年末調整の仕訳について

2017/10/11

年末調整の仕訳について

年末調整で従業員の所得税は精算できたものの、精算はどのように経理上の処理をしたらよいかという質問をよく受けます。
今回は、年末調整をしたときの仕訳方法について解説していきます。


POINT
  • 毎月の給与支払時に天引きする源泉所得税は「預り金」として仕訳する
  • 年末調整で過不足を精算する場合は「預り金」の足し引きをする
  • 年末調整により「預り金」がマイナスになる場合は「立替金」に振り替える

給与の仕訳方法

まずは、毎月の給与の支払い時の仕訳を確認しておきましょう。なお、仕訳をわかりやすくするため源泉所得税などの金額は正確ではありません。

例1:アルバイトに給与50,000円を現金で支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
給与手当 5,0000 現金 50,000

例2:アルバイトに給与100,000円と交通費5,000円の合計105,000円から源泉所得税1,000円を差し引いた104,000円を現金で支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
給与手当 100,000 現金 104,000
旅費交通費 5,000 預り金 1,000 源泉所得税

「預り金」勘定を使って従業員などからいくら源泉所得税を預かっているかを管理するようになります。

例3:従業員に給与200,000円と交通費10,000円の合計210,000円から源泉所得税4,000円、住民税6,000円、厚生年金・健康保険料30,000円、雇用保険料1,000円を差し引いた169,000円を銀行振込で支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
給与手当 200,000 普通預金 169,000 給料手当
旅費交通費 10,000 預り金 4,000 源泉所得税
預り金 6,000 住民税
預り金 30,000 厚生年金・健康保険料
預り金 1,000 雇用保険料

従業員から徴収する税金や社会保険料は「預り金」となりますが、ひとつの科目で記帳すると金額の区別がつかなくなってしまいますから、預り金の内容ごとに補助元帳(会計ソフトでは補助科目)を利用するのがおすすめです。なお、社会保険料は「立替金」や「法定福利費」などとして経理する方法もあります。

年末調整は給与支払への足し引き

さて、年末調整は、従業員等のその年1年間の給与から正しい所得税の額を計算して、預かった源泉所得税を精算する業務です。
これまで預かってきた源泉所得税が、年末調整で計算した所得税よりも多かったときは差額を本人へ返し、少なかったときは本人から差額を追加で預かるという作業になります。
その精算方法は、一般的には年内最後の給与・賞与に足し引きすることで行われます。もちろん、過不足分だけ単独で精算することも可能です。

例1:年末調整で年間の源泉所得税が3,000円多かったので、12月の給与支払時に差額を足して支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
給与手当 100,000 現金 107,000 給料手当
旅費交通費 5,000 預り金 1,000 源泉所得税
預り金 3,000 年末調整での精算分

例2:年末調整で年間の源泉所得税が2,000円少なかったので、12月の給与支払時に差額を預かって支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
給与手当 100,000 現金 102,000 給料手当
旅費交通費 5,000 預り金 1,000 源泉所得税
預り金 2,000 年末調整での精算分

例3:年末調整で年間の源泉所得税が4,000円多かったので、個別に現金で支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
預り金 4,000 現金 4,000 年末調整での精算分

預り金がマイナスになった場合

従業員から預かった源泉所得税は、原則として源泉所得税を預かった月の翌月10日までにその月分をまとめて税務署へ納めます。給与の支給人員が常時10名未満で「納期の特例」を受けている場合は、半年ごとにまとめて7月10日、翌年の1月20日の年2回にして納めることもできます。通常であれば、預かった金額をそのまま納めますから、帳簿上の「預り金」の残高はゼロになりますね。
年末調整で年間の過不足を精算した場合は、源泉所得税の納付時にその過不足を足し引きして納めることになります。年末調整では、源泉所得税を本人へ返すケースが多くなりますが、さきほど紹介した仕訳方法で記帳した場合、預かっている源泉所得税の残高より返す金額のほうが多く、残高がマイナスとなることがあります。このときは、いつも使っている源泉所得税の納付書に以下のように記入して、納付額ゼロ円の「源泉徴収高計算書」として税務署へ提出し、納付は行いません。

例:12月分給与から合計5,000円源泉所得税を預かったが、年末調整による超過税額(返す金額)が7,000円あった

12月分給与から合計5,000円源泉所得税を預かったが、年末調整による超過税額(返す金額)が7,000円あった

預かった源泉所得税5,000円はいつもどおりに記載し、「年末調整による超過税額」欄に預かった金額と同額の5,000円を記載、差し引き納付額をゼロ円にする。

還付額7,000円-源泉所得税と相殺5,000円=2,000円分が帳簿上マイナスになりますが、これは次回の納付時に繰り越して相殺します。
なお、残高をマイナスにしたくない場合は、次回の相殺までマイナス分を「立替金」などに振り替えておきます。

例1:上記で預り金が2,000円マイナスになっている

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
立替金 2,000 預り金 2,000 年末調整での精算分

例2:例1の翌月に預かった源泉所得税5,000円から2,000円を相殺して3,000円を納めた

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
預り金 5,000 現金 3,000 源泉所得税
立替金 2,000

【参考記事】
個人事業主のための従業員を雇用するときの書類の書き方
法人設立後に届け出が必要な6つの書類

まとめ

いかがでしょうか。
年末調整は源泉所得税という「預り金」を従業員や税務署とやりとりする作業になります。税務署に納めてしまった源泉所得税を、精算で従業員にも支払わなければならないのかという質問を受けることがあります。上述のとおりで、精算した金額は新しく預かる源泉所得税と相殺していき、事業者が損をするということはありませんのでご安心ください。

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photo:Getty Images

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この記事の執筆者

宮原裕一
宮原裕一

1972年生まれ。税理士。弥生認定インストラクター。「宮原税理士事務所
弥生会計を10年以上使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。弥生会計に精通した税理士として、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。

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