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個人事業主の消費税のしくみ~概要と納税義務の判定、納税額の計算方法~

公開日:

執筆者:宮原 裕一(税理士)

個人事業主の消費税のしくみ~概要と納税義務の判定、納税額の計算方法~

消費税の納税義務や申告の話の時に、「課税事業者」「免税事業者」という言葉が出てきます。どんな違いがあり、消費税の計算はどのようにおこなうのでしょうか?消費税の納税義務がある個人事業主の要件や計算方法について解説します。



POINT
  • 個人事業主が免税事業者に該当するかどうかは、2段階で判定
  • 個人事業の場合、開業初年については免税事業者になる
  • 消費税の申告・納付期限を過ぎてしまった場合、ペナルティがある

消費税の納税義務とは?「課税事業者」と「免税事業者」の違いは?

「消費税」は、モノやサービスの消費について課税されるもので、消費者が負担する税金です。そして、事業者の場合は消費者であるお客さまから消費税を預かって、これを国に納めます。消費者が税金を負担し、事業者が税金を納める方式のことを「間接税」といいます。なお、個人事業主の「所得税」のように、税金を負担する人が直接税務署に申告して税金を納める方式は「直接税」といいます。

基本的に事業者は消費者から消費税を預かる立場にあります。預かった消費税はお客さまの税金ですから国に納めなければなりません。事業者は国に消費税を納める義務、つまり「納税義務」があるのです。

このことから、消費税の対象になる取引を行う事業者であれば、消費税の納税義務者となり、「課税事業者」となります。

しかし、消費税の計算や帳簿付けについて、人手もなく経理状況も十分でない小規模事業者にかかる事務負担は相当なものです。そこで、一定の規模以下の小規模事業者については、消費税の納税義務を免除することとしています。これが「免税事業者」です。

個人事業主が免税事業者となる要件

個人事業主が免税事業者に該当するかどうかは、2段階で判定します。

第1段階は、「その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下」、ちょっと何言ってるかわからない......ですね。言い換えますと、「2年前の消費税のかかる売上が1千万円以下」ということです。

「課税期間」というのは、個人事業主の場合は原則として暦年(1月1日から12月31日)で、「基準期間」は前々年の1月1日から12月31日までを意味します。「課税売上高」というのは、消費税の対象となる収入のことです。

気を付けたいのは、本業の売上だけでなく、固定資産の売却代金なども含まれることです。また、2年前が課税事業者の場合は税抜金額で判定し、免税事業者の場合はもともと消費税を預かっていないため総額で判定します。ここで1千万円以下であった場合、第2段階に進みます。

第2段階は「特定期間の課税売上高が千万円以下」、言い換えますと、「昨年上半期6月までの消費税のかかる売上が1千万円以下」ということです。「特定期間」というのは個人事業主の場合は前年の1月1日から6月30日までです。なお、第2段階では課税売上高に代えて、特定期間中の給与・賞与支払額で判定することも可能です。この第2段階までクリアすると、免税事業者となるのです。

消費税を納める義務は過去の売上で判定します

なお、個人事業の場合、開業初年については2年前も前年も課税売上高はゼロですから免税となります。

また、開業2年目については、2年前の課税売上高はゼロですが、開業初年分である前年6月までの課税売上高(給与支払額でも可)が1千万円を超えるかどうかに気を付けましょう。

消費税額の計算方法

さて、消費税は消費者が負担する税金で、事業者は消費者から消費税を預かって納めるとお伝えしました。そこで、ある疑問が浮かび上がる方がいらっしゃるかもしれません。

それは何かというと、「事業者である自分も消費税を支払っている」ということです。商品を仕入れたり、お店の家賃を支払ったりする中で、その代金には消費税が含まれています。消費者が負担するはずの消費税を、事業者である自分が支払っている。「自分が消費者から預かる消費税と二重払いにならないか?」という疑問が浮かぶのです。

消費税のしくみ

消費税は「多段階課税」というしくみで計算するようになっています。例えば図のように材料を販売する事業者、その材料で製品を作る事業者、その製品を消費者へ販売する事業者、その製品を購入して消費する消費者という流れがあるとします。

消費税のしくみ

それぞれの事業者が、取引を行う段階で預かった消費税から自分が支払った消費税を差し引いた残りを少しずつ納めていきます。そうすると、最終的にその累計は消費者が負担する消費税と同じ金額になります。これが多段階課税の仕組みです。つまり、消費者から預かった消費税を丸ごと納めるわけではないということですね。

