知らなきゃソン!? 飲食店の開業時に利用したいおトクな公的制度

公開日:

知らなきゃソン!? 飲食店の開業時に利用したいおトクな公的制度

店舗を借りる際のコストをはじめ、調理用の機器や設備など、飲食店開業の際には、何かと初期投資がかさみがち。そんな時に、ぜひ味方につけたいのが、平成28年7月に施行された「中小企業等経営強化法」です。
これは、日本の企業の9割以上を占める中小企業の生産性向上を目的に、新たに設けられた支援措置。同法に基づいて「経営力向上計画」を策定し、担当省庁の認定を受けられると、
① 固定資産税が3年間半分に軽減(固定資産税の特例)
② 即時償却または最大で10%の税額控除が可能(中小企業経営強化税制(法人税・所得税))
の「税制措置」に加え、日本政策金融公庫などからの低利融資、信用保証協会による信用保証枠の拡大など、さまざまな「金融支援」を受けることができます。
それでは、こうしたおトクな特典を受けるための手続きの流れと諸条件の概要について解説していきましょう。


POINT
  • 支援措置を受けるためには「経営力向上計画」の策定が必要
  • 「固定資産税の特例」を受ければ固定資産税が半額に!
  • 中小企業・小規模事業者が、起業資金の融資を受ける際のルートは2つ

経営力向上計画をどう策定するか

人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や、設備投資等により、事業者の生産性を向上させるための計画で、具体的には、現状認識、経営力向上の目標、取り組み内容などを2枚の書式にまとめることになります。
その際、「事業分野別指針」が定められている事業の場合は、それに従った計画書を作成する必要があり、「外食・中食」はその指定業種となっています。

計画策定にあたっては、認定を受けた士業等の専門家、商工会議所、商工会などの「経営革新等支援機関」のサポートを受けることができます。
【参考】
中小企業庁:経営力向上設備等の対象範囲と「経営力向上計画」の申請様式が変わりました!
中小企業庁:事業分野別指針及び基本方針
中小企業庁:外食・中食産業に係る経営力向上に関する指針

固定資産税が半額に! 「固定資産税の特例」の諸条件について

計画書を策定したら、事業分野ごとの担当省庁に提出し、認定を受けることになりますが(申請から認定までの標準処理期間は30日)、それぞれの優遇措置の諸条件や注意点について見ていきましょう。
まず、共通事項は以下の2つです。

・事業者の条件
資本金1億円以下の会社、個人事業者などの中小事業者等が条件です。

・適用期間
平成29年4月1日~平成31年3月31日まで。

・対象となる設備
一定の期間に新たに取得した設備について、生産性(生産効率、エネルギー効率など)が、旧モデルと比較して、年平均1%以上向上する設備であること。なお、「工業会等による証明書」(※設備メーカーを通じて、当該設備を担当する工業会等に証明書発行を申請、取得する)が必要になります。

また、設備の種類によって、最低金額、販売開始時期が異なります。
例として、飲食店で使用するような業務用冷蔵庫、冷蔵陳列棚などは器具備品として1台30万円以上で6年以内に販売開始されたもの、空調設備といった建物附属設備はそれぞれ60万円以上、14年以内となっています(その他、地域によっても諸条件が異なります)。

・設備の取得時期
経営力向上計画の認定後に取得することが原則です。例外として、設備取得後に計画を申請する場合、取得日から60日以内に計画が受理される必要があります。

即時償却OK!の「中小企業経営強化税制」の諸条件

青色申告書を提出する中小企業者等が、一定の設備について即時償却または取得価額の10%(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択し、適用できるものがあります。
ちょっとややこしいですが、「A類型:生産性向上設備」と「B類型:収益力強化設備」の2つの適用手続きがあります。

