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事業承継とは?後継者選び、株式配分、税金対策の注意点【税理士が解説!】

公開日:

執筆者:渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

事業承継とは?後継者選び、株式配分、税金対策の注意点【税理士が解説!】

日本の企業の大部分を占めている中小企業。今その現場で問題となっているのが、事業承継です。
社会問題にまで発展している事業承継について、中小企業で働く人もそうでない人もその概要は知っておいて損はありません。
今回は、事業承継についての基本的なところを説明していきます。



POINT
  • 事業承継とは、オーナー経営者が後継者に経営を引き継ぐことである
  • 事業承継には、後継者選びや株式の配分、税金対策などの検討事項がある
  • 事業承継税制には、株式の贈与にかかる納税猶予と、株式の相続にかかる納税猶予がある

事業承継とは

事業承継(じぎょうしょうけい)とは、一言でいえば、オーナー企業の経営者が、その事業を後継者に継がせること。オーナー企業とは、株式会社であれば、オーナー経営者である社長が株式のすべて、もしくは大部分を保有している企業です。

株式といえば、証券市場で売買するというイメージを持つ方も多いかもしれませんが、中小企業など上場していない会社の中にはオーナー企業も数多く存在します。株のすべてを社長が持てば、会社の権限はほぼ社長に一極集中します。

また、近年増えてきた合同会社もその多くがオーナー企業です。ただ、合同会社は2006年にできた比較的新しい会社の形です。

事業承継が問題になるのも、多くは株式会社であると考えられますので、以下では株式会社を前提にしています。事業承継をするにあたって検討すべき課題はさまざまですが、大きく分けて3つあります。

①後継者を誰にするか
②オーナー経営者が持っている株をどのように分配するか
③事業承継に伴う税金をどうするか

詳しく見ていきましょう。

事業承継の課題① 後継者を誰にするか

後継者選びは、事業承継で多くの経営者が悩むところです。後継者がいなくて廃業というニュースもよく目にするようになりました。

後継者は会社の経営を行うわけですから、ちょっとした仕事を任せる人を探すのとはわけが違います。特に中小企業では、カリスマ経営者が一代で大きくしてきたということも珍しくないので、どのような後継者にするかということが会社の命運を左右しかねません。

後継者選びの方法としては、配偶者や子などの親族を後継者とするケース、社内の人材を後継者とするケース、社外から後継者を引き抜いてくるケースが考えられますが、いずれにしても現経営者としては、数年の長期的なスパンで後継者選びを考えないといけません。

また、どうしても後継者が見つからないといった場合には他社による合併や買収、いわゆるM&Aという方法もあります。つまり自社を他社に売り払うということです。

M&Aであれば、買収した会社で従業員の雇用も維持できますし、自社が育ててきた技術やノウハウなどをなくさずに済みます。また、現在の経営陣を後継者として、オーナー経営者の株式を現経営陣に引き継ぐマネジメント・バイアウト(MBO)という方法がとられることもあります。

事業承継の課題② オーナー経営者が持っている株をどのように分配するか

オーナー経営者が持っている株をどのように分配するかということについては後継者選びとも関連してきます。

親族が後継者になる場合には、経営権を集中させるため、株式の大部分をその後継者に引き継がせる必要があります。

例えば株式を50%超持っている株主は経営者の選任権限を持つため、後継者でない者が株式を持つと、経営が不安定になります。

このように、後継者が会社の株式の大部分を引き継ぐと、他の相続人が引き継ぐ資産と差が生じることがあります。こうなるとまさに相続が争族に発展します。

そうならないように、経営者は、例えば遺言をするなど生前にできる限り対策を取っておく必要があります。

事業承継の課題③ 事業承継に伴う税金をどうするか

事業承継に伴う税金をどうするかということは、相続税や贈与税が関係します。何も対策を取らないと、事業承継に伴って、これらの税金が多額になり、事業承継そのものにも影響を及ぼしかねません。