また、消費税は、国の税金である消費税と、地方の税金である地方消費税との2つから成っています。消費税の標準税率は10%ですが、その内訳は消費税7.8%と地方消費税2.2%となります。これらは別の税金ですから、一度に10%で計算するのではなく、先に消費税を計算し、その消費税を基に地方消費税を計算するという流れになります。

これらをふまえて、2種類ある消費税の計算方法を説明します。

原則課税とは預かった消費税から支払った消費税を差し引くこと

原則課税とは、先ほどお伝えした多段階課税の仕組みにのっとった本来の計算方法です。説明を簡単にするため、取引は国内での標準税率10%取引のみとします。

(設例)

  • 本年の商品売上(課税売上げ)は2,200万円だった
  • 商品の仕入や家賃等消費税のかかる経費(課税仕入れ)は1,650万円だった

多段階課税の仕組みから、消費税の計算を最も簡単な算式で表すと次のとおりです。消費税率10%の場合、総額に含まれる消費税は110分の10で計算できますから、次のような計算ができます。

売上で預かった消費税-仕入等で支払った消費税=納める消費税
2,200万円×10/110-1,650万円×10/110=
200万円-150万円=50万円

しかし、消費税の申告では消費税7.8%と地方消費税2.2%とに分けて計算しないといけませんから、実際の申告では次のような計算をします。

① 年間の税抜売上げを計算する
消費税を預かる基となる本体価格(課税標準)を計算します。税込総額に110分の100をかけます。
2,200万円×100/110=2,000万円

② 売上で預かった消費税7.8%分を計算する
課税標準に7.8%をかけて、売上で預かった消費税を計算します。
2,000万円×7.8/100=1,560,000円

③ 仕入等で支払った消費税7.8%分を計算する
同じように、仕入等で支払った消費税を税込総額に直接110分の7.8をかけて計算します。
1,650万円×7.8/110=1,170,000円

④ 消費税を計算する
売上で預かった消費税から仕入等で支払った消費税を差し引きます。
1,560,000円-1,117,000円=390,000円

⑤ 地方消費税を計算する
最後に地方消費税2.2%分を計算しますが、④の消費税から計算するため割合が少し複雑です。全体に対して7.8%分の金額から2.2%分を割り出すということで、④の消費税に78分の22をかけて地方消費税を計算します。
390,000円×22/78=110,000円

最終的に納める税額は、消費税390,000円と地方消費税110,000円との合計50万円となります。

なお、設例では取引が課税売上のみですが、非課税売上(居住用の家賃収入や一定の医療・介護収入など)が混在するような業種の場合は、仕入等で支払った消費税につき按分計算が必要になります。

簡易課税制度の場合、売上で預かった消費税だけで簡便的に計算する

原則課税で消費税の計算をするためには、売上の消費税だけでなく、仕入等の経費で支払う消費税も集計する必要があります。ということは、ひとつひとつの経費の取引が消費税のかかるものなのか、かからないものなのか、標準税率なのか、軽減税率なのかなどを判断し、適切に帳簿付けをする必要があります。しかしながら、この作業は小規模事業者にとって相当な事務負担となります。そこで、一定規模以下の小規模事業者については、売上で預かった消費税だけで簡便的に計算する「簡易課税制度」を設けています。

「簡易課税」とは、売上を事業の種類ごとに区分し、売上で預かった消費税に事業の種類ごとに定める「みなし仕入率」をかけて、仕入等で支払った消費税を計算する計算方式です。具体的には図のような6種類の事業区分があります。

事業区分該当する事業みなし仕入率
第一種事業卸売業90%
第二種事業小売業80%
第三種事業製造業、建設業、農業、林業、漁業など(※1)70%
第四種事業飲食業などと、その他の事業(※2)60%
第五種事業サービス業など(運輸通信業、金融業、保険業)50%
第六種事業不動産業(賃貸、管理、仲介)40%

※1)2019年(令和1年)10月1日の消費税率10%導入後は第三種にある農業、林業、漁業のうち軽減税率適用分について第二種に引き上げられ、みなし仕入率80%になります(平成30年度税制改正により、消費税の簡易課税制度について見直しがされました。なお、同日前における食用の農林水産物を生産する事業については、従来の第三種事業でみなし仕入れ率70%のままとなります)。
※2)第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業、第六種事業のいずれにも該当しない事業は第四種事業です。

