BFI 安田佳生氏「私、もう一度社長になりました。」

2015/07/30

BFI 安田佳生氏「私、もう一度社長になりました。」

当時では画期的だった中小企業への新卒採用支援を行い、一時は就職人気ランキング最高17位となったワイキューブ。同社の社長だった安田佳生氏も『採用の超プロが教える できる人できない人』(サンマーク出版)、『千円札は拾うな。』(同)など数々のベストセラーを執筆し、人材業界では知らぬ人はいないほどの知名度だった。そんな同社が40億の負債を抱え倒産したのは、東日本大震災直後の2011年3月。それから4年。安田氏が新たに取り組む“ゲリラブランディング”と、ワイキューブ倒産から今日までを聞いた。


給料5000万円。自分の給料を上げ過ぎたことが、すべてのはじまりだった。

――ワイキューブ倒産後に上梓された『私、社長ではなくなりました。』(プレジデント社)には、倒産に至るまでの経緯が赤裸々につづられ衝撃的でした。現在、改めて当時を振り返り、なぜ倒産したと思いますか?

倒産の直接的な原因でいえばリーマンショックで売上が3分の1に落ち込んだことと、社員の給料を上げ過ぎたことです。平均430万円の給料を2年間で800万円にまで引き上げましたから。

しかも、その給料は銀行からの借入で払っていました。当時60億円あった借入金のうち、20億円を社員の給料として配ってしまったんですよ。入社2年目以降なら出張時、新幹線はグリーン車、高級ホテルなどの待遇もありました。「社員の待遇をとことん良くすれば、自然と良い人材が集まり業績が上がる」とさまざまな取り組みもしていました。

でも、よくよく当時のことを振り返ってみると、そうした取り組みをした本当の理由は、自分だけ突出した好待遇なのが嫌だったからなんです。グリーン車にも乗りたいし、いいホテルにも泊まりたかった。
ワイキューブ時代、私の給料は最高で5000万円。この金額が正直、どこか後ろめたかったんです。それを打ち消すために、他の役員や社員の給料を上げてしまった。自分の給料を下げれば良かったんですよね。倒産は、自分自身が実力以上の報酬を受け取っていたことがすべてのはじまりだったと、今では考えています。

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――当時、社員専用のバー、パティシエ、バリスタを雇うなどの奇抜な福利厚生制度も話題でした。

あれは、メディアに取り上げてもらうためのブランディング対策でもありました。当時、広告費やDMに1億円近い費用をかけていたので、営業経費をかけずにお客さんが来てくれる仕組みを作りたかったんです。
その費用対効果は非常に大きかったですよ。年間の問い合わせが60件程度だったのが、一気に1万件に増え「お客さんがオフィスを見たい」と来てくれる。こちらから営業に行けば移動時間も交通費もかかるうえ、商談は1日2件程度だったのが、効率よく打ち合わせできるようになりました。

――その効果もあって、中小企業としては異例の就職人気企業ランキング入りを果たしたものの、倒産。当時はどんな心境でしたか?

法的な手続きは一瞬ですが、その前後は本当にきつかったですね。会社をつぶさないために銀行を駆けずり回り、なんとか社員の給料を払うということを3年ぐらい繰り返していましたから。自分が倒れると全てが終わってしまうので、風邪も引けないし鬱にもなれない。

民事再生ののち、新たに設立したカケハシスカイソリューションズに事業譲渡したあとも、その会社が軌道に乗るまでは1年間顧問として手伝いました。働くオフィスも従業員も顧客もそれまでと一緒。会社の看板と社長だけが変わった状態です。

徐々に、経営方針も私のやり方とは違い、新しいものになっていく。その方針に惹かれる社員が新たに入社し、ワイキューブ時代の方針を振り払いきれなかった社員は退職をしていきました。そうやって、本当の意味で「私の会社ではない」と心が理解するまで、それなりの時間が必要でした。

自分の感覚が「社長」でなくなるには3年近くかかりましたね。金銭感覚も仕事の感覚も狂っていましたし。民事再生までの疲れも思いのほか溜まっていて、一時期は仕事のやる気も起こらなくなっていました。社長って、人に頼り切って生きているので自分では何もできないんですよ。

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――しばらくは「もう社長はやらない」と一人で事業展開をしていたんですよね?

そうです。安田佳生事務所を立ち上げ、しばらくは一人で働いていました。このとき社長時代の給料5000万円を稼いで、あれが自分の実力だったと証明しようとがむしゃらに働いたんですよ。
でも、どんなに頑張っても2000万円ぐらいまでしか稼げなかった。「やっぱり、搾取していたんだ」と認めざるを得なかったですね。実際、稼いでいたのは社員だったんです。

3年半ほど一人で頑張って、気楽ではあるんですがやはり淋しくもありました。そんなときに「一緒に働きたい」「一緒にやりましょう」と言ってくれる人たちがいたのは、本当にうれしかったですね。

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この記事の執筆者

玉寄麻衣
玉寄麻衣

1979年生まれ。立命館大学政策科学部卒業。外資系大手人材派遣・人材紹介会社で、営業として主に中小企業の人材採用をサポート。2004年フリーランスのライターとなり、人材採用、人材育成、大学教育、広報・PR、企業経営等に関する取材・執筆を行う。

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