アルバイトやパートのモチベーションを上げるための方法は?【中小企業診断士が解説】

公開日:

執筆者:粕谷智和(中小企業診断士)

アルバイトやパートのモチベーションを上げるための方法は?【中小企業診断士が解説】

企業経営において、学生アルバイトやパートの方々のモチベーション向上はとても重要です。私達の身近にある飲食店やコンビニを見るだけでも、アルバイトのモチベーションの高低は、そのままお店の評価に直結したりするものです。従業員のモチベーションを管理することは、売上の向上や、店舗などのオペレーションの安定化にも繋がります。
今回は、アルバイトやパートのモチベーションを上げるための方法についてシチュエーションリーダーシップ理論(SL理論)の話も交えて解説します。


POINT
  • まずは、アルバイト、パートの方々の「モチベーションの源泉」を知ること
  • 部下の成熟度に合わせて、リーダー管理者の態度を変える
  • 「SL理論」の具体的な実践テクニック(各業種共通)(テンプレート付)

どうすればあがる? アルバイト・パートのモチベーション

アルバイト、パートの方々がモチベーションを落としてしまう理由はいったい何でしょうか?

そもそも、従業員が企業を辞めてしまう理由のほとんどが、

  • 仕事のやりがい
  • 人間関係
  • 報酬

に集約されるそうです。

そして、このうち2つが崩れたら、ほぼ間違いなく次の仕事を探し始めるなど、転職に関してなにかしらのアプローチを始めると言われています。さらに、アルバイト、パートの方々のモチベーションが高まる理由について、もう少し詳しく見ると、

  • 仕事のやりがい →休日等のシフト取得の柔軟さ
  • 人間関係 →楽しく仕事ができるか
  • 報酬 →時給の高さ

このようなところに集約されそうです。

もともと私も小売量販店の店長をしていた経験がありますので、アルバイトやパートの方々のモチベーションの源泉は、上記のような3つの理由に大別されると肌で感じていました。

シフトの取得を柔軟にする

これらのなかで、モチベーションを左右する理由として特に多く感じていたのは「シフトの自由さ」の部分です。

主婦のパートであれば、子供の学校行事や、子供の病気などの突発的な出来事に配慮してくれる職場なのか、といった部分に敏感になります。パートの方も「会社に迷惑をかけたくない」という思いがありますので、休日を取得するために必要以上のストレスがあると、「これ以上迷惑はかけられない」という気持ちで辞めてしまうことも。休日の取りやすさなどで他にいい条件の会社があれば、目移りしてしまうでしょう。

また、自由な時間のできる午前中だけに働きたい、夕方5時には帰りたいなど、それぞれ固有の事情があるものです。

シフトのやりくりの面などでなかなか厳しい部分もあるのですが、休日を取りやすくする環境を整えることは、パートやアルバイトの定着率のアップに繋がります。またシフト表は掲示板などに貼り出し全員に「見える化」することで、従業員の稼働の平準化調整もしやすくなります。

【シフトを柔軟にするための工夫】
・早い段階でシフト表に休日希望予定を記入させ、掲示。全員に「見える化」する

楽しく仕事ができる環境か

次に大事だと感じるのは、その仕事が「楽しくできるか」という部分です。

職場の雰囲気が良いことは、モチベーションの高い職場に求められる条件のひとつですが、ここで注意したいのは、職場の雰囲気を悪くしていたり、場を乱したりしているような特定の従業員に、リーダーがきちんと対処できているのか、という点。こうした部分について、従業員たちはシビアに見ています。

よくありがちなのは、軋轢を避けようとするあまり、そのような方を放置してしまい、優秀なアルバイト・パートの方々が真面目に働くのが嫌になって辞めてしまというパターン。これでは本末転倒になりますし、結果として業務効率も著しく悪くなってしまいます。

【楽しく仕事ができる環境づくりのための工夫】

  • 週に1回など定期的に一緒に休憩、食事をする
  • 全員参加のミーティングをする
  • 意見を発信する場を作る。意見を聞く機会の設置
  • 指導するときは個別に。皆の前で注意しないなどの配慮を

