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法人と個人事業主の違いや起業スタイルの選択基準を解説

2024/03/01更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

起業する場合、個人事業主となるか、法人として株式会社などを立ち上げるか、大きく分けて2つの方法があります。起業にあたり、どちらが良いか悩む方はいるのではないでしょうか。
個人事業主と法人では、起業の手続きや税金の仕組み、経費の範囲などが異なります。どちらのメリットが大きいかは、業種や所得などさまざまな条件によって変わってくるため、その違いを知ったうえで自分自身に照らし合わせて検討することが大切です。
ここでは、個人事業主と法人の違いや一般的な選択基準について解説します。

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個人事業主と法人の概要

事業を始める際には、個人事業主となるか、法人として会社を立ち上げるかを選ぶ必要があります。まずは、それぞれがどのようなものなのかを確認しておきましょう。

個人事業主とは?

個人事業主とは、法人設立手続きを行わず、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書 新規タブで開く」(開業届)を提出して、個人で事業を営んでいる人のことです。1人で事業を行う場合だけではなく、家族や従業員と複数で事業を行っている場合もあります。
また、個人事業主と混同されやすい言葉に「フリーランス」がありますが、フリーランスとは、組織や団体に雇用されずに独立して仕事を請け負う働き方のことです。フリーランスは働き方、個人事業主は税務上の区分を指すため、フリーランスの方の中には、個人事業主の方もいれば、そうでない方もいます。

法人とは?

法人とは、法人設立手続きを行い、人と同じ権利や義務を法律によって認められた組織のことです。法人はまず、公の事業を行う公的法人と、国などから強い影響を受けない私法人の2つに分類され、私法人は、会社などの営利法人と、NPO法人などの非営利法人の2種類に分かれます。
起業に際して「法人」という場合は一般的に、営利法人である「会社」のことです。会社には株式会社をはじめ、合同会社、合資会社、合名会社があります。
合名会社、合資会社の新規設立数は減少傾向で、法務省「登記統計 商業・法人 年次 2020年 新規タブで開く」(2021年5月公開)によると、2020年度の合名会社、合資会社の新規設立数は合わせて年間100件を切っています。このことから、これからのトレンドは株式会社または合同会社といえるかもしれません。

個人事業主と法人の違い

個人事業主と法人の主な違いを、以下の表にまとめました。

個人事業主 法人
起業時の提出書類
(提出先)
開業届(税務署) 定款、登記事項証明書など(法務局)
起業の手続きに
かかる費用
なし 株式会社約18万円~、合同会社約6万円~
社会的信用 法人に比べて低い 個人事業主と比べて高い
税金 所得税、個人住民税、個人事業税など 法人税、法人住民税、法人事業税など
税務申告 所得税の申告のみ 法人税、住民税、事業税など
節税 法人に比べ方法が限られる 経費の範囲が広い
事業主の給与 給与という概念はなく、売上から経費や社会保険料などを差し引いて残ったものが事業主の所得となる 社長1人であっても、法人から支払われる
銀行口座 個人名義の口座でも可。
ただし、事業用のお金と生活費が混同しないよう注意が必要。
口座に屋号を付ける場合のみ審査が厳しくなる
法人口座の審査は厳しい
事業主(株主)の責任 無限責任 有限責任
社会保険 国民健康保険、国民年金など 健康保険、厚生年金保険など

なお、個人事業主と法人の違いについてはこちらの動画でも解説しているため、起業を検討している人は参考にしてみてください。

個人事業主か法人かの選択基準

続いては、起業の手続き、税金の仕組み、経費の扱いなどの違いから、個人事業主か法人かの一般的な選択基準を見ていきましょう。起業する際には、自分に合った形態を選ぶことが大切ですので、ぜひ参考にしてください。

起業の手続きの違い

個人事業主として起業するなら、税務署に開業届を提出すれば、基本的に手続きは完了です。一方、法人として会社を立ち上げる場合は手続きの手間も費用も異なるので、事前に確認しておくと安心です。それぞれの手続きについては下記のとおりです。

