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年末調整の仕訳はどう行う?勘定科目や仕訳方法をパターン別に解説

2024/03/01更新

この記事の執筆者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

年末調整で従業員に税金を還付したり追加徴収したりしたときには、仕訳が必要になります。また、従業員の給与から源泉徴収をしたり、その税金を国に納めたりするときにも仕訳が必要です。これらの仕訳を正しく行わないと、帳簿上の残高と実際の残高が合わなくなってしまいます。年末調整の仕訳は複雑なので、処理に迷う方も多いかもしれません。

ここでは、年末調整で必要になる仕訳や使用する勘定科目などについて、パターン別の仕訳例と共に解説します。

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年末調整の仕訳とは?

年末調整の仕訳とは、年末調整によって生じたお金の動きを、正しい方法で帳簿に記録することです。

そもそも年末調整とは、月々の給与から源泉徴収された所得税と、1年の終わりに確定した所得税を計算し、過不足を精算するために行う手続きです。従業員の所得税は、給与や賞与から源泉徴収(天引き)され、本人に代わって企業が国に納めています。源泉徴収された所得税は概算であり、正しい納税額ではありません。そのため企業は、1年間の給与が確定した年末に個々の所得税額を計算して、納めすぎていれば従業員に還付し、不足していれば追加徴収します。

年末調整をして、税金の還付や追加徴収を行ったお金の流れについては、通常の取引と同様に、借方と貸方に分類して勘定科目に割り当て、帳簿に記録しなければなりません。年末調整で仕訳が必要になるのは、このように、税金の還付や追加徴収を行ったときです。また、従業員の給与から源泉徴収を行ったときや、源泉徴収した所得税を国に納めたときにも仕訳が必要です。

年末調整における所得税の精算は、一般的には、年内最後の給与または賞与に足し引きすることで行われます。つまり、還付なら12月の給与に上乗せして支払い、追加徴収なら12月の給与から必要額を差し引くということです。もちろん、過不足分だけを単独で精算することも可能です。

源泉徴収税は納期をまとめられる特例制度がある

従業員の給与などから源泉徴収した所得税は、原則として給与を支払った月の翌月の10日までに国に納めなければなりません。ただし、所定の要件を満たす場合は、源泉徴収した所得税を半年分まとめて納めることができる、源泉徴収税の納期の特例制度があります。

源泉徴収税の納期の特例制度とは、通常毎月納付しなければならない源泉所得税を、半年ごとにまとめて7月と翌年1月までに納付できる特例です。源泉所得税の納付を年2回にまとめることができるので、事務負担が大幅に軽減されます。

この特例制度を適用できるのは、給与を支払う従業員の人数が常時10人未満の場合です。また、所轄の税務署に、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出する必要があります。

参考:国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例新規タブで開く

特例制度の納付の時期

源泉徴収税の納期の特例制度を適用すると、その年の1月から6月までに源泉徴収した所得税は7月10日まで、7月から12月までの源泉所得税は翌年1月20日までが納付期限になります。なお、納付期限が日曜日、祝日などの休日や土曜日にあたる場合は、その休日明けの日が納付期限です。

源泉徴収の仕訳で使用する勘定科目

源泉徴収の仕訳には、「預り金」という勘定科目を使います。預り金はその名のとおり、他者から預かったお金を仕訳するときに用いる勘定科目です。源泉徴収した所得税(源泉所得税)は、企業が従業員から預かり、本人に代わって国に納めるものなので、預り金で仕訳をします。「租税公課」などの勘定科目と間違えないように注意しましょう。

預り金を使用して仕訳を行う取引には、源泉所得税と同様に、従業員の給与から天引きされる住民税や社会保険料、雇用保険料などがあります。また、税理士や弁護士に支払う報酬や、原稿料・講演料など、特定の報酬・料金を個人に支払う際には源泉徴収が必要で、預り金で仕訳します。

毎月の給与の仕訳方法

源泉徴収の仕訳を理解するためには、毎月の給与の支払時の仕訳を確認しておく必要があります。ここでは、従業員に支払う給与から源泉徴収した場合の仕訳を、具体例と共に確認していきましょう。

なお、源泉所得税などの金額は正確ではなく、仕訳をわかりやすくするための数値となっています。

例1:預り金を使って仕訳をする

アルバイトの給与10万円+交通費5,000円から源泉所得税を差し引いた10万4,000円を現金で支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
給与手当 100,000 現金 104,000
旅費交通費 5,000 預り金 1,000 源泉所得税

源泉所得税の勘定科目には「預り金」を使い、従業員からいくら預かっているかを管理します。この場合の預り金は1,000円になります。摘要欄には「源泉所得税」と記載しておきましょう。

例2:預り金の内容ごとに分けて仕訳をする

従業員の給与20万円+交通費1万円から、源泉所得税、住民税、厚生年金・健康保険料、雇用保険料を差し引いた16万9,000円を銀行振込で支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
給与手当 200,000 普通預金 169,000 給料手当
旅費交通費 10,000 預り金 4,000 源泉所得税
預り金 6,000 住民税
預り金 30,000 厚生年金・健康保険料
預り金 1,000 雇用保険料

源泉所得税に加えて、住民税や社会保険料、雇用保険料を給与から天引きした場合は、仕訳が複雑になります。従業員から徴収する税金や社会保険料も「預り金」の勘定科目となりますが、1つの科目で処理してしまうと、何のためにいくら預かっているのか区別がつかなくなってしまいます。

