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ルームシェアの家賃に引っ越し代、車関係は確定申告で家事按分できる?

自宅で仕事をしているフリーランスや個人事業主の方が頭を悩ませるのが経費の計上。なかでも日常生活のお金と、事業で使う必要経費が混在している「家事按分」は、どう計算すればいいのか判断に迷うこともあるでしょう。

今回は、確定申告をするのにあたり、実家暮らしやルームシェアの家賃、引っ越し費用、車関係の家事按分の考え方や計算方法を公認会計士兼税理士の星野さんと、MENSA会員の一平さんによる超インテリお笑いコンビ・Gパンパンダのおふたりと一緒にチェックしていきたいと思います!

Gパンパンダ

Gパンパンダ

ワタナベエンターテインメント所属、公認会計士兼税理士の星野光樹さん(左)と、MENSA会員の一平さん(右)という超インテリお笑いコンビ。筑波大学附属中学校・高校、早稲田大学商学部の同級生。ワタナベコメディスクール24期生。NHK「平成30年度新人お笑い大賞」優勝。星野さんのnoteでは、税に関するお役立ち情報を解説中。

実家暮らしやルームシェアの場合は計上できる?

ライター

――前回は家事按分の基本の考え方について、星野先生にご説明いただきました。家事按分の「家賃」は税務調査でチェックされやすいということでしたが、個人事業主は自宅と事業をおこなう場所を兼ねている場合も多いですよね。

たとえば、実家(親の持ち家)に住みながら仕事をしている個人事業主の方で、仕事で使っている部屋の分だけ、親に家賃のような感覚でお金を払っているという場合、その家賃を経費計上はできますか?

星野

星野:これは、「お世話になっている分、家にお金を入れるね」というような家族間での金銭のやりとりに過ぎないので、経費にはできないですね。

一平

一平:夫婦で借りてる家の家賃は、旦那さんがまとめて払っていて、そのうちの何割かを個人事業主の奥さんが旦那さんに払っている場合は?これも家族間のやりとり?

星野

星野:そのケースだと、先ほどとは違い、借りている家の家賃という確実な出費があります。そのうえで、税法上は夫婦のどちらが出金した場合でも、生計がひとつになっているなら、どちらが家賃を払おうと経費にすることが可能です。

一平

一平:星野先生、ズバッと説明できて、かっこいいー。

実家暮らしやルームシェアの場合は計上できる?

星野

星野:心が全然こもってない言い方だなあ。そうそう、国税庁のやさしい必要経費の知識の次の説明を参考に見てみましょう。

(2) 必要経費になるものとならないものの例
1.イ 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃などは必要経費になりません。逆に、受取った人も所得としては考えません。

(引用)国税庁:No.2210 やさしい必要経費の知識より引用

これは、土地や家屋に限らずその他の資産を借りた場合も同様です。ただし、例えば子が生計を一にする父から業務のために借りた土地・建物に課される固定資産税等の費用は、子が営む業務の必要経費になります。

ライター

――なるほど。それでは親子ではなく、友だちなどとルームシェアをしている場合の家事按分はどうなるのでしょうか?注意点すべきことについて教えてください。

星野

星野:家賃の総額の中で自分が支払っている金額を、自分の部屋における事業用スペースと、プライベート用スペースで按分すればOKです。「みんなで住む家の中に、さらに小さい自分の家がある」という感覚を持つと、わかりやすいかなと思います。

一平

一平:みんなの共用部分に、仕事用のものを置いている人はどうするの?

星野

星野:「みんなで使うためのスペースに置いているものって、本当に個人の仕事のためだけに使っていると言えるんですか?」って、税務調査で突っ込まれそうだけど。

一平

一平:その人はシェアハウス内でのパワーバランスが強いから、共用部分に、自分の部屋に置ききれない仕事用のものを置いていても許される! 権力がある人の場合!(笑)

星野

星野:じゃあ、そこはもう共用部分とは言わず、その人の専有スペース扱いにするほうが適切かもしれないね。「その場所を他の人はまったく使わないんですか?」とか、「その場所をプライベートでも使っているんじゃないですか?」というところが、家事按分の論点になるかなと思うので。

ルームシェアにおいても、明らかに仕事のためだけに使っているスペースを確保して、申告することが大切です。

一平

一平:住んでる人たちの認識も、はっきりさせとかないといけないね。相談なしに、勝手に共用部分に荷物をどんどん置いちゃう人とは、そもそもルームシェアしないほうがいいけど(笑)。

星野

星野:仕事用スペースと、プライベート用スペースが共用部分に混在していると、家に税務調査が来たときに、納得してもらえないだろうからね。

一平

一平:「汚い家だなあ」って思われちゃうね。

星野

星野:汚いと思われるかどうかは、どうでもいいけど(笑)。

一平

一平:同居人に家賃や水道光熱費を立て替えてもらっている場合も、経費として計上していいの?

