことです。原則として、個人事業者の場合は1月1日~12月31日の期間を指し、法人の場合は事業年度を指します。

調整の仕方は以下のとおりです。

まず、売上にかかる対価の返還等に係る消費税額を算定します。具体的には返還等の金額(税込)に6.3/108を乗じます。

次に、課税標準額に対する消費税額から、売上にかかる対価の返還等にかかる消費税額を控除します。

貸倒れ

売掛金等が貸倒れとなった場合も、対価の返還等の処理と同様に、貸倒れとなった金額に対応する消費税額を、課税標準額に対する消費税額から控除します。
控除の対象となる貸倒れは、消費税の課税対象となる取引にかかる債権ですので、売掛金だけに限りません(これが売掛金「等」の正体です)。
ただし、貸倒れとして認められる事由、またその場合の貸倒れ金額については以下のように定められています。

原因となる事由 貸倒れ金額(貸倒損失)
更生計画認可の決定 切捨額
再生計画認可の決定
特別清算に係る協定の認可の決定
債権者集会の協議決定
債務者の財産状況、支払能力等からみてその債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかであり、担保物を処分した場合 売掛金等の全額
債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その債権の弁済を受けることができないと認められる場合 書面による債務免除額
債務者との取引を停止した時以後一年以上経過した場合 売掛金等の額-備忘価額(1円)
同一地域の債務者について有する当該債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき

一方、以下のようなものについては貸倒れの処理を行いません。

  • 輸出免税売上に係る売掛金等の貸倒れ
  • 非課税売上に係る売掛金等の貸倒れ
  • 貸付金の貸倒れ
  • 免税事業者であったときの売上に係る売掛金等の貸倒れ

貸倒れの処理

上表の事由に該当し、貸倒れの処理をする場合は、貸倒れの発生した課税期間に調整を行います。
調整の仕方は以下のとおりです。

まず、貸倒れとなった金額に対応する消費税額を算定します。具体的には貸倒れの金額の合計額(税込)に6.3/108を乗じます。

次に、課税標準額に対する消費税額から、貸倒れとなった金額に対応する消費税額を控除します。

貸倒れの回収があった場合

いったん貸倒れの処理をしたとしても、その後、それら貸倒債権の一部や全部を回収することがあります。
そうした場合には、貸倒れの処理とは逆に、回収した貸倒債権に含まれる消費税額を、回収した課税期間の課税標準額に対する消費税額に加算します。

仕入にかかる対価の返還等

売上だけでなく、仕入対価についても、仕入先に返品をしたり、仕入先から値引きを受けたりすることがあると思います。
これらは仕入のマイナス項目ですので、基本的には売上にかかる対価の返還等と逆の処理をすることになります。
つまり仕入れにかかる消費税額から、その分の消費税額を控除することができます。

こうした、仕入のマイナス項目を「仕入にかかる対価の返還等」といい、具体的には以下のようなものが該当します。

  • 仕入返品・値引き・割戻し・割引き
  • 現金で受け取る販売奨励金
  • 組合等から受け取る事業分量配当金
  • 保税地域から引き取った課税貨物にかかる消費税額の還付税額

仕入にかかる対価の返還等の処理方法は、適用する仕入控除税額の計算方法によって違う

仕入にかかる対価の返還等にかかる消費税額は、課税仕入を行った課税期間ではなく、返還等を受けた課税期間に調整を行います。
調整の仕方は、売上にかかる対価の返還等と同様、「課税期間において控除される課税仕入れ等の消費税額の合計額」から、「課税仕入れにかかる対価の返還等を受けた金額にかかる消費税額の合計額」を控除するのですが、具体的な方法は仕入控除税額の計算方法(仕入税額を全額控除する方式、個別対応方式、一括比例配分方式、(※「12.消費税における仕入控除税額の計算方法の決め方」を参照)によって異なりますので、ここでは仕入税額を全額控除する方式について説明することとし、その他の方式での計算方法は「15.消費税における個別対応方式の計算方法」「16.消費税における一括比例配分方式の計算方式」の記事に譲ります。

仕入にかかる対価の返還等の処理(仕入税額を全額控除する方式)

仕入税額を全額控除する方式を適用している場合、仕入れにかかる対価の返還等の処理は、以下のようなステップで行います。

まず、仕入にかかる対価の返還等にかかる消費税額を算定します。具体的には返還等の金額(税込)に6.3/108を乗じます。

次に、課税仕入等の消費税額から、仕入にかかる対価の返還等にかかる消費税額を控除します。
なお、仕入にかかる対価の返還等にかかる消費税額を控除しきれない場合には、控除しきれなかった額を課税売上げにかかる消費税額に加算しなければなりません。

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この記事の執筆者

大野 修平(公認会計士・税理士)
大野 修平(公認会計士・税理士)

OneWorld税理士法人 公認会計士・税理士。
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。
金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。
トーマツ退所後は、OneWorld税理士法人にて開業支援、融資支援、税務顧問などの業務を行う。
また、毎週、補助金と融資の勉強会 を開催し、中小企業の資金繰り支援にも力を入れている。
知っておきたい基礎知識 の記事はこちら

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