損益計算書(P/L)とは?読み方やよく使う項目、貸借対照表との違いを解説

2023/09/29更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

財務諸表の1つである「損益計算書(そんえきけいさんしょ)」は、会社の経営成績を把握して外部に示すための重要な書類のひとつです。しかし、決算のために損益計算書を作成しても、「どこに注目して自社の経営に活かせばいいかよくわからない」という方もいるかもしれません。

損益計算書を読み解くと、「会社が1年間にどんな事業でどれくらい収益を上げ、そのためにどれくらい費用がかかり、結果としてどれだけ利益が出たか」が明らかになります。

ここでは、損益計算書から読み解ける内容や損益計算書を見るときにチェックしておきたいポイント、よく使う損益計算書の項目などについて解説します。

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損益計算書(P/L)とは、会社の収益と費用の損益計算をまとめた書類のこと

損益計算書 (単位:千円) 項目:経常損益の部 営業損益の部 売上高 金額:1,00,000 +、売上原価 金額:50,000 -、売上総利益 金額:50,000、販売費および一般管理費 金額:30,000 -、営業利益 金額:20,000 営業活動で稼いだ利益、営業外損益の部 営業外利益 受取利息 金額:1,000、受取配当金 金額:1,000、雑収入 金額:1,000、営業外収益合計 金額:3,000 +、営業外費用 支払利息 金額:800、為替差損 金額:100、雑支出 金額:100、営業外費用合計 金額:1,000 - 本業以外で使った費用、経常利益 金額:202,000 会社が通常の活動で上げている利益、項目:特別損益の部 特別利益 固定資産売却益 金額:800,000、投資有価証券売却 金額:200,000、特別利益合計 金額:1,000,000 + 本業以外で、かつ臨時で稼いだ収益、特別損失 投資有価証券売却損 金額:40,000、災害による損失 金額:10,000、特別損失合計 金額:50,000 - 本業以外で、かつ臨時で使った費用、項目:税引前当期利益 金額:1,152,000、法人税、住民税及び事業税等 金額:330,000 -、当期利益 金額:822,000 税金を引いた今期の最終的な利益

損益計算書は、一会計期間における会社の収益と費用の損益計算をまとめた書類で、決算書(財務諸表)のひとつです。「P/L(Profit and Loss Statement)」とも呼ばれます。すべての会社は決算の際、貸借対照表や株主資本等変動計算書とあわせて、必ずこの損益計算書を作成しなければなりません。なお、キャッシュ・フロー計算書については、上場企業のみ作成が義務づけられています。

また、個人事業主の場合、所得税の確定申告で青色申告を選択した際に作成する青色申告決算書の1から3枚目が損益計算書に該当します。

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損益計算書からわかること

損益計算書を見ると、「企業がどの程度売上を上げて(収益)」「経費を何に使って(費用)」「どれくらい儲けが出たのか(利益)」がひと目でわかります。つまり、損益計算書は、その会社の収益力を把握するための書類といえるのです。

損益計算書を構成する収益・費用・利益の要素は複数の項目で構成されており、いくつもの計算が必要となります。

損益計算書の見方と5つの利益

前述したとおり、損益計算書とは収益・費用・利益の3つの要素が記載されている書類です。簡単にいうと、商品やサービスを販売して得た売上高から経費を差し引くと、利益を計算することができます。

そして、利益は「売上総利益(粗利)」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益(純利益)」の5つに分けられます。会社の収益力を正確に把握するには、それぞれの利益が示す内容についてしっかりと理解しておくことが大切です。

売上総利益(粗利)

売上総利益は「粗利」とも呼ばれ、自社の営業活動の核となる商品やサービスなど、いわゆる本業によって得ている利益を把握することができる項目です。企業の利益というよりは、企業が販売している商品の利益を示すため、多くの企業が売上総利益を重視します。売上総利益は、次の計算式で求めることができます。

売上総利益の計算式

売上高-売上原価=売上総利益

売上高

売上高は、商品の販売やサービスの提供といった、自社の本業である営業活動の対価として得られる収益を指し、「売上」とも呼ばれます。売上高は原則として、顧客に商品を引き渡したりサービスを提供したりした時点で計上するものです。そのため、売上高の計上時期と、実際に現金が入ってくる時期にはずれが生じます。売上高だけを見ても、手元の資金がどれくらいあるかはわからないので注意しましょう。

特に、創業したての企業の場合、利益よりも売上高を増やすことを重視する傾向があり、気づかないうちに資金繰りが悪化してしまうリスクがあります。

売上原価

売上原価とは、商品の仕入や製造などにかかる費用のことです。ここで注意したいのが、売上原価は当期の売上に対する原価を指すということです。後に販売する在庫や売れ残った商品にかかった原価は、売上原価には含まれません。売上高から売上原価を引くと売上総利益が求められるため、売上原価が小さいほど会社の儲けは大きくなります。

