異業種からフードコーディネーターに!「料理の仕事」の目指し方とは【インタビュー】

2023/12/04更新

この記事の執筆者矢郷真裕子

たくさんの人に喜びや感動を与え、笑顔のひとときを提供できるフードビジネス。「好きな料理を仕事にしたい」「独立を目指したい」と考える人が多い業種でもあります。

その中でも、人気の職業が、料理の世界を楽しく彩る『フードコーディネーター』。

今回は、そのフードコーディネーターという職業に、まったくの異業種から転身を果たした佐藤恵美さんに、フードビジネスでの独立について、きっかけやポイントなどを伺いました。

佐藤 恵美さとう えみ

フードコーディネーター。大手料理教室での料理とパンの講師経験後、アシスタントなどを経て独立。レシピ開発、料理教室講師、パーティー出張料理、料理コラム執筆などで活動中。
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料理に興味がなかったのに、異業種からフードビジネスを志したきっかけは「モテ」だった!?

佐藤さんは、独立される前は異業種で会社勤めをされていたそうですね。

20代の頃は、デパートやセレクトショップなどで販売をしていて、店長になった経験もあります。就職活動を始めたときはファッションが好きだったので、好きなことを仕事に選んだという経緯ですね。

会社員の頃から、料理への関心や興味などはありましたか?

お恥ずかしながら、実は25歳頃まで料理にはまったく興味がなく……自炊なども全然していなかったんです。

でも20代後半になると、たとえば合コンに行ったときなど、男性から「料理できる?」と聞かれることが増えてきたんですよね。それで「料理って、できるほうがモテるのかな」と気になるようになって(笑)。

そのときにたまたま友だちが「興味があるなら行ってみたら?」と、料理教室を紹介してくれたんです。

そこで料理を習って、家でも復習しながら作るようになると、「美味しかった」と目の前で喜んでくれるのが嬉しくて「もっと上手になりたい!」と完全に料理の魅力にハマりました。

そこから、料理を仕事にしようと考えた理由は?

年齢とともに、結婚や仕事などのライフプランについて「今のままでいいのかな?」と徐々に考えるようになりました。

昔から「好きなことを仕事にしたい!」という自分の芯の部分は変わらないので、ファッションよりも料理が好きになってきたから、料理を仕事にできたらいいなと思ったのがシンプルなきっかけです。

また、当時就いていた販売の仕事は、毎月売上を追いかけることが目標でしたが、月が変わるとまたゼロからのスタートで、それが少し寂しく感じる部分もありました。

でも料理は技術を積み重ねていけて、何かを作り上げることに心が満たされていく感覚が大きかったんです。誰かに作ってあげると、相手が目の前で喜んでくれるのも、やりがいがありましたね。

料理に興味がなかったのに、異業種からフードビジネスを志したきっかけは「モテ」だった!?

料理に対して「好き」「心が満たされる」という感覚を抱くようになったからこそ、仕事にしたいと考えるようになったんですね。では、実際に料理関連の仕事にシフトチェンジしていかれた経緯は何でしょうか?

料理を仕事にしたいという思いは抱いたものの……異業種の仕事をしていたため、具体的にどうすればいいのかはまったくわかりませんでした。

とりあえず、「料理がうまくなりたい」「料理好きな友だちが欲しい」と思って、自作のお弁当を載せるブログを始めてみることに。週5日、昼食用のお弁当の写真とメニューをアップすることを続けました。

すると、コメントのやり取りなどで、料理関連の仕事に就いている人たちとだんだん仲良くなっていったんです。

その親しくなった方から、大手住宅機器メーカーが運営するサイトの公募を教えていただき、それに合格して、アシスタントとして料理イベントなどのお手伝いをさせていただくようになったのが、料理の仕事のスタートです。

忙しく、収入が不安定でも、「楽しく働けるイメージができた」ので独立

忙しく、収入が不安定でも、「楽しく働けるイメージができた」ので独立

そこから、独立に至ったきっかけや理由について詳しく教えてください。

販売職はシフトの融通が利きづらかったので、料理関連のアシスタントになってから、30歳で事務職にいったん転職しました。とりあえず固定収入を確保しつつ、自由な時間も増やして、料理の仕事をしたり、フードコーディネーターの学校に通って勉強をしたりしていこうと。

