予定納税の通知が届いたら?計算方法や支払い・延滞について

2021/03/31更新

納税は、国民に課せられた大切な義務のひとつです。税金にはさまざまな種類がありますが、中でも個人事業主がなじみ深いものといえば「所得税」でしょう。所得に応じて一定額の税金を納めるものであり、人によっては「予定納税」の通知が届くこともあります。

予定納税を行う場合、どれくらいの納税額になるのか、手続期限はいつまでかなど、気になるポイントも多いでしょう。そこで、今回は個人事業主の予定納税の基本的な仕組みをはじめ、納付方法や減額申請の手続きなどについて解説していきます。

POINT

  • 予定納税は、高額の税金が発生する見込みの人の税金の前払い制度
  • 期限内に納付しないと延滞税が加算されてしまう
  • 払いすぎた場合は「還付申告」を行うことで返還してもらうことも可能

予定納税とはどんな制度?

予定納税とは、前年の所得金額や税額を目安として、所得税が一定金額以上になることが見込まれる場合に、その年の所得税と復興特別所得税の一部をあらかじめ納付するという制度です。

簡単にいうと、「高額の税金が発生する予定の人は、金を先にめておいてください」ということです。税金の払い忘れを防いだり、高額の税金を一度に支払うことでの資金繰りの負担を軽減したりする狙いがあります。

予定納税の対象者(納税が必要な人)には、税務署から6月15日までに通知が届けられ、受け取った人は必ず予定納税を行わなければなりません。ただし、その年の6月30日の現況で要件に該当する場合、7月15日までに所轄の税務署に 「予定納税の減額申請書」新規タブで開くを申請して、承認されれば、減額されます。

所得税の予定納税は、すべての納税者が行うものではありません。前年の所得金額や税額などをもとに計算した予定納税基準額が、15万円以上になる人のみ予定納税の義務が発生します。

予定納税基準額と聞くと難しそうですが、基本的には前年に納めた所得税の納税額と同じものです。前年に15万円以上の所得税を納付しており、所得にも大きな変化などがなかった場合、予定納税基準額も15万円以上となって予定納税の対象者になる可能性が高いです。前年の所得税が15万円未満だった人は、ほぼ予定納税の対象者になる心配はありません。

ちなみに、前年の法人税額が20万円以上だった法人も、予定納税の対象となります。予定申告と一緒に予定納税も行わなければならないので、忘れないようにしましょう。

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予定納税の計算・納付方法や納付時期

予定納税の通知が届いても、具体的にどうすれば良いのかわからない人も多いでしょう。納税額の計算方法や納付方法、納付時期など実際に予定納税を行う際の流れについて説明していきます。

予定納税額の計算方法

基本的に、予定納税額は前年分の所得税額をもとに算出されます。ただ、前年の所得税額がそのまま予定納税基準額となるケースもあれば、異なる基準額になるケースもあるので注意が必要です。次に挙げる2つの条件に該当する場合、前年分の所得税額がそのまま予定納税基準額となります。

1つ目は、前年の所得金額に山林所得や退職所得、一時所得などの特別な収入が含まれていないこと。これらは毎年発生する所得ではなく、あくまでも臨時的な所得にすぎないという考えからです。株の売買による利益や退職金、生命保険金などを受け取っていれば、特別な収入とみなされます。2つ目は、前年の所得税について災害減免法の適用を受けていないことです。

前年に特別な収入を得たり災害減免法の適用を受けたりした場合は、前年とは異なる予定納税基準額となります。特別な収入や災害減免法による所得税がなかったとみなしたうえで、前年の課税所得金額から源泉徴収税額を控除した金額、および復興特別所得税額の合計額を納めなければなりません。

いずれのケースでも、計算した予定納税基準額が15万円以上となる場合は予定納税が必要です。

予定納税の納付方法

予定納税基準額が15万円以上になる人には、その年の6月15日までに税務署から予定納税を通知する書面が送られてきます。通知が届いたらすみやかに税金を納付できるよう、納付方法を知っておかなければなりません。

納付方法にはいくつか種類があり、それぞれ特徴が異なります。ひとつずつ具体的に紹介していくので、自分が利用しやすい方法を選びましょう。

電子納付

電子納付は、自宅などにあるパソコンを使い、インターネット経由で税金を納付する方法です。「ダイレクト納付」と「インターネットバンキングによる納付」の2種類があり、どちらも金融機関や税務署などに行かずに納付できるため非常に便利です。

ダイレクト納付は、事前に税務署に届け出を提出し、「e-Tax」という専用のシステムを利用して納付します。納付情報などを登録し、指定した自分の口座から期日を指定して振替納付を行います。ただし、システムを利用するにはe-Taxの設定をしたり、e-Taxに対応可能な口座かどうかを確認したりしなければなりません。

