「15.消費税における個別対応方式の計算方法」に続いて、一括比例配分方式の場合を解説していきます。
課税期間中の課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満の事業者であれば、個別対応方式か一括比例配分方式のどちらか有利な方を選択できるのでしたね。
また、くどいようですが、消費税の納付額は預かった消費税額から支払った消費税額を控除するのであり、この一括比例配分方式においても、「支払った消費税額」のうち控除する金額を算定しているということを忘れないでくださいね。
「一括比例配分方式」は、その名のとおり仕入控除税額を一括して算定します。
つまり、個別対応方式のように課税仕入を区分するといった煩雑な経理や税額計算は不要です。
具体的には、課税仕入等の消費税額の合計額を求め、その合計額に課税売上割合を掛けて仕入控除税額を求めます。
なお、課税仕入等の消費税額の合計額とは以下の合計額を言います。
課税仕入を区分することなく、上記の合計額に課税売上割合を掛けるのですから、一括比例配分方式は、すべての課税仕入等を課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものと考えているということです。
対価の返還があった場合も、区分経理をすることなく消費税額を算定します。
具体的には、以下の算式で仕入控除税額を算定します。
仕入控除税額=
(課税仕入等の消費税額の合計額×課税売上割合)-(仕入返還等にかかる消費税額×課税売上割合)
なお、仕入れにかかる対価の返還等にかかる消費税額が、課税仕入等の消費税額の合計額から控除しきれない場合に、控除しきれない額を課税標準額に対する消費税額に加算するのは、全額控除方式や個別対応方式を適用している場合と同様です。
個別対応方式を選択できるように、経理上も区分経理をしておけば、個別対応方式と一括比例配分方式の有利な方を選択できます。
ただし、そのような区分経理をしている場合に一括比例配分方式を選択すると、2年間以上継続して一括比例配分方式を適用した後でなければ(個別対応方式の方が有利であっても)、個別対応方式に変更することはできませんので注意が必要です。
なお、個別対応方式から一括比例配分方式への変更はいつでも可能です。
したがって、経理上、区分経理をしていない場合には一括比例配分方式を選択するしかありませんが、区分経理をしている場合には、当期において個別対応方式と一括比例配分方式との有利不利を判定するだけでなく、翌期における有利不利も予測したうえで判断しなければなりません。
個別対応方式と一括比例配分方式についてまとめると以下のようになります。
方式 | 税区分 | 他の方式への変更 |
---|---|---|
個別対応 | 面倒 | いつでも可 |
一括比例配分 | ラク | 2年間は要継続 |
この記事の執筆者
OneWorld税理士法人 公認会計士・税理士。
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。
金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。
トーマツ退所後は、OneWorld税理士法人にて開業支援、融資支援、税務顧問などの業務を行う。
また、毎週、補助金と融資の勉強会 を開催し、中小企業の資金繰り支援にも力を入れている。
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