中小企業の広報ってどうすればいいの?PRの超プロに聞いてみた

公開日:

執筆者:小田部仁

中小企業の広報ってどうすればいいの?PRの超プロに聞いてみた

PRや広告、あるいは自社のブランディングの施策を考える際、ノウハウのない中小企業の担当者は手段が目的化してしまったり、テクニックに走ったりしてしまいがちです。本当に効果のある、ゴールの見えるPR施策を行うためにはどうすればよいのか? アップルのコミュニケーションマネージャー、日本マクドナルドのマーケティングPR部長などを歴任し、現在は戦略PRのエキスパートとして活躍する、コミュニケーション・プロデューサーの片岡英彦さんにその秘訣についてお話を伺いました。



――本日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。これまで片岡さんは、数多くのクライアントのPR案件を手がけてこられていると思うんですが、そういった経験の中から中小企業がPRやコミュニケーションデザインを考えていく上で、陥りやすい失敗とかやりがちな間違いについて教えていただければと思うのですが。

一番多いのは、「マーケティングについて相談したい」と言われてお話を伺ってみたら、実際は必ずしもマーケティングが課題ではなかったっていうパターンですね。経営戦略に課題があったりとか、PRだったりとか。もしくは、もっと細かいことで、たとえばWebサイトのデザインを見直したいであるとか。

――そもそもの話として、何が問題なのか、きちんと整理をしないと本来解決したいことの相談まで辿りつかないということでしょうか?

まさにそうですね。問題を解決するために何が必要なのかをきちんと整理することが必要です。広報やPRって、メディアへの露出を筆頭に、ある一部分だけを取り上げて問題にされることが多いですが、本来はもっと広い。そもそも、PRしたい商品が自社において、あるいは業界においてどういう位置付けなのか。強みや弱みは何なのか。根っこの部分から考えると、経営や人事の改革から始めなければいけないかもしれません。

02_1602170002.jpg

――片岡さんは90年代からコミュニケーション・プロデューサーとしてキャリアをスタートされていますが、PRに関する混乱した状況というのは時代が進むにつれ増えてきているという認識はありますか?

さまざまなことが複雑になってきているんだと思いますね。昭和の頃は経済全体のパイが成長していたから、中小企業はシェアトップの企業がやっていることを真似していればよかった。ただ、今はそういうやり方も通用しなくなってきていて、3年前に立ち上げたビジネスモデルが容易に時代遅れになりうる。そういうスピード感だからこそ、PR施策が必要になった時は一回状況を整理して、今、何が会社にとって、あるいは商品にとって必要なのかっていうことを考え直さなきゃいけないんです。僕がよく言うのは、何を目的としてPRするのかということをきちんと考えないとダメだということです。

――例えば、「自社の商品をメディアに露出したい」ということが目的だとしたら、PR担当者はどのように考えればいいんでしょうか?

PRの前に経営戦略として、そのメディア露出がどのような意味を持つのか整理することが大事です。それが前提にないと、「あぁ、WBS(ワールド・ビジネス・サテライト)に取り上げてもらわないと......どうしたら露出できるんだろう......」なんて頭を抱えがち(笑)。でも、WBSはアウトプットの手段のひとつであって、じゃあNHKじゃいけないのか? と追求してみると、特にWBSに固執する必要はなかったりする。そもそも、何でメディアに露出したいんですかね? 知名度を上げたいのか、ブランディングをしたいのか、販売数を増やしたいのか......いろんな理由があるとは思うんですが、まずは目的から考える必要があります。

――目的を出発点とすることが意外と難しいことが分かりました。とは言え、広報活動をしていく上で、メディアでの話題作りを求められて苦悩する担当者も少なくないと思います。そして、露出が容易ではない商品をPRせざるを得ない時も往々にしてあると思うのですが、そういう時はどうすればよいでしょうか。

まず結論から言うと、難しさは媒体によるんですね。新聞に載せるのと、テレビに載せるのではノウハウが全く違うので。テレビの中でも、NHKの朝のニュースと、深夜のテレビ東京のバラエティ番組で紹介されるのはこれまた全然違う。すぐに人脈うんぬんを気にする人もいますが、その前に、商品のプレスリリースをそのままNHKに持っていったところで、載るわけがないんです。NHKは「商品宣伝」はしませんから。でも結構な確率で、無駄なことをやっている人が多い。

では、どのように差異をつけるかというと、父の日でも大晦日でもかまいませんが、そういった季節のイベントですとか社会的に起こっている大きなムーブメントなどに自社の商品を絡められないか?あるいは社会にとって役に立つこと、誰かにとってちょっとしたお得になることはないか と考えます。

03_1602170018.jpg

例えば、【熱燗が冷めにくい何らかの方法】を考案したとします。それをテレビの19時台とかのゴールデン・タイムにクイズ番組で取り上げてもらいたいとします。テレビのプロデューサーの感覚だと、それは取り上げにくいんですよ。日本酒って普通は家にいるお父さんしか飲まないから。ファミリーのネタじゃないから。そういう時は同じネタで、コーヒーでも冷めにくいのか、鍋でも冷めにくいのかを考えます。コーヒーや鍋の方が日本酒よりは関心を持つ層は増えるじゃないですか。映像も大人数で食べる鍋のほうが日本酒やコーヒーよりもいい。そうやって、媒体に応じて切り口や見せ方を考えていくということです。

――PRの手段として、未だにプレスリリースのみに頼っている会社も多いと思いますが、この状況を打破したいと思っていながらもなかなかできないという会社にアドバイスはありますか?

