『ディズニーの神様』シリーズ著者・鎌田洋氏に聞く「従業員のモチベーション」を上げるには?

公開日:

執筆者:阿部桃子

『ディズニーの神様』シリーズ著者・鎌田洋氏に聞く「従業員のモチベーションを上げるには?」

売り手市場の昨今、中小企業の経営者のなかには、「人材を募集しても、人が集まらない」「せっかく雇った社員が定着しない」といった悩みを抱える方も少なくはないようだ。スモビバ!で行ったアンケート調査(採用でもっとも苦労していることは何ですか?)でも、「募集に集まらない」「採用してもすぐやめてしまう」などの声が多く見受けられた。

そこで、かつて東京ディズニーランドで年間1万2,500人のスタッフ(キャスト)の指導・育成を行った経歴を持ち、累計90万部を超える『ディズニーの神様』シリーズの著者として企業のコンサルティングやセミナーを行っている、株式会社ヴィジョナリー・ジャパンの鎌田洋氏に、従業員の人材育成、モチベーションを上げる方法を伺った。



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仕事について注意するときも「すごく良いね」とまず褒めてから伝えるるのがディズニーの教育方法

──「SCSE」を実現するためには何が大切でしょうか?

働いている人のモチベーションを上げることです。

ディズニーには、人のいいところを見る、褒めるという文化があります。人間は、叱るより褒めることが好き。褒めると相手も気持ちよくなるし、自分もいい気分になりますからね。ここがモチベーションを上げるためにも、大切なポイントです。

例えば、ディズニーの教育方法として、仕事のやり方について注意するときにも、「すごく良いね」とまず褒めてから、「でも、こうしたらもっとよくなるよ」と伝えるようにしています。

あとは、ユニークな表彰制度も「褒める文化」の表れですね。

まずはキャスト同士が職場で頑張っている人を投票し合う「スピリット・アワード」。SCSEを評価基準としますが、偉い人が上から選ぶのではなく、いつも一緒に働いている仲間同士が選び合うという点がユニークです。

さらに、素晴らしいサービスを行ったキャストには、部署を問わず、社長を含む他部署の上司からもその場で認められ、「ファイブスターカード」が渡されます。私が在籍していたころには、ファイブスターを5回もらったら、ティンカーベルの名刺入れをもらえるという特典も。この名刺入れを、他社に就職してからも大切に持ち歩いて、人生の糧にしているという人もいます。

この「ファイブスターカード」が思わぬ相乗効果を呼びまして。スーパーバイザー、課長クラスも事務所から外に出て、「褒めること」をしはじめたんです。サービス業というのは、事務所にこもっているのではなく、外に出て自分たちのサービスのクオリティが正当かどうかをスーパービジョンしなきゃいけませんからね。

もちろんキャスト本人も、こういうことをやれば、上司も仲間も認めてくれるんだなと実感できるようになりました。人にとって嫌なのは、放任や無視をされること。やったことに対して何の評価もないのでは、やりがいも感じられませんからね。

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それから、だれがトレーナーかが明確にわかるように、トレーナーは「ジミニー・クリケット」のバッジをつけています。ジミニー・クリケットは『ピノキオ』に登場するピノキオの先生。保護者兼指導者としてピノキオと行動を共にする「良心」の役まわりです。ジミニー・クリケットを胸に貼られたあかつきには、「良心の塊」でなきゃ、と誰だって思いますよね(笑)。

前述の「ファイブスター」の特典もそうですが、そうやって、モノでモチベーションを上げることもアリだと思います。

──褒め合う文化があることで、ほかにどんないいことがありますか?

一般的に、人間関係のトラブルで会社を辞めるという方も多いですが、褒め合う文化があることで、割合的に少なくなるのではないでしょうか。

そうやって従業員の間の信頼関係が深まれば、人材も定着していくものです。

座学より、実例から学んでもらう

──ディズニーの人材育成の特徴は?

