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【新型コロナ】契約キャンセルや支払遅延、休業要請でも発生する店舗賃料...個人事業主を法律は守ってくれる?弁護士が解説!

公開日:

執筆者:馬場悠輔(弁護士)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、各業界は苦しい経営を余儀なくされており、一方的な仕事のキャンセル、支払いの遅延といった契約トラブルや、休業要請に従った店舗賃料の支払いトラブル等も相次いでいます。この未曾有の事態に、法的にどのように対処していくべきなのでしょうか。今回は個人事業主の方(以下、便宜上、フリーランス及び法人化したフリーランスも含みます)を対象に検討します。



POINT
  • 契約のキャンセルや延期が発生した場合、契約書を確認する
  • 取引先からの支払い遅延には相殺による回収、政府の制度や持続化給付金を利用する
  • 休業要請で店を閉めざるを得ない場合の店舗賃料支払いは、現行制度を確認して減額・猶予交渉を

新型コロナウイルスを理由とした契約のキャンセルや延期が生じた場合は、契約書を確認すること

新型コロナウイルスを理由として、取引先から一方的に仕事をキャンセルされたり、延期されたりする例が増えてきております。個人事業主は労働者とは異なり、基本的に労働関連の法律(労働基準法、労働契約法等)の適用はないので、今回のような事態ではこれらの法律が守ってくれるわけではありません。

まずは、取引先との間の契約書に今回のケースを想定した定めがあるかどうかを確認することが重要です。

取引先との間に契約書がある場合

例えば、契約書に、地震や台風のような天変地変があるときには、契約上の責任(履行義務を負う者の損害賠償責任等)を免れさせることや、契約の一方的な解除・延期を認めることを定めたような「不可抗力免責条項」がある場合などは、この条項の定めに従います。

ただし、この不可抗力免責条項が、今回の新型コロナウイルスの事態を含むような書きぶり(「伝染病」等も不可抗力に含むような記載)になっているかを確認する必要があります。

もし、その記載が不明確であれば、この不可抗力免責条項の解釈に委ねられることになります。まずは当事者間で話し合い、もし当事者間でまとまらない場合は裁判において裁判所(裁判官)が判断することになります。

取引先との間に契約書がない場合

契約書に定めがない場合や、そもそも取引先と契約書を交わしていない場合には、民法に従って考えることになります。

(※2020年の4月1日から主に債権部分が改正された新民法が施行され、契約締結時がいつになるかによって旧民法、新民法の適用が区別されます。ただし、以下では新旧で大きな違いがなければ特に区別せずに記載致します。)

個人事業主の方が行っている業務が、例えば、アプリケーションの開発やイラスト作成等の仕事の完成を目的とするような内容であれば、請負契約であると判断されます(民法第632条以下)。よって、発注者は受注者(個人事業主)が仕事を終えるまでの期間中は、いつでも契約を解除できます。

ただし、この場合には、発注者は受注者に生じる損害を賠償しなければなりません(民法第641条)。そのため、仕事が可分で途中まで完成しているのであればその相当額(報酬として請求する場合除く)や、解除されなければ得られたであろう利益(ただし因果関係が認められる範囲で、不要となった費用は控除されます)等を受注者は発注者に請求することができます。

一方、個人事業主の方が行っている業務が、例えば、介護サービスの事務処理業務や、知識や技能等を提供するコンサルティング業務等の仕事の完成を目的としないような業務であれば、(準)委任契約であると判断されます(民法第643条以下)。その場合、契約の各当事者はいつでも契約を解除できますが、相手方に不利な時期等に解除したときは、相手方の損害を賠償しなければなりません(民法第651条2項)。

ただし、やむを得ない事由があった場合には、この損害を賠償しなくてもよいとされています(同項但書)。今回の新型コロナウイルスの影響は、これまで経験したことのない事態ですので、事情によっては「やむを得ない事由」に該当する可能性もあると思います。

