IT導入補助金を中小企業や個人事業主が申請する方法とは?

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執筆者:酒井彰人

IT導入補助金を中小企業や個人事業主が申請する方法とは?

中小企業や小規模事業者(個人事業主)が「ホームページを作りたい」「使いやすい顧客管理システムが欲しい」など、ITツールの導入を検討している場合、ITツールを導入する経費の一部を経済産業省が補助する「IT導入補助金」の活用がおすすめです。

今回は、個人事業主である筆者が実際にIT導入補助金を活用して営業活動のためにホームページを作成することになった体験を元に、IT 導入補助金の申請方法についてご紹介します。



POINT
  • IT導入補助金は中小企業や個人事業主がITツールを導入する経費の一部を経済産業省が補助する制度
  • 補助を希望する事業者はIT導入支援事業者(ITベンダー)と協力して申請する必要がある
  • IT導入補助金で生産性がアップする見込みがある

IT導入補助金ってなに?助成金とはどう違うの?

フリーランスのカメラマンで、映画製作もしている私は、個人事業主となって約3年、自分のホームページをもっていませんでした。

これまでクライアントからの紹介、イベントや企業の集まりなどで知り合った方から、仕事の依頼をいただくことが多かったのですが、ホームページで自分の実績をアップすることで、営業活動をしている同業者やフリーランスの仲間が多くいたので、自分の営業先の拡大のために、ホームページの作成を考えるようになりました。

実は私自身、システムエンジニアとして働いていた経験もあり、自分でホームページを作成するか、業者に依頼をするか迷っていました。

そんなときに、同業の知人が「IT導入補助金」を活用してホームページを開設したことを知りました。そして、自分も同じようにホームページの作成ができるのではないかと、IT導入補助金について調べることにしました。

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者(個人事業主)が自社の課題やニーズに合ったITツール(ホームページ、顧客管理や販売管理のソフトウエア、社内SNS、クラウド利用費等)を導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。2018年度の一社あたりの補助金は上限50万円、下限15万円となっています。

補助を受ける事業者は、IT導入補助金事務局(一般社団法人サービスデザイン推進協議会が運営)にあらかじめ登録されたIT導入支援事業者(ITベンダー)に相談を行い、生産性向上のため適切なITツールを選択し、申請することができます。

IT導入支援事業者とは、ITツールを導入したい事業者に、ITツールの説明、導入や運用方法のサポートをする事業者のことです。

IT導入補助金の公募は年に3回おこなわれ、2018年の第三次公募に関しては、交付申請期間が9月12日から12月18日でした。その期間内に月1~2回の締切が設定されており、締切から10日後が交付の可否の決定日となっています。

【参考】
IT導入補助金
※最新情報は公式ホームページから確認しましょう。

今回解説するIT導入補助金は経済産業省の管轄となり、審査に通過しなければ受け取ることができません。

補助金とよく似た制度に「助成金」というものがあります。
補助金と助成金は、どちらも国や地方公共団体から受け取ることのできる返済不要の資金のことですが、支給における条件が異なります。

助成金......国が示す支給要件を満たしていれば誰でも受け取ることができ、主に厚生労働省が管轄する制度が多い。

補助金......経済産業省が管轄する制度が多く、支給要件を満たしていても審査に通過しなければ受け取ることができない。

ですので、IT導入補助金が支給されるための要件を自分が満たしているのか確認し、補助金に採択される確率を高めるための「加点項目」もおさえておく必要があります。

【関連記事】
行政書士・武田氏に聞く小規模事業者が補助金・助成金を活用する方法【資金調達】

具体的にIT導入補助金の交付申請の流れを見ていきましょう。

IT導入補助金交付申請の流れとは?

IT導入補助金を受けたい事業者は、次のような流れで交付申請をします。

① IT導入補助金ホームページや公募要領を読み、理解を深める。
② 申請への事前準備をする。
③ IT導入支援事業者に申請マイページの開設依頼をし、開設後に必要な情報を入力する。
④ IT導入支援事業者がITツール情報の入力をする。
⑤ 事業者側でIT導入支援業者が入力した内容を確認し承認する。
⑥ IT導入支援事業者が事業者の代理で申請する。

 

①②③⑤はIT導入補助金を申請する事業者、④⑥はIT導入支援事業者がおこない、おたがいに協力して申請する必要があります。実際の手順を詳しく見ていきましょう。

① IT導入補助金ホームページや公募要領を読み、理解を深める

公式のHPを確認すると、かなりのボリュームが記載されていることに圧倒されますが、IT導入補助金の目的をよく理解し、自分が要件を満たしているのか確認しなくては始まりません。

まずは、IT導入補助金公募要領を読み、補助事業の概要を読み込み、IT導入補助金の対象事業者となるには満たすべき11要件があるので、自分が該当しているか確認します。

