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従業員への賃金支払いや出社命令、取引先との契約トラブル対処など法人の新型コロナにまつわる悩みを弁護士が解説!

公開日:

執筆者:馬場悠輔(弁護士)

新型コロナウイルス感染症の感染が全国的に拡大したことを受け、日本政府は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発令しました。この緊急事態宣言に伴い外出自粛要請が出される中で、従業員の対応をどうするか、また新型コロナウイルスを理由とした契約トラブル等のさまざまな問題が生じています。この問題について法的に検討していきましょう。



POINT
  • 小学校等の臨時休校で欠勤する従業員がいる場合、助成金制度の活用を
  • 従業員への出社命令や懲戒処分は必要性や相当性を充たしているかどうかで判断
  • 取引先との契約トラブルが発生した場合、契約書に明記があるか否かを確認

小学校等の臨時休校に伴い欠勤する従業員には、助成金制度の活用で対応を

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、小学校等が臨時休校することとなり、これに伴い会社を休まなければならなくなった保護者が多数出てきています。今回休業を余儀なくされ、賃金等の支払いはどうすればいいのかと心配されている方も多いのではないでしょうか。

まず前提として、従業員が自己の都合又は(会社に責任のない)不可抗力で会社を休む場合には、従業員が労働をしなかった以上、会社としては賃金を支払わなくてもよいという法原則があります(ノーワークノーペイの原則)。

今回の新型コロナウイルスの影響で小学校等が臨時休校となったという事情は、会社にも従業員にも責任のない不可抗力といえますので、ノーワークノーペイの原則により会社としては、今回子どもの休校を理由に休業した従業員に対して賃金を支払わなくてもよいということになります。

もちろん、小学校等の臨時休校に併せて、従業員が年次有給休暇を取得するということであれば、会社は休暇中の賃金を支払わなければなりません。

また、今回は会社の都合で仕事を休ませるというわけではないので、休業手当の支払い(労働基準法第26条)という話にはなりません。ただし、休業手当の法的な支払義務がなくても従業員に休業手当を支払った場合には、政府の「雇用調整助成金」の受給対象になり得ますので、下記URLをご参照ください。

このように法的な原則論でいえば、子どもの休校を理由に休業を余儀なくされた方は賃金等の支払いを受けることはできないのですが、今回政府が、正規雇用・非正規雇用を問わず、従業員に有給の休暇(年次有給休暇を除く)を取得させた企業に対する助成金制度を新たに創設しました。

ただし、この助成金制度を利用するためには、臨時休校のため出勤できない人のために、通常の年次有給休暇とは別に、会社が特別の有給休暇制度を整備・申請する必要があります。

従業員への出社命令は必要性や相当性を充たしているかが判断基準

労働者は、使用者の指揮命令を受けて労働を提供する義務を負っており、労働契約の内容から、事業所内で労働を提供する義務があることが読み取れるのであれば、使用者は該当する事業所への出社命令を出すことができます。ただし、無制限に出社命令を出せるというわけではなく、必要性や相当性を充たしていなければ出社命令(業務命令権)の濫用となり、違法・無効となります。

従業員が新型コロナウイルスに罹患した又はその疑いのある場合

従業員が新型コロナウイルスに罹患した場合には、現在ではそもそも法律(感染症法等)に基づいて従業員の就業が制限・禁止される運用がなされています。そのため、この従業員に対して出社命令を出すことは違法であり、この出社命令は無効となるでしょう。

また、従業員が新型コロナウイルスに罹患した疑いのある場合(陽性者との濃厚接触者でPCR検査の結果を待っている等)においても、この従業員に対して出社命令を出すことは、少なくとも出社命令の相当性を充たしているとはいえません。よって、これも違法・無効となると考えられます。

新型コロナウイルスに罹患していない従業員が出社を拒否している場合

使用者は、従業員(労働者)の安全に対して配慮する義務を負っていますので、今現在有効とされている感染予防方法等を事業所内で可能な限り実施していることが、出社命令を出す前提になると考えられます。

少なくとも、政府(厚生労働省等)が出している情報に従って、従業員への咳エチケットの周知やマスク着用の要請を行ったり、換気・アルコール消毒を行ったりしている事業所への出社命令であれば、使用者は必ずしも安全配慮義務違反とはなりません。同時に出社命令の相当性を充たし有効になるものと考えられます。

