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青色申告特別控除の10万円控除とは?要件や適用するための方法を解説

2023/12/25更新

この記事の監修齋藤一生(税理士)

青色申告で所得税の確定申告する事業者が受けられる青色申告特別控除では、最大65万円が有名です。実は、所得税の青色申告特別控除には10万円、55万円、65万円の3つの種類があります。中でも、最大10万円の特別控除は、複式簿記ではなく簡易帳簿でよいなど適用要件を満たしやすいため、利用しやすい控除です。

本記事では、最大10万円の青色申告特別控除について、詳しい要件やそれ以外の控除との違い、適用を受けるために必要な書類などをまとめてご紹介します。青色申告と白色申告の違いについてもふれていますので、白色申告から青色申告への変更を検討する際の参考にしてください。

青色申告特別控除とは、青色申告をする場合に受けられる所得控除のこと

青色申告特別控除とは、青色申告で所得税の確定申告する事業者が利用できる控除です。法人税にも青色申告はありますが、特別控除はありません。個人事業主が適用できる青色申告特別控除には、10万円、55万円、65万円の3種類があり、確定申告や記帳の方法などの要件に応じて、控除できる最大金額が異なります。

まずは、青色申告で確定申告ができる事業者に該当するかどうか、青色申告の要件を確認しておきましょう。

青色申告を利用できる所得の種類

青色申告を利用できるのは、下記の所得がある事業者です。

青色申告が可能な所得の種類

  • 事業所得:サービス業や製造業、卸売業、その他の事業を行っている方の所得で、農業や漁業にかかるものを含む
  • 不動産所得:不動産などの貸付で所得を得ている方のうち、事業所得や譲渡所得に該当しない所得
  • 山林所得:取得から5年を経過した山林を伐採、あるいは立木のまま譲渡した所得(ただし、土地ごと譲渡した場合を含まない)

なお、所得の種類が山林所得のみの場合は、青色申告特別控除の上限が10万円となります。また、不動産所得のみの場合で、事業的規模ではない場合、原則として青色申告特別控除は最大10万円となります。

事業所得や不動産所得についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

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青色申告特別控除の種類と適用の要件

10万円、55万円、65万円の3種類の青色申告特別控除それぞれの、適用要件を知っておきましょう。

なお、青色申告承認申請書では、どの控除の適用を受けるかを選択する必要はありません。青色申告者で65万円の控除、55万円の控除の要件を満たせなかった場合に、最大10万円の控除になるというものです。そのため、適用を受けたい控除の要件を満たせるようにしておきます。

まず、どの青色申告特別控除を受けたいにしても、青色申告をする承認を受けておかなければなりません。税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出して、青色申告事業者であることを前提に説明をしていきます。

青色申告特別控除10万円を受ける要件

10万円の青色申告特別控除を受けるためには、下記の要件をどちらも満たす必要があります。

10万円の青色申告特別控除の要件

  • 記帳にもとづいた申告を行う(記帳の方法は簡易的な帳簿でOK)
  • 確定申告書に青色申告決算書(損益計算書)を添付して申告を行う(貸借対照表は不要)

10万円の青色申告特別控除は、55万円や65万円の控除と違って複式簿記ではなく、簡易簿記での帳簿付けが認められています。簡易簿記とは1つの取引に対して1つの項目で記帳を行う方法で、複式簿記よりも簡単な帳簿作成が可能です。簡易簿記で青色申告のメリットを得られるというのが、10万円の青色申告特別控除の特徴です。

青色申告特別控除55万円を受ける要件

最大55万円の青色申告特別控除を受けるためには、下記の要件をすべて満たす必要があります。

55万円の青色申告特別控除の要件

  • 現金主義による所得計算の特例を利用していない
  • 事業所得または事業的規模の不動産所得がある(※)
  • 複式簿記など、正規の簿記の原則に則って帳簿付けをしている
  • 青色申告決算書(貸借対照表、損益計算書)を添付して確定申告をする
  • 確定申告期限内に申告と納税をする
  • 確定申告書に控除金額を明記して申告する
  • 事業所得と不動産所得の兼業の場合は、不動産所得が事業的規模である必要はありません。

