固定資産税とは?経費処理での勘定科目の仕訳、償却資産税との違い

2021/03/31更新

この記事の監修者中野 裕哲(起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士)

土地や建物などにかかる固定資産税は、数ある税の中でもよく知られているものの一つです。ところが、この固定資産税は「経費」として認められる税金ということを知らない事業経営者や個人事業主の人も少なくありません。

そこで、今回は個人事業主や中小企業の担当者が知っておきたい「固定資産税の基礎知識」として、償却資産税との違い、固定資産税を支払った場合の仕訳方法、各種軽減措置などについて、わかりやすく紹介していきます。

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土地や建物は「固定資産税」、それ以外の固定資産税は「償却資産税」

それでは、最初に「固定資産税」についての基礎知識について押さえておきましょう。固定資産税は、一般的に「固定資産税」と「償却資産税」に分けて考えることが多いので、この両者の違いを中心に説明していきます。

「固定資産税」とは、土地や建物、製造用の機械、パソコンなどの「固定資産」にかかる税金のことです。不動産だけに限らず、事業主が保有しているパソコンなども固定資産に当たります。

固定資産税は、毎年1月1日に固定資産を所有している人がその固定資産が所在する市区町村に対して支払う「地方税」の一つです。特に、土地などの不動産にかかる税金としては非常にメジャーなもので、各自治体にとっては税収の4割強を占める大きな財源となっています。

固定資産税に関して、まず押さえておきたいポイントは、土地や建物に課されるものを「固定資産税」、それ以外の事業用の器具・備品、建物の附属設備などに対して課される固定資産税を「償却資産税」と呼んで区別することです。「償却資産税 」は、正確には「固定資産税(償却資産)」ですが、ここでは実務的に呼称されている「償却資産税」を使用して説明していきます。

この2つは、計算方法や非課税枠の点で違いがあるので、その基本的な仕組みの違いを知っておくと、経営上役に立つ知識になるでしょう。

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固定資産税と償却資産税の計算方法

固定資産税は、総務大臣が告示する固定資産評価基準に基づいて市町村長の決定した「固定資産税評価額」という基準を使って計算します。「固定資産税評価額(課税標準額)」は市役所などで入手できる「固定資産評価証明書」や、毎年送られてくる納税通知書で確認することが可能です。

固定資産税の課税額を決める計算式は「固定資産税評価額×標準税率」で算出できます。標準税率は原則1.4%で(自治体によって異なる場合があります)、自治体によってはこれとは別に0.3%以下の「都市計画税」がかかる可能性があります。

一方、償却資産税の課税額は「償却資産の評価額×標準税率」という計算式で求めていきます。注意点は「償却資産の評価額」で、これは「購入した価格×減価残存率(耐用年数によって決まる割合)」で算出していきます。

固定資産税は申告不要、償却資産税は申告書の提出が必要

まず、固定資産税ですが、課税対象となる土地や建物に関しては所有権を得た際に登記簿に登記をしておけば、あらためて固定資産税の申告の際に土地の概要について申し出る必要はありません。なぜなら、登記があれば国が自動的に課税対象の不動産を把握できるからです。

一方、償却資産税では納税者が申告する必要があります。毎年各自治体から送付されてくる「償却資産申告書」に毎年1月1日現在の状況を記入し、これを1月31日までに提出しなければなりません。

納付時期は、固定資産税、償却資産税ともに4月、7月、12月、2月の年4回に分割して納付することになっています。ただし、納期は自治体によって異なることが多いので、細かな日程はそれぞれの自治体で確認してください。

一般的には毎年6月ごろに金額記載済みの納付書が1年分まとめて送られてくるので、それを用いて現金で支払うことになります。口座振替で自動支払を行うことも可能ですが、この場合は領収書が発行されないため、口座の入出金記録を残しておくことが重要です。

固定資産税・償却資産税は経費として認められる

固定資産税と償却資産税は、必要経費として認められます。なぜなら、税法上、業務の用に供される資産に係る税金は必要経費として認められるからです。つまり、事業を行うために必要な土地、建物、自動車、機械などに対してかかる固定資産税や償却資産税は、原則として全て経費として処理できます。

「事業用」ではなく、プライベートで使っている土地や建物、自動車などに対してかかる税金は経費にならないので、この点を誤って経費として処理してしまわないように注意しましょう。