それでは、出社命令を出せるとしても、この出社命令に従わない従業員に対して懲戒処分を行えるかというと、これには慎重な判断が求められると思います。

多くの会社の就業規則には、業務命令に従わない場合には懲戒処分(けん責、減給、出勤停止等)を行えるという定めがあると思います。しかし、懲戒処分が有効とされるには、課される懲戒処分が,労働者の懲戒事由の程度や内容に照らして相当なものである必要があります。もし懲戒処分の内容が不当に重いということであれば、その懲戒処分は無効となります。

「緊急事態宣言」が発令されているような状況にあっては、いくら事業所内で感染予防対策を講じているからといっても、必ずしも安全とは言い切れません。仮に出社命令違反を理由とした懲戒処分が有効となるとしても、せいぜい戒告やけん責といった軽い懲戒処分でないと、懲戒処分は無効になるものと考えられます(出社命令の有効性よりも懲戒処分の有効性のほうが厳しく判断されます)。

このように今回は懲戒処分の有効性の問題があるため、使用者としては、むやみに出社命令を出して懲戒処分という手段を考えるのではなく、可能であれば在宅勤務等の手段を探しましょう。

もしすぐに環境整備の実現が難しければ、出社を拒む従業員に対しては、ノーワークノーペイの原則から欠勤した日数の給与の支払いは行わず、また出社をしないことにより成果を出していない等の理由があれば人事考課によって他の出社している従業員と差をつけていくという労務管理が考えられます。

取引先との契約トラブルは、明記されていれば契約書に従い、明記されていなければ民法等に従い対応する

新型コロナウイルスの影響は各業界に拡がっており、契約トラブルが相次いでいます。取引先との法的関係は、契約書に明記されていればこれに従い、明記されていなければ民法等の法律の定めに従うことになります。

新型コロナウイルスの影響で取引先への債務を履行できなくなった場合

金銭の支払いを目的とした債務(金銭債務)については、たとえ不可抗力であっても免れることができないのが民法の原則です(第419条第3項)。契約書においてもこの民法の定めと同様に、たとえ不可抗力であっても金銭債務を免れることはできないとしているものが多いのではないでしょうか。

一方、例えば新型コロナウイルスの影響で海外からの部品が入手できなくなり、その結果商品を取引先に納入できない場合等の非金銭債務の不履行については、どうでしょうか?

取引先との契約書に、新型コロナウイルス(伝染病)のような不可抗力があるときには契約上の責任(損害賠償責任等)は免れるという定めがある場合には、この条項の定めに従い免責されます。

仮に契約書に記載がない場合であっても、一般的には、債務者に責任のない不可抗力がある場合には契約を履行する責任(これを理由とした損害賠償責任。民法第415条)は免除されると考えられています。

ただし、この責任が免除されるためには、債務者にその損害を発生させた責任(帰責事由)がないといえなければなりません。

例えば新型コロナウイルスの影響で海外からの部品が入手できなくなったとしても、国内で部品が容易に手に入る状況だったとか、自社製品でまかなえる状況だった場合には、債務者に損害を発生させた責任(帰責事由)がないとは言い切れません。

そのため、債務者の損害賠償責任を完全に免れさせることはできないという判断に傾く可能性があります。

新型コロナウイルスを理由とした取引先からの一方的な取引停止の場合

新型コロナウイルスを理由として、取引先から資金繰りが厳しいからといわれ、突然契約を解除されたり、取引を停止されたりするケースもあります。

これも取引先との契約書に今回の新型コロナウイルスを想定した定めがあればこれに従うことになります。もし、直接新型コロナウイルスを想定した定めがなかったとしても、一方が自由に取引の停止や契約の解除ができる定めや、一定の事由(資金難等)が生じた場合には取引の停止や契約の解除ができる等の定めがある場合にもこれに従うことになります。

契約書に明記されていなければ民法等の法律の定めに従うことになります。例えば、取引先との契約が仕事の完成を目的とするような請負契約であれば(民法第632条以下)、発注者は受注者が仕事を終えるまでの期間中は、いつでも契約を解除できます。ただし、この場合には、発注者は受注者に生じる損害を賠償しなければなりません(民法第641条)。

一方、取引先との契約が、仕事の完成を目的としないような(準)委任契約である場合には(民法第643条以下)、契約の各当事者はいつでも契約を解除できますが、相手方に不利な時期等に解除したときは、相手方の損害を賠償しなければなりません(民法第651条2項)。

