【ママ起業家座談会】自分らしく働き、夢を叶えるための起業準備や継続のコツ

2023/12/04更新

この記事の執筆者阿部桃子

自分らしく働くため、やりたい夢を叶えるため、これから起業を考えているママは多いかもしれません。そこで、現在活躍中の3人のママ起業家に、起業のきっかけやタイミング、準備したこと、ママ起業家ならではの悩みや解決策、気になるお金の話まで、大いに語っていただきました。

座談会参加者プロフィール

座談会参加者プロフィール

(左)芸術教育士・ケーキデザイナー 太田さちかさん
出産後もフルタイム勤務で会社に管理職として勤めたのち、4年前にフリーランスに転身。現在はアトリエ「My little days新規タブで開く」「sachi&cakes」のオーナーとして、キッズワークショップやイベントの開催、ケーキスタイリング、レシピ開発と幅広く活躍する。著書に『メレンゲのお菓子パブロバ』(立東舎)。3児(小5、小3、年長)のママ。

(中央)一般社団法人MOTHER新規タブで開く代表 小澤あきさん
結婚を機に専業主婦に。その後ブログ発信、各誌読者モデル、ライターなどの活動を経て、2016年にママ100人プロジェクトを立ち上げ、一般社団法人を設立。ママたちの発信力を生かしたマーケティングや商品開発協力、イベント企画、地方創生、チャリティ活動等を行っている。3児(小4、小2の双子)のママ。

(右)イメージコンサルタント ファーネス悦子さん
IT関連企業のプログラマーなどを経て出産を機に退職。イギリス人の夫の転勤に伴い、香港、シンガポールでの生活を経験する。帰国後イメージコンサルタントの資格を取得。現在は自宅サロンで、パーソナルカラー診断、骨格診断、ヘアアレンジ、メイクアップアドバイス等を行っている。3児(小6、小3、小1)のママ。

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きっかけは子どものため、夢を叶えるため……

まずはみなさんが起業を考えたきっかけについて教えて下さい。

太田:私は3人の子どもを出産後もフルタイムで働き、保育園のお迎えも含め、毎日の帰宅は19時半ごろ。管理職であったため、帰宅後も頻繁に仕事の連絡が入り、夕食作りその他もろもろを片手間にこなすというような生活を送っていました。そんななか、長男が小学校に入学した後、口数が少なく、元気がなくなってしまって。これは危険信号であり、もっとコミュニケーションを取らねばと思ったことが大きなきっかけですね。

小澤:それは悩みますね。

太田:はい。フリーランスになれば、会社員に比べて仕事も時間もコントロールできて、子どもとの時間がたくさん取れると思いました。もともとケーキデザイナーとして起業したいという夢もありましたし。

小澤:私は、2011年の東日本大震災を機に何か社会に役立てることはないかと考え、ブログで日々の生活や考えたことを発信していました。すると出版社やウェブメディアの方からお声がけいただき、読者モデルやライターの仕事に挑戦するように。そこで、いろいろなスキルを持って活躍しているママたちに出会い、ママの力を集めれば大きな力になり、社会貢献できるのではと思いまして。2016年に「ママだからこそできる!」を合い言葉に、『ママ100人プロジェクト』をスタートさせ、同じ年の12月には一般社団法人MOTHER新規タブで開くを設立しました。

ファーネス:子どもたちが幼稚園のとき、シンガポールで生活していて。ビザの関係で働くことはできないので、ママ友とランチをしたり、習い事に通ったりしていたのですが、「何だか生産性がないな」と焦りも感じていて。そんななか、近所のママ友が自宅サロンでパーソナルカラー診断のお仕事をしていることを知り、仕事の内容も、時間の融通が利く点も素晴らしいと思い、しばらくお手伝いさせていただくことに。帰国したら、同職種のイメージコンサルタントというお仕事で起業しようと決意しました。

起業に至るまでにどんな準備をされましたか?

太田:会社勤めをしていたときは管理職でしたので、起業を決意してから退職するまでに1年かけて引継ぎをしました。同時に、退職してすぐ事業主としてスタートできるようにスケジュールを立てて、開業に関わる準備を行いました。退職直後に開業届をだして、さらに、SNSで繋がっているみなさんに起業することを告知しました。

ファーネス:私はイメージコンサルタントの養成学校に通って資格を取得し、ビジネス講座も受けました。同時にサロン付きの物件も探しました。

小澤:私の場合、外で働くことに夫が反対していて、自分で何かを始めるにしても先立つものもないという状況で。雑誌のコンテストに家事や収納のアイデアを応募して、その賞金を起業の元手にしました。

ファーネス:コンテストの賞金で? すごいですね。

小澤:受賞したのは2013年から2017年の間で4回、合計50万円超でしょうか。その元手でまずは収納コンサルタントやアイシングクッキーの資格を取得しました。その資格を生かして自宅サロンを開いて、それまでかかりきりだった双子の子どもたちを保育園に預け、ママ100人プロジェクトを立ち上げるための時間を捻出しました。

太田:まず、働いていないと子どもを保育園に預けられませんからね。入念なステップです!

