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さまざまな"縁"が支えてくれた起業 フレンチシェフ吉澤美智子さん

公開日:

執筆者:未乙 りえ

さまざまな"縁"が支えてくれた起業 フレンチシェフ吉澤美智子さん

東京都渋谷区・笹塚。イメージカラーの赤が印象的な雰囲気のよいビストロが「オー・ペシェ・グルマン」。店主は、吉澤美智子さんだ。子供の頃から料理を作るのが大好きで、フランス料理に憧れていたという。そんな彼女が調理学校を卒業、いくつかの転機を経てたどり着いた独立・開業の道のりとは・・・。2店舗目を開業することになった経験を持つ先輩オーナーシェフに忌憚のないお話を伺った。



親の反対を押し切って入った料理の道

「高校時代から料理の道へ進みたかったのですが、両親の猛反対を受け、とりあえず短大へ進みました。2年後、ようやく調理師学校への進学を両親が許してくれて、日本で1年通ったあと、同じ系列のフランス校へ行って1年間勉強しました。実は卒業後は、独立してシェフになるという気持ちはなく、調理師学校の先生になりたかったんです。ですが、定員枠がもう締め切られていて、先輩の知り合いのお店で働くようになりました。
そんなある日、毎日通っていたカフェのオーナーが『ここで店をやってみたら?』っていうんです。聞けば、建て壊しが決まっていて残りの期限は3年間。家賃は少し高めだけど、保証金もいらないといわれて。それならいいかなと・・・。これも何かのご縁かなと思って、開業することに決めました。」

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そんなご縁から始まったお店の名前は「レ・リヤン」(フランス語で縁という意味)と名づけられた。下北沢で開業したお店は、お客さんにもスタッフにも恵まれて、「ほんとうに充実した時間を過ごすことが出来た」と、吉澤さんは、当時を振り返る。
「結局、4年半営業して、2008年12月に「レ・リヤン」は閉めました。今思えば期限があったからこそ、挑戦できたんだなと思いますね。いろいろと良いことも悪いことも学ぶことがあって、ほんとうにいいチャンスをいただきました。」

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2009年、下北沢で新たな物件を探すもなかなか手頃な物件はみつけられず、息抜きのつもりで訪れたフランスで新たな師との出会いもあった。「おじいちゃんシェフ」と呼ぶその師の元で働きながら心身ともにリフレッシュできた吉澤さんは、帰国後、笹塚に「オー・ペシェ・グルマン」をオープンすることになった。

新天地で2店舗目になるお店をオープン

「下北沢で物件を探したのですがなかなか見つからず、たどりついたのが渋谷区・笹塚でした。この場所をみた時にピンときたものがありました。商店街のほうもよかったんですが、大通りに面していて、高齢で車椅子に乗る祖父に店に来てもらうことをイメージした時に、車を目の前につけられるこの場所がいいのかなと思いました。」

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そんな吉澤さんだが、実家は髪飾り問屋の自営業で、吉澤さんの開業を誰より厳しく見守り、また、人一倍応援してくれたのが祖父だった。吉澤さんに1店舗目の創業時のエピソードを聞いてみると、「まさか自分がお店をやるなんて思ってもいなかったので、貯金もしてなくて、内装工事などの費用に必要な300万円は祖父から借りました。祖父自身、私と同じ28歳(当時)で起業していることもあって、強い思い入れをもってくれたようです。商売感覚に厳しくて、日々の売り上げをシミュレーションした計画書を提出するように求められました。それから、近所の信用金庫に電話して私の口座から毎月5万円を引くように指示し、「売り上げの5万円はないものと思え」と言われて・・・(笑)。父からは、「従業員の給料と、仕入れの支払い、家賃・光熱費の支払いだけは何があっても遅れるな」と念を押されて、この教えは今もしっかりと守っています。」という。