星野

星野:結果的に自分がちゃんと負担するのであれば、計上してOKです。ただ、必要経費とする以上、原則として帳簿付けと、領収書などの保管義務があります。可能であれば、個別の領収書を大家さんに発行してもらいたいところですね。

難しい場合は、「家賃の総額が○万円で、個人がそれぞれ○万円ずつ払うと決めています」ということがわかる書類などを保管したうえで、出金伝票などに自分の経費を記載していき、税務調査の際にはそれを見せればいいでしょう。

ライター

――「今月の水道光熱費は○万円だったので、人数で割ってひとり〇千円の支払いをお願いします」というような、シェアメイト同士のメールなどのやりとりは、記録として有効でしょうか?

星野

星野:それだと、「ひとりあたり〇千円払った」という証明にはなるかもしれませんが、もともとの水道光熱費の総額が正しいかどうかの証明にはなりません。なので、水道光熱費の領収書などの保管は、やはり必要になりますね。領収書をコピーして、それぞれ保管しておければベストかもしれません。

一平

一平:なるほど。家事按分のことはいろいろわかって勉強になったけど、それにしても個人事業主って、本当に毎日「これは仕事か?それともプライベートか?」って、税金のことを考えていないといけないんだね……。

星野

星野:個人事業主とはそういうものですけど、何か問題でも?

星野

星野:……問題ございません!毎日、意識を高く持って生きていきます!!

車の購入費やガソリン代の家事按分は走行距離や使用日数で計算

車の購入費やガソリン代の家事按分は走行距離や使用日数で計算

一平

一平:自家用車も仕事で使っていれば、家事按分していいんだっけ? 僕が自分の車を買えるのは、もう少し先かもしれないけど……。

星野

星野:車の購入費やガソリン代も大丈夫ですよ。按分の仕方として明確に分かりやすいのは、走行距離ですかね。とはいえ、事業用とプライベート用、それぞれの走行距離の測り方を考えないといけませんが。使用頻度・日数を基準にするのもいいと思います。光熱費と同様に「月~金の9~17時は仕事で使っています」という感じで。

一平

一平:僕が洗濯機を使うときは毎回、全体の4分の1くらいは衣装を洗ってるっていう洗濯代を経費計上するときのロジックと同じだね。車って洗濯機みたいなものなんだ。

星野

星野:……車は……洗濯機??

ライター

――去年は走行距離で按分していたけど、今年は日数で按分する……というように、按分計算の方法を変えるのはOKですか?

星野

星野:あまりコロコロ変えるのは、原則的にはよくないですね。一回決めた方法で、ずっと計算し続けるのがベストです。ただ、実態として、去年と今年で取引内容や車の使い方が変わるなど、外的な変化があったことによって、今までやっていた按分の方法が合理的じゃなくなったり、その方法じゃ計算できなくなったりするケースもあり得ます。その場合は、按分計算の方法を変えても構いません。

一平

一平:通勤先がめちゃくちゃ遠くなったとか、常駐勤務からリモートワークで働くことになった、とかね。いろんな可能性があるもんな。

星野

星野:家事按分は計算の方法もいろいろ悩むと思うのですが、きちんと実態に則していれば大丈夫です!

引越し費用や礼金も家事按分できる!

引越し費用や礼金も家事按分できる!

ライター

――そういえば2019年、一平さんは引越しをされましたね。引越しの費用は家事按分してもいいのでしょうか?