起業の手続きは専門家の手を借りましたか?

太田:起業手続きや日ごろのお金まわりまで、すべて自分でやっています。

ファーネス:私もです。

小澤:私も初めは個人事業主で登録して、自分でやっていましたが、その後、行政や大企業とお仕事をするにあたり、必要に迫られて一般社団法人という形態にすることに。それ以降は法人の登記は行政書士さんに、税務は顧問税理士さんにお願いしています。

ファーネス:それはうらやましいです。お金関係は大変で……。

小澤:私も数字関係は苦手で、法人税とか聞いただけでクラクラ(笑)。ただ、無理して苦手なことに時間をかけるのではなく、人にお願いできるところはお願いして、得意分野に存分に時間を使えればいいと思っています。

スケジュール管理、メリハリ家事で両立を叶える

ビジネスと、家事や子育てとの両立のコツがあれば教えて下さい。

太田:一週間のスケジュール管理ですね。まずは子どもたちの習い事や行事を入れて、隙間に仕事を入れるイメージ。そこからはみ出してしまった仕事は子どもたちが夜寝たあとにやります。個人事業主になってからは、自分で時間を管理できるため、仕事と子育てのバランスが取れるようになりました。

小澤:自分が経営者であるからこそ、融通を利かせられるんですよね。私も基本は夕方4時くらいに家に帰るという仕事のリズムを作り、仕事・家事・育児を回しています。

ファーネス:基本的に、お客様と連絡を取り合って、スケジュールを調整しますが、子どもが学校に行っている間を営業時間と決めてお仕事をしています。それでもやっぱり家事の時間は足りないですけど。

太田:家事はいくらやっても終わりがないですからね。私も頑張るときは頑張って、たまにはレトルトに頼るとか、強弱つけるようにしています。

理想と現実の違いはありましたか?

太田:最初からビジネスが順調だったわけではなくて、1~2カ月は「暇だな、仕事ないかも」なんて焦ったときもありました。幸い3~4カ月目には軌道に乗ってきましたけど。会社員だと何の不自由もなく毎月お給料が入ってきますが、個人事業主だと順調に利益を出せるようになるまでが不安かもしれません。

ファーネス:最初は収入と支出のバランスがぐちゃぐちゃで(笑)。私の場合、お金を払って、さまざまなイベントや交流会に参加して、名刺を配ってお声がけする人脈づくりが営業活動が重要なのですが。どんどん人脈は広がるけど、収益に繋がるかといったら、なかなかそうもいかず。新たな人脈の開拓とリピーター獲得を課題に、試行錯誤を続けているところです。

太田:分かります! 起業したからといって、すぐに儲かるわけではないので、そこの覚悟は必要です。すぐ諦めない、辞めない持続性も必要かもしれません。

小澤:私も起業後に予期せぬ小さなつまずきは何度かありました。ただ、ママ起業家の強みは横の繋がり! その都度、経験者の先輩に聞くことで乗り越えました。

ファーネス:私も税金のこととか、登録商標の申請とか、わからないことは全部同業の先輩に聞きました。子育ての悩みも含め、ほぼ解決できますよね。

ママ起業家同士はどんなところで知り合いになるのでしょうか?

ファーネス:ビジネスセミナーやイベントが多いかもしれません。

小澤:そうですね。子育て関連、チャリティのイベントなどです。

先ほどお金の話が出ましたが、ママ起業家として、お金の面で注意しなければいけない点はありますか?

太田:初めから家賃などの固定費と人件費をなるべくかけないこと。経費のなかでも一番大きな負担になりますから。私の場合、アトリエは自宅を中心に、月に数回、青山と五反田のアトリエをレンタルしていますし、何事も自分でできる範囲のところは自分でやるようにしています。例えばホームページはデザイナーに発注したら30万円くらいかかるところを、自分で作りました。もちろんビジネスが軌道に乗ってきたら、固定費も人件費もかけていいと思っています。

ファーネス:私も自宅サロンなので家賃や光熱費などの固定費が抑えられていますけど。これが毎月かかっていたらと思うと支出が恐ろしいです。高い家賃代を稼ぐことに疲弊して、目の前のお客さん集めに必死になるという状況は避けたいので。

小澤:私も自宅を事務所として登記していますし、自分が役員報酬を取らなければ人件費もかかりません。ただ、カフェやショップ経営のように、最初から人や場所が必要な職種だと、固定費も人件費もかかりますし。職種にもよると思います。

お金といえば、女性起業家のお金の勉強会で、銀行から融資を受けてきちんと返済した実績があると信用に繋がり、次にもっと大きな融資も受けられると聞きまして。起業してすぐ銀行に行き、融資を受ける手続きを進めました。でも、事業計画書も書いて、必要な書類を全部揃えて、やっと融資が引けるというタイミングで、担当の方に「あとは、ご主人の確定申告書を提出してください」と言われて。「私ひとりの力じゃ借りられないの?」という失望と、変なプライドも働いて、全て取り下げますと言って銀行を立ち去りました。

太田:え~、それは悔しい。

小澤:先輩ママ起業家さんに聞いたら、「誰もがぶつかる壁。夫の確定申告書なんて出せません、と言えば融資が通ることもあるわよ」と言われまして。今すぐでなくても、創業融資の適用が受けられる年数のうちにもう一度融資を申し込もうと思っています。

資格取得よりも大切なことは?