個人事業主

個人事業主になるための手続きは、開業から1か月以内に、「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を納税地の税務署に提出するだけです。従業員を雇う場合は「開設届出書(給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書)」、確定申告で青色申告を選択したい場合は、事業開始から2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。事業を開始してから2か月間様子を見て、白色申告にするか青色申告にするかを決めることもできます。ただし、忙しい創業期に手続きを失念しないよう、開業届とあわせて提出するのがおすすめです。いずれも、手続きに手数料はかかりません。
個人事業主は起業の手続きがシンプルでお金もかからないので、まずは個人事業主でスタートして、売上や事業的規模が拡大したときに法人化を検討するケースもよく見られます。

個人事業主の開業手続き方法は、こちらの記事も併せてご覧ください

開業資金はいくら必要?独立開業にかかる費用相場や調達方法を紹介

法人

法人を立ち上げる具体的な手続きは、株式会社と合同会社のどちらを設立するかによって異なりますが、定款の作成や法人設立登記などが必要で、書類の提出先も複数にわたります。
株式会社の場合は、作成した定款を公証役場に提出し、認証の手続きを行います。合同会社の場合、定款認証は不要ですが、定款そのものは作成しなければなりません。また、株式会社、合同会社のどちらで設立するとしても、手続きにはさまざまな費用が発生します。

例えば、株式会社を設立する場合、紙で提出したときの定款の認証手数料は設立時の資本金によって変わりますが、3万~5万円程度かかります。また、法務局で法人登記手続きに必要な登録免許税は、株式会社なら最低15万円、合同会社は最低6万円がかかります。会社設立は資本金1円から可能ですが、事業の運転資金と併せて、これら設立手続きに必要な金額も把握しておきましょう。
また、個人事業主から法人化を行うのはよく見られるケースですが、法人から個人事業主になる場合は、解散登記(株式会社解散及び清算人選任登記申請書)や官報公告を行う手間や費用が発生するため注意が必要です。

株式会社・合同会社の設立方法や設立費用については、こちらの記事も併せてご覧ください

税金の仕組みの違い

個人事業主か法人かで迷ったときに検討するポイントとして、税金の仕組みの違いが挙げられます。個人事業主と法人では税金の仕組みが異なり、個人事業主には所得税や住民税、個人事業税などが、法人の場合は法人税や法人住民税、法人事業税などがかかります。それぞれの違いは下記のとおりです。

個人事業主

個人事業主の所得税は累進課税となるため、所得が増えるとその分税率が段階的に上がり、税率の上限は45%になります。なお、1年の利益が赤字であった場合は、所得税や住民税はかかりません。
住民税は、所得金額に関わらず定額で課税される「均等割」と前年の所得金額に応じて金額が変わる「所得割」があります。住民税の所得割の税率は10%です。
また、年間の所得が290万円を超え、法律で定められた70業種に該当する場合は、個人事業税がかかります。個人事業税の税率は5%です。個人事業税がかかる70業種は東京都主税局「個人事業税 新規タブで開く」で確認することができます。

法人

法人の所得に課税される法人税は、資本金1億円以下の法人で所得が800万円を超える場合の税率は23.2%、800万円以下なら税率は15%で一定です。所得が増えれば増えるほど、会社設立による節税効果は高くなるといえるでしょう。
ただし、法人の場合は、赤字であっても必ず納付しなければならない、法人住民税の均等割という税金があります。これは年間の利益が赤字の場合でも、各地方自治体で定められた一定の金額を納税しなければなりません。

個人事業主と法人のどちらがより節税メリットが高いかは、所得額の他、経営者が支払う住民税や法人が支払う法人住民税、法人事業税などによっても異なります。具体的な判断は、起業時に税理士に相談すると安心です。税務の専門家である税理士に相談すれば、法人化のタイミングや節税のポイント、資金繰りなどについてもアドバイスが受けられるでしょう。
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経費の幅の違い

個人事業主も法人も、基本的に事業にかかった費用は経費になります。しかし、個人事業主と法人では、経費として扱われる範囲が異なり、法人の方が節税メリットは高いといえます。それぞれどのような項目が経費にあたるのか、違いを見ていきましょう。