そこで事業承継に関する税金の特例などを使って、なるべく納税額を低く抑えることが重要です。

事業承継の手順

一口に事業承継といっても、いくつかのステップに分かれています。またそれぞれのステップも簡単な手続きをするようにトントンと進むわけではなく、長い年数をかけて計画的に行っていくことになります。

ステップ1 後継者の選定

後継者の選定から教育までは、事業承継のプロセスの中でも最も時間がかかるものかもしれません。例えば、子を後継者にする場合には、次のような方法が挙げられます。

  • ほかの会社に勤務させることで経験を積ませる
  • 子会社の経営を任せる
  • 自社でさまざまな部門を経験させる
  • 自社で取締役などの責任ある地位で経営センスを身に着けさせる

いずれも数か月で終わる話ではなく、数年かけてやっていくことになります。また、自社の古参の役員や従業員との信頼関係の構築も後継者選びの重要な要素です。

また、子などの親族が事業承継を望まなかったり、経営者としての資質を備えていなかったりという場合には、社内の役員を登用したり、社外から招くこともあります。

ステップ2 株式・財産の配分

後継者が決まった後には、株式や財産の配分の問題があります。現オーナー経営者が存命の間は、オーナー経営者=大株主なので株主の決議といった問題は生じませんが、オーナー経営者が亡くなり相続が発生したときに、どのように株式を配分するかということが、その後の会社の経営を左右します。

基本的には過半数の株式を持つ株主は役員の選任が可能です。

例えば次男を後継者に決めていても、オーナー経営者が亡くなって相続が発生した場合、後継者の任期満了とともに、オーナー経営者の配偶者と長男が結託して、長男を社長にするという株主総会の決議を行うことも可能になります。

これだと、せっかく先代が会社経営を考えて後継者を選んだことが台無しになってしまいます。(会社法では、株式会社の役員の任期は最長でも10年ということになっています)

このようなことを防止するために、最低でも50%超、さらには可能であれば3分の2の多数を後継者が保有できるように、オーナー経営者が存命の間に対策をしておく必要があります。

最もシンプルにいくなら、遺言書で後継者が自社株や事業用資産を相続するということを残す方法があります。

しかし、あまりに後継者に相続財産が偏りすぎると、その他の相続人との間で争いが発生します。

遺言の内容にかかわらず、その他の相続人には遺留分といって2分の1(場合によっては3分の1)は、財産を引き継ぐことができます。

遺留分の行使は各相続人の事由ですが、遺留分の行使に備えて、オーナー経営者の資産をできる限り現金化しておく、後継者を受取人とする生命保険に加入しておくなどの対策が必要になってきます。

さらに遺留分対策として、後継者が生前に贈与を受けた株式を遺留分の基礎に入れないなどの合意ができるという特例も法律により定められていますので、これらの活用も一つの手です。

また、株式自体をうまく配分することで後継者に権限を持たせるという方法も考えられます。普通の株式は1株につき1議決権というルールがありますが、種類株式といって、それとは異なる株式を発行することも可能です。

  • 一定の事項について議決権を持たない株式(議決権制限株式)
  • 配当で優先権がある株式
  • 一定の事由が発生したときに、株主の同意なしに会社が株主から取得できる株式(取得条項付株式)

上記のような株式があります。種類株式を活用することで、例えば後継者以外の相続人が相続する株式には、優先配当を与える代わりに、議決権を制限するということも可能になります。

ステップ3 債務の連帯保証・担保の処理

事業承継において、もう一つ考慮しておかなければならないのが、オーナー経営者個人が行っている債務の保証や担保の提供です。

中小企業では、会社が金融機関から資金を借りるためにオーナー経営者個人が連帯保証人になっていることや、自己所有の不動産を担保に供していることがあります。

金融機関としては、リスク回避のために連帯保証や担保を取っているわけですから、経営者が変わっても、これらの保証は必要です。

一方で、オーナー経営者が引退して後継者に経営が引き継いだ後も、オーナー経営者の連帯保証が残るのはオーナー経営者にとっても負担ですので、後継者が新たに連帯保証人となる必要が出てきます。