そして31歳頃から、ブログやSNSで知り合った方たちと、それぞれの友だちを呼び合って30~40人くらいでホームパーティーをしていたら、「今度、うちにもごはんを作りに来てほしい」と出張料理の仕事をいただくようになったんです。それを機に、お弁当や会議の軽食などを提供する仕事が少しずつ増えていきました。

初めは、オファーは1~2ヵ月に1回程度でしたが、半年くらいで1~2週間に1回程度に。「ありがとう。おいしかった」「手作りの料理っていいよね」と言ってもらえることが増えて、自分自身がそのまま楽しく働いていけるイメージができたのをきっかけに、フリーのフードコーディネーターとして仕事を請け負うようになっていきました。

楽しさや喜びが得られるようになった一方で、独立に際しての不安や、大変だったことなどはありますか?

やっぱり収入面はしばらく心配でしたね。出張料理は、最初の頃は修業の意味も兼ねて安価で引き受けていたこともあって、事務職を辞めてからも収入が安定するまでは、お店のキッチンのアルバイトや、料理家さんのアシスタントなど、1~2年ほどいろいろな料理関連の仕事を並行していました。

とはいえ、事務職のときは、料理の仕事との時間のやりくりが大変だったので、独立したらその悩みからは解放されましたね。毎週金曜の夜、事務の仕事が終わった後に徹夜で出張料理の仕込みをするのは、楽しかったけどクタクタに疲れもしましたから。

また、独立の際に開業届を出そうと思ったのですが、知識がなく……そこまでの領収書やレシートをきちんと保管していなかったので、会計処理に苦労した思い出もあります。

収入やオファーを獲得するために、営業活動などはされていましたか?

もともとブログがきっかけで料理の仕事をいただけるようになったので、ブログやSNSのアクセス数アップのために、あれこれ気を配るようにはしていました。

料理家さんのアシスタントとして行った仕事や、料理教室の授業内容など、最低でも1日1回は記事を更新したり、こまめなコメントのやり取りを心がけていましたね。料理がおいしく見える写真の撮り方も勉強しました。

料理界の‟横のつながり”を増やしていくと、ありがたいことにオファーも増えていきました。裏を返せば、人とのつながりがないと、フリーランスでは仕事はできないと言えるかもしれません。

憧れる人が多いフードビジネスのひとつ、フードコーディネーターの仕事とは?

憧れる人が多いフードビジネスのひとつ、フードコーディネーターの仕事とは?

ここからは、『フードコーディネーター』のお仕事内容やスケジュールなどについて伺いたいです。また、『フードスタイリスト』『料理研究家』『フードスペシャリスト』などとは、どのような役割の違いがあるのでしょうか?

私個人の考えですが、まずフードコーディネーターは、料理を作っておいしそうに盛りつけるところまでが大きな流れのひとつだと思います。そのため、仕事の種類も多岐にわたり、人によって活動内容や得意分野はバラバラですね。

私の場合は、企業から依頼を受けてのレシピ開発やコラム執筆、CMや広告で使う料理制作のアシスタント、料理教室の講師などをしていますが、特に定義はなく、あくまでも肩書なのでフードコーディネーターの仕事と言ってOKだと考えています。基本的には相手からの依頼内容に合わせる仕事なので、スケジュールは日によってバラバラで、CM撮影などは1日中かかることも。

また、フードスタイリストは、食器やクロスなども含めた、周りの空間全体を作り上げる職業というイメージでしょうか。

料理研究家は、レシピ開発や研究が主で、書籍や雑誌をメインに活動されている方が多いかもしれません。フードスペシャリストは、評論の仕事が多い印象です。

憧れる人が多いフードビジネスのひとつ、フードコーディネーターの仕事とは?

佐藤さんが、フードコーディネーターという肩書を選ばれた理由は?

それ以外の肩書は、専門家っぽい印象があって、私にはちょっと堅苦しいかな、と(笑)。料理に関わるいろいろな仕事をしてみたかったですし、難しいものではなく、家庭料理をベースにした気軽なアレンジの提案などが自分には合っているかなと感じたので、親しみやすそうなフードコーディネーターという肩書にしました。

さまざまな仕事をしていく中で、自分に合っているものもわかってくると思います。私自身、料理の見せ方や発想が素晴らしい人をたくさん見てきて、その中で料理の仕事をしていくための強みとしては、自分自身のキャラクターを売っていくほうがいいなと感じるようになりました。

そうすると、「佐藤さんの料理教室なら受講してみたいな」と来てくださる生徒さんも少しずつ増えてきて、うれしいですね。

積極的に人に会い、自分自身のことや夢について発信を!