  1. 生産性の向上に資するITツールを導入する中小企業・小規模事業者(個人事業主)であること。
  2. 交付申請時点において、日本国内で事業を行っている個人または法人であること。
  3. 「風俗営業」、「性風俗関連特殊営業」及び「接客業務受託営業」を営むものでないもの。
  4. 申請者(中小企業・小規模事業者等)またはその法人の役員が反社会勢力でないこと、なんらかのかかわりがないこと。
  5. ITツールを導入することで、生産性向上が実現する事業計画があること。
  6. 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または「★★二つ星」いずれかの宣言を行うこと。
    また、宣言内容の確認に際し事務局が一部の交付申請情報を独立行政法人情報処理機構(IPA)と共有することに同意すること。
  7. 補助金交付申請内容については、「IT導入支援事業者を含む"第三者"による総括的な確認」を受けること。
  8. IT導入支援事業者を通じて、生産性向上に係る情報(売上、原価、従業員数及び就業時間)等を事務局に報告すること。
  9. 補助事業にかかわるすべての情報について、事務局から国に報告された後、統計的な処理をされて匿名性を確保しつつ公表される場合があることに同意すること。
  10. 経済産業省から補助金等指定停止措置または指名停止措置が講じられていない者であること。
  11. 「IT導入支援事業者(ITベンダー)」に登録されていない者であること。

特にたいへんだったのは、事業計画に関する部分です。個人事業主である私は事業計画書の作成をしたことがなかったため、内容のイメージができませんでした。そのため、コンサルティング会社主催の起業セミナーなどでおこなわれている無料の事業計画書の書き方講座に参加し、どのようなものか学び、参考にしました。

【関連記事】
知っておきたい基礎知識「事業計画」
事業計画書には何を書く?計算シート付きのテンプレートを公開

また、中小企業・小規模事業等みずからが情報セキュリティ対策に取り組む「SECURITY ACTION」制度の自己宣言も、今回の申請のために、申し込みフォームから行いました。

これは、中小企業みずからが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」をベースに取り組み目標を2段階用意しています。

 

IT導入補助金の対象事業者の11要件については、詳しくはIT導入補助金ホームページの交付申請の手引きを参考にしてください。

②申請への事前準備をする。

IT導入補助金申請前の準備が、一番ボリュームが多いかもしれません。

経営診断ツールを使って、自分の経営課題、長所や短所を分析する
まず、IT導入補助金ホームページにある「経営診断ツール」を使って、自分の経営課題、長所や短所を分析します。

経営診断ツールは、従業員数や業種などの基本情報、最新決算期を含めた2期分の決算に関する財務情報、経営理念や経営意欲などの非財務情報に答えることで、自社の課題を把握できます。

 

ITツールやIT導入支援事業者を選ぶ
次に、経営診断ツールの診断結果に基づき「ITツール選定ナビ」でITツールを決定します。ITツールの検索方法は「機能検索」「診断検索」の2種類があるので、用途に合った検索方法が可能です。

 

ITツールは解決指針として複数表示されるので、そこから選択することができます。また、複数選択も可能です。

同じタイミングで、ITツールを提供してもらうIT導入支援業者検索、ウェブでの検索や知人からの紹介など、いくつかのアプローチで探します。

見つけたIT導入支援事業者がホームページ制作、販売管理システムの開発など、どんな得意分野を持っているのか確認し、ITツールの見積もりをとり、費用と機能、コミュニケーションのしやすさなどといった観点から比較検討した上で決定することがおすすめです。

私の場合は自分のホームページをつくりたかったので、IT導入補助金を活用してホームページ制作をつくってもらった知人に、IT導入支援事業者の方を紹介してもらうことにしました。

加点となる取組、関連事業
IT導入補助金の審査時に、加点となる項目がいくつかあるので、チェックしておくといいでしょう。

おもてなし規格認証」は、サービスを提供するすべての事業者にとって、高品質なサービスの提供・維持・向上を促し、より高い生産性を実現するため、サービス品質の一部を「見える化」することで、下記の実現をはかる制度です。

  1. 質の高いサービス提供を行っている事業者の見える化支援
  2. 質の高いサービスを提供したいと考える事業者への手引きの提供
  3. 消費者の高品質なサービス享受の機会増加

この認証を受けることにより、信頼度が上がるイメージです。サービス品質は「紅」、「金」、「紺」、「紫」の4つがあり、紫認証がもっともサービス品質が高い認証となりますが、認証機関による第三者認証が必要で有償となります。加点となるので、まずは無料で取得可能な紅認証を受けておくといいでしょう。

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おもてなし規格認証」より抜粋

 

また、①地域の特性を生かして、②高い付加価値を創出し、➂地域の事業者に対する相当の経済的効果を及ぼす「地域未来牽引企業」であると都道府県に認定されていることも加点要素となります。詳しくは地域未来投資促進法で確認しましょう。