金融機関との交渉次第ですが、会社の経営状況、会社の資産の保有状況や債務状況などを総合的に見て、個人の連帯保証を解除してもらえるケースもあります。

不動産の担保については、連帯保証とは別の話なので、銀行借り入れが残っている限り基本的には残ってしまいます。不動産担保についても個別に金融機関との交渉により扱われることになります。

ステップ4 税金の手続きや対策

事業承継において、最後に忘れてはならないのが税金対策です。オーナー経営者が亡くなれば相続税が発生しますし、生前にオーナー経営者が株式や事業用資産を後継者に贈与すれば贈与税の問題が発生します。

特に相続税については、納税資金を確保できない場合、納付を先延ばしにする延納や、土地などのモノで納付する物納という方法もありますが、事業承継においてはそうした方法以外にもさまざまな特例が認められています。それが事業承継税制と呼ばれるものです。

事業承継税とは

事業承継税とは

事業承継税制とは、後継者が取得した株式について、贈与税や相続税の納付を一定期間猶予する制度です。

事業承継税制の適用の範囲は、発行済みの株式総数の3分の2に関する部分だけが対象となります。また、相続税については納税猶予となる額は、税額の80%までとなっています。

ただし、平成30年度の税制改正によって、2018年1月1日から2027年12月31日の間に発生した贈与や相続については、後継者が取得した株式のすべてが対象となり、相続税についても全額が猶予されます。

【関連記事】
後継者に悩む中小企業経営者に朗報!利用しやすくなった事業承継税制【平成30年度税制改正】
個人事業主・会社経営者の相続対策(基本編)

事業承継税制はあくまで納税を猶予する制度です。例えば、後継者が代表取締役で亡くなった場合や、後継者が株式を譲渡した場合など一定の場合には、猶予の効力はなくなって、納税義務が発生することになります。

また、事業承継税制を受けるにはいくつかの要件を満たす必要があります。「贈与」と「像族」、それぞれについて解説していきましょう。

贈与の場合

贈与について事業承継税制を受けるためには、主に次のような要件があります。

  • オーナー経営者が贈与時に代表取締役でないこと
  • 後継者が贈与時に代表取締役であること
  • 後継者が贈与時に20歳以上であること
  • 後継者が贈与の直前の3年間継続して、会社の役員であること

ほかにも細かい要件がありますので、実際に検討する際には一つ一つクリアしていく必要があります。

また、贈与を受けた年の翌年1月15日までに都道府県知事に、事業承継税制に該当することについて認定を受けることも必要です。

相続の場合

相続について事業承継税制を受けるためには、次のような要件があります。

  • オーナー経営者が生前、一時期でも代表取締役であったこと
  • 後継者が相続開始から5カ月経過日において、代表取締役であること

贈与のケースと同じように、ほかにも細かい要件がいくつかあります。相続について事業承継税制を受ける場合にも都道府県知事の認定が必要ですが、相続の場合は、相続開始から8カ月以内となっています。

ただし、平成30年度税制改正による特例措置を受ける場合には、上記に加えて特例承認計画というものを都道府県知事に提出する必要があります。

中小企業を救う事業承継補助金とは

国は税金面以外でも事業承継を後押ししています。その一環が事業承継補助金です。事業承継で新たに就任した経営者が、既存の事業とは異なる事業に取り組んだ場合に受けられる補助金です。

補助金の制度説明はここでは割愛しますが、インターネットで、「事業承継 補助金」と検索すれば、該当するものが出てきます。

これは補助金一般に言えることですが、補助金の受給額や受給のための要件は毎年変更になります。常に最新の情報を確認するようにしましょう。

【参考】
中小企業庁「事業承継」

【関連記事】
個人事業主・会社経営者によくある相続の失敗談とその対応策

photo:Getty Images

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この記事の執筆者

渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント(R)。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

・V-Spirits

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