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貸倒引当金とは?なぜ負債?税理士が教える、仕訳や計算方法まで

公開日:

執筆者:宮原 裕一(税理士)

貸倒引当金を負債として処理するのはなぜ?貸倒引当金の対象となるもの、ならないものって?

日常生活で、さらには商売での日々の取引の中でも、「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)」という言葉を聞くことは少ないでしょう。
掛け取引などを行う上で、発生する可能性がゼロではない貸し倒れ。貸倒引当金は貸し倒れに備えるための経理方法です。

今回は個人事業主の貸倒引当金について、その意味から計算方法、仕訳の仕方までを解説します。



POINT
  • 貸倒引当金は将来に発生するかもしれない貸し倒れに備えてあらかじめ用意しておくお金のこと。
  • 貸倒引当金を計上するためには、将来の損失見込みがどのくらいであるのかを検討する必要がある。
  • 貸倒引当金を計上するためには、所得税の取り扱いとして一定の制限が設けられ、青色申告・白色申告で適用範囲が異なる。

貸倒引当金ってなに?

決算作業を行うときには「貸倒引当金」という言葉が出てきます。簿記を勉強したことのない方にとっては、まず何のことだかわからないでしょう。

「貸倒引当金」は、「かしだおれひきあてきん」と読みます。
「貸し倒れ引き当て金」のような送り仮名もないので、読み方によっては「タイトウイントウキン」とも読めますね。

「貸し倒れ」とは、売上代金などで未回収のお金が相手先の倒産などによって回収できなくなってしまったことを意味します。そして、「引き当て」とは、将来の支出のために準備しておくことを意味します。これを合わせて考えると、貸倒引当金は将来に発生するかもしれない貸し倒れに備えてあらかじめ用意しておくお金というようなイメージになりますね。

簿記の世界では、基本的には現実に起こっていないことは取引として認められません。貸し倒れは実際に売上代金などを回収できなくなったときに初めて「貸倒損失(かしだおれそんしつ)」として帳簿づけするものです。

しかし、商売をするうえで貸し倒れが発生する可能性は避けられないものであるため、会計慣行でもあらかじめ貸し倒れを見積もって損失に計上することが認められています。それが貸倒引当金です。

貸倒引当金は、将来に起こりうる貸し倒れによる損害を、あらかじめ損失に計上して引当金としておくことで、お金を手元に置いておくことができるのです。なぜお金が残るかというと、本来は貸し倒れによって売上代金などのお金が回収できなくなるのですが、貸倒引当金の時点では、まだ貸し倒れていないのに損失にするため、その損失分のお金が手元でういてしまうからなのです。

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貸倒引当金はどう計上する?

貸倒引当金を計上するためには、将来の損失見込みがどのくらいであるのかを検討する必要があります。しかしながら、そもそも実際に発生していない損失を計上する話ですので、所得税の取り扱いとして一定の制限が設けられ、青色申告・白色申告で適用範囲も違っています。

個別評価による貸倒引当金

個別評価による貸倒引当金は、事業上で生じた金銭債権のうち、会社更生法の規定による更生手続開始の申立てや更生計画認可の決定など一定の事由が生じているものが対象になります。
個別評価による貸倒引当金は、事業所得・不動産所得・山林所得についての貸金等が対象となり、青色申告・白色申告のどちらでも適用できます。

個別評価による貸倒引当金の金額は、その貸金等ごとに計算し、その貸金等に生じている事由の区分によって、取立て等の見込みがないと認められる金額や、貸金等の金額の50%などさまざまとなります。個別評価による貸倒引当金を設定するケースは少ないと思いますので、詳細については国税庁の手引きをご覧ください。

一括評価による貸倒引当金

一括評価による貸倒引当金は、事業上で生じた売掛金などの金銭債権(貸金)のうち、上記の個別評価を適用しないものが対象となります。
一括評価による貸倒引当金は、事業所得についての貸金が対象となり、青色申告のみ適用できます。

一括評価による貸倒引当金の金額は、年末12月31日現在の一括評価貸金の帳簿価額の合計額に5.5%(金融業は3.3%)を掛けた金額が繰入限度額となります。

繰入限度額=年末の一括評価貸金×5.5%(金融業は3.3%)

