白色申告で経費計上できるものは?注意点も併せて解説

2023/11/13更新

この記事の監修齋藤一生(税理士)

白色申告では、事業に利用した支払いを経費として計上することが可能です。所得税の計算は売上から経費を引いて行いますから、経費を漏れなく計上することで節税につながります。

本記事では、白色申告で経費計上できる支出の種類や具体例の他、経費計上するうえでの注意点などを解説します。インボイス制度や電子帳簿保存法の開始後の経費に関する対応についても、併せて見ていきましょう。

経費とは事業を行ううえで必要な支出

経費とは、事業を行ううえで支出した費用を指す言葉です。例えば、商品を仕入れて販売している事業者の場合、商品を販売するために、まず仕入れをしなければいけません。

また、販売するための店舗や宣伝なども必要です。仕入代金や店舗家賃、宣伝広告費などは、すべて事業を営むうえで必要な経費に該当します。

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白色申告で使える経費

経費として申告できるのは、事業のために支出した金額のみです。これは、白色申告でも青色申告でも副業の場合でも変わりません。

売上を上げるために必要な仕入れにかかる費用をはじめ、前述した店舗家賃や宣伝広告費以外にも、業務で利用した文房具代、切手代、通信費なども経費として計上できます。

しかし、友人に手紙を送るために使用した切手代や、プライベートで連絡をしているスマートフォンの通信費などは事業に関係ない費用なので、事業の経費にすることはできません。

白色申告に使える経費の例

経費といっても、業務によってその内容はさまざまです。白色申告で経費として計上できる一般的な項目には、下記のようなものがあります。

一般的な経費の例
項目 具体例
給料賃金 従業員の給料、賃金、退職金、食事や被服などの現物給与
外注工賃 修理加工などで外部に注文して支払った場合の加工費など ※建設業を営んでいる人などの外注費も含まれる
減価償却費 建物、機械、船舶、車両、器具備品などの償却費
※取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、その使用した年以後3年間の各年分において、その減価償却資産の全部または特定の一部を一括し、一括した減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1の金額を経費にすることができる
貸倒金 売掛金、受取手形、貸付金などの貸倒損失
地代家賃 店舗、工場、倉庫などの敷地の地代や店舗、工場、倉庫などを借りている場合の家賃など
利子割引料 事業用資金の借入金の利子や受取手形の割引料など
租税公課 ・税込経理方式による消費税および地方消費税の納付税額、事業税、固定資産税、自動車税、不動産取得税、登録免許税、印紙税などの税金
・商工会議所、商工会、協同組合、同業者組合、商店会、青色申告会などの会費や組合費
※所得税及び復興特別所得税、相続税、贈与税、住民税、国民健康保険料、国民年金の保険料、国税の延滞税・加算税・過怠税、地方税の延滞金・加算金、罰金、科料、交通反則金などは経費にならない
荷造運賃 販売商品の包装材料費、荷造りのための費用、運賃
水道光熱費 水道料、電気代、ガス代、プロパンガスや灯油などの購入費
旅費交通費 電車賃、バス代、タクシー代、宿泊代
通信費 電話料、切手代、電報代、インターネット接続料
広告宣伝費 ・新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどの広告費用、チラシ、折り込み広告の費用
・広告用名入りライター、カレンダー、手ぬぐいなどの費用
・ショーウインドウの陳列装飾のための費用
接待交際費 ・取引先などを接待する茶菓飲食代
・取引先などを旅行、観劇などに招待する費用
・取引先などに対する中元、歳暮の費用
損害保険料 火災保険料、自動車の損害保険料
修繕費 店舗、自動車、機械、器具備品などの修理代 ※資産の価額を増したり、使用可能期間を延長したりするような支出は、原則として資本的支出として計上する。その場合、減価償却資産を取得したものとして、減価償却を行う
消耗品費 ・帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの消耗品費
・使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費
※取得価額が10万円未満であるかどうかは、税込経理方式または税抜経理方式に応じ、その適用している方式により算出した金額による
福利厚生費 ・従業員の慰安、医療、衛生、保健などのために事業主が支出した費用
・事業主が負担すべき従業員の健康保険、厚生年金、雇用保険などの保険料や掛金
繰延資産の償却費 開業費や開発費、共同的施設の負担金や建物を賃借するための権利金などの償却費
固定資産等の消失 事業用固定資産や繰延資産の施設の取り壊しや災害による滅失などの場合の損失
雑費 事業上の費用で他の経費にあてはまらない経費

