退職後の確定申告は必要?途中退職や定年退職などケース別に解説

2024/02/29更新

この記事の監修渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

会社に勤めている会社員の場合、所得税は毎月の給与から天引きで源泉徴収された上で年末調整されるので、基本的に自分で確定申告をする必要はありません。しかし、勤め先を退職すると、所得税の確定申告が必要になる場合があります。

ここでは、退職後や定年退職後に確定申告が必要になるケースと、不要なケースについて解説します。

退職後に確定申告が必要なケースとは?

退職後に所得税の確定申告が必要になるのは、源泉徴収によってすでに納めた税金と、本来支払うべき税金の額に食い違いが生じる場合です。下記の3つのケースが該当します。

年の途中に退職後、年内働いていなかった場合

年の途中で退職後、働いていない場合は、給与からの天引きで源泉徴収された分が、所得税の払いすぎになっている可能性が高いため、所得税の確定申告で還付申告すると、払いすぎた分が還付されます。

会社員の所得税は、会社が給与をもとに、毎月「税金の見込み額」を源泉徴収し、年末調整で差額分を調整する仕組みになっています。年の途中で退職すると、この年末調整が行われません。源泉徴収税額は、個人ごとに異なる各種控除も考慮がされていないため、結果として税金を多く納めている可能性が高いのです。その場合、会社から受け取った源泉徴収票をもとに、所得税の確定申告を行います。

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年の途中に退職後、フリーランスなど個人事業主になった場合

年の途中に退職してフリーランスなど個人事業主になった場合は、会社員時代の「給与所得」とフリーランスになってからの「事業所得」の2つがあることになります。給与所得分については、源泉徴収によってすでに税金を納めていますが、事業所得分については納めていないので、所得税の確定申告が必要です。

ライターや士業職などは、請負った業務によっては、報酬を受け取る時点で報酬から源泉徴収されることが多いですが、源泉徴収されている金額は給与と同じく見込み額であり、所得税の確定申告での精算が必要です。

また、請求額の一定割合を源泉徴収しているため事業を営む上でかかった経費を計上していないことになります。改めて経費を計上して、個人ごとに異なる各種控除を適用したうえで、所得税を再計算し、払いすぎになっている場合は、所得税の確定申告をしましょう。

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年の途中に退職し、次の勤め先(アルバイト含む)で年末調整をしていない場合

年の途中に退職し、年内にほかの勤め先で働きだした人の場合、新しい勤め先が前の会社の分もまとめて年末調整をすれば、所得税の確定申告の必要はありません。しかし、アルバイト先が複数ある場合や、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してないために本来いずれかの会社で行われるべき年末調整がどの会社でも行われていない場合は、所得税の確定申告が必要になります。

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退職後に確定申告が必要ない例

退職後に所得税の確定申告が必要ない場合もあります。下記のようなケースは、源泉徴収によってすでに納めた税金と、本来支払うべき税金の額に食い違いが起こらないので、確定申告をする必要はありません。

年の途中で退職をしても年内に再就職をし、再就職先で年末調整を行った場合

年の途中で退職して、年内に再就職をした場合、再就職先が年末調整をするため確定申告は必要ありません。その際、退職した会社から受け取った源泉徴収票が必要です。

年の途中に所定の手続きをして定年退職した場合

年の途中に退職金を受け取って定年退職した場合は、退職金の支払いを受けるまでに、「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」を会社に提出すれば、退職所得については所得税の確定申告は必要ありません。この申告書は、会社の方から提出を求められるケースが多いです。この申告書を提出しない場合には、退職金について20.42%の源泉徴収が行われ、確定申告で所得税を精算することになります。

退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書

退職する勤め先で年末調整をしてから退職した場合

年末調整が行われたタイミング(厳密にいえば12月に支給される給与の支払を受けた後)で退職した場合は、年末調整で所得税の精算が終わっているので、所得税の確定申告の必要はありません。一般的に年末調整は12月中に行われ、12月または1月の給与で過払い分の還付もしくは追加徴収されます。

万が一、12月中に再就職して再度12月に給与を受けることになると、転職後の会社で年末調整を行うことになります。その場合は、前職での年末調整をやり直すといったことが必要になります。転職して12月中に給与を受けることが決まっている場合には、前職で年末調整を行わないように注意しましょう。

定年退職後に確定申告が必要な例

定年退職の場合、年末調整を受けていないケースが多いため、基本的には所得税の確定申告を行うことになります。ただし、退職所得の受給に関する申告書を提出していれば、退職金についての確定申告は不要です。

定年退職した年より後については、下記のようなケースでは確定申告が必要になります。

定年退職後、公的年金等の年間収入が400万円を超える場合

退職後に年金を受給するケースで、公的年金等の収入が年間400万円を超える場合は、確定申告が必要になります。

定年退職後、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円を超える場合

定年退職後に受給する公的年金等の収入額が年400万円以下でも、公的年金等以外に年20万を超える所得がある場合は、確定申告が必要です。下記のようなケースが、これに該当します。

定年退職後、アルバイトやパートをしている

アルバイトやパートから得た所得は給与所得となり、ほかの公的年金等以外の所得と合わせて年20万円を超えると確定申告が必要になります。給与所得は、「給与収入-給与所得控除」の額です。

例えば、年収162万5,000円以下では、給与所得控除は55万円です。アルバイトやパートの年間の給与が75万円を超えた場合、給与所得控除後、20万円を超えてしまうため、所得税の確定申告が必要となります。

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個人年金を受け取っている、または原稿料を得ている

個人年金や原稿料による所得は雑所得となり、ほかの公的年金等以外の所得と合わせて、年20万円を超えると確定申告が必要になります。雑所得額は、個人年金の場合は「1年の年金額-(個人年金の総払込額÷個人年金の受取年数)」の計算式で、原稿料の場合は「原稿料-執筆にかかった費用(パソコンの購入費など)」の計算式で求められます。

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株式の配当がある

株式の配当で得られた所得は配当所得となり、「収入-負債の利子」の計算式で求められます。配当所得が、ほかの公的年金等以外の所得と合わせて年20万円を超える場合は、確定申告が必要です。なお、分離課税となる特定口座を利用している場合は不要です。

生命保険の満期返戻金を受け取った

生命保険の返戻金は、保険料の負担者と保険金受取人が同じで、一時金として受け取った場合、受け取った金額と払い込んだ金額の差額が一時所得となります。この一時所得が、ほかの公的年金等以外の所得と合わせて20万円を超えると、確定申告が必要です。

各種控除を適用したい場合

定年退職後に、各種所得控除や税額控除の適用を受けたい場合は、自分で確定申告をしなければいけません。所得控除の適用を受けると、その分納めるべき税金が安くなり、年金から源泉徴収された税金が還付されます。適用できる所得控除や税額控除がある場合は、確定申告を行いましょう。主な控除には、下記のようなものがあります。

医療費控除

年間に支払った医療費から保険金などで補填される額が10万円を超えていた場合、10万円(※)を超えた部分について、最大200万円が控除されます。

※総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%

都道府県・市区町村に対する寄附金(ふるさと納税)

「ふるさと納税で寄附した金額-2,000円」が控除されます。寄附金額は総所得金額等の40%が上限です。

社会保険料控除

健康保険や国民年金の保険料が控除されます。

生命保険料控除

生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に、一定額が控除されます。

地震保険控除

地震保険料を支払った場合に、その全額または一部が控除されます。

住宅ローン控除

住宅ローンを利用してマイホームを新築・取得・増改築し、一定の要件を満たしている場合に、控除を受けることができます。

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この記事の監修渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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