ここで、あらためて償却資産税の対象になる償却資産について確認しておきましょう。
償却資産税の対象は、「土地・家屋以外で事業の用に供することができる資産」であること、さらに、「その減価償却額又は減価償却費が法人税法または所得税法の所得計算上で、損金又は必要な経費に算入されるもの」です。

さて、固定資産税は、納期が分割しているので必要経費に組み込むタイミングにも注意する必要があります。原則として、各納期の税額をそれぞれの納期開始日の属する年、または実際に納付した日の属する年、どちらの年であっても必要経費とすることが可能です。

例えば、固定資産税の第4期分の納期期間は一般的に2月ですが、賦課決定通知書(納税通知書)そのものは前年の5月末に届いているはずです。したがって、第4期分については賦課決定のあった年度か実際に納税をした翌年度、そのどちらでも納税分を必要経費として組み込むことができる、ということになります。

固定資産税・償却資産税を支払った場合の仕訳方法

個人事業主や中小企業が固定資産税や償却資産税を支払った場合の仕訳方法について見ていきましょう。

経費処理する場合は、賦課決定があった日に経費処理する方法と支払日に経費処理する方法の2通りが認められています。ただし、どちらの方法をとるにせよ、毎年同じ方法で処理することが求められることになる点に注意です。

賦課決定があった日に経費で処理する場合

固定資産税・償却資産税の賦課決定があった日(支払う税金の金額が決定した日)に経費で処理する場合の仕訳方法は次のように仕訳します。まず、賦課決定のあった日に行う仕訳は次の通りです。

  • 借方勘定科目:租税公課
  • 借方金額:1年間に支払う固定資産税の合計金額
  • 貸方勘定科目:未払金
  • 貸方金額:1年間に支払う固定資産税の合計金額

そして、4月、7月、12月、2月のそれぞれの納付日に、以下のように仕訳します。

  • 借方勘定科目:未払金
  • 借方金額:その納付日に支払った金額
  • 貸方勘定科目:現金
  • 貸方金額:その納付日に支払った金額

事業に必要となる固定資産税に関しては「租税公課」で処理をしますが、賦課決定時は支払いがまだの状態なので、貸方勘定項目で「未払金」と仕訳するのがポイントです。この未払金は支払日に支払った旨の会計処理を行う、という仕組みになっています。

支払日に経費で処理する場合

固定資産税・償却資産税の支払日に経費で処理する場合の仕訳方法は次のとおりです。まず、こちらの方法では賦課決定のあった日に仕訳はなしなので、それぞれ4月、7月、12月、2月の納付日に以下のような仕訳を行っていきます。

  • 借方勘定科目:租税公課
  • 借方金額:その納付日に支払った金額
  • 貸方勘定科目:現金
  • 貸方金額:その納付日に支払った金額

この方法では、支払日に固定資産税を経費にするという考え方をとります。したがって、支払った分だけを経費として計上すればいいということです。

プライベートの固定資産税を支払った場合

もともとプライべートの固定資産税は経費とはならないのですが、これを事業用の資金から支払った場合には帳簿付けが必要です。もちろん、プライベートのお金で支払ったのであれば、帳簿付けは不要になります。

帳簿付けが必要となる場合は、賦課決定のあった日に仕訳をする必要はありません。支払日に経費として仕訳していけばいいので、納付日となる4月、7月、12月、2月に、以下のような処理で仕訳を行いましょう。

  • 借方勘定科目:事業主貸
  • 借方金額:その納付日に支払った金額
  • 貸方勘定科目:現金
  • 貸方金額:その納付日に支払った金額

特徴的なのは貸方勘定項目が「事業主貸」となる点です。事業用の現金残高と帳簿を合わせる必要があるので、「租税公課」ではなく「事業主貸」を使って会計処理を行うことになります。

知っておきたい「特例による軽減措置」

固定資産税と償却資産税に関しては、さまざまな特例による軽減措置が設けられています。代表的なものを中心に説明していきますので、該当する場合は積極的に活用していきましょう。

中小企業を対象とした固定資産税の特例措置

「中小企業を対象にした固定資産税の特例措置」は、平成30年(2018年)の税制改正において中小企業の設備投資の促進を目的として創設された制度です。正式な名称は、「生産性向上特別措置法に基づく固定資産税の特例措置」といいます。

市町村から認定を受けた中小企業を対象として、新たに取得した設備にかかる固定資産税を最大3年間軽減するという特例措置です。固定資産税は、「課税標準×標準税率」で決まると説明しましたが、標準税率を決めているのは各市町村です。