時給の高さについて

「時給の高さ」が従業員のモチベーションアップに繋がるということは言うまでもありません。時給については採用時の段階で決まることがほとんどですが、以前こちらの記事「アルバイト・パートが集まらない!中小企業診断士が教える、効果的な人材募集の方法とは?」でもご紹介したとおり、昨今の売り手市場の状況を踏まえ、あえて競合他社よりも高い時給設定に踏み切るなどの方策も、人材募集の状況によっては必要になってくるでしょう。

以前、私が勤務していた小売量販店はその地域のなかでも高い水準の時給でした。そのためか選考後に入ってすぐに辞めるような人材は比較的少なく、また金銭管理や人間関係もしっかりバランスの取れた方たちが多く集まってきました。時給が満足のいくレベルのものでないゆえに、配属後すぐに辞めてしまうなどの結果を招いてしまうのだとしたら、その後の採用コストや従業員教育のコストを考えると、時給を高く設定していた方がいいということもおおいにあると思うのです。

  • あえて競合他社よりも高い時給設定にする
  • 能力や経験に応じて時給がアップすることを周知する
  • 能力や経験、実績に応じて時給をアップさせる

「SL理論」を活用! アルバイト・パートの成熟度に合わせて指導方針を変えてみる

アルバイト、パートの方々を管理する立場の方を見ていると、指導する相手が新人であれ、ベテランであれ、常に同じ態度で指導をしている方が多いと感じます。リーダーや管理者が、成熟度のさまざまな従業員に対して接する態度や指導方法を変えないでいることは、組織の成果を生み出すうえでは効率的ではありません。

【参考記事】
【求人・採用】中小企業診断士が教えるアルバイト・パートの面接を成功させるコツ!採用結果メールのテンプレートつき

こちらの記事でも簡単に紹介させていただきましたが、アルバイト・パートの方々の成熟度に合わせて、リーダーは接する態度を変えた方がいいのです。

以前、私が小売量販店の店長職を務めていたとき、アルバイトやパートさんの管理に関してある理論を実践したところ、非常に実践的で役にたったという経験があります。P・ハーシー、K・H・ブランチャード著『行動科学の展開』という本の中で述べられている「シチュエーションリーダーシップ理論(以下SL理論)」がそれです。

【参考図書】
『行動科学の展開』P・ハーシー、K・H・ブランチャード著(生産性出版)

この理論のポイントをごく簡単に言うと「部下の成熟度に応じて、リーダーのマネジメントスタイルを変える」という考え方。この捉え方が「SL理論」の根幹と言えます。

では具体的に、部下がどのような成熟度の時にリーダーはどのような態度を取った方が良いのか。SL理論の考え方をベースに、私の経験も踏まえて以下にまとめてみました。

まず、部下の成熟度をR1~R4の時期に区分けします。本来はそれぞれの業種のタスクの習熟度に応じて時期を分けるものですが、今回はわかりやすくするために小売店のアルバイト業務全般を例に、入社からの勤務年数を基準にして解説します。

R1 新人〜入社3ヵ月程度(指示されたことだけをこなす段階)
R2 入社3ヵ月〜1年程度(仕事に慣れ、自発性が出てくる段階)
R3 入社1年から3年目程度(仕事はひと通りこなせるようになっている段階)
R4 入社3年目以上(指示なしで仕事を回せる段階)

部下の成熟度に対して、リーダー・管理者はR1の時期にはS1を、R4の時期にはS4といった形で、従業員の成熟度に合わせた対応をしていくことが成果につながります。

以下は、私の経験をもとにアルバイト・パート管理についてまとめた連関図です。経験年数については、本来のSL理論ならば従業員の経験年数にかかわらずあくまでも「成熟度に応じて対応する」ことになりますが、ここでは一応の目安として解説いたします。