なるほど。自分のしたい仕事内容やイメージに合った肩書・戦略を選ぶのも、独立の際に大切なことのひとつかもしれませんね。では、佐藤さんが考える、フードビジネスの難しさと喜びはどんなものでしょうか?

難しさはやはり、料理の仕事をしている人とつながらないことには、仕事の幅が広がっていきにくいことでしょうか。積極的に人脈を広げる努力は必要だと感じます。

また、フードビジネスに限ったことではありませんが、自分の裁量で仕事量を決められる反面、仕事とプライベートのオンオフの切り替えが大変だと感じることも多かったです。

以前は料理のオファーが来るのが楽しいし、仕事を増やしたかったので、スケジュールを目いっぱい入れて1日中仕事のことを考えていました。

でも、プライベートの時間がなくなり、恋人や友だちとの関係に支障が出てきたりもして……(苦笑)。最近は適度にバランスを取るようになってきました。

あと、どういったものが経費として計上できるのかわからないので、いまだに会計処理は苦労していますね。

確定申告の時期は、ひと月ごとにまとめたレシートと、源泉徴収票や支払調書の束を握って、税務署の相談コーナーで確定申告書を作っているので、『弥生』さんのサイトを読んだりして勉強したいです(笑)。

今は取引先に発行していただく支払調書などを頼りに、なんとか確定申告を乗り切っている状態ですが、取引先に対しては発行義務がないようで、経費削減などの理由から、支払調書の発行を終了する企業なども増えていると聞いたので、確定申告の時期に慌てないよう、もう少し普段から意識づけをしておかないといけないかもしれませんね。

喜びとしては、おいしい料理は誰にでも喜んでもらえることが一番です。特別な記念日に、自分の料理で過ごしてもらえると、すごく光栄ですね!

積極的に人に会い、自分自身のことや夢について発信を!

料理は五感を刺激するものなので、振る舞った人に自分のことを覚えてもらいやすいのもうれしいポイントです。ケータリングを担当したパーティーに参加されていた方に、別の機会に偶然お会いして「あのときのローストビーフ、おいしかったです!」とか、いきなり声をかけられてびっくりすることもあります(笑)。

また、料理教室の生徒さんが、最初は料理が苦手だったのに、「この前のメニュー、家でも作ってみました!」と報告してくれたりするのも、やりがいを感じられて感動しますね。自分自身も料理が苦手だったので。

人脈によって仕事のチャンスが舞い込み、それによってまた新たな人とのつながりを感じられるのは、とても魅力的なことだと感じます。仕事における、佐藤さんご自身の今後の展望はどんなものですか?

スタジオを構えて、自分個人の料理教室を開くことと、料理本を出版することが目標です。
とはいえ、頼まれたらどんなことでもできるだけ期待に応えたいので、お仕事のご依頼、お気軽にお問い合わせください(笑)。

それでは最後に、独立を目指している方にメッセージをお願いします!

「フードコーディネーターになりたいのですが、どうしたらいいですか?」という質問や相談を受けることがあります。

私も同じように悩んでいたため、気持ちはよくわかりますが、本当に料理が好きなら動いたり学んだりすることも楽しいはずなので、ぜひ積極的にいろいろな人にコンタクトを取ったり、会いに行ったりしてみてください。

そして仕事のチャンスをいただけたら、ひとつずつ精いっぱい応えていけば、必ず道は開けると思います。

フードコーディネーターは名乗った者勝ちでもありますから、早めに名刺やプロフィールを作ってプロ意識を持つのも効果的かもしれませんね。

現代はSNSなど、自分を発信できるツールもたくさんあるので、夢や願いはどんどん発信していくこともオススメします!

積極的に人に会い、自分自身のことや夢について発信を!

Photo:塙薫子

この記事の執筆者矢郷真裕子

編集者・ライター。出版社勤務を経てフリーランスに。手がけてきた分野はエンターテインメント(お笑い・音楽)、グルメ、衣料(ファッション)、児童、占い、街ブラ、ライトノベルなど。

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