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17.消費税の簡易課税の仕組みとみなし仕入率

最終更新日: 公開日:2017/09/29

執筆者:大野 修平(公認会計士・税理士)

12.消費税における仕入控除税額の計算方法の決め方」では消費税の計算方法についてのあらまし、「13.消費税における仕入税額控除の控除時期と計算方法」「15.消費税における個別対応方式の計算方法」「16.消費税における一括比例配分方式の計算方法」では仕入控除税額の計算方法を説明していますが、最後は簡易課税です。
簡易課税を選択できるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者でしたね。
また、簡易課税を選択しようとする場合には、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しなければならず、簡易課税を選択した場合は、2年間は一般課税に変更することはできません。
詳しくは「12.消費税における仕入控除税額の計算方法の決め方」をご確認ください。



簡易課税での仕入控除税額の計算

原則的な仕入税額控除においても、一括比例配分方式という簡略的な手続きがありますが、簡易課税制度はさらに簡易な計算方法です。
簡易課税制度では、課税標準額に対する消費税額のみから、つまり課税仕入に対する消費税額を集計する必要なく、消費税納付額を計算することが可能です。
簡易課税制度を適用した場合の仕入控除税額の計算式は以下のとおりです。

仕入控除税額=
(課税標準額に対する消費税額+貸倒回収にかかる消費税額-売上にかかる対価の返還等にかかる消費税額の合計額)×みなし仕入率

みなし仕入率とは、業種ごとに定められた仕入率のことです。
つまり、業種別に「◯◯業では売上に対する仕入率はだいたいこれぐらいだろう」という率を、課税標準額に対する消費税額に掛けることで、仕入控除税額を簡易的に計算するのです。

みなし仕入率

簡易課税制度においては、事業を以下の6つに区分し、それぞれについてみなし仕入率が定められています。

<簡易課税方式の事業区分>
事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第一種事業 卸売業 90%
第二種事業 小売業 80%
第三種事業 製造業、建設業、農業、林業、漁業など(※※) 70%
第四種事業 飲食業などとその他の事業(※) 60%
第五種事業 サービス業など(運輸通信業、金融業、保険業) 50%
第六種事業 不動産業(賃貸・管理・仲介) 40%

※ 第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業、第六種事業のいずれにも該当しない事業は第四種事業です。
※※2019年10月1日の消費税率10%導入後は第三種にある農業、林業、漁業のうち軽減税率適用分について第二種に引き上げられ、みなし仕入率80%になります
(平成30年度税制改正により、消費税の簡易課税制度について見直しがされました。なお、同日前における食用の農林水産物を生産する事業については、従来の第三種事業でみなし仕入れ率70%のままとなります。
2019年7月30日 執筆者:大野修平(公認会計士・税理士)先生確認のうえ、スモビバ!編集部追記)

例えば卸売業であれば、みなし仕入率は90%ですので、課税標準額に対する消費税額に90%を掛けた額が仕入控除税額です。
したがって、納付税額は課税標準額に対する消費税額に10%(100%-90%)を掛けた額となります。

2業種以上の事業を行っている場合のみなし仕入率

では、卸売業と小売業を同時に行っている場合のように、2業種以上の事業を行っている場合、みなし仕入率はどのように考えれば良いのでしょうか?
実はこの場合には、原則法と特例法、大きく2つの方法が存在します。

2業種以上の事業を行っている場合のみなし仕入率(原則法)

2業種以上の事業を行っている場合のみなし仕入率を原則法で求める場合には、それぞれの事業区分ごとの課税売上高にかかる消費税額に、それぞれの事業区分ごとのみなし仕入率を乗じた合計額を全体の課税売上高合計で除した加重平均値として、以下の算式を用います。

(第1種事業の売上にかかる消費税額×90%
+第2種事業の売上にかかる消費税額×80%
+第3種事業の売上にかかる消費税額×70%
+第4種事業の売上にかかる消費税額×60%
+第5種事業の売上にかかる消費税額×50%
+第6種事業の売上にかかる消費税額×40%)
÷第1種事業から第六種事業の売上にかかる消費税額の合計額

なお、このときの「売上にかかる消費税額」は、対価の返還等にかかる消費税額については差し引きますが、貸倒れ回収にかかる消費税額については考慮しませんのでご注意ください。

2業種以上の事業を行っている場合のみなし仕入率(特例法)

特例法はさらに以下の2つの方法に分かれます。

①特定1事業の課税売上高が全体の75%以上の場合
2業種以上の事業を行っていたとしても、特定の1事業の課税売上高が全体の75%以上を占めるような場合にまで、原則法の適用しか認めないのは適当ではありません。
そのような場合には、2業種以上の事業を行っていたとしても、全体のみなし仕入率として75%以上を占める事業にかかるみなし仕入率を適用することができます。
例えば卸売業と小売業を行っていた場合であっても、卸売業の割合が75%以上であれば、卸売業のみなし仕入率である90%を、全体のみなし仕入率として使用できるということです。

特定2事業の課税売上高が全体の75%以上の場合

3種類以上の事業を営んでいて、すべての課税売上高の合計のうち特定2事業の課税売上高の合計が75%以上となる場合には、その2事業にかかるみなし仕入率を、以下のように適用することができます。

・その2業種のうち、みなし仕入率の高い方の事業にかかる課税売上高については、そのみなし仕入率を適用
・それ以外の課税売上高については、その2種類の事業のうち低い方のみなし仕入率をその事業以外の課税売上げに対して適用

例えば、卸売業(第1種)、小売業(第2種)、製造業(第3種)、飲食業(第4種)を行っている合計売上高が1,000万円(消費税63万円)の会社があるとして、それぞれの売上高と消費税額が450万円(28.35万円)、300万円(18.9万円)、150万円(9.45万円)、100万円(6.3万円)だとします。
この場合、卸売業と小売業を合計すると75%ですので、特定2事業の課税売上高の合計が75%以上となる場合に該当します。
この場合、高い方のみなし仕入率は卸売業の90%、低い方のみなし仕入率は小売業の80%ですので、これを製造業と飲食業に適用することができます。
具体的には以下のように計算します。

仕入控除税額=課税標準額に対する消費税額
×卸売業にかか係る消費税額×90%+(売上にかか係る消費税額-卸売業にかか係る消費税額)×80%
売上にかか係る消費税額

事業区分をしていない場合

2種類以上の事業を営んでいるにもかかわらず、課税売上を事業ごとに区分経理していない場合には、その事業者が行っている事業のうち最も低いみなし仕入率を適用して仕入控除税額を計算します。つまり、区分経理している場合より税負担が重くなるということです。

簡易課税を選んだときの計算方法

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この記事の執筆者

大野 修平(公認会計士・税理士)
大野 修平(公認会計士・税理士)

OneWorld税理士法人 公認会計士・税理士。
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。
金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。
トーマツ退所後は、OneWorld税理士法人にて開業支援、融資支援、税務顧問などの業務を行う。
また、毎週、補助金と融資の勉強会 を開催し、中小企業の資金繰り支援にも力を入れている。
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