個人事業主

個人事業主の場合は、事業主本人への給与という概念がなく、事業所得(売上から経費や控除などを引いた額)がすべて課税の対象となります。また、青色申告であれば配偶者や従業員に給与を支払うことができますが、配偶者を含む親族に対し給与を支払う場合はあらかじめ税務署へ知らせる必要があります。
その他、事業主本人への退職金や生命保険料の一部、遠方に出張した際の日当なども、経費にすることはできません。

法人

法人の場合は、たとえ社長1人だけの会社であっても、経営者は役員報酬という形で給与を受け取ります。役員報酬は定期同額給与などの要件を満たすことで経費とみなされるため、法人税の課税対象とはなりません。また、法人の場合、給与の支払いについては「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 新規タブで開く」をあらかじめ税務署へ提出します。
その他、法人では役員の退職金や生命保険料の一部、出張の際の日当なども、経費として計上することができます。なお、日当には実費補填といった意味合いがあるため、金額が趣旨に照らして妥当であれば、受け取る役員や従業員には所得税の課税は行われません。

社会的信用の違い

一般的には、個人事業主よりも法人の方が、社会的な信用度は高くなります。取引先の考え方や、受けたい融資の額など、社会的な信用度がどの程度必要かも起業スタイルを選ぶポイントです。

個人事業主

事業を行ううえでは問題はないものの、個人事業主は法人よりも社会的信用度は低いといえます。取引先や仕入れ先によっては、法人でなければ契約を結ばない企業もありますし、個人事業主相手には規模の大きな取引を行わない企業もあるでしょう。取引先の考え方によっては法人の方が有利になるケースもあります。

法人

会社を設立する場合は、商号(社名)や住所、資本金などの情報を法務局に提出して登記しなければなりません。登記した内容は誰でも閲覧でき、法人としての責任が発生するため、個人事業主よりも社会的な信用力が高いといえます。
社会的な信用が得やすくなると、資金調達を行いやすくなります。個人事業主が資金調達をしにくいというわけではありませんが、事業拡大などでまとまった額の融資が必要になる場合は、法人の方が資金調達の選択肢が広がるでしょう。

責任の範囲の違い

個人事業主と法人では、倒産した際に事業上の責任を負う範囲にも違いがあります。個人事業主は無限責任、法人は有限責任となります。起業する事業の規模に合わせた責任範囲も考えたうえで、個人事業主か法人かを選びましょう。

個人事業主

個人事業主の場合、事業上の責任はすべて事業主が負わなければなりません。経営が悪化した際の仕入れ先への未払い金や、金融機関からの借入金、滞納した税金なども、個人で負担することになります。これを、無限責任といいます。

法人

法人の場合、事業上の責任は限られた範囲の有限責任となり、原則、代表者個人がすべての責任を負う必要はありません。個人保証による借り入れやリース契約、不動産賃貸などを除き、責任の上限は出資金の範囲内になるのです。出資額以上の支払義務が発生せず、個人の資産は守られるため、万一の際のリスクを最小限にとどめることができます。

業種による違い

業種によっては、起業・開業にあたって許認可が必要です。許認可とは、営業するために必要な手続きのことで、「届出」「登録」「認可」「許可」「免許」の5つの種類があり、手続き窓口はその種類によって異なります。例えば、飲食業や食品製造業などは保健所の許可、ペットショップや旅行業などは都道府県庁への登録、理容業や美容業、マッサージ業、クリーニング業などは保健所への届出が必要です。
許認可の種類によっては、法人の方がふさわしいものもあります。
建設業を例に挙げると、建設業を営む際に必要な建設許認可は、個人事業主でも法人でもどちらでも取得可能です。ただし、個人事業主が法人化する際には再度取得が必要になるため、費用も手間もかかります。また、個人事業主の場合は事業主本人に対しての許可、法人の場合は法人に対しての許可になり、許可の対象も違います。事業を引き継ぐ際にも影響しますので、その点も考慮しておくといいでしょう。

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この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/新規タブで開く

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