ほかにもダイレクト納付利用届出書を提出して利用可能になるまで1ヶ月程度かかるので、予定納税の通知が手元に届いてから手続きをすると納期限ぎりぎりになる可能性があります。普段、源泉所得税を納めている方(源泉徴収義務者)や確定申告などでダイレクト納付をすでに行ったことがある方におすすめの方法でしょう。

インターネットバンキングによる納付は、e-Taxソフトを導入して申告書を提出したり納付情報登録依頼をしたりした後に、納付区分番号を取得して納税するという方法です。また、e-Taxに納付情報を登録せず、自分で納付目的コードを作成して納税する方法もあります。

両方ともe-Taxで確定申告をした方なら、利用設定はすんでいるので、容易かもしれませんね。

振替納付

振替納付は、金融機関の口座から納税額を自動的に振替して納める方法です。自分で納付する必要がないため、「納付期限内に払うのを忘れた!」という事態を避けられます。

振替納付を利用する場合は、国税庁のホームページから口座振替依頼書をダウンロードし、必要な項目を記入して税務署か金融機関の窓口に提出しましょう。ちなみに、予定納税はクレジットカードで納付することもできます。

ただし、金融機関やコンビニ、税務署窓口などではクレジットカードでの納付ができません。「国税クレジットカードお支払サイト」からインターネット経由で納付することになるため、パソコンやスマホから手続きをしておきましょう。

また、すでに振替納付の手続きを済ませている場合も注意が必要で、振替納付を利用していると口座引き落とし日に自動的に口座から予定納税が納付されるため、クレジットカードと口座から二重に納付してしまう可能性もあります。振替納付ではなくクレジットカードで納付したい場合は、前もって所轄の税務署へ連絡し、振替納付されないようにしておきましょう。

直接納付とコンビニ納付

直接納付は、税務署や金融機関の窓口に直接現金を持参し、納付書とともに納付する方法です。納付する金額が30万円以下であれば、バーコードがついた納付書を使ってコンビニから納付することもできます。また平成31年(2019年)1月4日からコンビニ納付の手段に二次元バーコードを利用して支払う手段が増えました。

バーコード付きの納付書は、税務署に依頼すれば発行してもらえるので問い合わせてみましょう。税務署の窓口へ行くのは手間がかかることもありますが、その場で間違いなく納付したと確認されますし、領収書も受け取れます。不明な点や税金に関する相談などがあれば、専門家である税務署の職員に直接確認することもでき、意外とメリットが多いです。ただし、現金だけで電子マネーやクレジットカードが使えない、納税証明書の発行ができるまでに3週間程度かかることがある、などのデメリットもあります。

コンビニ納付(二次元バーコード)は、自宅などのインターネットに接続できるPC で国税庁のHPから、納付に必要な情報(氏名や税額など)を二次元バーコード(PDFファイル)として、作成・出力すれば、コンビニ納付できます。バーコード付き納付書のように所轄税務署に行かずに手続きと納付ができるので、近くに税務署がない場合や開所時間に間に合わない場合でも利用できます。

予定納税を納付する時期

税務署から予定納税の通知が届いたら、指定された期限内にきちんと税金を納めなければなりません。予定納税を納付する時期は決まっています。7月1日~7月31日(第1期分)と11月1日から11月30日(第2期分)の間に、それぞれ予定納税基準額の3分の1ずつ支払います。この段階ではまだ「予定」の納税基準額をもとに支払っており、翌年に所得税の確定申告を行って正式な納税額へ精算することになります。

予定納税をし忘れたら?延滞税がかかる?

予定納税対象者にとって、予定納税は義務であるため、指定された期限までに必ず納付する必要があります。期限内に納付するのを忘れた場合、延滞税が加算されてしまうため注意しなければなりません。

具体的な延滞税の計算方法は、延滞している期間によって異なります。延滞している期間が長引くほど、本来の税額より多くの金額を支払うことになってしまいますので、必ず納付期限までに納付しましょう。

延滞した期間が2カ未満の場合、延滞税は納付する金額に一定の税率をかけて算出されます。延滞した期間が2カ月未満であれば、「年7.3%」もしくは「特例基準割合+1%」のうち、どちらか低いほうが適用されます。

特例基準割とは、金融機関の貸出金利の平均を参考に計算されるものです。たとえば、2019年1月1日~12月31日までは特例準備割合1.6% (国税庁ホームページより)新規タブで開くと設定されているため、延滞税率は2.6%となります。特例基準割合は毎年変わるので、必ず国税庁のホームページでその年の数値を確認しておきましょう。

なお、延滞期間が2カ月以上になると、延滞税率は「年14.6%」または「特例基準割合+7.3%」のいずれか低いほうとなります。どちらにしても、2カ月未満の延滞のケースより大幅に高い延滞税を支払わなければなりません。2019年1月1日~12月31日の特例基準割合は1.6%なので、延滞税率は8.9%となります。