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両親や祖父の深い愛情を受けて、自分のやりたい料理の道を突き進んできた吉澤さんだが、2店舗となる「オー・ペシェ・グルマン」の時には、日本政策金融公庫の担当者に事業計画書を見せると、「もっと希望を持ってやった方がいい。夢がなさすぎるのでは」と忠告されるほど、慎重で欲のない事業計画だったそうだ。

開店後は、気軽に自分一人でも回せるカウンターがメインの店づくりを考えていた吉澤さんだが、大変さを見かねた短大時代の友人(橋本美澄さん)が手伝ってくれるようになった。「両親は『短大に行かせたのは無駄だった』と冗談を言いますが、短大に行かなければ彼女と知り合えなかった。そういう意味では、あのとき反対した両親にも感謝しています」と吉澤さんはいう。スタッフとのコミュニケーションで気疲れすることも多い、オーナーシェフの立場では、何でも話し合える友人がスタッフになってくれたことは心強い限りなのだ。

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写真左:スタッフ・橋本美澄さん、写真右:店主・吉澤美智子さん

開業4年目を迎えた今

「"レ・リヤン"は下北沢という場所柄、客層も若く、1回きりのお客さんも少なくありませんでした。ランチ・カフェ・ディナーの平均客単価は約3,000円。今のお店は、ディナーだけですが、都心に近い住宅街ということもあってリピートされる方が多く、ワインを飲みながらゆっくりと食事を楽しまれるので、客単価も5,000~6,000円に上がりましたね。」

開業当時は、経理はおろか、事務仕事すら一切やったことがなかったという吉澤さん。「以前は、お正月休みにまとめて1年分の伝票整理をしていましたが、この1年でようやくきちんと帳簿をつける余裕も出てきて、今年のお正月は10年目にして初めてゆっくり過ごすことができました(笑)。」「毎日帳簿をつけることで収支が見えるようになり、在庫があるのに仕入れてしまう、というようなムダもなくなりましたね」と話す。

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「独立して今年で10年目ですが、つくづく思うことは、いくら料理が上手でも、いくら情熱があっても、それだけでは店は営めないということです。今の店を出すにあたり、日本政策金融公庫から700万円借り受けましたが、借りられたのは保証人になってくれた父のおかげです。父も日本政策金融公庫からお金を借りて商売をしていたのですが、それを地道に返済していたことが信頼につながったんだと思います。今年で4年を迎えた今、借金もほとんどメドがつきました。」

最後に、これから独立・起業してお店を開業したいというような方や、特に女性に対して、何かアドバイスはありますか?と、尋ねてみると・・・、「最近では料理人を目指す女性も増えて、頼もしいなと思いますね。アドバイスするような立場ではないんですが、経験をふまえてお伝えすると、まず、お金はあるに越したことはないですね。それから、同じ道を歩む先輩や仲間の存在もありがたいものです。そういう意味で、外の世界にふれることも大切かなと思いますね。私は友達に会ったり、お芝居を観たりすることが好きなのですが、料理ばかにはならず、他の趣味をもったりすると、料理のインスピレーションが湧いたり、お客さんとの会話が広がったりと、結局は仕事に返ってくるのではないでしょうか。」

オー・ペシェ・グルマン吉澤美智子(よしざわみちこ)

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1976年、東京都生まれ。短大卒業後、「エコール辻 東京」を経て、辻調グループフランス校で学び、フランスの三ツ星でも修業も経験。2004年、東京・下北沢に期限付きで「レ・リヤン」をオープン。作家・よしもとばなな氏が作品の舞台として描き、話題に。閉店後1年間休業し、2010年5月に「オー・ペシェ・グルマン」を東京・笹塚にオープン。一人客から家族連れまで、幅広い客層に愛されている。

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この記事の執筆者

未乙 りえ
未乙 りえ

大学卒業後、外資系アパレル、出版社勤務を経て2004年よりフリーに。女性誌やPR誌、Web媒体を中心に、企画・編集・執筆に携わる。ファッション、コスメ、グルメ、医療・介護、キャリア、生き方と幅広く取材をおこなっている。

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