平成30年分確定申告の変更点は?配偶者控除の範囲拡充、e-Taxの利便化などポイントを税理士が徹底解説!

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執筆者:宮原 裕一(税理士)

平成30年分確定申告の変更点は?配偶者控除の範囲拡充、e-Taxの利便化などポイントを税理士が徹底解説!

暮れが近づいてくると翌年度の税制改正案である与党の「税制改正大綱」のニュースを耳にするようになりますね。

税制改正は毎年行われるものですから、確定申告が必要な個人事業主は変更点にも注意しておかなければなりません。今回は平成30年分(2018年分)の所得税の確定申告(平成31年3月15日締切分)での変更点につき、個人事業主にかかわることを中心に解説します。


POINT
  • 配偶者控除・配偶者特別控除は控除範囲が拡充された
  • e-Taxはマイナンバーカードがなくても暫定措置で利用可能になる
  • 青色申告で30万円未満の減価償却資産の特例は期限が延長された

配偶者控除、配偶者特別控除範囲の拡充

いわゆる「103万円の壁」という言葉が関係してくるのが、この配偶者控除・配偶者特別控除です。働き方改革のひとつとして、税制上の控除を拡充することで就業調整を意識しなくてもいいように、所得税の上での「103万円の壁」を150万円まで引き上げる改正がなされました。それとともに、納税者本人が高所得者になる場合には段階的に控除が減少していく仕組みにもなっています。

それでは、改正された配偶者控除・配偶者特別控除を詳しく見ていきましょう。

まず、この控除を受けられる前提として、納税者(控除を受ける方)の合計所得金額が1,000万円以下であることが条件です。なお、所得金額は収入金額(売上など)から必要経費を差し引いた儲けのことをいいます。

また、個人事業主の方で、配偶者について青色申告の「青色事業専従者の必要経費算入」や白色申告の「事業専従者控除」の適用を受ける場合には、配偶者控除や配偶者特別控除を受けることができませんのでご注意ください。配偶者がほかの方の扶養親族になっていたり、生計を別にしたりしている場合もこれらの控除の対象外です。

つぎに、配偶者の合計所得金額がいくらかによって適用できる控除が変わってきます。具体的には次のようになります。

  • 配偶者の合計所得金額が38万円以下...配偶者控除
  • 配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下...配偶者特別控除
  • 配偶者の合計所得金額が123万円超...適用なし

そして、それぞれの制度で受けられる控除額は納税者の合計所得金額と配偶者の合計所得金額の両方に応じて決まります。控除額は以下の表のとおりです。

配偶者特別控除

ちなみに、「103万円の壁」というのはパートなどの給与所得がある場合の年収を指していましたが、なぜ103万円だったのでしょうか。

給与所得の場合には、給与という収入金額に対しての必要経費のようなものとして、「給与所得控除」という控除が最低65万円用意されています。また、所得税には誰にでも適用される所得控除として「基礎控除」が38万円あります。すると、年収103万円の場合は、給与所得控除65万円を差し引いた給与所得が38万円になり、基礎控除38万円以下となりますから、配偶者の所得税はゼロになります。さらに、上記のとおり配偶者の合計所得金額38万円以下となって配偶者控除の対象にもなります。

このことから「税金や社会保険のことはよくわからないけど103万円に抑えれば大丈夫」という考えが浸透し、年収103万円を超えてはならないという、見えない「壁」ができてしまったのです。

改正により配偶者特別控除が年収150万円の段階まで配偶者控除と変わらない金額になったので、税金上の手取りの心配は緩和されましたが、このほかにも社会保険の扶養の範囲である「130万円の壁」や、納税者がサラリーマンの場合は会社で配偶者手当を支給している場合の基準があったりするため、どこまでなら大丈夫なのかはケース・バイ・ケースといえますね。

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確定申告書に添付する控除証明書は「電磁的記録印刷書面」もOKに

生命保険料控除や地震保険料控除、寄附金控除について控除の適用を受けるためには保険会社等が発行した控除証明書原本の添付が必要でしたが、改正により「電磁的記録印刷書面」もその範囲に加えられることとなりました。

「電磁的記録印刷書面」とは難しい言葉ですが、保険会社等から紙で送られてくる控除証明書に代えて、電子メール等で交付を受けた証明書等の内容を印刷した書面のことです。電磁的記録印刷書面には証明等の情報の内容と、その内容が記録された二次元コードの両方が印刷されている状態になります。

さて、生命保険料控除などについては計算等での改正はありませんでしたが、間違えやすいところや注意しておきたいところについて、紹介しておきましょう。

● 生命保険料控除

生命保険料控除はその種類ごとに控除の限度額があるほか、総合計でも最大12万円という上限があります。「旧生命保険料」「旧個人年金保険料」は各5万円、「新生命保険料」「介護医療保険料」「新個人年金保険料」は各4万円が上限です。例えばそれぞれ上限となる「旧生命保険料」5万円、「介護医療保険料」4万円、「旧個人年金保険料」5万円の3つがあったとしても合計14万円が控除にはならず総合計の上限12万円の控除となります。

● 地震保険料控除

古い契約の控除証明書には、最大5万円控除の「地震保険」分と最大1万5000円控除の「旧長期損害保険」分の両方が記載されている場合があります。このときは、両方が控除対象になるのではなく、どちらか一方を選択して控除を受けることになりますので注意してください。なお、契約が複数ある場合は選択を組み合わせて控除額が最大になるよう組み合わせることは可能です。