「A類型」は、「対象となる設備」の要件や、手続きも「固定資産税の特例」時とほぼ同じです。

「B類型」は、投資利益率が5%以上の投資計画に関わる設備で、その要件について工業会等ではなく、経済産業省から確認書を取得する必要があります。
さらに、事前に公認会計士または税理士に、投資計画案の確認依頼をし、事前確認書を発行してもらうことが必須です。

経営力向上計画の認定後に設備を取得し、事業をスタートすることが原則なのは、「固定資産税の特例」と同じです。

中小企業が金融機関から融資を受けるルートは2つに限定

また、冒頭で触れた「金融支援」の主な内容は以下のとおりです。

  • 日本政策金融公庫による低利融資(設備投資に必要な資金について、貸付金利引き下げなど)
  • 中小企業信用保険法の特例(経営力向上計画の実行にあたり、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大)

以上のような金融支援策が設けられていますが、この金融機関からの融資に関し、誤解されがちなポイントについて触れておくと、中小企業・小規模事業者が、起業資金の融資を受ける際のルートは「2つに限られる」ということです。
それが、先の金融支援策にも挙げられた

  • 日本政策金融公庫
  • 民間の金融機関の保証付融資

です。

日本政策金融公庫は、政府100%出資の政策金融機関であり、国の方針に沿って経済活性化のためのセーフティネット貸付や創業支援などを実施している点が、民間の金融機関との違いになります。

「保証付融資」とは、公的な保証人として信用保証協会が保証を行うとともに、借入主や返済不能になった際に、貸出をした銀行などの金融機関に対して、債務を弁済する融資になります。

信用保証協会とは、中小企業や個人事業主が金融機関から事業資金を調達する際に、保証人となって融資を受けやすくするために設立された公的機関です。
つまり、プロパー融資(銀行が直接貸し付けを行う)が受けられない新規開業時には、中小企業にとっては力強い味方でもありますが、注意点は信用保証協会の審査を通らなければ、どこの民間金融機関に行っても、融資を受けられないということです。

商工会や自治体が実施しているような開業支援においても、一部利子補助などの優遇があっても、その大半は民間金融機関の保証付融資であり、融資のルートは基本的に2つしかないというわけです。

よって、先のような金融支援策を受けるにしても、直接、銀行に融資を申し込むにしても、まずは"最初"が肝心。行き当たりばったりではダメで、しっかりと事業計画を練り、必要書類を揃えるなどの初動が大事です。

今回、ご紹介した「中小企業等経営強化法」を活用する際にも、申請から認定までには相応の時間がかかります。設備の購入は認定を受けてからになりますし、税理士・会計士などの確認が必要など、諸々の条件があります。

開業前には、「こんなこだわりの店にしたい」「メニューはどうしよう?」といったプランニングと同時に、開業後、売上に関係なくかかってくるコストや税負担を軽減するためにも、地に足を付けたお金の計算、諸手続きを計画的に実施しましょう。 「中小企業等経営強化法」の詳細や最新情報、申請書様式類などについては、以下のサイトも確認してみてください。
【参考】
中小企業庁:経営サポート「経営強化法による支援」

photo:Getty Images

  • 青色申告オンライン
  • 白色申告オンライン
  • 【PR】 1分でキレイな請求書を作成 「Misoca」 -今すぐ無料でお試し-
  • マイナンバーも年末調整も弥生給与
  • 会計オンライン

閉じる

【PR】 1分でキレイな請求書を作成 「Misoca」 -今すぐ無料でお試し- 白色申告オンライン 青色申告オンライン 会計オンライン 弥生給与

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事の執筆者

五島洋
五島洋

税理士、ファイナンシャルプランナー。150社以上もの顧問経験を武器に、顧客には会計業務以外の経営アドバイスも積極的に行っている。著書として『ゼロから始める会社の数字入門』(KADOKAWAメディアファクトリー)、『身の回りの税金がわかる』(西東社)、『あなたの「年金」がすぐわかる本』(PHP研究所)など。
・<中小企業>社長のための経営相談所
・五島洋税理士事務所

この執筆者の他の記事を見る