なお、請負や委任ともとれない契約内容で民法に直接の規定がなく、新民法が適用される場合で、履行不能等の場合には、債務者の帰責事由がなくとも一方的に解除ができるとされています(新民法第542条)。

以上のように、契約書に定めがあればこれに従い、契約書がなければ業務内容から適用される民法の定めに従うことになります(業務内容次第では、請負と委任の複合契約等と考えられる場合もあります)。このほか、適用された裁判例は多くはありませんが、契約締結時に前提とされた事情がその後大きく変化したことを理由に契約内容の変更を認めるという「事情変更の原則」という考え方もあります。

取引先から契約変更の打診をされたら?

契約書に一方的に契約内容の変更ができる定めがなければ、改めて当事者間で決めることになります。延期するのであればいつまでにするのか、仕事内容の変更をするのであれば具体的にどの部分を変更するのか等、できる限り後々問題にならないように書面化しておくことが重要です。

しかし、取引先とのパワーバランスによっては、書面に記載することで、かえって個人事業主の方に不利になることもあります。民法のほうが有利といえる場合には、あえて記載しないことも戦略としてあり得るでしょう(ご心配であれば弁護士等の専門家に依頼して進めることをおすすめ致します)。

もし取引先が書面化を拒むのであれば、(一部の契約を除いて)契約は口頭でも成立しますので、例えば変更された契約内容を記載した電子メールを取引先に送り、取引先がその電子メールに承知した旨の返信をしたような場合には、後々、この電子メールが変更後の契約内容を裏付ける重要な証拠になります。

なお、今般の新型コロナウイルスの影響から、公正取引委員会が各事業者に対して、個人事業主・フリーランスとの取引に関して、できる限り従来の取引関係を継続する等の配慮を行うよう要請しています。

取引先の支払い遅延には、相殺による回収、政府の制度や持続化給付金で対応を

新型コロナウイルスを理由として、取引先から支払いを待ってくれと言われたが、予定期日に支払いがないとこちらの資金繰りが厳しくなるという話も増えています。

法的にいえば、契約書の定めや民法の定めに従って、取引先からの支払いを待つ義務がなければ、支払いを請求できるという話になるのですが、そうはいっても取引先に支払能力がなければ、無い袖は振れないので、回収することはできません。

仮に取引先に支払能力があったとしても、任意の支払いに応じてくれなければ、裁判をして判決を取るしか回収する手段はないので、これには時間がかかり悠長なことはしていられません。

早期に債権回収ができる方法としては、相殺による回収(民法第505条以下)が考えられます。

取引先から支払いを待ってくれと言われた際に、こちらが取引先に何らかの支払いがある場合には、「相殺します」という意思表示を行うことで、対当額だけこちらの支払いを消滅させることができます。そのため、早期に債権回収を行うことができます。(※相殺の要件や、民事再生・会社更生の場合等の相殺については相殺時期の留意点がありますので別途ご確認ください。)

ほかの債権回収方法として、取引先の商品等の動産や、取引先が所有する債権に担保を設定してもらうということが考えられますが、担保の実行の手間や時間を考えると、今現在資金繰りが厳しい個人事業主の方にとっては、あまり有効な策にはならないでしょう。

即効性のある法的手段はあまりないですが、今回の新型コロナウイルスの各業界への影響について、政府がさまざまな施策を行っています。

例えば、金融庁から、銀行等の預金取扱金融機関に対し、事業者の資金繰り支援に関する要請が出ており、これを受けた各金融機関が、事業者の元金弁済期の猶予(リスケジュール)等の支援を行っています。ほかには、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫が新型コロナウイルス感染症特別貸付を実施しております。

また、個人事業主の方向けに、今回新しく経済産業省が「持続化給付金」という制度を実施しています。新型コロナウイルスの影響で、売上が下落した等の事情があれば、この制度を利用することも考えられます。