貸倒引当金計上の注意点と節税効果

貸倒引当金を経費にするためには、確定申告書に貸倒引当金に繰り入れた金額の明細の記載があることが条件です。
具体的には青色申告決算書(一般用・農業所得用)に記入する欄があり、さらに個別評価による貸倒引当金については「個別評価による貸倒引当金に関する明細書」をあわせて提出する必要があります。

貸倒引当金計上の注意点と節税効果

なお、貸倒引当金は年ごとに計算して引き当てるものです。翌年に貸し倒れが生じなかった分については、全額を戻し入れる(収入にする)必要があります。
これを毎年繰り返すのですが、その年分の繰入より前年分の戻し入れが多い場合はその分所得が大きくなるといったことも生じます。
貸倒引当金自体は将来の損失に備えるためのものですので、適用初年度を除けばそれほどの節税効果はないといえますね。

また、実際に貸し倒れが生じてしまった場合も、見込額として先取りした貸倒引当金の部分は経費計上済みであることにも注意してください。

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一括評価による貸倒引当金の対象となる金銭債権とは?

一括評価による貸倒引当金の対象となる金銭債権は、事業の遂行上で生じた売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権に限られています。

具体的には、つぎのものが挙げられます。

  • 売掛金、貸付金
  • 未収加工賃、未収手数料、未収地代家賃、貸付金の未収利子など
  • 受取手形(割引手形、裏書手形)

簡単に言うと、本業の営業上で生じる金銭債権が対象になるということですね。

一括評価による貸倒引当金の対象とならない金銭債権とは?

一方で、事業の遂行上で生じたものであっても、本業の売上に直接かかわりのない金銭債権は一括評価による貸倒引当金の対象外となります。

具体的には、つぎのものが挙げられます。

  • 保証金、敷金、預け金その他これらに類する金銭債権
  • 手付金、前渡金等のように、資産の取得の代価又は費用の支出に充てるものとして支出した金額
  • 前払給料、概算払旅費、前渡交際費等のように将来精算される費用の前払として一時的に仮払金、立替金等として支出した金額
  • 雇用保険法、雇用対策法、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定に基づき交付を受ける給付金等の未収金
  • 仕入割戻しの未収金
  • 預貯金、公社債の未収利子(利子所得)
  • 事業とは関係のない個人的な貸付金(家事費)

貸倒引当金の繰入方法とは?

貸倒引当金の繰り入れは、決算作業として年末に仕訳をすることで帳簿付けします。その方法には総額を入れ替える「洗替法(あらいがえほう)」と差額を足し引きする「差額補充法(さがくほじゅうほう)」の2種類があります。

洗替法(あらいがえほう)

洗替法は、貸倒引当金の総額をその年分に繰り入れ、前年分の貸倒引当金の総額を戻し入れるという方法です。

例1:開業初年分の貸倒引当金の繰入限度額は100,000円となったので、限度額いっぱいの10万円を繰り入れることとした。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貸倒引当金繰入100,000貸倒引当金100,000

借方(左側)「貸倒引当金繰入」は費用の勘定科目です。この仕訳をすることで、まだ発生していない損失の見込み額が当年分の必要経費となるのです。貸倒引当金については次項で説明します。

例2:例1の2年目の決算となり、2年目の繰入限度額は120,000円だった。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貸倒引当金100,000貸倒引当金戻入100,000
貸倒引当金繰入120,000貸倒引当金120,000

1行目の貸方(右側)「貸倒引当金戻入」は収益の勘定科目です。例1で必要経費とした100,000円について、この仕訳することで、2年目に戻し入れて収入とします。一方で2年目の繰り入れについては初年度と同様に総額を繰り入れる仕訳をします。

差額補充法(さがくほじゅうほう)

例1:開業初年分の貸倒引当金の繰入限度額は100,000円となったので、限度額いっぱいの10万円を繰り入れることとした。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貸倒引当金繰入100,000貸倒引当金100,000