古いタイプの広報の方って、情報を発信するときにプレスリリースをとかく書きたがるんですよね。悪くはないのですが、リリースしてあとは祈るのみになってしまう。あるいは知り合いのメディア担当者に「お願い」するしかなくなってしまう。だから社内的にもこれまで広報部って何をやっているのかわからない部署だと思われていると思うんですよね。でも、いまは自社のWebでできることも増えてきて、やれることはどんどん幅広くなってきている。だからこそ、「お祈り」や「お願い」にとどまらない、戦略や企画を考える資質が必要になってきていると思います。

あとはUSP(Unique Selling Proposition)、つまりその企業や商品の「独自のウリ」を考えることですね。これは単に商品の特徴のことを言っているわけじゃなくて、どう売り出すか。その「決め」に社会的なニーズがあるか? 隙間があるか? そうしたことを徹底的に考えなければいけません。

例えば、僕のUSPは「TVなどのマスメディアだけでなく、ネットとSNSもわかる」「PR・パブリシティだけでなく、純広告やタイアップ広告のこともわかる。」だから、小さい会社の方で、大きな代理店や複数のPR会社やクリエイティブエージェンシーとの付き合いがなくても、僕に言ってくれれば大抵の相談には乗れますよという顧客への「約束」こと。ドミノ・ピザさんが、日本で初めて宅配ピザを始めたときのUSPは「30分以内にお届けできなければ商品代を返す」です。あれって他社が真似することは可能ですよね。でも、あえてそこを強く顧客にコミットして売りにする。そうすると、ドミノ・ピザのイメージが強くなるじゃないですか。その強いコミットが、できるかできないかの覚悟の問題です。

04_1602170007.jpg

――そのUSPを定めるには、会社で当たり前のようにやっていることにしたほうがいいのか、それとも、新たに作ったほうがいいのか。どっちがいいんでしょうか?

確実に約束できること」がいいと思います。
その約束は他社がまだやっていないことにしたほうがいいと思います。他ができないことを最初に打ち出すと、真似できないんですよ。「表現」のパクリになっちゃうから。よほど規模の差があって体力が違う企業でなければ、よいアイデアは最初に打ち出したもの勝ちです。

――最後に、広報やPRのコミュニケーション活動の経験が無い担当者にオススメの本があれば教えてください

語弊があるかもしれないですが、本から学べるのは過去のことじゃないですか。しかも買えば誰でも読めちゃうじゃないですか。それよりも自分の会社の周辺のあまり知られていないことをもっと知った方がいいと思います。例えば先日、日本人の少女がスターウォーズのテーマ曲をエレクトーンで演奏するYouTube動画が「一人オーケストラだ!」と話題になったんです。僕がもしスターウォーズの広報担当者だったら、これをPRに使うかもしれない。そういうファクトを社内外から偶然でもいいので、目ざとく見つけてきて、うまく活かすことができるかどうか。自分の会社のUSPにどこまで敏感になれるかどうかが大事だと思います。

片岡英彦かたおかひでひこ
kataoka_sama.jpg

1970年東京生まれ。神奈川育ち。日本テレビで、報道記者、宣伝プロデューサーを務めた後、アップルのコミュニケーションマネージャー、MTV広報部長、日本マクドナルド・マーケティングPR部長、ミクシィのエグゼクティブ・プロデューサーを経て、片岡英彦事務所(現:株式会社東京片岡英彦事務所)設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。フランス・パリに本部を持つ国際NGO「世界の医療団」の広報責任者就任。戦略PR、企業の長期的なブランディング支援、新規事業企画が専門。東北芸術工科大学 広報部長/企画構想学科 准教授。東京ウーマン編集長。

株式会社東京片岡英彦事務所
http://www.kataokahidehiko.com/
東京ウーマン
https://www.tokyo-woman.net/

  • 青色申告オンライン
  • 白色申告オンライン
  • 【PR】 1分でキレイな請求書を作成 「Misoca」 -今すぐ無料でお試し-
  • マイナンバーも年末調整も弥生給与
  • 会計オンライン
  • 確定申告まとめ

閉じる

【PR】 1分でキレイな請求書を作成 「Misoca」 -今すぐ無料でお試し- 白色申告オンライン 青色申告オンライン 会計オンライン 弥生給与

この記事の執筆者

小田部仁
小田部仁

ライター、編集者。平成元年、東京都生まれ。太田出版『Quick Japan』編集部を経て独立。2015年はライティング・編集の仕事以外にも、映画やイベントへの出演など活動の場を広げている。

この執筆者の他の記事を見る