税務署って確定申告の相談できる?電話で相談もOK?予約の必要性や管轄について

2021/03/31更新

この記事の執筆者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

毎年、所得税の確定申告のシーズンは、多くの個人事業主やフリーランスが慌ただしくなる時期。初めての方だけでなく、毎年やっている人でも確定申告について、疑問点や確認したいこともあるのではないでしょうか。

税務署では確定申告の相談を受けてくれるのでしょうか?税務署に相談できること、時期などについて、ご紹介します。

2020年(令和2年)分の確定申告については、確定申告会場の混雑緩和を図るため、確定申告会場への入場には、入場できる時間枠が指定された「入場整理券」が必要です。
入場整理券の入手方法、関係事項など詳細は、以下を参照ください。(2021年1月15日 編集部追記)

POINT

  • 税務署の無料相談は、税務署窓口のほか、確定申告のシーズンには特設会場での相談会も開催していて、日曜祝日の開催もある
  • 税務署への相談は、窓口で直接相談する方法のほか、電話相談も可能である
  • 税務署の無料相談で解決できないことは、税理士に相談することで解決できることがある

税務署では無料で確定申告の相談ができる

毎年年明けから、個人事業主をはじめ多くの人を悩ませる確定申告。

そんな人たちが少しでも確定申告がやりやすくなるように、税務署は毎年、相談コーナーを設置したり、相談会場を設置するなどしています。

とはいえ、そもそも確定申告書は、所得税を申告する人(または依頼された税理士)が自分で作成するものです。では、どのくらいまで税務署を頼れるのでしょうか?

基本的には「書類の書き方や選び方」など形式的な相談がOK

確定申告書を作成するうえでの悩みには、さまざまなレベルがあります。どの欄に数字を書けばよいのかということや、どのような書類を添付すればよいのかといった形式的な悩みから、そもそも確定申告書を作る前提となる売上や費用の集計がわからない……という経理的な悩みまで、いろいろです。

そんな数ある悩みのなかでも、基本的に税務署が相談に乗ってくれるのは、書類の書き方や添付する書類の種類などといった、形式的な面です。

相談するといっても、領収書などを持って行って経費にできるのかなどという、経理的な判断を伴うような内容までは、さすがに税務署職員でも断定はできません。

ちなみに税務署での窓口相談は税務署職員が行いますが、確定申告時期に設置される特設会場では、その地域の税理士も相談員として相談にのってくれます。税務署職員だけでは人数的にも対応しきれないため、地元の税理士会と協力して相談業務にあたっているのです。

具体的な判断は範囲外だが、一般的に答えが決まっている内容なら教えてもらえることも

上記に書いたように、税務署で確定申告について相談できる内容は、形式的なことが中心です。個別具体的な判断を伴う内容までは相談できないのが基本です。

個人事業主の場合、確定申告書を作成する前段階として、売上や費用の経理処理が必要となります。こうした経理関係業務には、経費の範囲や、減価償却など、さまざまな処理を行う必要があります。経理的な処理の一つひとつは税務署が判断することではないので、基本的に相談業務の範囲外です。ですから、このあたりについては申告者本人(または依頼する税理士)の責任において、処理をしなければいけません。

ただし、経理といっても、例えば「今年の12月末締で1月入金の売上は、今年の売上なのか翌年の売上に入れるのか?」といった、一般的に答えが決まっているような内容であれば答えてもらえるでしょう。

また、個人事業主でなくても、例えば医療費控除の医療費の範囲や、どの程度の親族まで扶養に入れられるのかといったことも、あらかじめ答えが決まっていることなので回答してもらえます。

確定申告の相談には多くの人が時間を作って訪れます。まずは何を質問したいのかという要点をあらかじめまとめたうえで相談に行くようにして、相談の時間のムダを省くように協力しましょう。そもそも確定申告は納税者の責任において行うものだという意識をもつべきです。段ボールに詰めた領収書を持って行って「これ、どう処理すればいい?」なんてことを聞かないようにしましょう。

税務署で確定申告相談会を開催している場合も

編集部追記

2020年(令和2年)分の確定申告については、確定申告会場の混雑緩和を図るため、確定申告会場への入場には、入場できる時間枠が指定された「入場整理券」が必要です。
入場整理券の入手方法、関係事項など詳細は、以下を参照ください。(2021年1月15日 編集部追記)

参考

国税庁:確定申告会場にお越しになる方へ新規タブで開く

確定申告の時期になると、税務署は相談者で溢れてしまい、提出するだけの人も含め、相談するまで大変待たされるということがあります。また、平日は時間的に相談できないという人もいます。そのため、多くの税務署では確定申告の時期に特設会場を設けて相談会を開いています。

特設会場では、税務署職員のほか、地元の税理士も相談員として窓口業務にあたっています。税理士といっても、このときはもっぱら相談員としての立場です。あくまで確定申告書作成のための相談員であって、顧問税理士のように、なんでもかんでも教えてもらえるわけではありません。