この特例では、条例で定める標準税率の割合に0~2分の1を乗じた税率にまで軽減されます。例えば、特例措置での軽減割合が0であれば、固定資産税は3年間ゼロになるということです。

固定資産税等(土地)の負担調整措置

上記の特例と同じく、平成30年の税制改正では「土地にかかる固定資産税等の負担調整措置」について、現行の仕組みを3年延長することが決定されました。この措置は、固定資産税の負担水準のばらつきをなくすことを目指したもので、当年度の土地の価格と前年度の課税標準を比較したうえで、当年度の課税標準額を調整するという制度です。

価格の低い土地に対しては税負担を引き下げたり、価格の高い土地に関しては価格を引き上げたりする操作をすることで、なるべく税負担の公平を保とうと意図された制度といえます。

しかし、この調整方法に関しては問題点もかなり指摘されているところで、実際に地価が下がった土地であっても土地の税金が変わらないというケースが多く発生しています。そのため、国税庁によると、固定資産税の負担調整措置のあり方については「引き続き検討を行っていく」とのことです。細かな制度設計に関しては将来的に細かな変更があることも考えられるので、まずは知識としてこのような制度があるということを押さえておけばいいでしょう。

新築住宅に係る税額の減額措置

平成30年の税制改正においては「新築住宅に係る固定資産税の減額措置」も2年延長されることが決定しました。ただし、適用期限は令和2年(2020年)3月31日までとされています。

この措置は、住宅取得者の初期負担を軽減することで質の良い住宅の建設を促進すること、そして、居住水準を向上させて良質な住宅ストックを形成することの2つを目的とする措置です。概要について一般住宅は3年間、税額2分の1に減額、マンションなどは5年間、税額2分の1減額ということになっています。

認定長期優良住宅に係る特例措置

同じく平成30年の税制改正において、「認定長期優良住宅に係る特例措置」が2年延長されることが決定しています。こちらも適用期限が令和2年(2020年)3月31日です。この措置は、耐久性などが高く、適切に維持保全される住宅の普及を促進する目的でとられている制度となっていて、固定資産税だけでなく登録免許税や不動産取得税などに関しても適用されている制度です。

固定資産税に関しては次のような軽減措置となります。まず、一般住宅は適用期限を3年から5年に延長し、税額2分の1に減額となります。マンションなどについては適用期限を5年から7年に延長、税額はこちらも2分の1に減額となります。

ちなみに、固定資産税以外の軽減措置では、所有権の保存登記や移転登記にかかる登録免許税が軽減となり、また、不動産取得税は課税標準から1,300万円(一般住宅特例で1,200万円)が控除されることになります。

固定資産税に関するその他の特例措置

固定資産税の軽減措置は、これ以外にもさまざまなものがあります。

1つ目は、首都圏データのバックアップのため首都圏以外に整備した「データセンターの設備に関する固定資産税」について、特例措置が創設されています。これは、かなり特殊なケースなので、あまり該当することはないでしょう。

2つ目は、バリアフリー改修が行われた劇場や音楽堂などのイベント用施設に係る固定資産税や都市計画税の減額措置というものです。

3つ目は、津波避難施設に係る課税標準の特例措置です。こちらは災害対策とセットで行われている措置で、「期間3年間延長されるうえに対象施設が追加される」という制度改正が行われています。

このほかには「小規模住宅用土地」と呼ばれる、面積200平方メートル以下の住宅用土地に対して固定資産税が6分の1となる減免措置があります。個人事業主など比較的小規模な事業者は、住宅と職場を兼ねる場合も多いので、住宅に関する固定資産税の軽減措置は節税に欠かせない要素となっていくでしょう。

ちなみに、200平方メートル以上の土地については「一般住宅用土地」と呼ばれ、こちらでは固定資産税が3分の1に減免されます。

固定資産税を理解して正しく納税しよう

以上のように、事業者に最低限必要な「固定資産税」に関する基礎知識について解説しました。土地や建物、備品などにかかる固定資産税や償却資産税は、特例によって軽減してもらえる場合がかなりあります。

こうした事業用資産に対してかかる固定資産税や償却資産税は経費として認められるので、しっかり理解して、正しく帳簿付けを行っておくことはもちろん、期日である1月31日までに忘れずに償却資産申告書を提出しましょう。

photo:Getty Images

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この記事の監修者中野 裕哲(起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士)

起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。起業コンサルV-Spirits/中野裕哲税理士・社会保険労務士・行政書士事務所代表。
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