売上原価を小さくする方法としては、仕入先と交渉して値下げをしてもらうことや、より安価な仕入先を探すこと、大量発注で仕入単価を下げることなどが挙げられます。ただし、安くなったことで品質が下がってしまうと、顧客離れや消費者離れが起こる可能性もあります。品質とのバランスを考えて検討しましょう。

営業利益

営業利益とは、自社の本業における営業力で稼ぎ出した利益のことです。例えば飲食店なら、本業である飲食業での利益が、この営業利益にあたります。

「本業の利益は売上総利益を見ればわかるのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、商品やサービスを販売するには、原価の他にもさまざまな費用がかかります。例えば、商品のアピールには営業活動や広告宣伝が必要になるでしょうし、企業を運営するには総務・経理といった間接部門による手助けやサポートが欠かせません。

このような、商品やサービスを販売するために欠かせない経費を「販売費及び一般管理費」といい、売上総利益から差し引くことで営業利益を算出できます。営業利益を求める計算式は、次のとおりです。

営業利益の計算式

売上総利益-販売費及び一般管理費=営業利益

営業利益についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

販売費及び一般管理費

販売費及び一般管理費は、本業の営業活動にかかる費用のうち、原価に含まれないものを指します。具体的に、販売費は商品を宣伝するための広告費用などの販売に直接関連して発生する費用が、一般管理費は販売に直接関連しない営業部門や間接部門の人件費や通信費、事務所家賃などが該当します。

経常利益

経常利益とは、会社の本業で得られた営業利益に、本業以外の活動から毎期経常的に発生する損益を加減したものです。会社を運営していると、本業の営業活動以外でも収益や費用が発生することがあります。経常利益を見ると、本業以外の活動を含めて、通常稼働時に会社が1年間でどれくらいの利益(または損失)を出したかがわかります。

経常利益は、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引くことで求められるものです。計算式にすると次のようになります。

経常利益の計算式

営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益

経常利益についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

営業外収益

営業外収益とは、企業が本業とする営業活動以外によって毎期経常的に得られる収益のことです。例えば、預貯金や貸付金の利子である受取利息、所有する債券から発生する有価証券利息、他社の株式を保有している場合に受け取る受取配当金などが該当します。

営業外費用

営業外費用は、企業が本業とする営業活動以外の活動において継続的に発生する費用を指します。例えば、借金の利息や会社の創立費、開業費などが該当します。

税引前当期純利益

税引前当期純利益とは、その期に対応した法人税などの税金を差し引く前の利益額です。税引前当期純利益は、臨時的な損益を含めた企業の総合的な利益(または損失)を表すもので、経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引いて算出します。計算式にすると次のようになります。

税引前当期純利益の計算式

経常利益+特別利益-特別損失=税引前当期純利益

税引前当期純利益についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

特別利益

特別利益は、本業とは関係なく臨時的に発生した利益のことです。例えば、固定資産の売却益や、長期間保有していた株式や証券の売却益などが該当します。

特別損失

特別損失は、本業とは関係なく臨時的に発生した損失のことです。固定資産の売却損や長期保有している株式の売却損の他、火災や盗難、自然災害による損失などが特別損失にあたります。

当期純利益(純利益)

税引前当期純利益から法人税等の税金を引くと、純粋な今期の利益である当期純利益が算出されます。法人税等とは、企業が納めるべき法人税や法人住民税、法人事業税などの税金のことです。当期純利益は、その期における企業の最終的な利益であり、「純利益」とも呼ばれます。この当期純利益の数字がマイナスの場合は、当期は赤字ということになります。当期純利益を求める計算式は次のとおりです。

当期純利益の計算式

税引前当期純利益-法人税等(法人税、法人住民税、法人事業税など)=当期純利益(純利益)

当期純利益についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

損益計算書を読み解く際の重要なポイント

損益計算書においてチェックすべき重要なポイントは、最終的に当期純利益がプラスになっているかどうかという点です。配当の原資となり、配当として外部に流出した金額以外の金額は内部に留保されて経営基盤を安定させます。

この時注意すべきなのは「営業利益」です。最終的な当期純利益がプラスであっても、営業利益がマイナスの場合、本業の営業活動で利益を上げられていないことになります。特別利益などの突発的な収益がないと当期純利益がプラスにならない場合、根本的な事業の見直しや資金計画の立て直しを図る必要があるといえます。

損益計算書の読み解き方

損益計算書に示された5つの利益について理解した上で、さらに深く内容を読み解いていきましょう。下記のようなポイントを見ることで、会社の収益性をチェックすることができます。

