【実践的リスクマネジメント論】中小企業にとって一番リスクになる「二大経費」とは?

公開日:

執筆者:五島洋

【実践的リスクマネジメント論】中小企業にとって一番リスクになる「二大経費」とは?

景気の波や人手不足の問題など、中小企業を取り巻く経営上のリスクはさまざまです。なかでも中小企業経営者にとって身近なリスクである「コスト」にまつわる考え方と、またそれらのリスクをマネジメントするための「リスクとリターンの関係」について、150社以上もの顧問経験を武器に、会計業務以外の経営アドバイスも積極的に行っている税理士の五島洋先生が、本音で解き明かしていきます。


POINT
  • 中小企業は大企業とは違う経営リスクを身近に抱えている
  • 経営を揺るがしかねないリスク要因は、二大経費の「人件費」と「家賃」
  • 会計的にはリスクでも、経営視点で見ればリターンにもつながりうることを認識すべし

人の雇用を「損失上限額」を決めて実践できるか否か

── 最近だと、コインチェックの580億円流出事件や、大企業でも神戸製鋼のデータ改ざんなど、これだけリスクマネジメントが重要と言われても、企業の不祥事はなかなかなくならないものですね。

まあ、リスクをとらないとビジネスは成り立たない。会社はいつもそのせめぎ合いと闘っているわけですが、実は中小企業も大企業とはレベルが違うにせよ、すごく身近なところにリスクの火種を抱えているんです。

── 世をにぎわすほどでなくても?

そう。中小企業の場合、株価が暴落したり、マスコミ対応で叩かれたりということもまずないですし、廃業に追い込まれてニュースになることもない。そもそも規模が小さいゆえに、きちんと"潰れる"ことも少ない。仮に売上が下がり続けていても、なんとなくやっていける。だからこそ、危機管理に対する意識が相対的に弱い経営者が多いように思います。

── 例えば、どのようなケースがあるのでしょうか?

まず、事業を営んでいくうえで必ずかかってくるコストについて考えてみましょう。例えば、雇ったけれど、まったく売上に貢献してくれない従業員だったとします。給料は決まった金額が毎月必ず出て行く。このままでは赤字が増えるばかり......大前提として労働基準法に則ったうえで、ではその従業員に「辞めてほしい」と言えるでしょうか。

── なかなか決断しにくいですね。

もちろん法律的に辞めてもらうことが可能かどうかという問題は慎重に考える必要がありますが、でも、本来は人件費の面においても損失上限額をきちんと決めて雇用すべきなんですよね。月30万円の給料で従業員を雇って、当人が貢献している売上が月20万円だとします。もし損失上限額を200万円と決めたら、2年目の段階で辞めてもらうのが数字の上では正解ですよね。けれど、そんなことは簡単にできないのが私も含めて人間の性なんですね。

ただ、会計上の数字を最適化するだけだったら、「人が欲しいときに雇い、いらなくなったら切る」という冷酷なことを機械的にやれる人が強い、とも言えます。でも、実際にはそれがなかなか難しいから派遣労働が定着した、という側面は否めません。なにかと社会問題にはなりましたが、派遣労働のあり方については、経営者サイドから見れば、リスクマネジメントの一環であり、一定の合理性があるわけです。

自分なりのリスクのコントロール法を見つけた先に、会社の独自性が生まれる

── 難しいところですね。他にも経営上でリスクとなるものってありますか?

固定費、とくに家賃ですね。飲食店なんかが最たる例ですが、テナント契約を一旦してしまったら、いくら売上が上がらないからといっても、すぐには止められない。

いざ撤退する際にもリスクが伴うこともあります。これは実際にあった話ですが、最新の調理設備を備えたレストランが廃業することになった事例をご紹介しましょう。いざ店をたたむというときに家主から現状復帰を求められ、その調理設備を撤廃するのにかなりのコストがかかることが判明。さらなる負債を抱えてしまった......そんなケースもあります。このケースは、「【開業希望者必見】飲食店経営「やってはいけない」3つのこと」でも紹介しました。

これが広告費だったら、上限額を決めて、効果がないとわかったら「はい、止めます」と言えるのだけれど、これらの二大経費はそう簡単に削れないものです。

人件費と家賃(固定費)は非常に重い経営リスクにつながりうるということを認識する必要があります。

── では、どのようにリスクをコントロールしていけばいいのでしょうか。

正直、ひとことで言えるような正解はありません。それが経営の難しいところでもあり、醍醐味でもあります。ただ、考え方として意識してほしいのは、会計の視点ではリスク、マイナスの要素であっても、そのリスクをとることこそが経営の視点で見れば利益につながりうるということ。

例えばアパレル業ならば、在庫が余り過ぎて倒産するというパターンが多いわけですが、かと言って在庫をある程度は抱えないと商品は売れない。そもそも在庫をゼロにしながら売るというのは難しいわけです。同様に、人を雇わないと売上は上がらないし、飲食店も事業を拡大していきたいならば、店舗を増やし続けなければならない。

会計上は「債務超過→倒産」という構図が教科書どおりなのかもしれませんが、現実はそんな杓子定規なものではありません。どれだけの中小企業が債務超過ギリギリのところで知恵を絞って、踏ん張っているか。そこは机上の学問、論理だけで解決できるものではなく、百人いれば百とおりの正解があるというのが答えだと思います。

── リスクとリターンはトレードオフの関係にあるということでしょうか?

まさにそのとおりだと思います。会社員の平均的給与が月約30万円、年収400万円弱のところを、経営者としてその何倍も稼ごうとしているのであれば、相応のリスクを取らなければならない。

でも、そこで苦しくても、自分なりのバランス感、突破口を見つけていくことこそが、自分、あるいは会社の特徴、独自性につながりうる。小さな会社だからこそ、それぞれの正解を粘り強く求めていくことが、生き残る道にもつながっていくのではないでしょうか。

おさらいとまとめ
  • 中小企業にとって人件費と家賃(固定費)の二大経費こそが経営リスクにつながる
  • これらの二大経費を上手にマネジメントすることが中小企業を存続させるポイント
  • 人件費も家賃も、本来であれば損失上限額を設定しておくべきコストと捉えるべし
  • ビジネスには百人いれば百とおりの正解がある。それぞれの正解を粘り強く求めて、自分なりのバランス感、突破口を見つけていくことが、生き残る道につながる

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この記事の執筆者

五島洋
五島洋

税理士、ファイナンシャルプランナー。150社以上もの顧問経験を武器に、顧客には会計業務以外の経営アドバイスも積極的に行っている。著書として『ゼロから始める会社の数字入門』(KADOKAWAメディアファクトリー)、『身の回りの税金がわかる』(西東社)、『あなたの「年金」がすぐわかる本』(PHP研究所)など。
・<中小企業>社長のための経営相談所
・五島洋税理士事務所

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