一平

一平:引越し按分は2019年分の僕の確定申告における重要項目です。

星野

星野:「引越し按分」という言葉はありませんが(笑)、引越しにかかった費用の一部も、按分して経費にできますよ。

もちろん按分は、事業用に引越し先の家を使うという前提でおこなうけどね。あと細かいところだと、「礼金」と「敷金」は同じようなものだと思っている方もいるかもしれませんが、まず礼金は経費にできます。かたや敷金は、保証金のような形で一旦渡し、退去の際に戻ってくるものなので、経費という扱いにはできません。

一平

一平:これは敷金というものに対する知識がないと、わかんないかも。引越しで出費したお金がどう使われるのか理解しておかないと、経費にしていいかどうかの判断もできないってことだね。初期費用の鍵交換代とか、ハウスクリーニング代は必要経費って考えてOKだよね?

星野

星野:それはOKだね。あとは引越しの運送費も経費にできます。

一平

一平:よかった~! たかくら引越センターさーん!

ライター

――たかくらさんにお願いされたんですね。以前、「スモビバ!」でも取材させていただきました!

一平

一平:たかくらさんのおかげで快適な引越しでしたと、PRもしておきます(笑)。

ライター

――運送費の按分は、家賃と同じ割合でいいんですか?それとも、仕事用のものを入れた段ボール箱の割合などを算出したほうがいいでしょうか?

星野

星野:確かに、運送に関しては箱単位などの物量を基準に考えるほうが、適切かなと思いますね。

一平

一平:……そんな箱の数なんて覚えてないよ!!

星野

星野:写真入りの引越し日記、書いてないの?(笑)

一平

一平:書いてないよ!僕は引越し芸人じゃないんだから!

星野

星野:家賃と同じ比率で按分しちゃうとアウト、というわけではありませんが、運送費は荷物を運んでもらうために使っているお金なので、全体のうちどれだけの荷物が事業用のものなのかを算出するのが、より正しい按分の形に近いかなとは思いますね。

ライター

――ちなみに一平さんは引越しの際、家事按分を意識しておこなった準備などはありますか? 段ボール箱の数は記録していなかったようですが……。

引越し費用や礼金も家事按分できる!

一平

一平:……特にないです。家事按分のことをちまちま考えるより、とにかく安くて安心な引越し業者を選ぶほうが大切でしょ!

星野

星野:おっと、急に家事按分のことを投げ出すのはやめてください(笑)。事業用の荷物が多くなりそうな引越しの場合は、荷物の量をしっかり記録しておくなどの準備を心がけておくといいでしょう。

ライター

――これまで挙げていただいたものの他に、家事按分で忘れがちなものはありますか?

星野

星野:火災保険料も、家賃と同じように按分して申告できますよ。家を守るための火災保険なので、その家の○割を事業用に使用しています、と明確に説明できれば。

一平

一平:家事按分できそうなのに、しちゃいけないものも気になるなあ。

星野

星野:住宅に関するお金として、住宅ローンの元本のお金は経費にできません。これはそもそも経費にするorしないの前に、借入金なので負債という扱いになります。その一方で、住宅ローンにかかる金利は、家賃と同じ考え方で按分できます。

一平

一平:金利を経費として認めてくれるなんて、国の優しさが出たね~。でも、元本は按分できないっていうのは間違えやすいポイントかも。我々アマチュア個人事業主は……。

星野

星野:アマチュアじゃなくて、もうプロの自覚を持ちましょうね。

一平

一平:えー、我々プロ歴の浅い個人事業主は、「出費したものは経費にできる」と考えてしまいがちだけど、負債は経費にできないっていうところは気をつけないとね。出費の内容をしっかり把握しておかないと、ミスっちまうぜ!ということで。

引越し費用や礼金も家事按分できる!

星野

星野:ミスといえば……2019年は軽減税率が導入されたことで、個人事業主の家事按分には、以前の記事でもお話ししたように、水道光熱費など、9月分までの8%のものと、10月分からの10%のものが混在するので、そのあたりの経理処理に気をつけたほうがいいですね。

一平

一平:ま、僕には会計ソフトがあるから心配無用だけどね!

ライター

――今回は、個人事業主やフリーランスの家事按分について、星野先生に解説していただきました!

家事按分できるかどうか迷うものについては、事業に使うものを、実態に則して経費計上できるという基本に立ち返って考えるのがいいかもしれませんね。

自宅で仕事をしている個人事業主の方は、家事按分を上手に活用し、経費の範囲を広げましょう!

Photo:沼田学

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