「売上高総利益率(粗利率)」を算出することで、企業の収益性をチェックできる

売上高総利益率は、売上高に占める売上総利益の割合のことで、粗利率とも呼ばれます。売上総利益を売上高で割ることで算出でき、計算式にすると次のようになります。

売上高総利益率の計算式

売上総利益÷売上高×100=売上高総利益率(%)

売上総利益は売上高から売上原価を差し引いたものなので、売上高総利益率が高いほど売上原価が低い、つまり収益性が高いということになります。ただし、売上高総利益率の目安は業種によって異なります。そのため、売上高総利益率の数字にだけ注目するのではなく、同業他社と比較したり、自社の過去年度からの推移を確認したりすることが大切です。

「売上高営業利益率」を算出することで、本業の収益力をチェックできる

売上高営業利益率は、その期に本業でどれだけ利益を出せたかがわかる指標です。売上高に占める営業利益の割合を指し、計算式にすると次のようになります。

売上高営業利益率の計算式

営業利益÷売上高×100=売上高営業利益率(%)

売上高営業利益率が高いほど、本業で利益を生み出す力のある、収益力の高い企業であると判断できます。目安は業種によって異なりますが、一般的には5%を超えれば優良水準といえるでしょう。

「売上高経常利益率」を算出することで、企業の経常的な収益性をチェックできる

売上高経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合で、資産運用なども含めた企業の経常的な収益性をチェックする指標になります。売上高経常利益率を求める計算式は次のとおりです。

売上高経常利益率の計算式

経常利益÷売上高×100=売上高経常利益率(%)

売上高経常利益率が高い企業は、営業収益の他にも資産運用などによる営業外収益があり、理想的な経営状態であることがうかがわれます。ただし、経常利益は受取配当金などの財務活動に大きく左右されるため、本業の収益力をチェックするため、売上高営業利益率も併せて確認することが大切です。

損益計算書の勘定科目一覧

勘定科目は「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」の5つに分類されます。そのうち、「収益」「費用」は損益計算書に分類され、残りの「資産」「負債」「純資産」は貸借対照表に分類されます。損益計算書の勘定科目について図解すると、下記のようになります。

損益計算書の勘定科目

費用(売上原価、販売管理費及び一般管理費、営業外費用、特別損失) 純利益 収益(売上高、営業外収益、特別利益)

収益

収益とは、会社が事業などで得た収入のことです。収益に分類される主な勘定科目は下記のとおりです。

収益に分類される主な勘定科目
勘定科目 内容
売上高 本業によって生み出した収入
営業外収益 本業以外の活動から経常的に発生した収入。具体的には、受取利息、受取配当金など
特別利益 本業以外の活動から臨時的に発生した収入。具体的には、固定資産売却益、有価証券売却益など

費用

費用とは、経費や支出などを示します。費用に分類される主な勘定科目は下記のとおりです。

費用に分類される主な勘定科目
勘定科目 内容
売上原価 売れた商品の仕入れ・製造にかかった費用
販売費及び一般管理費 一般に「経費」と呼ばれる、本業を運営するためにかかった費用。具体的には、広告宣伝費、給料手当、支払家賃、水道光熱費など
営業外費用 本業以外の活動から経常的に発生した収入。具体的には、支払利息、創立費、開業費など
特別損失 本業以外の活動から臨時的に発生した費用。具体的には、固定資産売却損、有価証券売却損など

損益計算書と貸借対照表との違い

損益計算書は一会計期間の収益と費用をまとめたもので、企業の経営成績を表しています。

貸借対照表 〇年〇月〇日現在 単位:円 資産の部 流動資産 固定資産 有形固定資産 無形固定資産 投資その他の資産 資産合計 負債の部 流動負債 固定負債 純資産の部 株主資本 資本金 利益剰余金 負債純資産合計

一方、貸借対照表は、決算時点での企業の財政状態を表すものです。貸借対照表を確認することで、資金をどのように調達したのか、その資金がどのような用途に使われているのかがわかります。貸借対照表は、企業の財政状態が健全かどうかの判断をしたいときに役立つ書類だといえるでしょう。

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損益計算書に記載される収益や費用は、日々の取引の積み重ねです。日々の記帳を欠かさず行っていないと誤った内容の損益計算書が出来上がってしまい、正しい収益力を把握することができません。そのような事態を避けるためにも、起業初期から会計ソフトを活用し、正確な記帳を心掛けるといいでしょう。

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損益計算書を読み解くと、売上高だけではわかりづらい、さまざまな利益や企業の収益性が見えてきます。1年間の収益や費用、利益を正確に把握できれば、会社や事業運営の改善策を立てることにもつながるといえます。損益計算書を活用して自社の経営状態をチェックし、業績向上のために役立てましょう。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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