随時改定について〜月額変更届を提出するとき〜

最終更新日: 公開日:2016/07/28

執筆者:宮田 享子(社会保険労務士)

随時改定について〜月額変更届を提出するとき〜

今回は、社会保険の「月額変更届」についてのお話です。被保険者の報酬が、大幅に変わったときは、次の定時決定を待たずに標準報酬月額を改定します。これを随時改定と言い、「月額変更届」を提出します。一般的には「月変(ゲッペン)」と呼ばれています。「標準報酬月額」とは何か? については過去の記事「【社会保険】算定基礎届の時期に残業すると損?算定基礎届とは何か?」をご覧ください。


POINT
  • 「定時決定(算定)」とは違って、いつあってもおかしくない
  • 月変に該当するときは、要件を満たした場合のみ
  • 月変もれを防ぐために、給与ソフトにチェックを任せると便利

月変とは、なにか?

月々の給与から控除する社会保険料の計算もとになる「標準報酬月額」は、毎月の給与を支給するたびに標準報酬月額を決めるわけではありません。事務処理の負担を軽減するため、入社をして社会保険に加入した時に決定した後は、年に1回「算定」により毎年見直すことになっています。つまり、基本的に「なにごともなければ標準報酬月額をチェックするのは年に1回の算定のとき」となります。
でも「なにかあった場合」、例えば「年の途中に給与額が変わった場合」は、次の算定決定時期(4月~6月)まで放置するわけにはいきません。
なにしろ「算定の時に高い給与額だった人は、年の途中で給与額が下がっても、そのまま次の算定で変更されるまで高い社会保険料を支払い続ける」ことになってしまうのです。
そのため、給与額に変更があった場合には、変更後の給与額に見合った標準報酬月額であるかどうかを確認し、標準報酬月額を変更する必要があれば「月額変更届」を提出することになります。この手続きを「月変」と言います。

給与額が変わった人は全て月変?

そうは言っても、給与額が少しでも変わったからといっても、該当者全員の月額変更届をそのたびに提出するのはあまりにも大変です。そこで、いくつかの要件を決め、その要件にすべて当てはまった時だけ月額変更届を提出することになっています。

月変に該当する要件は以下のとおりです。

①. 固定的賃金(基本給、通期手当、家族手当など毎月固定額で支給されるもの)が変わった
②. ①の賃金が支給された月を含む3ヶ月間の「報酬支払基礎日数」(月給制の場合は支払対象期間の歴日数)がすべて17日以上ある
③. 3ヶ月間の平均給与月額から求めた標準報酬月額の等級が、現在の等級と比べて2等級以上変わった
④. ③で等級の比較をするときに、次の(1)(2)のどちらかに該当する場合
 (1)固定的賃金が上がり(↑)、2等級以上上がった(↑)
 (2)固定的賃金が下がり(↓)、2等級以上下がった(↓)

つまり、固定的賃金と等級の変化の矢印の向きが同じであることが必要です。

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固定的賃金だけの差ではない

ここでひとつ、注意点があります。③で3ヶ月間の平均給与額を算出する際には基本給だけではなく残業手当なども含んだ「総支給額」をもとにします。その結果、2等級以上変わったかで判断するので、固定的賃金だけの差ではないのです。
極端な例で言うと、従業員Aさんの通期手当の額が5,000円から4,900円へ、100円だけ安くなったとしましょう。その100円の差額だけで等級を見るわけではなく、その差額100円以外に残業代が増加したことで、2階級の差が生じることもあるのです。ですから、固定的賃金のわずかな変化でも月変に該当する可能性はあるということです。