「SL理論」を活用! アルバイト・パートの成熟度に合わせて指導方針を変えてみる

「SL理論」を活用! アルバイト・パートの成熟度に合わせて指導方針を変えてみる

R1期:アルバイト・パートが入社したての時期は、まずは多くの仕事を与え、覚えさせる。リーダーはなるべく指示に徹して、一緒になって仕事はしない。距離を置く

R2期:アルバイト・パートが仕事に慣れてきたら、引き続き多くの仕事を課していく。いままで距離を置いていたリーダー自らも率先してこの時期は一緒に手伝ってあげる

R3期:アルバイト・パートが十分ベテランになったら、仕事の指示を減らして自立へと促す。引き続きリーダーも率先して仕事を手伝う

R4期:アルバイト・パートに十分な自立の要素が芽生えたら、仕事の指示を与えない。アルバイト・パートが自由に動けるよう、仕事を手伝うことも減らしていく

ここで注意しなければいけないことは、R1期とR2期のリーダーの行動です。初期の頃は、「指示は出せども、一緒になってリーダーはあまり手伝わない方が良い」という考え方がポイントなのです。

優しい方はつい最初からパートやアルバイトの方々と手伝いがちになります。しかし、この時期はリーダー・管理者に対しての「距離感」をまず育み、指示命令系統の役割を認識させていくことがまず重要になります。

一方で、R2期である程度仕事に慣れてきた段階になってから、今度はリーダーが積極的に一緒に働いてみせることで、ほどよい距離感と、いい意味での親密感を育むことができます。時期の長短はありますが、最初の「けじめ」が必要ということです。この適度な距離感がお互いのストレスを防止して、モチベーションの維持向上につながります。

SL理論を用いた具体的リーダー実践テクニック

さて、私の小売量販店店長時代の経験と中小企業診断士としての考えを踏まえ、リーダーのための具体的な実践テクニックをご紹介します。

アルバイト・パートを部下にもつリーダー管理者の方々向けに、R1期からR4期までのリーダーであれば踏まえておきたい指示項目とポイントです。このテクニックは業種・業態を限らずに使えるようまとめてあります。

リーダー指示項目 リーダー指導ポイント
R1期
(オープン~3ヵ月程度)
金銭関係 レジ 就業規則の遵守 「不正は必ずバレる」ことを伝える 最初の1週間で態度が決まる
あいさつの励行 メモ取りの励行 朝礼時など 笑顔で ハキハキと 皆がやって当然の雰囲気作り
みだしなみ 髪 靴 服装 髭 清潔感 清潔感 個別指導時に常に確認 習慣づくまで
電話応対マナー 最低限度の接客マナー まずは最低限度の取次案内ができることを目標に 敬語の使い方
清掃活動 整理整頓 トレイ清掃指導を念入りに トイレは会社の鏡である
「報連相」のくせづけ 悪い報告ほど素早く 寛容な態度でまずは報告してくれることを褒めること
仕事のスピード感 まずは「できることを素早く」の癖づけ
仕事完了のくせづけ その日の仕事は、その日に終わることの癖づけ
R2期
(3ヵ月~1年程度)
売場・職場作りのルール順守 「型」の習得 まずは指示どおり、ルールどおりを徹底する 都度確認
店舗 売場 職場機械設備等 使用方法の習得 節電等コストカットに繋がる部分を率先して見せる 都度注意
棚卸など、機会希少重要業務の習得 初回は厳密に厳しく 以後そのルールと雰囲気が規範となるので特に注意
気持ちの良い接客マナー 笑顔やちょっとした話題の幅など、リーダーの事例とともに共有
売上意識の醸成 この時期は、毎日の売上をメモ取りさせるなど、意識を醸成させる
季節行事 社内行事の参加励行 なるべく全員参加させること 楽しさ感をアピール
閉開店ルール 戸締まり 金庫警備セットなど 繰り返しルール通りか確認する
社内コミュニケーションへの配慮 最初の頃は、休憩も一緒に取るなど、仕事以外の時間も配慮する
R3期
(1年目~3年目程度)
イレギュラー対応 マニュアルにない部分の対応 グループディスカッション等で事例予習
売上を上げるためのオリジナルな工夫の励行 自分たちでできる売上作りをさせる 日々の話題や参画機会の提供
棚卸など、機会希少業務の習得 2回目以降は、棚卸しの数字的な意味、意義、なぜやるのかを伝達
モチベーションの発掘 改善提案、実験売場づくり等自主参画企画と報奨褒賞の工夫
配置、担当変更 ジョブローテーション マンネリ感の打破 担当変更初回は変更後のフォローを厚く
勉強会 競合店等訪問 仕事を客観視する ワーク形式 ブレーンストーミングなど参加型に
クレーム対応 初期消火が大原則 初期消火に至らなかった理由を徹底的に考える
社内コミュニケーション 部下からの企画参加打診は喜んで参加 上司主催企画は任意性を前提に
R4期
(3年目以降)
権限移譲 自立促し 一日のシフト作成を任せてみる等、仕事に新鮮さを持たせマンネリ打破
次期リーダー候補の育成 優秀、それ以上に「謙虚で素直」な人材にリーダー仕事を伝達
部下の多能工化 定期的な担当変更を定着させ、仕事に新鮮さを持たせマンネリ打破
社内褒賞 ランキングの発表など 改善提案件数など、全社表彰を目標に掲げる 添削やヒントを与える
R3期に入ったら、まずは改善提案を1件自力で考えさせてみるなど、きっかけを与えてR4期に向けた準備をしましょう