税務署の閉庁日(土・日曜・祝日等)は、通常、税務署では相談及び申告書の受付は行っておりません。しかし、この時期だけは特別に、日曜や祝祭日に開庁して相談窓口を開いている税務署もあります。国税庁や最寄りの税務署のサイトに日程や場所が公開されていますので、平日にお休みが取れない人や日曜を希望する人は確認してみましょう。

ちなみに一部の税務署では、2020年(令和2元年)分の確定申告期間中、2021年2月21日(日)と2021年2月28日(日)に限り、日曜日でも確定申告の相談及び申告書の受付を行っています

参考

国税庁:令和2年分確定申告期の確定申告会場のお知らせ新規タブで開く

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税務署に相談するメリット・デメリット

税務署に相談するメリットは、無料ということです。

税理士の事務所でも無料で話を聞いてくれるところもありますが、やはり気が引けてしまうこともあるでしょう。その点、税務署なら気兼ねなく相談に行けるのが良いところです。

デメリットというデメリットは特にありません。強いて言えば、日によっては自分の番が回ってくるまで、長い時間待たされることがあるということでしょうか。

また、これはデメリットというわけではありませんが、先ほども書いたとおり、税務署での相談はあくまで確定申告書を作成するための相談です。無料であることの裏返しで、個別的、具体的な事例に関する経理処理などまで細かく教わるには限界があります。相談に行けばすべて解決できるというわけではない、ということは理解しておきましょう。

いつから税務署に相談できる?時間は?土日でも相談できる?

税務署での確定申告の相談は、1年中いつでも可能です。納税が伴うような所得税の確定申告であれば、毎年2月16日から3月15日というように、期間が決まっています。

しかし、医療費控除のように所得税の還付を受ける手続きは期間も決まっておらず、その年が終わってさえいれば、翌年1月1日から5年間の間、上記の期間後であっても1年中確定申告書の提出ができるのです。

また、納税を伴う場合でも、確定申告するのが漏れていて、期限後でも提出したいということもあり得ます。そのため、税務署の相談は1年を通して対応してくれます。税務署での相談は、税務署の開庁時間である、午前8時30分から17時(午後5時)までです。

このように年中通して相談できる税務署も、毎年2月や3月の確定申告シーズンは特別です。特設会場での相談会や、土日・祝祭日の相談会なども行っています。時間は相談会場にもよりますが、午前9時から午後5時といったことが多いです。

電話でも税務署に相談は可能!

確定申告の相談はしたいけど、税務署や相談会場まで行く時間がなかったり、相談内容が電話で解決しそうな内容だったりする場合は、電話で税務署に相談することも可能です。

電話越しの相談になるので、書類を見せながらの相談というわけにはいきませんが、口頭確認で済むような内容であれば、電話相談でもよいかもしれません。

特に確定申告シーズンには、確定申告専用の電話窓口も設置されます。とはいえ、この時期は電話での問い合わせ件数も多くなり、繋がりにくいこともあります。なるべく早い時間にかけるなど、少しでも繋がりやすい時間を選びましょう。

電話相談の窓口は地域ごとに共通なので、どの税務署にかけても、同じ相談窓口に繋がります。確定申告書を提出するのは基本的には住所を管轄する税務署です。税務署に電話するときは、確定申告書を提出する管轄の税務署に電話するようにしましょう。管轄の税務署は、下記の国税庁のホームページからも調べることができます。

参考

国税庁:国税局・税務署を調べる新規タブで開く

内容によっては相談窓口ではなく、税務署の職員と直接話す必要があるかもしれません。普段から確定申告書を提出する管轄の税務署にかけるクセをつけておいたほうがよいでしょう。

管轄の税務署に行って相談する場合

税務署での相談については、予約はできません。税務署の開庁時間や、相談会場の開設時間に行って、順番に対応してもらうことになります。特に、確定申告シーズンは10時を過ぎると、かなりの行列になることもしばしばです。朝早くに行けば、それほど並ばなくてもよいかもしれません。

基本的に住所地を管轄する税務署が管轄になる

税務署に相談に行く場合、住所地を管轄する税務署に行くことになります。ただし、個人事業主で、オフィスを納税地に選択している場合などは、オフィス所在地を管轄する税務署が確定申告書提出先となりますので、相談もその税務署で行います。

相談前に準備しておいたほうがいいこと

相談に行く場合は、相談したいことを箇条書きにしてまとめておくことが重要です。せっかく時間を使って相談に行くので、時間を有効活用したり、ほかの相談者の時間を大切にしたりするためにも、質問の内容はある程度まとめておきましょう。これは電話相談の場合でも同様です。

質問の内容をまとめておけば、相談の際に持っていく書類も整理することができます。

税務署に相談に行く際に必要な持ち物や書類は?