青色申告特別控除65万円を受ける要件

65万円の青色申告特別控除を利用するためには、55万円の控除を受ける要件をすべて満たしたうえで、下記のどちらかを満たす必要があります。

65万円の青色申告特別控除の要件(55万円の要件以外)

  • e-Taxで申告する
  • 一定の事項を記載した届出書を法定申告期限までに提出したうえで、申告する年分の対象帳簿を優良な電子帳簿の要件を満たして電子データによる備付けおよび保存している

青色申告を利用するための申請手続き

青色申告をするためには、青色申告をしたい年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出して承認を受ける必要があります。なお、1月16日以後に事業を開始して、開業年から青色申告にしたい場合は、開業の日から2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。

期限に間に合わなかった場合は、翌年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出することで、翌年分から青色申告ができます。

所得税の青色申告承認申請書

青色申告承認申請書については別の記事で解説していますので、参考にしてください。

なお、当社が運営する起業・開業ナビでは「弥生のかんたん開業届」というクラウドサービスを提供しております。
「弥生のかんたん開業届」は画面に沿って操作するだけで開業届を含む必要書類を作成することができる無料のサービスです。開業届だけでなく所得税の青色申告承認申請書も同時に作成できるため、確定申告の際に青色申告を行いたい人は、弥生のかんたん開業届の利用を検討してみてください。

青色申告特別控除10万円の適用に必要な帳簿書類

10万円の青色申告特別控除のために必要な書類を確認しておきましょう。具体的には、下記の書類を用意します。

確定申告書

確定申告書 第一表、第二表の2枚を提出します。なお、紙で提出する場合は提出用の他に、同じ内容の控えを作成しておきましょう。収受印を押した控えは、収入の証明などに利用できます。

青色申告決算書

青色申告決算書は、損益計算書と貸借対照表を含む4枚の書類で構成されていますが、最大10万円の青色申告特別控除の場合は、損益計算書の提出は必要ですが、貸借対照表の記載は不要です。その他、売上や給料賃金の詳細や減価償却費の計算などは記載しましょう。

国税関係帳簿

現金出納帳、預金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳などの国税関係帳簿を作成し、保存しておきます。ただし、売掛帳や買掛帳などについては、該当の取引が存在しない場合、作成不要です。青色申告特別控除の場合は、簡易簿記での帳簿でかまわないため、複式簿記で作成する仕訳帳や総勘定元帳は作成できなくても構いません。

確定申告には、青色申告と白色申告の2種類がある

確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。それぞれの特徴を比較して、自分に合った方法で申告しましょう。

青色申告の特徴

青色申告を行うためには、前述のように事前に承認を受けておかなければなりません。また、確定申告の際には青色申告決算書の作成と提出も必要です。最大10万円の控除であれば簡易簿記での帳簿付けでもかまいません。

とはいえ、会計ソフトなどを利用して日々の取引入力をしている場合は、ソフトが取引を自動集計してくれますから、損益計算書の作成の手間はそれほどかからないでしょう。正しい帳簿をつけ、正確性の高い申告を行う青色申告事業者には、下記のようなメリットが用意されています。

青色申告特別控除

適用要件に合わせて10万円、55万円、65万円のいずれかの控除があり、節税につながります。

青色事業専従者給与

青色事業を家族などが手伝っている場合、一定の要件を満たせば給与を経費計上できます。白色申告にも事業専従者控除という控除制度がありますが、控除額が限定的であるため、青色事業専従者給与の方が節税効果は高くなります。

赤字の繰越と繰戻

事業を営むうえで赤字が出た場合、翌年以降3年間にわたって赤字を繰り越せます。3年以内の黒字と赤字を相殺できるため、納税額を抑えられるでしょう。また、前年の黒字に繰戻して還付を受けることも可能です。

少額減価償却資産の特例

通常1年以上使用する10万円以上の資産を取得した場合は、減価償却が必要です。しかし、青色申告事業者は、取得価額30万円未満の資産は、特例を利用して、取得した年に一括計上が可能です。利益が大きい年などに取得した場合、一括で経費化できるため節税に繋がります。

貸倒引当金の計上

貸倒引当金とは、取引先の支払い不能に備えて計上しておく引当金です。青色申告事業者は、年末時点の債権残高の5.5%(金融業は3.3%)を貸倒引当金として必要経費に計上できます。