なお、上記は帳簿に記帳する際の、勘定科目ごとに経費の例を挙げたものです。事業の内容によっては、これ以外の勘定科目を利用して経費計上することもできます。しかし、事業に利用したもの以外を経費計上することはできません。

また、年によって勘定科目の分類を安易に変えたり、内容がわからない勘定科目を利用したりすることは避けましょう。

白色申告の経費にできないもの

白色申告では、「事業者自身や親族へ給与を支払って経費にする」という処理が認められていません。給与は事業に必要な支出のようにも思えますが、白色申告を行う事業主は法人ではないため、自分自身に給与を支払うことはありません。また、事業に従事する配偶者や親族に対して給与を支払って経費にすることもできないのです。

ただし、配偶者や親族以外の人を従業員として雇用したり、臨時のアルバイトを依頼して給料を支払ったりした場合は、全額を経費として計上できます。

白色申告の場合で下記の要件を満たす配偶者や親族が事業を手伝った場合は、事業専従者控除という控除を利用できます。事業専従者控除は経費として計上はできませんが、要件を満たしている家族に事業を手伝ってもらっている場合には、節税につながるので忘れずに申告することが大切です。

事業専従者控除の要件

  • 白色申告事業者と生計を一にしている配偶者か親族
  • 申告する年の12月31日時点で15歳以上
  • 1年間のうち6か月以上該当の事業に専従している

事業専従者控除の金額

  • 配偶者:86万円
  • 親族:50万円(一人あたり)

上記のとおり、事業専従者控除は配偶者か、配偶者以外の親族かで控除額が異なりますが、「事業専従者控除を適用する前の事業所得÷(専従者の人数+1)」が上記よりも少ない場合は、計算結果が控除額になります。

なお、青色申告の事業主も、事業主自身に給与を支払って経費として計上することはできません。一方、配偶者や親族に給与を支払った場合は、一定の要件を満たすことで「青色事業専従者給与」として経費計上が可能です。

事業専従者控除についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

事業専従者控除とは?白色申告者が適用できる控除について解説

白色申告で経費を計算する際の注意点

白色申告で経費を計算する際には、知っておきたいことや注意しておかなければいけないこともあります。白色申告の経費処理を正しく行うために、下記の4点には気を付けましょう。

経費に上限はない

白色申告の経費に上限はありません。ただし、事業にかかる経費には上限はありませんが、売上に対して経費が大きすぎると税務調査が入る可能性があります。例えば、白色申告の事業所得200万円の事業者が、接待交際費として100万円を計上しようとした場合、「本当にそのお金が事業に必要だったのか」と疑念を抱かれ、税務署から内訳を調査される可能性があります。

あくまでも、該当の事業に必要な金額だけが経費として認められる点に注意しましょう。

レシートや領収書は保存しておく

商品の仕入れや備品の購入などの際に受け取ったレシートや領収書は、紛失しないように注意しなければいけません。レシートや領収書がない支出に関しては出金伝票を作成することで経費として計上することも可能ですが、だからといって出金伝票で処理ばかりしていると、経費計上の信頼性が損なわれてしまいます。

10万円以上の備品などは一括で計上できない

10万円以上の備品を購入した場合は、原則として減価償却する必要があります。一括で、その年の経費にすることはできません。

ただし、10万円以上20万円未満の減価償却資産は、一般的な減価償却ではなく、取得価額の合計額を3年間で均等償却できる、一括償却資産という制度を利用することもできます。

