【カメラマン・映像業界】こんなものも経費にしています

2021/03/31更新

この記事の執筆者酒井彰人

スマートフォンに高画質なカメラが標準搭載されるなど誰でも簡単・きれいに写真や動画が撮れるようになった昨今、カメラマンの単価は業界としては低くなっていると思います。ですが、プロが使うカメラはさらに高機能化しており、カメラボディ、レンズ共にまだまだ高価です。

特に映像業界では、技術の発展が目覚ましく、次々に新製品、新しいサービスが生まれていることからしっかり経費計上することで対応しています。私は、カメラマンで、スチール(静止画像)だけでなく、特にムービー(動画)の仕事をしています。そのうえでカメラマン・映像業界の経費事情をまとめてみました。

POINT

  • 「固定資産」か「消耗品費」か。金額で分けるのがルール
  • 撮影でのスタジオ代や車両・駐車場のなどは「雑費」
  • 新しい技術習得のための講座受講費は「研修費」、専門誌購入費は「新聞図書費」

10万円をこえる機材は「固定資産」、10万円未満は「消耗品費」

写真撮影では、カメラ、レンズ、フラッシュ、SDカードなどさまざまな機材が必要です。動画では、音声録音用の機材や動画撮影時のブレをおさえるスタビライザー、編集ソフトなど、必要なアイテムがさらに増える傾向にあります。

また、最近のカメラマンは、4KやHDRなど画質向上につながる対応のため、スペックの高いPCや、容量だけでなく速度の速いストレージを使用するのがトレンドです。もちろん高機能の分、価格も高くなります。

10万円をこえる機材は「固定資産」、10万円未満は「消耗品費」

以前、編集ソフトについてはサブスクリプション(特定期間内の利用契約)で、写真の編集・管理はAdobeのPhotoshopCCやLightroomCC、動画はPremiereProCCやAfterEffectsCCを使っていました。ですが、写真はソニーのα7Ⅲの購入をきっかけに、ソニー純正のImaging Edge、動画は無料版があり、有料版も買切可能な「ダヴィンチリゾルブ」に切り替えました。

ダヴィンチリゾルブは、ブラックマジックデザイン社のカラーグレーディングソフト(色の修正だけではなく、伝えたいイメージにするため露出や色を作っていくソフト)で最新のVer.15ではカラーグレーディングに加えて、タイムラインの編集、VFX、音声まで1本のソフトで完結可能なソフトに進化しています。

これから、4K-Raw(写真撮影で使われるRawと同じで編集時に調整してもノイズがのったりしづらい形式)の動画が撮影可能な同社のポケットシネマカメラ4Kを購入予定であり、それにはダヴィンチリゾルブ有料版が導入されるので本格的にデジタルシネマの世界に足を踏み入れることになります。

ポケットシネマカメラ4Kは15万円ほどのカメラですが、ミラーレスや一眼レフカメラとは違うデジタルシネマカメラとしてカテゴライズされています。見た目は小さいですが、大型のシネマカメラに匹敵するスペックを備えています。

少し前なら、個人での購入は高価格のため考えられませんでしたが、個人でこのようなハイスペックカメラを低価格で購入できる時代がとうとうやってきました。そんな高品質、高価格の機材を使用する場合の経費ですが、基本的に、10万円をこえる機材は「固定資産」として登録し、減価償却をして費用化しています。10万円未満は「消耗品費」として費用計上しています。私は青色申告で30万円未満まで減価償却でも一括計上できるため、売上の状況をみて調整しています。

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カメラなど機材の「保険料」や「修繕費」も忘れず経費に計上

機材の購入費用に加えて、精密機器は壊れることがあるため、修理や交換が必要になることがあります。私の場合、カメラボディやレンズなど高額の機材を導入するときに、同時に保険をかけることが多いです。

また、購入先で物損保険が選択できる場合は、物損保険にはいることにしています。保険料は「損害保険料」、修理にかかった費用は「修繕費」として、経費に計上しています。

ちなみに保険の種類によっては、付属品まで保証されるものがありますが、気をつけなければいけないポイントがあります。

先日、充電器の不具合があり修理を依頼したところ、「修理するためには、カメラも含めすべて送ってほしい」と言われました。さらに、「修理期間は1か月ほどかかる」とも言われ、これでは仕事に支障が出てしまうし、幸い同じ充電器を持っていたこともあり、保険を使わないことにしました。充電器は、「消耗品費」で購入していたものです。

撮影でのスタジオ代や車両・駐車場など制作費は「雑費」

撮影でのスタジオ代や車両・駐車場など制作費は「雑費」

私はカメラマンだけでなく、映画製作の仕事もしています。私にとって、映画制作は自分の表現の場でもありますが、実は自分の宣伝も兼ねたポートフォリオでもあります。売上に直結しませんが、大切な活動です。そのためにも、制作費が必要であり、経費の計上は綿密に行っています。