白色申告の特徴

青色申告を行わない事業者は、自動的に白色申告をすることになります。青色申告と違って事前の申請は不要です。

白色申告事業者には、簡易帳簿の作成と保存が義務付けられています。作成した帳簿をもとに、売上金額や経費をまとめた「収支内訳書」を作成して、確定申告書に添えて申告します。

青色申告特別控除10万円と白色申告の違い

個人事業主の場合、青色申告・白色申告どちらにしても帳簿付けは必要です。最大10万円青色申告の場合と、白色申告とはどのような違いがあるのでしょうか。

まず、見た目で違っているのは確定申告書に添付する決算書の様式です。青色申告の場合は、10万円・55万円・65万円にかかわらず4ページある「青色申告決算書」という様式を使用します。これに対して白色申告の場合は2ページの「収支内訳書」という様式を使用します。

決算書については、青色申告の特典を除けば日々の取引にかかる所得計算、つまり儲けの計算方法は同じです。青色申告決算書はより詳しく記載する欄が多いためページ数が多くなっているということが言えます。とはいえ、青色申告特別控除10万円を適用する場合は、貸借対照表の記載は不要なので、収支内訳書とほぼ同じ内容です。

つぎに、帳簿付けの方法です。白色申告の場合は現金取引や掛け取引にかかわらず、また売上や仕入・諸経費を同じ様式に日付順に記載していく簡易な方法による記帳でよいとされています。いうなれば売上や経費の一覧表を作成するだけなのでエクセルでシートを作成すれば十分ですね。

これに対して青色申告10万円控除では、複式簿記でなくてもよいとはいえ、現金出納帳などの簡易帳簿での帳簿付けが求められます。例えば商品を仕入れた場合に、その場で現金で仕入れたときは現金出納帳を使用しますし、掛け取引で後日仕入れ代金を支払うようなときは買掛帳を使用します。

つまり、白色との大きな違いは売上や経費といった儲けの計算に関することだけでなく、お金の出入り、そしてその残高についても記録するということです。ここまで言うと、白色申告に比べて難しくなるような気がするかもしれませんが、要は「お小遣い帳をつけること」をイメージしてもらうとよいでしょう。

青色申告特別控除10万円の場合、複式簿記の難しい帳簿付けができなくても、最大10万円の控除を受けられるうえ、青色申告のさまざまな特典は受けられるということです。

10万円の青色申告特別控除にチャレンジしよう

10万円の青色申告特別控除と白色申告は、どちらも簡易帳簿での帳簿付けが認められています。現在、白色申告をしている場合、日々の業務を大きく変えなくても、青色申告の申請をして確定申告方法を変えるだけで、最大10万円の特別控除とさまざまな青色申告のメリットを享受できます。現在、白色申告をしている方は、まずは10万円の青色申告特別控除を目指してみてはいかがでしょうか。

やよいの青色申告 オンライン」なら、専門的な知識がなくても青色申告が可能です。「やよいの白色申告 オンライン」からの切り替えも簡単です。しかも、申告ソフトを使えば、簡易帳簿を作成しているだけでも、青色申告特別控除の55万円控除の要件である複式簿記での帳簿が自動で作成されます。

さらにe-Taxで申告をすれば、最大55万円の控除がクリアできるだけでなく、最大65万円控除の適用もできます。ぜひ最大65万円控除にもチャレンジしてみてほしいと思います。

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確定申告ソフトを利用すれば、日々の取引データをもとにした収支レポートが作成可能です。自動的に集計し、グラフ化した状態でチェックできるのでリアルタイムで経営状況が把握できます。経営判断をする際の、自社の業務データのひとつとしても役立つでしょう。

この記事の監修者齋藤一生(税理士)

東京税理士会渋谷支部所属。1981年、神奈川県厚木市生まれ。明治大学商学部卒。

決算書作成、確定申告から、起業(独立開業・会社設立)、創業融資(制度融資など)、税務調査までサポート。特に副業関連の税務相談を得意としており、副業の確定申告、税金について解説した「副業起業塾 新規タブで開く」も運営しています。

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