初年度については、洗替法とまったく変わりありません。

例2:例1の2年目の決算となり、2年目の繰入限度額は120,000円だった。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貸倒引当金繰入20,000貸倒引当金20,000

差額補充法では、年末に残っている貸倒引当金の残高に、その年の貸倒引当金の総額との差額を足し引きして残高をあわせるという方法です。2年目の年末には初年度に繰り入れた100,000円が残っていますから、2年目の総額120,000円との差額20,000円を追加で繰り入れることにより、貸倒引当金の残高が120,000円になるように仕訳をします。

例3:例1の2年目の決算となり、2年目の繰入限度額は90,000円だった。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貸倒引当金10,000貸倒引当金戻入10,000

2年目の年末には初年度に繰り入れた100,000円が残っていますが、このケースでは2年目の総額90,000円に対して10,000円残高が多くなっています。この場合には差額10,000円を戻し入れることにより、貸倒引当金の残高が90,000円になるように仕訳をします。

なぜ貸倒引当金は負債として処理する?目的とは?

さて、貸倒引当金は簿記の仕訳では貸方(右側)がプラスの数字になる勘定科目です。
所得税の青色申告決算書の4ページ目にある貸借対照表では、右側の「負債・資本の部」に貸倒引当金があらかじめ印刷されています。つまり、負債の項目になっているのですね。

冒頭で説明しましたが、引当金は将来の損失などに備えるために計上しておくものです。例えば、引当金のひとつに賞与引当金というものがあります。賞与引当金は賞与算定の基礎になる期間が決算期をまたぐ場合に、当期分の見込額を計上するものです。これは将来に賞与を「支払う」ことに備えて経費に繰り入れていますので、引当金は将来支払うかもしれない負債となるのですね。

なお、現在の税務上では、期末時点で将来支払うことが確定していないものは経費になりません。
賞与引当金の計上をしても経費として認められませんのでご注意ください。

一方で、貸倒引当金も負債の項目になっていますが、貸倒引当金は将来に「支払う」可能性のものではなく、「受け取れなくなる」可能性のものについて計上されていますね。どちらかというと支払う「負債」ではなく、受け取れるものが無くなってしまう「資産のマイナス」のほうがしっくりくるかと思います。実際に、法人の決算書などでは貸倒引当金は資産の部で売掛金などのマイナス項目として表示されています。

なぜ貸倒引当金は負債として処理する?目的とは?

貸し倒れが発生したときの仕訳はどうする?

さて、貸倒引当金は将来の損失への備えということでした。では実際に貸し倒れが発生したときはどのように仕訳したらよいのでしょうか。なお、貸し倒れが損失として認められるためにはいくつかの条件がありますが、それは満たしているものとします。

貸し倒れの仕訳

例1:前年の売上代金150,000円につき、貸し倒れが発生してしまった。なお、前年において貸倒引当金を100,000円繰り入れている。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貸倒引当金100,000売掛金150,000
貸倒損失50,000

前年において100,000円をすでに将来の損失見込みとして経費にしていますので、貸倒引当金100,000円を売掛金150,000円から相殺します。それでも残った50,000円を、貸倒損失として本年の損失として必要経費にします。

例2:本年の売上代金150,000円につき、貸し倒れが発生してしまった。なお、前年において貸倒引当金を100,000円繰り入れている。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貸倒損失150,000売掛金150,000

前年の貸倒引当金は前年の金銭債権についてのものなので、本年の売上が貸し倒れになった場合には、そのまま貸倒損失とします。

償却債権取立益の処理

例:貸し倒れとして処理していた売上代金50,000円につき、先方の業績回復により支払いを受けた。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金50,000償却債権取立益50,000

既に貸倒損失として損失計上していた債権について、あらためて支払いを受けることができた場合には、「償却債権取立益(しょうきゃくさいけんとりたてえき)」という勘定科目を使って収益として仕訳をします。

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この記事の執筆者

宮原 裕一(税理士)
宮原 裕一(税理士)

1972年生まれ。税理士。弥生認定インストラクター。「宮原裕一税理士事務所
弥生会計を10年以上使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。弥生会計に精通した税理士として、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。
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