私がユニバーシティに異動になって一番初めにやったことは、キャスト休憩所をきれいにしたこと。それまで休憩所は、壁は手垢だらけ、床はキズだらけと、とてもきれいと言えるものではありませんでした。

でも不思議なもので、こちらがきれいにすると、キャストたちから、「きれいにしてくれたから、きれいに使おう」という運動が起きるんですね。

ディズニーは教室のなかで研修としてやる教育は4分の1。あとはこういった自発的に動く先輩の背中を見て学ぶことになります。

また従業員イベントも開催しますが、特徴的なのが「カヌーレース」。14人1組で、朝の6時半から練習が始まるのですが、14人のうち1人でも遅刻者や欠席者がいたら参加資格が取り消されます。こういったイベントを通じて、チームワークやコミュニケーションの大切さを学ぶのです。

ヤル気を動かすマジックとは?

──入社時、やる気が感じられないマイナススタートの社員やアルバイトへの対応に苦慮している経営者もいるようですが。 

ディズニーでも、最初からやる気満々でない子ももちろんいますよ。でも、途中でがらりと変わる子もいるし、働く仲間たちに支えられてディズニーが大好きになっていく子もいます。

肝心なのは、その人のやる気を動かすこと。例えばこれからショップで働くキャストには、お店の名前の由来やストーリーを学んでもらいながら、「ただの売り子ではない」というプライドや「今までのアルバイトと全然違う!」というワクワク感を持たせるようにしていますね。

──社会では人手不足が大きな問題になっています。どう打開して行ったらいいでしょうか?

業種を問わず、思いのある経営者のところには人が集まってくるものです。もし今、皆さんの会社の人材が固定せずに悩んでいるなら、「なぜ事業を始めようとしたのか?」原点に立ち戻るべきでしょうね。あとは社員を「One of them(ワンオブゼム)」の労働者としてとらえるのではなく、大切にすること。

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実は、「社員は会社に扱われたようにお客さんのことを扱う」という大原則があります。会社が社員を単なる駒として扱えば、社員もお客様を単なる駒として扱ってしまう。そうすると、心のこもったおもてなしができなくなり、会社の未来まで狭められてしまいますね。

福利厚生だけではなく、従業員満足(ES)を感じられる仕組みを作ることが大事。ESがなく仕事内容が同じであれば、より仕事が楽なところ、時給が高いところに人は逃げてしまいますから。

──最後に、人材育成を成功させるポイントを教えてください。

人材育成にとって大事なことは、ミッションを中心とした一貫性のある教育と、情報の共有化、さらには褒める文化の醸成、そして働く環境の整備。その4つの視点を徹底して具体化することです。とにかく小さな改善からでも実行に移すことですね。

Photo:塙薫子

鎌田洋 かまた・ひろし
鎌田洋

1950年、宮城県生まれ。1982年オリエンタルランド入社。東京ディズニーランドのユニバーシティ(教育部門)マネジャー時代、米ウォルト・ディズニー社でディズニーの、リーダーシップ・サービス・モチベーション・マネジメントの4つの領域について学ぶ。在籍の7年の間に、スピリットアワード、5スターカード、チームスピリットを醸成するさまざまなイベント、休憩施設の改善、管理職向けのリーダーシッププログラム開発などの施策を具体化。
1999年、株式会社ヴィジョナリー・ジャパンを設立 。
接客サービス業以外にもさまざまな職種の企業様向けに講演・セミナーを実績。教育機関や学生向けの講演も多数実施。
著書に『ディズニー そうじの神様が教えてくれたこと』(SBクリエイティブ・刊)など多数。
株式会社ヴィジョナリー・ジャパン

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この記事の執筆者

阿部桃子
阿部桃子

早稲田大学卒業後、出版社、テレビ局勤務などを経てフリーランスに。専門分野は教育・育児支援、ビジネス、キャリア。『日経トレンディ』『AERA with Kids』『Bizmom』などで執筆。2児の母。活字好きの子どもを増やすべく、地域で読書ボランティア活動にも励んでいる。

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