このようなケースでは、特定の勘定科目ごとの詳細を記録する補助元帳を作成して、預り金の内訳を整理するといいでしょう。なお、会計ソフトで記帳する場合は、補助科目を設定すればかんたんに管理ができます。

年末調整時の給与の仕訳方法

年末調整時の仕訳には、多すぎた所得税の差額を本人に戻す「還付」、少ない差額分を預かる「追加徴収」、過不足分だけで精算する「単独精算」という3つのパターンがあります。それぞれの仕訳の方法を見ていきましょう。

例1:源泉所得税が多かったので、12月の給与に差額を足して支払った

源泉徴収していた所得税が多く3,000円の還付金が発生したため、12月の給与10万円+旅費交通費5,000円に3,000円を上乗せし、12月の源泉徴収分を差し引いて10万7,000円を支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
給与手当 100,000 現金 107,000 給料手当
旅費交通費 5,000 預り金 1,000 源泉所得税
預り金 3,000 年末調整での精算分

例2:源泉所得税が少なかったので、12月の給与から差額を預かった

源泉徴収した所得税が2,000円少なかったため、12月の給与10万円+旅費交通費5,000円から12月の源泉徴収分と追加徴収2,000円を差し引き、10万2,000円を支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
給与手当 100,000 現金 102,000 給料手当
旅費交通費 5,000 預り金 1,000 源泉所得税
預り金 2,000 年末調整での精算分

例3:源泉所得税が多かったので、個別に現金で支払った

年末調整の所得税の還付金が4,000円あったので、給与に加算するのではなく、個別に現金4,000円を支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
預り金 4,000 現金 4,000 年末調整での精算分

源泉所得税の過不足に対する精算は、上記のような仕訳で、年内最後の給与または賞与に足し引きをするか、現金で調整をします。原則として、年末調整と同じ月に処理を行う必要がありますので、漏れのないように対応をしましょう。

預り金がマイナスになった場合の仕訳方法

前述した納期の特例を受けていると、預かっている源泉所得税の残高より還付する金額の方が多く、預り金の残高がマイナスになることがあります。このような場合は、納付額0円の「源泉徴収高計算書」を税務署に提出し、納付は行いません。

帳簿上の預り金のマイナスは、次回の納付時に繰り越して相殺します。残高をマイナスにしたくない場合は、次回の相殺まで、マイナス分を「立替金」などの勘定科目に振り替えておくといいでしょう。税務署に代わって従業員に所得税を還付している状態のため税務署に対する「立替金」という科目を使います。

例1:12月分給与から源泉所得税を預かったが、年末調整による超過税額があり預り金がマイナス

12月分給与から合計5,000円の源泉所得税を預かったが、年末調整による超過税額(返す金額)が7,000円あったため、預り金のマイナス2,000円を、立替金の勘定科目に振り替える

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
立替金 2,000 預り金 2,000 年末調整での精算分

例2:例1の翌月に、預かった源泉所得税5,000円から2,000円を相殺して3,000円を納める

預り金の5,000円から立替金2,000円を相殺し、現金3,000円を源泉所得税分とする

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
預り金 5,000 現金 3,000 源泉所得税
立替金 2,000

例1では、還付額7,000円から預かった源泉所得税5,000円を相殺した2,000円分が帳簿上マイナスになりますが、これは次回の納付時に繰り越して相殺します。なお、残高をマイナスにしたくない場合は、例1のように次回の相殺までマイナス分を「立替金」などに振り替えておきます。

例2では、預かった源泉所得税5,000円を預り金として通常どおり記載し、例1の立替金に振り替えたマイナス2,000円を相殺のうえ、3,000円分を源泉所得税にあてるという仕訳を行います。

年末調整で多くの場合に還付となる理由とは?

年末調整で所得税の過不足を精算すると、多くの場合、還付金が発生します。これは、所得税において適用される各種控除が、年末調整のタイミングで申告されるしくみになっているからです。

所得税には、要件を満たした場合に所得金額や所得税額から一定の金額を差し引くことができる、控除制度があります。所得税の控除には、配偶者控除や社会保険料控除、生命保険料控除といった所得控除から、所得税の額そのものを減額する住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)などさまざまな種類があります。これらの控除は1年の終わりの年末調整で申告します。毎月の給与から源泉徴収される所得税には、一部の所得控除を除き各種控除が反映されていません。そのため、年末調整で各種控除を適用して計算した所得税額が源泉所得税よりも少なくなり、納めすぎていた分が還付されることになるのです。

その他にも、「配偶者が仕事を辞めて収入がなくなった」「結婚して控除対象扶養親族が増えた」など、年の途中で従業員の状況が変わって控除を受けることにより、還付が増えるケースもあります。

年末調整の流れを把握して適切に仕訳をしよう

年末調整は、従業員の給与から源泉徴収した所得税と、1年間の給与から計算した正しい納税額との差額を精算する手続きです。毎月の給与から源泉徴収する際の仕訳を正しく行ったうえで、年末調整の流れを把握し、適切に仕訳をする必要があります。年末調整では煩雑な作業が数多く発生しますが、ミスがあると税額の計算に影響を及ぼすため、正確な処理が求められます。年末調整にかかる業務を効率化するには、給与計算ソフトの導入がおすすめです。

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また、給与・賞与明細の発行までで十分という場合は、クラウドソフト「やよいの給与明細 Next」のような給与・賞与明細の作成・発行に特化したソフトもおすすめです。自社に合った給与計算ソフトを活用して、正確で効率の良い年末調整を目指しましょう。

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この記事の執筆者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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