ちなみに、経済産業省において、2017年12月に地域未来投資促進法における地域経済牽引事業の担い手の候補として、「地域未来牽引企業」が2,148社選定されています。

生産性向上特別措置法案に基づく固定資産税の特例率をゼロとする意向を表明した自治体に所属していることも加点対象となります。

③ IT導入支援事業者に申請マイページの開設依頼し、必要な情報を入力する。

ここからはIT導入支援事業者との共同作業になります。交付申請を始めるにあたり、手続きを行う際に必要となる、申請者に付与されるポータルサイト「申請マイページ」が必要となります。

IT導入支援事業者による申請マイページが開設されたら、事業者はマイページのユーザー登録や、基本情報の入力、事前準備で実施した「経営診断ツール」の診断結果のIDや、「SECURITY ACTION」のアカウントIDの情報、事業計画等を入力しましょう。入力が終わると、申請情報は、IT導入支援事業者へ送信されます。

④ IT導入支援事業者によるITツール情報の入力

次に、IT導入支援事業者が事業者の入力した情報を確認し、労働生産性の計画数値や関連施策情報、導入するITツールなどの情報の入力をします。入力が終わると、事業者に確認依頼が届きます。

⑤事業者側でIT導入支援業者が入力した内容を確認し承認する。

ここでは事業者が、IT導入支援業者が入力した内容や、交付申請内容を確認し、承認します。気になることがあればここで確認して、IT導入支援業者に差し戻すこともできます。

⑥IT導入支援事業者が代理申請を実行

事業者側が確認し、承認の後、IT導入支援事業者が代理申請を実行します。

交付申請後

交付申請締め切り日の、およそ10日後が交付決定日となります。IT導入補助金では、申請時の各種通知は事務局からメールが届きます。そのため、メールを必ず受信できるメールアドレスを、事業者もIT導入支援事業者も交付申請時に登録する必要があります。

晴れて交付決定となった事業者は補助事業を開始し、事業完了後は実績報告を行います。実績報告とは、交付決定後、契約、納品、支払を済ませたことを補助金事務局へ報告することを意味しています。IT導入支援事業者と補助事業者は、共同で実績報告を作成し、IT導入支援事業者が、事務局へ提出します。報告の際には、補助対象経費について支払い実績のわかる証憑類の提出が必要です。

事業実施の際は「事業実施・実績報告の手引き」を参考に進めます。

事業終了後5年間は、毎年4月1日から翌年3月末日までの1年間における生産性向上に関する情報・実績を報告することになっていたのですが、三次公募での改定として1年分(1回)に緩和されました。これは一次・二次公募で交付決定を受けた事業者も適用されます。

IT導入補助金の注意点

次に、IT導入補助金の注意点をまとめました。

交付前に導入したITツールは補助金の対象外に

IT導入補助金は、あくまで交付が決定したあとに「契約・発注・支払」をおこなったITツールが対象になります。そのため、過去に導入したITツールや、交付が決定する前に発注したツールに関しては補助金の対象外になります。

固定資産へ投入した部分のIT導入補助金は、圧縮記帳の対象に

圧縮記帳とは、補助金などの臨時的に発生する一定の収入にかかる税金を、補助金を受取ったときに一度に課税するのではなくて、税金の支払いのタイミングを次年度以降に遅らせる制度となります。

IT導入補助金に関しても、圧縮記帳を適用することによって、何年かに分散して税金を支払うようになることから、一度に税金を支払う必要がなくなり、補助金を受け取った効果がそのまま享受できるようになります。

IT導入補助金の確定申告処理方法

IT導入補助金の確定申告の処理方法も気になって、申請と同時期に調べました。ホームページで自分の実績をアップすることで、営業活動になります。広告宣伝をする手段であると考えているので、ホームページの維持費は「広告宣伝費」で計上予定です。サイトやメールで通信をすると考えるならば「通信費」、もしくは「雑費」という考え方もあると思います。

IT導入補助金を活用することで、ホームページ制作費は、半額になる見込みです。また、ホームページを作成してもらっている間は、打ち合わせは何度か予定していますが、基本的にIT導入支援事業者に任せて、事業に専念できる環境になると思います。

ホームページを作ることで多くの方から依頼いただく可能性が高くなると考えています。営業先の幅が広がるため、確実に売上の向上にもつながると思います。どんどん新しい仕事に挑戦し、お客様に満足してもらえるようにがんばっていきたいですね。

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photo:Getty Images

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この記事の執筆者

酒井彰人
酒井彰人

エンジニアや営業、映画監督のアシスタントなどさまざまな業務を経験後、平成28年4月より個人事業を開業、フリーランスとして映像制作とライター業を中心に活躍中。シンガポールで駐在経験もあり、日本や世界のどこにいても仕事ができる環境を作るべく、実績と経験を積み重ねている毎日。

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