月額変更届の提出と社会保険料の変更

さて、月変に該当したとわかったあとはどうしたら良いでしょうか。
図解の例で言うと、従業員Aさんは、8月の支払分から通勤手当が下がったことにより、11月の月変に該当しました。この場合は11月が「改定月」となり、11月分の社会保険料から変更になります。
月額変更届の提出は遅くとも11月中には済ませましょう。提出先は年金事務所(または健康保険組合)です。では、従業員Aさんの給与から控除する社会保険料はいつから変更すれば良いのでしょうか。社会保険料は通常、翌月に支払われる給与から控除することになっていますので、この場合は12/10支払いの給与の時ですね。ご本人にはそのお知らせも必要です。給与明細書に標準報酬月額の変更による社会保険料の変更を知らせる通知(書)などを入れておく会社が多いようです。

月額変更届の提出もれを防ごう

算定ならば年に1回のイベントとして忘れることはないでしょう。6月に入れば年金事務所(または健康保険組合)から用紙が送られてくるので気づくこともできます。
しかし月変は、該当者が出た時のみ不定期に行われ、特定時期に発生するわけではありません。人事総務担当者は年中、「月変該当者はいないか?」と気にしていなくてはなりません。実は「月変の提出もれ」は意外にあるのです。
ではどのようにして「月変の提出もれ」を防ぐのでしょうか。まずは月変該当の要件①を日ごろから気にかけておくことでしょう。固定的賃金が変わった人が現れたら、すぐ「月変に該当するかも?」と注意するようにしてください。前述の従業員Aさんのように「引越しをして通勤手当が変わった」という例の他に「昇給して基本給が上がった」「結婚して家族手当が支給されるようになった」「正社員からパートに変わった為、月給制から時給制になった」「転勤など勤務地が変更になった」「産休に入った」などさまざまなケースがあります。

これらは、住所変更届や被扶養者異動届など、社会保険の手続きともリンクしていますから、その都度注意する習慣づけをすることが大切です。
また、給与計算ソフトを使っている場合は「固定的賃金」「非固定的賃金」の設定をし、額の変更があった時に入力をしておけば、毎月の給与計算の際に月変該当者を自動で判定してくれるものもあるので、とても便利です。

まとめ

算定と同様、月変も「標準報酬月額」を決める大切な手続きです。正しい保険料、正しい年金額を計算するもとになりますので、間違いやもれの無いようにすることが求められます。従業員の人数や異動件数が多いほど、月変提出の可能性は高くなります。毎月の給与計算のたびに月変該当者の有無を確認することを習慣づけることもミスを防ぐ方法のひとつです。

【編集部追記】
平成30年(2018年)3月1日 厚生労働省より「健康保険法及び厚生年金保険法における標準報酬月額の定時決定及び随時改定の取扱いについて」の一部改正について(平成30年保発0301第8号・年管発0301第1号)」という通知が公表されました。

標準報酬月額の随時改定に当たって、現行の随時改定による報酬の月平均額と、年間の報酬の月平均額とが著しく乖離する場合に配慮して、 業務の性質上、季節的に報酬が変動することにより、通常の方法によって随時改定を行うことが著しく不当であると認められる場合について、新たに保険者算定の対象とするものです。 

平成30年(2018年)10月1日施行、平成30年(2018年)10月1日以降の随時改定から適用となります。
本内容については、後日スモビバ!で、宮田先生の執筆により解説記事を公開予定です。

【参考】
厚生労働省:「健康保険法及び厚生年金保険法における標準報酬月額の定時決定及び随時改定の取扱いについて」の一部改正に伴う事務処理について」に関するQ&Aについて〔健康保険法〕

(2018年7月2日 執筆者:宮田先生監修のうえ、『スモビバ!』編集部追記)

photo:Thinkstock / Getty Images

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この記事の執筆者

宮田 享子(社会保険労務士)
宮田 享子(社会保険労務士)

宮田享子(みやたきょうこ)
社会保険労務士。産業カウンセラー。
社労士法人・税理士法人等で実務経験を積んだ後平成22年独立開業。労務相談の他、講師業やメンタルヘルス対策に力を入れている。趣味はオーボエ演奏とランニング。
みやた社労士事務所HP

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