たとえば、15万円を2カ月以上延滞した場合、1年あたり15万円×8.9%=1万3350円の延滞税が必要です。延滞した期間に応じて日割り請求されるため、1日でも早く納付しましょう。

予定納税が減額できるケースと申請方法

予定納税の金額は、前年の所得に応じて決定されます。ここで気になるのが、「売り上げが下がるなどして、所得が前年より大幅に下がったらどうなる?」ということではないでしょうか。

所得税は実際に得た所得に対して課されるものなので、本来であれば前年よりも所得税額が減少すると予想されます。ほかにも事情により休業したり、廃業して事業を行っていない場合もあるでしょう。このような場合は「減額申請」という手続きを行い、予定納税の金額を減らすことも可能です。

ただし、所得が下がれば無条件で減額できるとは限りません。減額できるケースには一定の条件があるため、その内容や申請方法について知っておきましょう。

減額申請ができる人

減額申請が行えるのは、事業の廃業や休業、業績不振などによって所得が大幅に下がった人です。このような場合、予定納税額よりも実際の税額が低くなると予想されるため、あらかじめ減額申請することができます。

本業の資金繰りが不安定な場合も、所得に影響する可能性が高いので減額申請をしたほうが良いでしょう。また、前年と所得そのものは同じでも、医療費控除や配偶者控除などによって税金が軽減され、所得税額が下がるケースもあります。さらに、突然の災害によって大きな損害を受けた場合も減額申請の対象です。

その年の6月30日の時点で所得税が予定納税の金額より低くなると見込まれる場合は、税務署に減額申請書を提出しましょう。災害による減額申請の場合は、災害を受けた日によって申請できる期限が決まっているので注意が必要です。

減額申請の手続きの流れ

減額申請の手続きを行う場合、まず国税庁のホームページから 「予定納税の減額申請書」新規タブで開くをダウンロードして記入しましょう。

予定納税は7月31日に1回目の納付期限がありますが、その時点で減額申請したいなら6月末日時点での決算書をもとに7月15日までに申請書を作成します。2回目の納付期限である11月30日に適用する場合は、10月末日時点の決算書を用いて申請書を10月15日までに税務署に提出しましょう。このとき、損益計算書も一緒に提出しなければならないので、事前に準備しておきます。

ただし、書類を提出しても必ず予定納税を減額してもらえる保証はありません。後日、税務署から「承認」「一部承認」「却下」といった形で、申請が認められたかどうかの書類が届くので忘れずに確認しましょう。

減額申請をしない方がいいケースとは?

納めるべき税額を減額してもらえると聞くと、得をしたような気分になるでしょう。しかし、減額とはいっても、予定納税の税額を本来の税額へと減額するだけで、その年の所得税が軽減されるるわけではないのです。

払いすぎた税金は、所得税の確定申告をした後に還付されるため、結局は早く払うか遅く払うかの違いだけです。このため、所得が減っていたしても資金繰りに十分な余裕があるなら、あえて減額申請せずに予定納税をしたほうが良いケースもあります。

なぜなら、確定申告まで待って所得税が還付された場合、還付加算金という利息のようなものが発生するためです。還付加算金は一般的な金融機関の金利よりも高利回りになっているケースが多いので、銀行などに現金を預けておくより得になる可能性があります。

予定納税を払いすぎたら「還付申告」が可能

その年の所得税額は、実際の所得の金額によって変わります。所得が下がれば、予定納税で支払った税額より実際の所得税額が少なくなるケースもありえます。払いすぎた税金は、「還付申告」を行うことで返還してもらうことも可能です。

還付申告は確定申告と異なり、翌年の1月1日から5年間にもわたっていつでも申請することができます。還付申告をすると、予定納税額が実際の納税額よりも多い場合に還付されるだけでなく、還付加算金という利息までついてきます。

参考として2019年の還付加算金は1.6% (国税庁ホームページより)新規タブで開くと設定されており、一般的な預貯金金利より高い点も魅力です。還付は、申告書に記載した口座で受け取れるほか、最寄りの郵便局の窓口でも受け取れるので好きなほうを選びましょう。

予定納税は、所得税の一部をあらかじめ納めておくという制度です。本来納めるべき税金を先に支払うだけであり、実際の所得税額よりも多く払っていれば確定申告や還付申告でお金を返してもらうこともできます。先に納めるからといって、損をしているわけではないのです。

そして、予定納税をしている場合に忘れてはならないのは、その年分の所得税の確定申告をする際に予定納税額の記載漏れをしないことです。

予定納税の仕組みを正しく理解していれば、「税金を払いすぎているのでは?」と悩む必要もありません。また、税金を数回に分けて納付できるため、確定申告時に高額の税金をまとめて支払うという負担も軽減できます。メリットがいくつもあるので、決算書や申告書から予定納税額を読み取り、実際に予定納税を行ってみましょう。

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