表の記載内容以外にも、組織としてアルバイト・パートの方々に設定したいポイントがあれば、そうした項目をきちんとリーダーが洗い出し、現場で徹底指導していくことが大切です。

金銭管理、あいさつ、仕事のスピード感などは必ずR1期までにルールどおりに動けるようになってもらうことが大事です。この時期を逃すと、のちのちの修正が非常に難しくなります。特に金銭管理面などの「くせづけ」はこの時期に決まるといっても過言ではありません。

個人別成熟度カルテの活用

また、実際はアルバイト・パートの方々の成熟度の状況や成長のスピードはマチマチです。そこで、個人の資質に的を絞った個人指導用の成熟度カルテ(PDF形式)を作成しました。

→「個人指導用・成熟度カルテ」をダウンロード(無料)

こちらカルテをもとに、成熟度の目安を見ながらアルバイト・パートの方々の成熟度レベルを設定し、本人の得意・不得意や傾向を洗い出します。その後、カルテの成熟度に応じてリーダーの具体的な行動指針や指導項目、どんなことを重点指導していくのかを「見える化」させていきます。

カルテを作成することで、アルバイトやパートの一人ひとりの資質を把握することに繋がり、それぞれのレベルに合わせた最適な指導指針を取れるようになっていきます。成熟度にあわせて最適な行動指針を選ぶことで、アルバイト・パートの方々に必要以上の無理を強いることなく、組織内のモチベーション向上につなげていくことができるのです。

なによりの特効薬は「褒める」こと

今回は、アルバイト・パートのモチベーションを上げるための方法として、それぞれのモチベーションの源泉に直接アプローチする対処方法と、SL理論を活用したリーダー管理者の観点からのアプローチをご紹介しました。

最後に、実際の場面でどのようなアプローチをとるにしても、忘れずに行って欲しいことがあります。それは相手の状況に「共感」し「褒める」ことです。これは今回挙げたどちらのアプローチに対しても、ぜひセットで使って頂きたいところです。

何かアルバイト・パートの方々に対して改善のアクションを促した際や、指導をした際には、必ず「褒める」こととセットで行うことが、成果やモチベーションの向上を生み出すうえでの重要な鍵となります。

モチベーションの管理やリーダーシップのとり方については、まだまだいろいろな手法があると思いますが、この「褒める」ことだけは、どのメソッドにおいても親和性が高い特効薬になります。ぜひセットで使うことを覚えておいてください。

photo:Getty Images

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この記事の執筆者

粕谷智和(中小企業診断士)
粕谷智和(中小企業診断士)

中小企業診断士、宅地建物取引士。2001年大手衣料量販グループ入社、入社1年で店長に。店舗オペレーションに通じ、マニュアル改善においては全社表彰を3度受賞。2009年より北海道音楽企業に入社。エリア統括として、エリア内支店経常利益昨年対比800%増を実現。2014年独立。創業、補助金・助成金申請、各種経営計画策定、特に各地セミナーにおける販売促進指導や、個々の事業者様の強み・セールスポイントを引き出し、外部発信していくことを得意としている。一般事業者様向けのセミナーはもちろんのこと、地域経営支援団体・経営相談員様向けの指導セミナーも開催している。

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