家賃や光熱費は家事按分できる場合がある

自宅を事業に利用していた場合、家賃や光熱費を家事按分して一部を経費計上できる可能性があります。

例えば、自宅の1室を事務所として利用しており、その面積が部屋全体の30%だった場合、家賃の30%を経費として計上可能です。同様に、事業で利用するパソコンの通信費や光熱費などについても、事業で使用した分を按分して経費にできます。

一方で、家族の持ち家を使って家族に家賃を支払っていた場合は、経費計上できません。家のローンの元本返済部分も同様です。家の取得費用の一部を減価償却費として計上することは可能です。10%超を事業用とする場合には、その部分に対しては住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)が利用できなくなります。

なお、按分の割合は事実に即して事業主が決めることになりますが、実際に使用している時間や面積をもとに決めるのが確実です。家事按分で経費計上する場合は、税務署からの調査が入った場合に根拠を示せる妥当な割合を算出しておくことをおすすめします。

インボイス制度における領収書・レシートの取り扱い

2023年10月から、インボイス制度がスタートしました。白色申告事業者であっても、インボイス制度に対応する場合は制度の仕組みを知っておく必要があるでしょう。

課税事業者は、インボイス制度導入後、原則として適格請求書(インボイス)以外の請求書などを受領して適切に保存していないと仕入税額控除が受けられません。これは、インボイス制度の開始で適格請求書(インボイス)発行事業者になった場合も同様です。ただし、一定期間については免税事業者からの仕入れについてインボイスがなくても、一定割合を仕入税額控除ができる軽減措置期間があります。

なお、基準期間の課税売上高が1億円、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについて、要件を満たす内容を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除を受けられます。これを少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)と呼びます。また、買手側が簡易課税制度を選択している場合は、インボイスの有無にかかわらず、仕入税額控除が可能です。

書類の保存期間についても変更があります。インボイス制度に伴って課税事業者になったり、もともと課税事業者の白色申告者は、適格請求書に該当する書類(請求書や領収書やレシートなど)を発行・受領共に7年間保存しなければいけません。免税事業者であれば、保存期間は5年間です。

インボイス制度についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

インボイス制度とは?対象者や目的、対応方法をわかりやすく簡単に図解で解説

電子帳簿保存法における領収書・レシートの取り扱い

インボイス制度以外にも、領収書やレシートの取り扱いに注意したいのが電子帳簿保存法です。2022年1月からは改正電子帳簿保存法が施行されました。そのうち、電子取引のデータ保存については、2023年12月末には宥恕(猶予)期間が終わります。2024年1月1日以後の電子取引では、要件に従って電子データでの書類保存が完全義務化されます。

ここでは、電子帳簿保存法における領収書やレシートの形式ごとの保存方法を簡単にご紹介します。

請求書や領収書・レシートを電子取引で受領した場合

電子帳簿保存法では、領収書やレシートを電子的に受領した場合、電子データのまま保管しなければいけません。2024年1月からの完全義務化されます。

なお、保存を行う際は、正当な理由のない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定めて運用したり、一定の要件を満たすシステムなどを利用しなければいけません。また、一定の条件で検索ができるようにしておく必要もあります。

ただし、小規模な事業者の場合、税務署からの求めに応じてダウンロードできる体制を整えておくなど緩和措置もあります。

請求書や領収書・レシートを紙で受領した場合

紙で受け取った請求書や領収書やレシートは、そのまま紙で保管して構いません。対応したい場合は領収書などをスキャンしてスキャナ保存しても構いません。スキャナ保存をする場合は、一定の要件を満たす必要があります。

電子帳簿保存法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

電子帳簿保存法あんしんガイド

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この記事の監修者齋藤一生(税理士)

東京税理士会渋谷支部所属。1981年、神奈川県厚木市生まれ。明治大学商学部卒。

決算書作成、確定申告から、起業(独立開業・会社設立)、創業融資(制度融資など)、税務調査までサポート。特に副業関連の税務相談を得意としており、副業の確定申告、税金について解説した「副業起業塾 新規タブで開く」も運営しています。

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