原則課税の設例で、小売業として計算してみましょう。小売業の事業区分は第二種事業になり、みなし仕入率は80%です。

① 年間の税抜売上げを計算する
原則課税の場合と同じです。
2,200万円×100/110=2,000万円

② 売上で預かった消費税7.8%分を計算する
原則課税の場合と同じです。
2,000万円×7.8/100=1,560,000円

③ 仕入等で支払った消費税7.8%分を計算する
簡易課税の場合は、売上で預かった消費税にみなし仕入率をかけて仕入等で支払った消費税を計算します。2,200万円×7.8/110=1,560,000円(売上で預かった消費税)
1,560,000円×80%(みなし仕入率)=1,248,000円
なお、今回は一業種のみで計算していますが、事業区分が複数ある場合には、原則として事業区分ごとのみなし仕入率を加重平均して全体に対するみなし仕入率を計算します。

④ 消費税を計算する
売上で預かった消費税から仕入等で支払った消費税を差し引きます。
1,560,000円-1,248,000円=312,000円

⑤ 地方消費税を計算する
原則課税の場合と同じです。
312,000円×22/78=88,000円

最終的に納める税額は、消費税312,000円と地方消費税88,000円との合計40万円となります。

今回の計算結果では原則課税は50万円、簡易課税は40万円で、簡易課税の方が有利となりました。

簡易課税制度の選択と要件

消費税の計算方法は「原則課税」「簡易課税」の2種類があるのですが、原則課税が本来の方法で、簡易課税は選択することができる特例という位置づけとなります。
そして簡易課税を選択できる事業者には要件が2つあります。

<簡易課税を選択できる事業者の2要件>

  • 「基準期間における課税売上高が5千万円以下」。言い換えると「2年前の消費税がかかる売上が5千万円以下」であること。
  • 「消費税簡易課税制度選択届出書」を、原則として、簡易課税制度を選択しようとする課税期間の開始の日の前日までに所轄税務署長に提出していること。つまり、通常であれば簡易課税を選択する年の前年12月31日までに提出するということ。

また、簡易課税制度は一度選択すると2年間は継続適用となり、やめることができません。簡易課税は課税売上げのみで計算する方法なので、大きな設備投資など支払う消費税が多額にある場合にはかえって不利になってしまう場合もありますので、よく考えてから選択しましょう。

ここまで見てきました個人事業主の消費税の納税義務の要件や計算方法をフローチャートにまとめると、次のような図となります。

個人事業主の計算方式フローチャート

消費税の還付の受け方

原則課税で消費税を計算する場合に、大きな設備投資をしたときなどは、売上で預かった消費税よりも仕入等で支払った消費税の方が多くなり、引き算の結果がマイナスになってしまうことがあります。

このような場合には、消費税の還付申告をすることでマイナス分の消費税の還付を受けることができます。この場合には、通常の申告書類のほか「消費税の還付申告に関する明細書」を添付する必要があります。

消費税の還付申告に関する明細書

また、次で説明する消費税の中間納付をしている場合に、確定申告で計算した年税額よりも中間納付した税額の方が多いため、マイナスが出る場合にも、還付を受けることができます。この場合には上記明細書の添付は必要ありません。

消費税の申告方法と納税

次に、消費税の申告方法と納税について見ていきましょう。

消費税の確定申告

個人事業主の課税期間は、原則として1月1日から12月31日の1年間です。個人事業主は翌年3月31日までに、消費税の確定申告と納付をしなければなりません。なお、消費税の申告書は、ひとつの申告書で消費税と地方消費税の両方を申告する書式になっています。

また、個人事業主の場合は納税を口座振替にする「振替納税」の登録をしておくと、4月下旬の引き落としで、延滞税(遅延利息)もかかりません。手数料はかかりますがクレジットカードによる納付も可能です。

中間申告は確定消費税額が一定額を超える場合に発生

確定申告による確定消費税額が一定額を超える場合には、その金額に応じて翌年について一定回数の中間申告・納付が必要になります。なお、この判定に使う金額は7.8%分の税額だけで、地方消費税2.2%は含みません。

確定消費税額中間申告・納付
48万円以下中間申告は不要。選択により任意の中間申告をすることが可能
48万円を超え400万円以下8月末期限の1回で、前年確定消費税額の6か月相当を納付
400万円を超え4,800万円以下5、8、11月末期限の3回で、それぞれ前年確定消費税額の3カ月相当を納付
4,800万円超1~3月分は5月末期限、その後は6月末から翌年1月まで毎月末期限の11回で、それぞれ前年確定消費税額の1カ月相当を納付

