スモールビジネス経営者が知っておきたい"融資"の話――大野修平先生(公認会計士) インタビュー

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スモールビジネス経営者が知っておきたい“融資”の話——大野修平先生(公認会計士) インタビュー

スモールビジネス経営者のなかには「今は経営も安定しているし、資金調達なんて考えなくてもいいかな?」なんて安心している方も多いのではないでしょうか。会計事務所シンシアの公認会計士・税理士で、開業支援・融資支援なども得意とする大野修平先生は「2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目前に控えた“今”だからこそ、会社の生産性を向上させるための融資を受けよう!」と説いています。それはなぜなのか。大野先生にお話を伺いました。


資金調達、何を選べばいいの?

――ある程度の事業規模であれば別かもしれませんが、「スモールビジネス」と呼ばれる小規模事業の経営者、1人法人で活動されている方、あるいは私のような個人事業主は「資金調達」というものに関心が薄いと思います。そもそも資金調達にもいろいろな方法がありますよね?

そうですね。助成金・補助金・出資・融資などの方法があると思います。それぞれのメリット・デメリットを一覧にするとこんな感じでしょうか......。

資金調達方法メリットデメリット
助成金 ・ちゃんとやればほぼ100%もらえる
・返さなくてよい
・入金が遅い
補助金 ・返さなくてよい ・入金が遅い
・必ずもらえるとは限らない
出資 ・返さなくてよい ・経営権を握られるおそれがある
・後戻りができない
融資 ・入金が早い
・経営に口を出されない
・ピンチの時に助けてくれる可能性が高い
・元本を返済する必要がある
・利息を支払う必要がある

出資者(株主)を見つけなければいけない「出資」は別にしても、「返さなくてよい」ということから「助成金」「補助金」にわりあい人気が集まりやすいのです。ちなみにこの2つに明確な違いはないのですが、雇用関係助成金など、実行すればほぼ100%もらえるのが「助成金」。一定の予算の枠組みのなかで複数の企業が枠を取り合うのが「補助金」と思って頂ければ結構です。ともあれ、この2つに共通するのは「意外と入金が遅い」ということなんです。

例えば雇用関係助成金ならば、雇用促進計画を立て、その条件下で人を雇い、有期計画を満了し、申請を出してようやくもらえる......。2〜3ヵ月ではまず難しいといえるでしょう。その年度内の決まったタイミングでしか公開されないものも多いですし、助成金・補助金だけをあてにしていては経営戦略なんてまず立てられません。

大野修平先生

これらに対し「融資」はいつでも受けらます。しかも入金までそれほど時間がかかることもない。きちんと返済できることを証明できるのであれば、早ければ数週間、長くても2ヵ月くらいで入金の目処が立ちます。

――とはいえ、私も個人事業主ですが「融資」とか「借入」とか聞くと、正直まったくの別世界の言葉だと感じてしまいます。しかもなんとなく怖い(笑)。

おそらく「担保」や「保証」という仕組みがあるからだと思います。特に「金融機関による融資」と聞くと、「不動産はどのくらい持っているのか」「個人資産がどのくらいあるのか」といったことばかりに目が向けられがちです。もちろん金融機関の側も貸し倒れになったときのリスクヘッジのために、そうした「担保重視」で考えざるを得ないことは事実ですが、今から2年ほど前から始まった「金融改革」以降、大きく風向きが変わってきているんです。

担保重視から事業性重視へ――担保がなくても借りられる!?

――金融改革による、事業者側の変化とはどんなことなのでしょうか?

ごくごく簡単にいえば、日本の経済政策が「事業性重視の融資」に転換しつつあるといえます。すなわち、その会社が将来どのくらい成長する可能性があるのか、そうしたことに着目して、金融機関は自分たちの目利き能力を活かし融資を進める。そんな方向に転換しつつあるんです。

――ということは、担保がなければ借りられない、なんてことはなくなってきている?

そのとおりです。自社のビジネスをきちんとアピールし、強み・弱みはどこなのか、市場におけるポジションはどうなのか――そうした「経営戦略」を盛り込んだ「合理的な事業計画」をつくり、かつ、金融機関と上手にコミュニケーションをとっていければ、十分にお金を借りられるでしょう。

――とはいえ、今の事業が堅調だと「景気も良いし、融資なんて必要ない」と考える経営者も多いのでは?

そこにもう1つの誤解があります。たしかに今は比較的好景気が続いています。だからどこもお金を借りたがらない......。しかし、です。なぜこんなに好景気が来ているかと言えば、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなわけですよ。建設系に限らず、どんな業種にも「2020年」というそのときに向け、大型の投資が起こっています。

過去にオリンピックが開催された国・都市を見ても、オリンピックが終わった途端、経済成長率が鈍化する傾向にあります。最悪の場合はマイナス成長に転じることだってあり得る。つまり、日本も2020年あるいは2021年頃に景気が一斉に悪くなる可能性が高いと考えるべきです。

大野修平先生

晴れている「今」に資金を得て、不況に備えておく

――今が好景気だからと、浮かれている場合ではない?

はい。さらに問題なのは、そうした不況下で金融機関から融資を受けられるかどうか、です。金融機関の世界では「晴れているときに傘を貸すけど、雨の日には傘を貸さない」という言葉があります。

――ドラマ『半沢直樹』なんかでも有名になりましたね。

多くのスモールビジネス経営者に「取引先の銀行はどこ?」と聞いても、出入金口座のある金融機関しかおつきあいがない、なんてことがたびたびあります。実は、そうした会社が、オリンピック後、不況の波に飲み込まれる可能性があるんです。

「晴れているときに傘を貸すけど、雨の日には傘を貸さない」――それもある意味当然のことなんです。銀行は皆さんが思っている以上に薄利多売なビジネスモデルで成り立っているんですね。仮に金利が1%なら、1億円を貸し出すことでようやく1年間で100万円の利益を得ることができるのです。もしもその融資先が貸し倒れになってしまったら、100万円の利益はおろか、1億円の損失を抱えてしまう。そしてその1億円を補填するために100億円分の新たな融資先を見つけなければいけない......。だから銀行は、すでに融資している取引先の経営が危うくなれば、倒産させまいと助けてくれる可能性が大きいのです。

これが、不況下で、かつ、それまでまったく取引のなかった会社だったらどうでしょう? 「お金を貸してください」と窓口に来られても、貸してくれないのは当然のことです。この先、大雨になることがわかっているならば、晴れている今のうちから傘を手に入れておく。そしていざというとき相談のできる相手として、金融機関とも十分なコミュニケーションをとっておく――そうした備えが今、求められているんです。

――まさに「備えあれば憂いなし」ですね。

はい。読者の方に申し上げたいことを総括すれば、まずは今のうちから「融資」を検討しましょう、ということ。そして、融資を受けるためには、事業の生産性を上げる戦略を練っておきましょう、ということです。

>>NEXT では融資を受けるにはどうするの?
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この記事の執筆者

安田博勇
安田博勇

1977年生まれ。大学卒業後に就職した建設系企業で施工管理&建物管理に従事するも5年間勤めてから退職。出版・編集系の専門学校に通った後、2006年に都内の編集プロダクションに転職。以降いくつかのプロダクションに在籍しながら、企業系広報誌、雑誌、書籍等で、編集や執筆を担当する。現在、フリーランスとして活動中。

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