「当時、起業したのは日本の働き方そのものを変えるため」小室淑恵氏に聞くワークライフバランスの変化と今後の展望

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執筆者:阿部桃子

「当時、起業したのは日本の働き方そのものをガラリと変えるため」小室淑恵氏に聞く、ワークライフバランスの変化と今後の展望

「働き方改革」「ワークライフバランス」という言葉が当たり前のように聞かれるようになった現在。社会の変革の先駆者となったのは、2006年に株式会社ワーク・ライフバランスを設立した小室淑恵さんです。

この14年間、1000社余りの「働き方改革コンサルティング」を手掛け、安倍内閣の産業競争力会議の民間議員として長時間労働の是正と女性活躍を訴えてきた小室さんに、ご自身の起業について、そして日本のワークライフバランスの変化や今後の展望について伺いました。



起業したのは、「休職しても戻れる、心身の健康を守れる職場を作らなければ社会的に意義がない」と考えたから

――小室さんが「ワーク・ライフバランス」というテーマで起業を考えられた理由は何だったのでしょうか?

以前勤務していた化粧品メーカーの社内で、ビジネスモデルコンテストがあったことが大きなきっかけでした。コンテストに向けて、「女性は育休からの復帰支援をすればもっと活躍できる」という考えのもと、育児休業中にeラーニングで勉強し、育児休業をブランクにせず、ブラッシュアップできるというプログラムを作成しました。

そのとき私は結婚も出産もしていなかったのですが、自分もいつかは結婚と出産で制約のある仕事の仕方になる、でも支援さえすれば女性にも道が開けると思っていました。

しかし、どんなに女性の育休復帰支援をして、女性が復帰を遂げても、結局企業が長時間労働なので、仕事と育児が両立できなくて、その後辞めてしまうケースも多く目のあたりにしました。

やはり、長時間労働の企業風土自体が変わらない限り両立はできないんですね。しかも育児中の女性を支援せねばと思っていましたが、すでに日本社会には育児で休む男性も、介護で休む男性も、心の病で休む男性もいっぱい出てきていました。

そこで、休みたい人は女性だけじゃない、そもそも戻れる職場、心の病にならない職場を作らなければ社会的に意義がない、日本の会社の働き方そのものをガラリと変えなければならないと思いました。

当時、女性の育児休業復帰支援プログラムを社内ベンチャーで立ち上げて黒字化していましたが、それよりも社会全体の働き方を改革するコンサルティング会社が必要だと起業を決心して2005年に辞表を出しました。

――なぜこの時期に起業したんですか?

日本の人口ピラミッドを見れば、2007年に団塊の世代が一斉に定年退職を始めると、一気に労働力不足になるというのは火を見るよりも明らかでした。

であれば、長時間労働ではなく、育児や介護をしながらでも働ける環境を整えて、多様な人材が労働参画することで、労働人口を増やせれば労働力不足を抑制することができると考えたのです。

――小室さんの起業当時は、社会ではワークライフバランスという概念はゼロに等しかったと思うのですが。

2006年、役所に「ワーク・ライフバランス」という社名を届け出に行ったとき、窓口の方に、単語を聞き取っていただけないような状態でした(笑)。言葉の認知度がない上、主に女性や子どもが対象の女性活躍支援の会社だと誤解されることも多かったですね。

――起業に関してはどのような準備をされましたか?

前職で社内ベンチャーを立ち上げていたので財務諸表作成の経験はありましたが、もちろん手探りで苦労しました。

幸いにして、一緒に起業した右腕のメンバーが、法務部出身で、左腕のメンバーが大学で会計を専攻していたので、なんとか助けてもらいました。そういえば、当時は弥生会計を使っていました。初めてだったので難しかったけれど、今思うと、なんとかできていたのだから、初心者でも使いやすい会計ソフトでしたね。

――出産直後に起業されたそうですね。

はい。実は産後3週間で起業しました(笑)。夜中は2時間おきに授乳で、睡眠不足でした。保育園のお迎えは18時15分ですから、一切残業はできません。そこで全員残業ゼロ、有給消化100%を全社的に徹底して、今日まで会社を経営してきました。

また、弊社の社員は長時間労働で睡眠不足から機嫌が悪い、というような人がいません。健康的で、かつ人間関係の良さが一番の宝物ですね。

会社を大きくするより「働き方改革を最速で広めたい!」

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――設立から14年が経ちましたが、社員数は何人になったのでしょうか?

社員数は30人ですが、「ワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座」を開講していて、卒業生が1600人位います。そのうち約600人が認定コンサルタント、100名が認定上級コンサルタントとして、沖縄から北海道まで活躍しているので、その全国の加盟コンサルタントの皆さんと連携することで、社員がたった30人の会社とは思えないほどのたくさんの働き方改革コンサルティングを全国で行っています。働き方改革コンサルティングがまだ何の仕事にもならなかった頃からやっている講座なので、受講生がコンサルとして活躍していることが本当にうれしく、いつも感動しています。

――計画通りに日本の働き方改革が進んでいるという実感はありますか?

いえいえ、このままでは日本社会は、少子化によって財政破綻する国にまっしぐらですから、変化のスピードは遅いと焦っています。ただ、最悪のシナリオとして、何も全く変わらないまま沈んで行くというストーリーもありましたが、ここ数年で劇的に社会は動いて、働き方改革の風が吹いています。

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この記事の執筆者

阿部桃子
阿部桃子

早稲田大学卒業後、出版社、テレビ局勤務などを経てフリーランスに。専門分野は教育・育児支援、ビジネス、キャリア。『日経トレンディ』『AERA with Kids』『Bizmom』などで執筆。2児の母。活字好きの子どもを増やすべく、地域で読書ボランティア活動にも励んでいる。

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