また、前年確定消費税額を基とした計算に代えて、仮決算を行うことにより当年実績に基づいた申告・納付をすることもできます。

予納とは、あらかじめ任意の税額を納めておく方法

消費税はお客さまからの預り金ですが、手もとにあると事業資金として使ってしまい、申告納税の時期になってお金がないという事態になりかねません。中間申告でそれがある程度防げるわけですが、資金繰りを平準化するという観点から、「予納」という方法も紹介しておきます。

予納とは確定申告で見込まれる税額について、あらかじめ任意の税額を納めておく方法です。この制度を利用するためにはe-Taxの利用と「ダイレクト納付」の届出が必要です。

「ダイレクト納付」の届出書

【手書用】国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書から引用

申告・納付期限を過ぎてしまった場合の消費税に関する罰則

消費税についても、所得税などと同じように申告・納付期限を過ぎてしまったりしたときには次のようなペナルティがあります。

無申告加算税申告期限内に申告をしなかったことに対してかかる税金で、本税の最大20%が課される。
延滞税納付期限から納付が遅れた日数に応じて、遅延利息に相当する税金が課される。令和2年の場合で年利最大8.9%。
過少申告加算税申告に誤りがあり、追加で納める税金があったときにかかる税金で、追加で納める税金の最大15%が課される。
重加算税申告内容に仮装隠ぺいなど(売上を隠したり、架空の経費を入れるなど)の不正事実がある場合には、本税の35%という重いペナルティがある。

個人事業が法人成りするときの消費税の取扱いや注意点は?

「法人成り」とは、法人化ともいわれ、個人事業主が法人を設立し、法人が事業を引き継ぐというものです。

法人成りといっても個人事業主と法人とは別のものですから、個人事業主・法人でそれぞれ気をつけることがあります。

  • 個人事業主......法人成りする年度が課税事業者の場合、法人へ在庫商品や設備などの資産を動かすのは売買の扱いですから、課税売上として法人から消費税を預かることになります。
  • 法人......設立初年度は基準期間(2期前)がありませんから原則として免税事業者になりますが、年度開始の日の資本金が1千万円以上の法人については課税事業者となります。

インボイス制度により変わる消費税の課税事業者とは?

令和5年(2023年)10月から、仕入等で支払った消費税を差し引く方式として、「適格請求書等保存方式」という、いわゆるインボイス制度が導入されます。

インボイス制度では、制度に登録して番号を得た「適格請求書発行事業者」が交付した「適格請求書」がないと、消費税の計算をするときに仕入等で支払った消費税を差し引くことができなくなります。

売手の立場でみると、事業者間取引で売手である自分側がこの適格請求書を発行できないと、買手である相手方で消費税を差し引く計算ができなくなってしまうのです。
そして問題なのが、適格請求書を発行する事業者として登録できるのは、課税事業者だということです。

免税事業者は消費税を預からないので適格請求書発行事業者になれません。ではどうするのか。免税事業者が敢えて課税事業者になる課税事業者選択届出書を提出する必要が出てくるのです。

消費税課税事業者選択届出書

この届出書は以前からあるものですが、まったく消費税を気にしなくてよかった免税事業者でも、課税事業者になって消費税を納めるケースが出てくるかもしれません。

まとめ

いかがでしょうか。個人事業主の消費税については、基本的に2年前が1千万円を超えているかが、消費税を納めるかどうかの分かれ道となります。言い換えると、その年に1千万円を超えた時点で2年後に課税事業者になると分かります。そのため、消費税を見据えた帳簿の付け方や、簡易課税にするかの検討、さらには法人成りの検討など余裕をもって考えるようにしましょう。

消費税は軽減税率が導入されて、帳簿付けや集計、消費税の申告方法も複雑化しています。余裕を持ってさまざまな判断をするためにも消費税申告に細かく対応している会計ソフトを使用したり、税理士などの専門家に相談することも併せて検討してみることをお勧めします。

photo:Getty Images

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この記事の執筆者

宮原 裕一(税理士)
宮原 裕一(税理士)

1972年生まれ。税理士。弥生認定インストラクター。「宮原裕一税理士事務所
弥生会計を10年以上使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。弥生会計に精通した税理士として、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。
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