領収書がない!確定申告で経費にできる?できない?税理士が解説

2021/03/31更新

この記事の執筆者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

所得税の確定申告をするときに、経費にできるものは漏れなく計上したいものです。しかし、領収書やレシートをなくしたり、中には、自動販売機で買った飲み物やお祝い金など、領収書が発行されないケースもあります。このような場合、どのようにすれば経費として計上できるのか見ていきましょう。

POINT

  • 経費で計上するには、必ずしも「領収書」は必要なく、ケースによっては出金伝票などで対応できる
  • 従業員への慶弔費については、福利厚生費として計上するには社内規定をあらかじめ整備しておく必要がある
  • 振り込みで支払う場合で、請求書の受領が難しい場合は、支払通知書で対応する

領収書を紛失!レシートで計上できる?

「領収書をなくしてしまった」という経験は、個人事業主に限らず、多くの人が経験したことがあるでしょう。もし領収書がなかったり、もらい忘れた場合は、レシートで代用することが可能です。むしろ、領収書よりもレシートのほうが、内容が細かく記載されているので、信用性の高い証拠資料としてみなされます。

詳しくは「経費計上にはレシートじゃダメ?手書き領収書が必要?税理士さんに聞いてみた」をご確認ください。

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領収書の再発行が無理!自動販売機や交通費など、領収書が発行されない!そんなときに経費として処理するには?

領収書やレシート、請求書といった経費を計上するための書類は、お金を受け取った相手方が発行する書類です。

しかし、領収書やレシートを紛失して、購入した店から再発行もしてもらえないこともあるでしょう。また、取引先関連で結婚式や葬式など冠婚葬祭や、打ち合わせで飲み物を自動販売機で購入したとき、公共交通機関を利用など、領収書を受け取ることができない場合もあります。

とはいえ、事業に関係するお金を使っている以上、経費で計上したいと思うのは当然です。こうしたケースではどのようにすればよいのでしょうか?

領収書の紛失、自動販売機や交通費など領収書が出ないときは出金伝票を活用

領収書の紛失や領収書が出ない支払いのときに活躍するのが、出金伝票です。出金伝票は相手先や支出の内容、支払った日付や金額などを記載する伝票のことをいいます。

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出金伝票は、事務用品を売っているお店などで100枚綴りなどが販売されていますし、インターネットでフォーマットをダウンロードすることもできます。手書きでもよいですし、表計算ソフトで作成したものでも使用できます。それほど記載事項も多くないので、紙の綴りで1冊持っておくことをオススメします。

また、公共交通機関ではチャージしたお金で支払うことがほとんどかもしれません。本来であれば、チャージをしたお金は単に支払いの準備をしているだけなので、チャージした時点で経費を計上するのではなく、チャージしたお金で料金を支払ったときに経費として計上すべきです。

慶弔費の経費計上は出金伝票が活用可能

取引先や従業員が関係する冠婚葬祭でお祝いや香典を出すことがあります。こんなとき、「経費で計上したいから領収書ください。」なんて、とても言うことはできません。そんなときにも、出金伝票を使用します。結婚式や葬式であれば、出金伝票プラス招待状や案内状などを一緒に保管しておくとよいでしょう。

ただ、冠婚葬祭については、おおよその相場も決まっていますし、招待状などに日付や支払いの相手先も記載されています。なので、出金伝票を記入せずに金額と相手との関係(従業員なのか取引先なのかといったこと)を案内状などに手書きでメモしておくだけでも十分です。

なお、余談ですが従業員の慶弔関係で、当日のお祝いや香典などのほかに慶弔費として一定のお金を渡すことがあります。これも領収書を要求するのは興ざめです。この場合も出金伝票を作成しておけばよいでしょう。ただし、この場合は経費として計上するために一定の要件があります。

その要件とは、以下の通りです。

  • 1.
    就業規則(作成していなければ、社内規定など)で慶弔費の支給要件や金額が明示されていて、その存在も周知されていること
  • 2.
    金額が常識的な金額であること(著しく高額でないこと)
  • 3.
    要件を満たせば、全従業員が支給の対象となること

こうした要件に該当すれば、従業員本人には所得税も課税されず、福利厚生費として経費に計上することもできます。

思いつきで、とある従業員にだけ支給した場合は上記の慶弔費には該当しません。こうしたケースで経費計上したい場合には、「慶弔手当」などの名目で給与明細に入れて所得税を課税させるなどの処理が必要となります。