相談したいことや、確定申告書の作成段階によって相談に持っていくものは変わってきますが、持っていくものとしては、以下のようなものが考えられます。

  • 自分で作成できたところまでの確定申告書AまたはB
  • 個人事業主であれば、損益計算書(白色申告の場合、収支計算書)や貸借対照表
  • 認印
  • 個人番号が確認できるもの(写真付きの個人番号カードなど)

もちろん、質問の内容によって持っていく書類も変わってきます。例えば、配偶者について配偶者控除が受けられるかどうかを聞きたければ、配偶者の源泉徴収票を持っていく……といった具合です。質問したいことがはっきりすれば、どんな書類を持っていけばよいかということも分かってくるでしょう。

また、「やよいの青色申告 オンライン」のような会計ソフトを使っている人であれば、いっしょに画面を見ながら質問できるように、パソコンを持っていくのもよいかもしれません。それならいちいち紙を印刷する手間も省けますし、相談の場で入力していくこともできます。

確定申告について税理士に相談するメリット

税務署の無料相談は便利なサービスですが、税務署がやっている故の限界もあります。どのような会計処理を選択すればよいのかということや、どの範囲まで経費で計上してよいのかといった、人によって答えが異なるようなものについて答えを求めることは、税務署の相談の範疇を超えています。そういう疑問については、税理士に相談する、という方法が良いでしょう。

また、2年目以降の個人事業主については、そもそも相談の受付すらしてくれない場合もあります。無料相談のキャパシティがある以上仕方がないことかもしれませんが。

税務署の無料相談以外で相談できる相手が税理士です。税理士に相談するメリットは、疑問を解決する以上のものが得られるかもしれないということです。

無料相談では明確な答えが得られないような質問(例えば、自分の事業の性質上、どんな領収書まで経費に入れても差し支えないのかなど)に答えてくれたり、さらには、自分では考えつかないような、納税額を少なくするための税制上の方法を教えてくれたり……といったことです。

とはいえ、税理士は、そうした税金に関するアドバイスなどを仕事にしています。なかには初回の相談は無料という事務所もありますが、答えるからには専門家としての責任が伴います。もし無料相談の範囲外といわれたときは、その税理士の立場も理解するようにしましょう。

青色申告会、商工会などが開催する無料相談会などでの相談は?

青色申告を行っている個人事業主などは、地元の青色申告会や商工会議所が開催している確定申告相談会を利用することもできます。これらは税務署に比べて、確定申告書を作成する前段階の記帳の指導にも力を入れています。

また確定申告のシーズンには、地元の税理士と協力して確定申告の相談会もやっています。規模としては税務署のほうが大きいですが、相談以外にも、申告書の作成や印刷などもその場でできるなど、確定申告するためのサポート体制が整っているのが特徴です。

ただし、なかには入会して会費を払っていないと受けられないサービスもあることに注意しておきましょう。

確定申告ソフトを使えば、確定申告はもっとかんたんになる

確定申告ソフトを使用している場合は、日々の記帳さえしっかりしておけば、あとは自動的に確定申告書や、損益計算書、貸借対照表に数字が自動反映されるようになっているものもあります。

自動反映されないところも、ガイダンスが出てかんたんに入力できるなどの機能があります。そのため、確定申告書をどう記入すればよいかという疑問からは解放されます。

税務署の相談は無料とはいえ、それなりに時間を使いますし、忙しくて行けないという人も多いかもしれません。確定申告の疑問を税務署に相談に行く前に解決できるよう、個人事業主の方には「やよいの白色申告 オンライン」や「やよいの青色申告 オンライン」の導入をオススメします。

また、2020年分の確定申告からは、青色申告特別控除として65万円を受けるためにはe-Tax(電子申告)を行うなどの一定要件が必要となりました(要件を満たさない場合の控除額は55万円に引き下げとなります)。

これを機に、「やよいの青色申告 オンライン」を活用して電子申告にチャレンジしてみるのがよいでしょう。

Photo:Getty Images

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初心者にもわかりやすいシンプルなデザイン

初心者にもわかりやすいシンプルなデザインで、迷うことなく操作できます。日付や金額などを入力するだけで、確定申告に必要な書類が作成可能です。

取引データの自動取込・自動仕訳で入力の手間を大幅に削減

銀行明細やクレジットカードなどの取引データ、レシートや領収書のスキャンデータやスマホで撮影したデータを取り込めば、AIが自動で仕訳を行います。入力の手間と時間が大幅に削減できます。

確定申告書類を自動作成。e-Tax対応で最大65万円の青色申告特別控除もスムースに

画面の案内に沿って入力していくだけで、確定申告書等の提出用書類が自動作成されます。青色申告特別控除の最高65万円/55万円の要件を満たした資料の用意も簡単です。インターネットを使って直接申告するe-Tax(電子申告)にも対応し、最大65万円の青色申告特別控除もスムースに受けられます。

自動集計されるレポートで経営状態がリアルタイムに把握できる

日々の取引データを入力しておくだけで、レポートが自動で集計されます。確定申告の時期にならなくても、事業に利益が出ているのかリアルタイムで確認できますので、経営状況を把握して早めの判断を下すことができるようになります。

この記事の執筆者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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