このように、取引先からの支払い遅延については、即効性のある法的手段があまりありません。上記の制度を利用することで、現在の資金繰りを改善することが有効策になると考えられます。

休業要請で店を閉めても発生する店舗賃料支払いは、まず現行制度を確認し、減額・猶予交渉を

今回の政府の休業要請に従って、営業を自粛するために店を閉めざるを得ない場合でも、店舗物件それ自体は使用できますので、法的には店舗物件の賃料は、自動的に免除されるわけでも減額されるわけでもなく、全額発生してしまいます。

現在のところ(本記事作成時点)、店舗賃料の免除や減額のための直接の制度がないので、店舗賃料が負担になっている事業者の中には頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

そこで、まずは賃貸人に対して、店舗賃料の減額や支払猶予等を申し入れることが考えられます。もちろん、賃貸人としても銀行から借り入れを行って物件を所有している場合もありますので、お互いの経済状況を踏まえて、無理のない範囲で考えていくことが望まれます。

そうはいっても「賃貸人は支払猶予等に応じてくれるのか?」というところがあると思いますが、賃貸人としても、(無理のない範囲で)引き続き賃貸借契約が持続するような解決方法を探していくことは有益なことであると思います。

というのも、裁判実務上、3カ月分の賃料を賃借人が滞納した場合でなければ、賃貸人は賃貸借契約の解除をすることができないとされているのが一般的であり、仮に解除が有効となっても賃借人が任意に物件の明渡しに応じなければ、裁判で判決をもらって、強制執行(断行といいます)を行う必要があります。

しかし、この手続きは非常に時間と費用がかかり、手続きの間は、(賃借人が任意に支払いを行わない限り)賃貸人は賃料を受け取ることができません。また、かかった費用や滞納賃料も、(旧)賃借人に財産がなければ回収することはできません。

このように賃貸人としても賃料滞納の問題にはさまざまなハードルがあり(これは個人的には裁判システム自体に問題があると思うのですが、この点はさて措き)、さらにこれからの不況で物件を借りてくれるテナントの確保の問題もあります。

このように考えると、現状は、無理のない範囲で賃貸借契約を継続させ、現在の賃借人から少しでも賃料を回収していくことが双方にとって利益になることが多いと考えます。

賃貸借契約を継続させるためには双方の歩み寄りが大切で、賃借人としては、単に賃料を減額等してくれと伝えるのではなく、今後の事業計画や、借り入れのリスケジュールの状況、新規借入の計画、及び従業員がいる場合には雇用調整助成金の利用等を賃貸人に説明する必要があるでしょう(先に述べた持続化給付金等の利用も考えられます)。

このような説明があると、賃貸人としても、現在の賃借人とこのまま賃貸借契約を続けていくほうが有益であると思って、交渉が進む可能性が高まるのではないでしょうか。

他には、現在の賃貸借契約が普通賃貸借契約である場合には、定期賃貸借契約に切り替えるということも交渉材料にすることが考えられます。今後賃借人に何かあっても、(定期賃貸借契約には法定更新はないので)賃貸人として店舗の明け渡しが容易になるので、この話を持ちかけることで、話し合いに応じてくれるかもしれません。

取引先にも各制度を紹介しながら、互いに無理のない支払いのスケジュールを作り上げていくことが、今回の事態を乗り越える方法として有効なのではないでしょうか。

photo:Getty Images

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この記事の執筆者

馬場悠輔(弁護士)
馬場悠輔(弁護士)

第一東京弁護士会所属。弁護士法人飛田&パートナーズ法律事務所勤務。早稲田大学大学院法務研究科修了。労働法務を中心としながら、各種契約書の作成・締結やM&A等の企業法務全般に携わっている。理系のバックグラウンドを活かし、第一東京弁護士会の建築紛争研究部会及び宇宙法研究部会に所属。著書として「これだけは知っておきたい!弁護士による宇宙ビジネスガイド」(共著。2018年 同文舘出版)

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