税理士が教える「知っておきたいお金の話」【スモールビジネス】

2017/04/19

【個人事業主】税理士が教える「知っておきたいお金の話」【スモールビジネス】

「利益率はどれぐらいあればいい?」
「飲食店だったら、原価率は35%ぐらいが平均?」
「この業界の粗利率は?」
会社まわりの数字に関して、こういった質問を受けることがよくあります。まずはキッパリ断言しておきましょう。スモールビジネスの経営者の方々は、細かい“率”の話はこの際忘れてください。今回はスモールビジネス経営者にとってまず大事なのは“率”より“額”なのだ、ということを解説いたします。


POINT
  • スモールビジネスでは、まずは"率"より"額"に注目すべし!
  • 「粗利率」ばかりにこだわらない
  • スモールビジネスなら、財務分析をすることより、仕事のパイを増やすこと

原価率を気にしていたら、今の「鳥貴族」の成功はなかった!?

なぜか。たとえば、飲食店経営における基本指標のひとつに、FL比率と呼ばれるものがあります。
売上高に占める食材原価(Food)と人件費比率(Lavor)がどの程度かを示す指標で、

FL比率=(食材原価+人件費)÷売上高×100

で計算されます。

一般的に、FL比率が50%程度なら、利益がかなり出ている優良飲食店。FL比率が65%以上を超すと危険水域などと言われたりします。

ただし、コレにこだわりすぎるのはナンセンス。「ウチの店のFL比率は、どれぐらいかな」と計算してみるのはいいことだと思いますが、あくまでも目安のひとつでしかありません。
なぜなら、その率が適正なのか否かは、店および経営者が目指すもの、強みとするポイント、そして顧客との関係性で変わってくるからです。

もうひとつ、例を挙げましょう。同じく飲食店などの仕入れがある業種・業界の代表的な指標に「原価率」があります。
売上に対する原価の割合を示すもので、

原価率=仕入(原価)÷売上×100

で計算されます。

一般的に、飲食店であれば35%が目安と言われたりしますが、注意していただきたいのが、この計算式には店の立地、家賃が考慮されていないということです。
もし、家賃が安い立地であれば、原価率が多少上がっても、利益はねん出できるでしょう。立地が悪くても、「いい食材を使った美味しい料理で勝負したい」と考えるなら、原価率の平均なぞ気にする必要がないわけです。

実際、まさに"飛ぶ鳥落とす勢い"で成長した焼き鳥チェーン「鳥貴族」の第一号店は、「誰がなにをやっても流行らない」と言われるほどの三流立地だったといいます。
さらに、創業者の大倉忠司氏は、従来の焼き鳥店が1本25g、原価率28%前後で提供していたのに対し、「大きめの鶏肉を、店内で串打ちする」、さらに「250円均一」にこだわり、当時の原価率は48%にまで跳ね上がったといいます。

しかし、家賃が安価だったためになんとか経営を維持し、次第に「安くて美味しい」鳥貴族の評判は口コミで広がり、繁盛店に成長したのだとか。
【参考記事】東洋経済オンライン:「鳥貴族をつくった男」の知られざる悪戦苦闘

ここでもし、「焼き鳥の原価率は〇%じゃなければならない」という"常識"にこだわっていたら、今の成功はなかったかもしれません。

粗利率が優良でも、全然儲からない"落とし穴"とは?

もうひとつ、よく見聞きする指標に粗利率があります。

粗利とは、売上から売上原価を差し引いたもので、売上に占める粗利の割合を「粗利率」といいます。

事業そのものの力を表す大事な指標と言われますが、粗利率ばかりにこだわると、思わぬ落とし穴があるのです。
たとえば、飲食店で、粗利率が高いメニューばかりを頼み、しかも毎日2万円も使ってくれる上得意客がいたとします。
仮に粗利率80%とすると、利益率や客単価という側面から見ると、まさに優良店です。

しかし、もしその上得意客ひとりしか、お客が来なかったらどうでしょう?売上でみたら、2万円×30日として、60万円。
これでは、経営さえ成り立ちません。

そう、売上規模などが大きい大企業であれば、1%の違いが大きな差を生みますが、スモールビジネスが"率"にこだわる意味があまりないのは、スケールが小さい点にあります。

たとえば、消費税が5%から8%にアップした際でも、価格を据え置きし、逆に売上を伸ばした、いわゆる赤ちょうちん系飲食店のクライアントがいます。
もし客単価が万単位のような高級店であれば、3%の差は大きい。しかし、もし客単価が2,000円程度であれば、その差はわずか60円。ならば、価格は据え置いたままでも、多くの客が来てくれることを優先したほうが、業績アップが望めるわけです。 業績を上げるために、何で勝負するか。経営者の考え方次第で、価格戦略も変わってくるのです。

仕事のパイを増やさないことには、いくら財務分析をしても意味がない

私が会社まわりの数字を見ている際に注視しているのは、細かいポイントより、「儲かる仕組み」ができているか否か。
売上、利益が伸び、キャッシュが増えているか、です。
原価がほぼない業種であれば、売上が上がって、キャッシュが増えていれば問題なし。
仕入れがある業種ならば、売上と月末の残高をチェックしておけば大丈夫です。

そのためには、まずは「客数を増やす」「取引先を増やす」「売上個数を増やす」ことに注力すべきです。仕事のパイを増やさないことには、いくら財務分析をしても意味がないのです。

スモールビジネスで注視すべきは"率より額"。細かい数字を気にするのは、"儲かる仕組み"が軌道に乗ってから、と心得ましょう。

Photo:Getty Images

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この記事の執筆者

五島洋
五島洋

税理士、ファイナンシャルプランナー。150社以上もの顧問経験を武器に、顧客には会計業務以外の経営アドバイスも積極的に行っている。著書として『ゼロから始める会社の数字入門』(KADOKAWAメディアファクトリー)、『身の回りの税金がわかる』(西東社)、『あなたの「年金」がすぐわかる本』(PHP研究所)など。
・<中小企業>社長のための経営相談所
・五島洋税理士事務所

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