● 寄附金控除

「ふるさと納税」は寄附金であるため、寄附金控除の適用があります。確定申告が必要な個人事業主は、ふるさと納税のワンストップ特例制度は利用できませんので、確定申告で寄附金控除を受けると同時に、確定申告書B第二表の「住民税・事業税に関する事項」の右側にある「寄附金税額控除」の「都道府県、市区町村分」欄に寄附金の金額を入れておく必要があります。

寄附金控除

※執筆時、平成30年(2018年)10月現在の様式です。

 

少額減価償却資産の特例が2年延長

所得税で青色申告の話となると、みなさん一度は聞いたことがあると思いますが、「中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例」という長い名前の制度があります。

何かというと、青色申告の場合で、一組が30万円未満の減価償却資産を購入などして事業のために使用するときは、年間300万円までを限度として事業所得・不動産所得の計算で全額をその年の必要経費とすることができる特例です。

減価償却資産は本来その種類等ごとに定められた耐用年数にわたって経費化していくルールとなっていますから、支払った年に前倒しで必要経費にできるのはありがたい制度です。なお、青色申告・白色申告にかかわらず10万円未満の減価償却資産は消耗品費などとして全額を必要経費にすることができることを付け加えておきます。

さて、この制度は10年以上前からずっと聞く話ですから、所得税として当然にある制度と思われているようです。実は、この制度は所得税の法律である「所得税法」にはなく、「租税特別措置法」という法律で規定されています。租税特別措置法は、所得税や法人税・相続税などの国税に対する特例の法律として位置づけされています。その中でこの特例は平成15年に3年間限定の特例として創設されました。その後期限が来る年の税制改正で毎回2年間延長され、平成30年度の税制改正でもその期限が平成32年(2020年)3月31日までと延長されました。

この制度の適用を受けるためには、青色申告決算書の減価償却費の計算欄に「措法28の2」と記入して適用を受ける宣言をすることを忘れないようにしましょう。

青色申告決算書

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e-Tax利用の簡便化

所得税そのものの改正ではありませんが、平成30年(2018年)分の確定申告書を提出する時期になる平成31年(2019年)1月以降には、e-Tax利用の簡便化が図られています。これまでのe-Taxの利用方法は、次のような流れで行っていました。

<現行方式>
(1) 事前準備
① マイナンバーカードを取得する
② e-Taxの開始届出書を提出する
③ e-TaxのID・パスワードを受領する
(2) 申告時
① 申告等データを作成する
② ICカードリーダライタを用意する
③ マイナンバーカードで電子署名をする
④ e-TaxのID・パスワードで送信する

事前準備にもいくつかの段階があり、申告時にもICカードリーダライタを用意するなど手間がかかりました。

今回の簡便化により、「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2つの方式が用意され、自由に選択できるようになりました。
それぞれの利用方法の流れは次のようになります。

<マイナンバーカード方式>
(1) 事前準備
① マイナンバーカードを取得する(事前の届出等は不要)
(2) 申告時
① 申告等データを作成する
② ICカードリーダライタを用意する
③ マイナンバーカードで電子署名・送信する(e-TaxのID・パスワードは不要)

<ID・パスワード方式>
(1) 事前準備
① e-Taxの開始届出書を提出する
② 税務署に出向いて職員が本人確認をする(平成31年からはマイナンバーカードで自宅からでも本人確認可能です)
③ ID・パスワードを受領する
(2) 申告時
① 申告等データを作成する
② 国税庁ホームページの確定申告書作成コーナーからID・パスワードを利用して送信する

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※出典:国税庁ホームページ

 

図のとおり、現行方式に比べて新しい方式では準備しなければならないものや手続きが簡略化されています。マイナンバーカード方式であれば、事前の届出は不要でマイナンバーカードとICカードリーダーがあれば大丈夫です。ID・パスワード方式では事前の届出・本人確認が必要ですが、その後は発行されたID・パスワードを利用するだけで大丈夫です。

なお、ID・パスワード方式はマイナンバーカードが普及するまでの暫定的な措置であることに注意してください。本来の方法はマイナンバーカード方式のため、普及の状況をみて廃止される可能性があるということです。可能であればマイナンバーカードを取得しておいた方がよいですね。

また、お知らせや送信結果などが格納されるメッセージボックスは平成31年以降マイナンバーカードがないと閲覧できなくなります。例外的に、これまでもID・パスワードのみで利用できた①所得税徴収高計算書の提出、②納付情報登録依頼、③納税証明書の交付請求(税務署窓口での交付分)はID・パスワード方式でも利用可能です。

まとめ

いかがでしょうか。税制改正は毎年行われますので、確定申告時期になる前に一度は確認しておきたいですね。今回は平成30年分(2018年分)の改正点について紹介しましたが、2020年分からは青色申告特別控除や基礎控除の見直しなど大きな改正もありますのでご注意ください。

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photo:Getty Images

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この記事の執筆者

宮原 裕一(税理士)
宮原 裕一(税理士)

1972年生まれ。税理士。弥生認定インストラクター。「宮原裕一税理士事務所
弥生会計を10年以上使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。弥生会計に精通した税理士として、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。
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