自分が監督の作品の場合、プロデューサーに制作費を管理してもらい、最終的に経費としてまとめます。映画制作には、ロケハンやオーディション、衣装合わせなどを撮影前に実施し、撮影後にはコンテストへの出品、上映会を開くこともあります。かかる費用として、移動費や場所のレンタル代、機材・機材車のレンタル、現場での駐車場代、スタッフの食事代、その他必要な諸経費がいろいろあります。これらはすべて「雑費」として計上しています。

宿泊費や交通費、スタジオ代などクライアントに負担してもらえる場合の処理は、制作費に込みのときは、源泉徴収税も売上全額に対して計算しています。制作費と別の場合は実費でかかった宿泊費、交通費をそれぞれ別枠で記入し消費税、源泉徴収税を加えず処理しています。

また、機材置き場や作業スペースとして自宅を使っているため、家賃や光熱費などは仕事で使っている分を「按分」し、経費として計上しています。家賃に関しては機材置き場と作業場の面積を全体の面積の比率で出し、「地代家賃」に計上しています。

ガスと水道に関しては、実際に使用している頻度が少なく、大体の使用量から比率を出しています。電気は事業割合が大きいです。ガス、水道、電気は「水道光熱費」で計上しています。

「通信費」に関しても、自宅のインターネットと携帯電話に関して計上しており、ほとんどを事業で使用しているため、比率が大きくなっています。

確定申告の家事按分の処理に関しては、やよいの青色申告 オンラインを使っています。家賃や光熱費など、それぞれどのくらいの割合を事業用に使っているかを登録しておくだけで、自動的に事業用だけの金額を必要経費として割り出してくれます。

新しい技術習得のための講座受講費は「研修費」、専門誌購入費は「新聞図書費」で計上

カメラマン以外のフリーランスの方も同じだと思いますが、新しい機材や技術・サービスなどが次々に登場するため、講座を受講したり、専門誌を購入して学んだりしています。最近では良質なオンライン講座が豊富にあり、格安でどこでも学べるようになったので、こちらを利用することも増えました。

ブラックマジックデザイン社のダヴィンチリゾルブはフリーランスで使いこなしている人がまだ少数であり、講座や情報も少ないため、VFX含め本格的に学ぶことで映画制作や映像製作で差別化したいと考えています。

スキルアップのために講座を受講した場合の費用は「研修費」、書籍を購入した場合などは「新聞図書費」で計上しています。

営業活動は「研修費」として費用計上できる場で行うのが自分流

営業活動としては、人が集まるイベントに参加したり、セミナーに積極的に参加したりすることにしています。こういったスキルアップの場で、学習するとともに、いろいろな人と出会い、そのつながりから仕事が発生することがあります。そのうえ、「研修費」として費用計上できるので、一石二鳥どころかまさに一石三鳥です。

ホームページで自分の実績をアップすることで、営業活動をしている仲間も多くいます。私は個人事業のホームページを開設していませんでしたが、このたび、【IT導入補助金】の制度を活用して、IT導入支援事業者に認定された制作会社にホームページを作成していただこうと申請の準備中です。IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者などがITを導入する経費の一部を補助する制度です。

平成30年度は総予算が500億円、13万5000社に最大50万円まで支給となっています。平成30年はより多くの事業者に気軽に補助金を使ってもらう傾向のようです。そして、IT導入支援事業者とは、中小企業・小規模事業者などが自社の課題やニーズに合ったITツール(ソフトウェアやホームページなど)を提供したり、代行でIT導入補助金の交付申請などもしてくれる登録済み業者です。

この制度を活用することで、ホームページ制作費は半額程度になる見込みです。もう半分の制作費や、今後発生する維持費は費用計上することになります。「雑費」で処理するか、レンタルサーバーやドメインの管理を通信手段である(サイトやメールで通信する)と考えるならば「通信費」かなど、いろいろ考えましたが、私の場合は、サイトやメールで広告宣伝する手段であるとして、「広告宣伝費」で計上予定です。

もしも自分のホームページがなかったり、業務効率化や売上アップを目指したりするなら、IT導入支援事業者に認定された制作会社に相談することをおすすめします。自社ホームページなど営業ツールの制作費用をおさえることができたり、業績が上がるツールを提案してくれたりするはずです。

参考
IT導入補助金新規タブで開く

簡単に写真や動画が撮れる時代、機材の質を上げ、新しい技術を身につけることで、お客さまに満足してもらえるよう日々精進し、しっかり経費も計上してまた新しい仕事につなげていきたいですね。

photo:PIXTA

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この記事の執筆者酒井彰人

エンジニアや営業、映画監督のアシスタントなどさまざまな業務を経験後、平成28年4月より個人事業を開業、フリーランスとして映像制作とライター業を中心に活躍中。シンガポールで駐在経験もあり、日本や世界のどこにいても仕事ができる環境を作るべく、実績と経験を積み重ねている毎日。

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