みなさん資格をお持ちのようですが、起業する上で資格は武器になりますか?

太田:大学院で芸術教育士という資格を取りましたが、その過程で学んだ内容が、芸術や子どもの教育がテーマの今のビジネスに役立っています。

ファーネス:私の仕事は資格取得ありきですが、その先が問題でして……。美容業界だと、すごくたくさんの資格を持っている方がいるので、資格数を誇っても、ほかの方と差別化できないし、勝負できないんです。

太田:ライバルも多そう。

ファーネス:はい。イメージコンサルタントには、資格取得の際に学校で習う画一化されたメソッドがありまして、最初その通りにお客様に「あなたにはこれが似合いますよ」とお伝えしていたところ、「好きじゃない」とか「着る自信ない」とか言われたことも。そこで気づいたのが、画一的なコンサルをしていたのでは、他のコンサルの方と差別化できないし、勝負もできないということ。

それからは、お客様がそれまでの人生で蓄積してきた個性を引き出してあげることをモットーにしています。今は「その人らしさを引き出せるコンサル」として、勝負しています。

小澤:あとは、何をやりたいのかにもよりますよね。資格を取得する前に、何をやりたいのかをよく考えることが大切だと思います。資格を取ることを目的にするのではなく、目的のために資格を取るように意識するといいですよね。

起業するかしないかで、家族の人生がドラマチックに変わる!?

会社員時代、起業する前後で仕事観や人生観、家族観など価値観に変化はありましたか。

ファーネス:絶対的に自信がつきました。社会に対しても、自分にも。

太田:自分の足で生きている感じですよね。あとは、自由な働き方をするようになってから、広い視点で物事を見られるようになり、いろいろな生き方や価値観を認められるようになったかな。昔は「私はこんなに頑張ってるのに、なんでパパは家事育児やってくれないの?ズルイ」と思ったりもしたのですが、今は「パパは会社経営者だから時間の制約があって仕方ないのかも」と考えられるようになりました。

ファーネス:それは私もありました。あとは子どもたちに対して、働く母の背中を見せたいと思っていて。「今、大きなチャンスが巡ってきたの!」とか、「儲かるかな?」とか、子どもには仕事の話を積極的にして、楽しく仕事していることを伝えています。好きな仕事をするって幸せ、大人になるって素敵って思ってもらえればいいですね。

小澤:うちの場合、一番人生観が変わったのは夫です。私が専業主婦のとき、私が外で働くことに反対で。「外で働きたかったら、家で疲れたと言うな、家事はぬかりなくしろ」と言っていました。それが、私が起業し、大企業のトップの方とお仕事をするようになると、「最近楽しそうでいいね」と言ってくるように。夫も経営学を学び始め「手伝えることがあれば手伝うよ」などと言うように。家庭内ジェンダーギャップがかなり解消されました(笑)。夫の言う通り、家に居続けていたら、夫婦共々こんな変化はなかったと思います。

事業を続けて行く上で、今後の目標は何でしょうか。

太田:上の子ふたりの中学受験が終わるタイミングで、ビジネス面で大きく勝負したいですね。自分のアトリエを持つことや芸術系の大学と連携することも考えています。

ファーネス:私も子どもの年齢が上がるごとに、ビジネスもステップアップして行けばいいと思っています。最近本業に加えて、パッケージデザインの仕事もいただけるようになりまして。幅広くいろいろなことに挑戦したいですね。人生長いですし!

小澤:私は今後も世界中のママを笑顔にというテーマで、ママたちをサポートする活動を続けて行きたいですね。あしなが育英会と提携したり、東京都と提携したり、活動の範囲も広げる予定です。

これから女性起業・ママ起業家を目指す方に、アドバイスをお願いします。

太田:やりたいこと、自分のできることを明確に。他の人と同じことをするのではなく、私らしさを忘れないで。女性らしく感受性豊かに、自分を深めて欲しいです。

ファーネス:自分の理念、やりたいことを大切にしてもらいたいですね。ただ利益の追求だけになってしまうと、「普通に会社にお勤めしてもいいんじゃない?」という話になってしまいますので。

小澤:私はとにかく、気負わずにチャレンジしたらいいと思います。セミナーも高額なものばかりでなく、行政が主催するママ向けのビジネスセミナーも地域の公民館などで開催されていますから。ちょっと勇気を出して、一歩踏み出してもらいたいですね。

Photo:沼田学

この記事の執筆者阿部桃子

早稲田大学卒業後、出版社、テレビ局勤務などを経てフリーランスに。専門分野は教育・育児支援、ビジネス、キャリア。『日経トレンディ』『AERA with Kids』『Bizmom』などで執筆。2児の母。活字好きの子どもを増やすべく、地域で読書ボランティア活動にも励んでいる。

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