ただし、やむを得ない事由があった場合には、この損害を賠償しなくてもよいとされており(同項但書)、今回の新型コロナウイルスの影響は「やむを得ない事由」に該当する可能性もあると思います。

この点は、「【新型コロナ】契約キャンセルや支払遅延、休業要請でも発生する店舗賃料...個人事業主を法律は守ってくれる?弁護士が解説!」にも記載していますのでご参照ください。

なお、請負や委任ともとれない契約内容で民法に直接の規定がなく、新民法が適用される場合で、履行不能等の場合には、債務者の帰責事由がなくとも一方的に解除ができるとされています(新民法第542条)。

取引先も今回の新型コロナウイルス拡大の事態は想定できなかったと思いますし、取引先との協議がまとまらずに費用や時間を費やすことは本意ではないと思います。契約書にはこう記載されている、民法にはこう定められている、という形式的な議論をするよりも、どうすればこの事態を一緒に乗り越えられるかという観点から、十分に双方で協議、検討していくことが望ましいと考えられます。

緊急事態宣言を受けて休業したことを理由とした債務不履行

契約トラブルの中には、緊急事態宣言を受けて自主的に会社を休業したため、予定していた商品の納品ができなくなったというケースも考えられます。

この場合による損害を債務者(休業した会社)が負うかどうかは、債務者に責任(帰責事由)があるといえるかを検討する必要があります(損害賠償責任。民法第415条)。

今回の新型コロナウイルスのような事態は未曾有のものあり、裁判例の蓄積があるというわけではないので、この検討はかなり難しいです。

しかし、緊急事態宣言下においても、行政から、むしろ事業継続を求められている業種が休業するような場合には、帰責事由があるとみることも可能だと思います。

休業要請を受けている業種の場合においては、あくまでも行政の「要請」にすぎないとはいえ、従業員を抱える企業には従業員と顧客等の間の感染拡大を防ぐという社会的な責任があるといえます。また、休業要請に従わない場合には特別措置法に基づき都道府県知事が店名を公表されてしまうという点などからすれば、今回休業「要請」に従うことにより休業を選んだとしても、必ずしも帰責事由があるとはいえないのではないでしょうか。

また、休業要請を受けていない業種であっても、上記の社会的な責任はあると考えられます。今回休業する判断をしたとしても、事情によっては、必ずしも帰責事由があるということにはならないのではないでしょうか。

たとえ、休業を選ぶとしても、少なくとも、可能な限り、取引先に生じる損害を少なくするという意味での法的責任・道義的責任はあると思います。取引先に何も言わずに、いきなり休業するのではなく、休業の開始時期や終了時期等について、取引先とよく協議したうえで休業を選択することが適当であると思います。

やむを得ず廃業する場合にまず相談すべきところは?

今回、やむを得ず廃業する場合には、主な手続きの一つとして、解散の登記と清算結了の登記があります。官報で解散公告を行う必要もあるので、これらにかかる費用をあらかじめ見積もっておく必要があります。

廃業は経営者が自ら会社をたたむことを意味しますが、もし会社が債務超過となり経営が立ち行かなくなったような場合には、倒産手続を検討することになります。

ただし、倒産手続といっても、最終的に会社財産をすべて清算してしまう清算型(破産、特別清算)と、債務の減額等によって会社事業の再生を図る再建型(民事再生、会社更生)があり、どれを選択するかは各会社の状況によりますので、慎重に判断する必要があります。

各地の商工会議所で、「経営安定特別相談室」という中小企業の倒産防止のための相談事業を行なっていますので、廃業や倒産を決意する前に、まずはこの相談室を利用して、弁護士、公認会計士、中小企業診断士及び商工調停士等の専門家に相談をすることをおすすめします。

新型コロナウイルスによる影響は、日本だけでなく世界全体に及んでおり、不安な日々が続きますが、早く終息することを祈っております。

photo:Getty Images

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この記事の執筆者

馬場悠輔(弁護士)
馬場悠輔(弁護士)

第一東京弁護士会所属。弁護士法人飛田&パートナーズ法律事務所勤務。早稲田大学大学院法務研究科修了。労働法務を中心としながら、各種契約書の作成・締結やM&A等の企業法務全般に携わっている。理系のバックグラウンドを活かし、第一東京弁護士会の建築紛争研究部会及び宇宙法研究部会に所属。著書として「これだけは知っておきたい!弁護士による宇宙ビジネスガイド」(共著。2018年 同文舘出版)

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