請求書の受領が難しければ支払通知書で対応

領収書などの支払いの書類がない一つのケースとして、事業主でない個人に仕事を依頼したケースなどがあります。例えば、ホームページに記載する記事を書いてもらったり、イベントを手伝ってもらったりした人に謝礼としてお金を振り込む場合、相手に請求書を作ってもらうことは難しいケースもあります。

そうした場合には、支払通知書という書類を作成して対応しましょう。請求書が支払いを受ける側が作成する書類であるのに対して、支払通知書は支払う側が作成して、支払いを受ける相手先に渡します。

様式は特に定められていませんが、請求書と同じように、以下の内容を記載しておけばよいでしょう。

  • 1.
    相手先の氏名・名称
  • 2.
    振り込む金額
  • 3.
    振り込みの内容
  • 4.
    振込口座
  • 5.
    振込日

請求書のフォーマットがあれば、そのタイトルを支払通知書に変更して、内容を書き換えて使えば十分です。支払通知書を相手にメールや郵送などで渡す一方で、その記載内容の通りにお金を振り込んで、請求書と同じように保存しておけばよいでしょう。

なお原稿料やデザイン料ほか、やってもらった仕事の内容次第で源泉徴収が必要な場合もあります。そうしたときは、支払通知書にも源泉徴収した所得税を明記しておきましょう。

ただし、個人事業主の場合、人を雇って給与を払っている人でなければ、源泉徴収の必要はありません。人を雇わず一人で仕事をしているフリーランスのライターが、自分の仕事をさらに別のライターに外注した場合には源泉徴収は不要ということです。

「領収書」というタイトルにこだわらなくていい

「経費といえば領収書」というイメージがありますが、ここまで説明してきた通り、経費計上する場合には必ずしも「領収書」である必要はありません。内容が客観的に明らかであれば、書類の名前は何でもよいのです。必要な内容は、以下の4点です。

  • 1.
    金額
  • 2.
    取引の内容
  • 3.
    支払った日付
  • 4.
    相手先の氏名・住所など受け取った相手が特定できる情報

ネットショッピングであれば、購入履歴の画面や注文確定メールも上記に該当しますし、紹介した出金伝票も、この書類に該当します。別の第三者が見たとしても、いつ、何のために、誰に対して、いくらお金を使ったのかということが客観的に分かれば、どのような書類でも問題ありません。

お店によっては、レジから出力された「領収書」や「レシート」でも、レジの設定によっては、「部門1」のように何を買ったのか分からないケースもあります。こうなると、自分で何を購入したのかをメモ書きすることが必要です。

また、「領収書」がなくても経費計上できるということと関係しますが、振り込みでお金を支払った場合には、あえて別途領収書を受領する必要はありません。

もちろん、慣習上領収書を要求すること自体は問題ありませんが、経費を計上するという観点からは振り込みであれば、わざわざ領収書を集めなくてもよいということです。ネットバンキングの取引履歴や通帳、払込票などに取引記録が残っていれば、支払ったことは十分に証明できます。

ただし、請求書など支払いのもとになった書類はしっかりと保管しておかなければいけません。金融機関での取引記録だけでは、何のために支払ったのかということまでは分かりませんので、経費で計上できる根拠にはならないのです。

課税事業者の場合は、金額に注意する

これまで、領収書がなくても経費計上するための書類について、説明してきました。しかし、もし消費税の課税事業者であれば、一つ注意しておく点があります。それが、支払った消費税を控除するための要件です。消費税の規則では、税込みの支払額が3万円以上の場合には、請求書や支払通知書などの保存が要件になっているということです。

お祝い金や香典、慶弔費についてはそもそも消費税の対象ではないので、関係がない話ですが、その他のケースで領収書などの書類がないけど経費計上したいというケースです。

実際には、3万円を超えるような買い物をして何ら支出内容が分かる書類がないということは考えられませんが、例えば領収書を紛失してしまって出金伝票で代用しようというケースや、業種によってはお仕事を紹介してもらったお礼で個人に紹介手数料を支払ったけど何も書類のやり取りを行わなかったというケースがあり得ます。

これはあくまで消費税の基準ですが、そもそも、消費税の規則以前に、やむを得ず支出を証明する書類がないというケースを除いて、経費計上しようという場合には、領収書や請求書、支払通知書といった客観的な書類を常に保存しておくということを心がけておきましょう。

photo:Getty Images

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この記事の執筆者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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