消費税法には、作業負担を軽減させることのできる規定があります。ただし、それらは自動的に選択されるものではなく、期限までに届出書を提出しなければなりません。
ここでは、主な届出書とその提出期限を説明したいと思います。
なお、提出先はすべて「納税地を所轄する税務署長」となっています。
「03.消費税の申告・納税が課される事業者と、免税される事業者とは?」では、消費税が課税される事業者について述べました。課税事業者が提出する「消費税課税事業者届出書」には、基準期間用と特定期間用の2種類が存在します。
この「基準期間」、「特定期間」ですが、消費税の課税事業者か免税事業者かを判断する際に、前々期の(2期前の)課税売上高もしくは前期の前半年間(1期前の前半年間)の期間で判断することになります。この前々期にあたる期間を「基準期間」と言い、前期の前半年間を「特定期間」といいます。
基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合、仕入控除税額の計算方法として簡易課税制度を選択できます。
簡易課税制度を選択する際に提出するのが、この届出書です。
提出期限は「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(設立第1期は、その期中)」となっています。つまり届出書の効力は、原則として提出した期の翌期から生じるということです。つまり、設立1年目は対象外となります。
簡易課税制度を選択した場合、2年間継続した後でなければ選択を取りやめることができません。したがって、その間に大きな設備投資などがあり、多額の消費税の支払還付を受けられる可能性があっても、みなし仕入率によって計算されるため還付を受けられません。
また、2年経って、簡易課税制度の選択を取りやめようとする時にも「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要があります。
提出時期は、「適用をやめようとする課税期間の初日の前日まで」となっています。
基準期間の課税売上高が1,000万円以下であるなどの理由により、免税事業者となる場合であっても、課税事業者になることは可能です。
消費税の納付額は、預かった消費税額から支払った消費税額を控除して計算しますが、この額がマイナスとなった場合、課税事業者であればマイナス分を還付してもらうことができます。
マイナスとなるということは、「十分に利益が出ていない」、「売上高に占める輸出の比率が高い」、「大規模な設備投資をした」などの可能性が高いと言えますが、特に事業を始めた当初は、思うように売上が伸びず、消費税の納付額がマイナスとなる(つまり還付となる)こともあると思います。
しかし、設立当初は基準期間がなく、免税事業者になりますので、このままでは還付を受けることができません。そこで、この消費税課税事業者選択届出書を提出することで課税事業者となり、還付を受けられるようにする手続きです。
提出期限は、「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(設立第1期は、その期中)」となっています。つまり、設立第1期以外は、提出した期の翌期から効力が生じることになります。
さらに、この届出書を提出して課税事業者となった場合には、2年を経過していなければ免税事業者に戻ることはできませんので、本当に課税事業者を選択することで有利になるのかどうか、緻密な事業計画書を作成し、十分にシミュレーションをする必要があります。
この場合でも、基準期間の課税売上高が1,000万円以下となり、課税事業者を選択することをやめようとするときには「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出します。
提出期限は、「免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日の前日まで」となっています。
なお、この章でご紹介した届出書に関しては下記リンク先より参照してください。
【参考】
国税庁:消費税の各種届出書
この記事の執筆者
OneWorld税理士法人 公認会計士・税理士。
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。
金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。
トーマツ退所後は、OneWorld税理士法人にて開業支援、融資支援、税務顧問などの業務を行う。
また、毎週、補助金と融資の勉強会 を開催し、中小企業の資金繰り支援にも力を入れている。
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消費税
事業者の販売する物品やサービス等の価格に上乗せされて広く課税される消費税。みなさまが取引をするなかで、さまざまな形で関わってくる税金です。ここでは知っておきたい消費税の基礎知識から、実践的な計算方法まで、体系的に学ぶことにしましょう。
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