人見知りこそ本当は営業上手!? 『大人の人見知り』著者 清水栄司教授インタビュー

2017/09/06

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人見知りこそ本当は営業上手!? 『大人の人見知り』著者 清水栄司教授インタビュー

2017年6月発刊のある新書が話題になっています。ワニブックスから発売された『大人の人見知り』です。著者は、千葉大学大学院医学研究院(認知行動生理学)の清水栄司教授。清水教授は本著のなかで「大人の人見知り」(社交不安症の予備軍)について警鐘を鳴らすとともに、その反面「実は人見知りこそ、営業上手になりうる」と説いています。“大人の人見知り”とはどんな人を指すのか。そして、なぜ人見知りが営業上手になりうるのか——。千葉県千葉市の亥鼻キャンパス内にある千葉大学大学院医学研究院に伺い、お話をうかがいました。


大人は本来、人見知りにならない?

――まずは先生の著書のタイトルにもなっている「大人の人見知り」とはどういう人・状態のことを指すのか、教えていただけますか?

一般的に自分の性格を言い表すときに、日本人は「人見知り」という言葉を多用しますよね? 自己紹介のときに「私、人見知りで......」と自称する人もいるくらいです。でも実のところ「人見知り」はもともと医学的には「乳幼児」に対して使われる用語なのです。

乳幼児はいくら両親に懐いても、普段会う機会の少ない人や知らない人に会うと、怖がって泣いてしまうような行動を起こします。そもそもはこの現象のことを「人見知り」と言います。これは成長の一過程として普通に起こりえる現象なのです。

――その意味でいうと、本来「人見知り」は大人には使わない?

はい。ただ私がこの本で示したかったのは、本来子どもだけに使われていたはずの「人見知り」が、大人にも広く使われるようになっているということ。そして、実際に精神科医として私が「大人の人見知り」を「社交不安症の予備軍」としてとらえれば良いと考えるようになってきていることでした。

――「社交不安症」とは何でしょう? あまり聞き慣れない言葉ですが......。

アメリカでは「Social Anxiety Disorder(SAD)」と呼ばれています。

元来、日本には「対人恐怖症」という言葉がありました。1920年代、欧米よりも早い段階でこの対人恐怖症の症例が報告されますが、これは人前で何か話をしようとすると緊張してしまい、なかなか話すことができない----そうした方の心の病を指します。実はこれ、かつては欧米にはないと誤解されていた心の病だったのです。

しかし時代が経つにつれ、欧米でも似たような症例が報告されるようになり、新たにSADという言葉が生まれました。最近はその言葉がそのまま「社交不安症」と翻訳され、日本に逆輸入されるようなかたちで広まっています。

大人は本来、人見知りにならない?

社交不安症は「社交・対人の場面で不安が強くなる」

――社交不安症の具体的な症状はどのようなものですか?

社交の場で、非常に強い不安を覚え、動悸・赤面・発汗などの身体の反応を意識しすぎてしまい、学校や会社に行くのが苦痛であったり、休んだりするなど、日常生活に支障をきたすという症状です。我々医師は、この状態が6ヵ月以上続く状態を社交不安症と診断しますが、私は「6ヵ月とはいかないまでも、社交・対人の場面で不安が強くなる人」のことを社交不安症の予備軍、「大人の人見知り」だととらえています。

――社交不安症は増えているのでしょうか?

6ヵ月以上=社交不安症という定義がついたのは、比較的最近のことです。定義がつく前のアメリカの疫学調査では、生涯有病率(調査時点までにその病気にかかっている患者の割合)が12%という結果でしたが、日本ではそこまで高くはなかった。この日米の差は、基本的には問診で判断する調査ですから、本人が、日常機能に障害がないと回答して、社交不安症と認知されていないケースもなかにはあったでしょう。心の病の疫学調査の方法論から「増加している」データを示すのが難しい部分はありますが、認知される症例は増えていると思います。

現実的には、現代社会の人間関係は、例えば、打ち合わせでもなんでもメールやスマホでコミュニケーションを取り、面と向かって話したり、見知らぬ人と電話で話すような機会が減りましたよね? 今の時代、どうしても人見知りになりやすい環境があるにはあるのかなと、感覚的には感じています。

――社交不安症をわずらい病院に来る社会人は、どういうことにお困りで病院にやってくるのでしょう?

我々精神科医は「心の傷(トラウマ)」という表現を使いますが、人見知り傾向の人が大勢の前でひどいからかいを受けたり、いじめに近い体験をしたりすると、それが「心の傷」になって、本格的に社交不安症になってしまうといわれています。会社で人から「暗い」「目つきが悪い」と言われたとか――そういう言葉が「心の傷」になり。考え方や行動のパターンが不安を強めるような悪循環が始まってしまうケースが多くあります。また、学校などでの「心の傷」となるような体験から不登校になる場合も多いです。

ふだんの日常生活機能はよく保たれている社交不安症の人でも、人前での発表をしなければいけない状況が近づくと大きなストレスになります。たとえば、システムエンジニアならば、これまではプログラミングのような1人だけの作業に注力していればよかったものの、昇進してマネージャーになるとプレゼンや部下とのコミュニケーションの機会も増えるにつれ、段々と「つらい」という社交場面が増えることになるのです。

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この記事の執筆者

安田博勇
安田博勇

1977年生まれ。大学卒業後に就職した建設系企業で施工管理&建物管理に従事するも5年間勤めてから退職。出版・編集系の専門学校に通った後、2006年に都内の編集プロダクションに転職。以降いくつかのプロダクションに在籍しながら、企業系広報誌、雑誌、書籍等で、編集や執筆を担当する。現在、フリーランスとして活動中。

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