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心療内科医Dr.ゆうすけに聞いた「フリーランスはメンタル強くなきゃダメですか?」

公開日:

執筆者:阿部桃子

心療内科医Dr.ゆうすけに聞いた「フリーランスはメンタル強くなきゃダメですか?」

コロナ禍で世の中が大きく変化するなか、一度きりの人生、好きなことを仕事にしたい、組織に縛られずフリーランスとして生きていきたいと考えた人もいるかもしれません。

でもフリーランスになれば、「仕事は続くのか?」「お金が継続的に入ってくるのか?」という心配は避けられず、「不安に一人で立ち向かえるの?」「私、メンタルそんなに強くないし、大丈夫かな?」と考えてしまう人もいるでしょう。

そこで今回は、ライフワークとしてメンタルヘルスの発信活動に取り組む、「Dr.ゆうすけ」こと、鈴木裕介院長にインタビュー。フリーランスが不安に陥らないためのメンタルマネジメント方法を教えていただきました。



Dr.ゆうすけ/鈴木 裕介(すずきゆうすけ)

鈴木 裕介

秋葉原内科saveクリニック院長。2008年高知大学医学部卒業。高知大学附属病院、細木病院、一般社団法人高知医療再生機構に勤務後、マネジメントを学ぶためハイズ株式会社へコンサルタントとして転職。2018年9月に秋葉原内科saveクリニックを開業。著書は、「NOを言える人になる 他人のルールに縛られず、自分のルールで生きる方法」(アスコム)、「メンタル・クエスト 心のHPが0になりそうな自分をラクにする本」(大和出版)。
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友人の死をきっかけにメンタルヘルスに取り組むように

――メンタルヘルスに関して、講演会やSNSで発信しているDr.ゆうすけさん。「秋葉原内科SAVEクリニック」のSAVE(セーブ)は、ゲームにおけるセーブポイント、すなわち、いつでも気軽に立ち寄れて、安心できる場所を意味するそうですね。鈴木先生がこのクリニックを開院した経緯を教えていただけますか?

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:家系に医者が多く、祖父が内科の開業医をしていたこともあり、3歳くらいのときから僕も医者になりたいと思っていました。祖父は新しい物好きで、ファミコンなんかもうまくて、憧れの存在だったんです(笑)。

大学は高知大学医学部に進学しましたが、学生時代はバンド活動やダンスを楽しむ「陽キャ」でしたし、自分がメンタルヘルスに関わるとは思ってもいませんでした。

――最初は放射線科を選ばれたそうで。

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:大学5年生のとき、実習で全ての科を回ったのですが、そのときは特にやりたい科が見つかった訳ではありませんでした。ただ、放射線科の教授は人情味あふれる方で、留年の危機を救ってもらったこともあり、恩返しのつもりで放射線科を選びました。
ただ、そんな自分の人生をガラリと変える出来事が27歳のときにありました。

大学時代、勉強もスポーツも何でもできるカリスマ的な友人がいたのですが、彼が研修医のときに、研修のストレスやいろんなことが重なって適応障害になり、自死してしまったのです。すごくショックでした。

「死にたいくらいつらい」ってことがどういうことなのか、当時の僕にはいまいちわからなかった。でも、そういう気持ちがあるということを知ってからは、世の中には、普通の顔をしながらも、心がギリギリの状態で生きている人がけっこう多いんだということが、徐々にわかってきた。そういう超しんどい人がたまたま身近に多くいて、SOSを出してくれたりするんですね。その人たちがいなくなってしまうと、悲しいし、すごく困ってしまう。だから、よくわからない中で、医師というよりも個人的な事情でメンタルヘルスに関わっていくようになりました。

――27歳で人生が変わったのですね。

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:はい。さらに、医療機関は組織のマネジメントが未熟であり、パワハラや弱い立場の人へのいじめがおきやすく、前途ある人がどんどんつぶされて行く様子も見てきました。

そのため、一旦高知県内の病院に内科医として勤務しながら、役所の職員のような立場になって若手医療職のメンタルヘルスの支援をしてみたり、マネジメントを学ぶために医療系のコンサルティングファームに就職して、医療現場の環境改善みたいなこともやっていました。

そうやっていろいろな経験を積んだ結果、いい組織を作ること、いい人間関係を築くことを自ら実現して行きたいと思い、クリニックを開業しました。

――クリニックがあるのは秋葉原ですね。

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:近しい人の死とか、どうしようもないくらい辛い経験をしたときに、「ドラゴンクエスト」などのゲームに没頭することで救われた経験があるんです。
ゲームやアニメとか、アイドルといったクリエイティブなものや作品に命を救われている人って、ものすごく多いだろうなと思っていて。なので、コンテンツづくりに関わる人たちに対する恩返しのような気持ちもあるし、こんな経験をした自分だからこそ出来る医療があるのかもなあと思って、多くのコンテンツが生まれる街・秋葉原に開業しました。

――先生のご専門は内科と心療内科とのことですが、心療内科とはどんな症状を診る科なのでしょうか?

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:そもそも、心の傷ついたり疲弊することで身体に表出する症状を扱うのが心療内科なんですね。心の調子が悪いと、腹痛、頭痛、食欲不振、不眠、ボーっとする時間が増えるなどの症状がまず身体に出るんです。

例えば、「胃が痛い」という方が来院しても、実際に胃潰瘍のような器質的な病変があることはそれほど多くなくて、大半がストレスによって自律神経が乱れることによる胃炎症状だったりします。ストレスによって引き起こされる身体の症状はさまざまです。お腹の調子を崩したり、喘息が悪くなったり、じんましんが出たり。ニキビなど肌荒れがひどくなって来院した人が実は「うつ」だったというケースもあります。

――どのように診察されるのでしょうか?

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:相談にいらっしゃる方の多くは、「辛い」「しんどい」といった感情に蓋をし続けてきているため、何に傷ついているのか、どんなことに疲れているのか、自分でも気づかないうちにダメージが蓄積され、身体が悲鳴を上げてしまっている状態です。

でも、自分がしんどいことを認めることや、感情を吐き出すことが苦手な人もわりと多くいます。なので、なるべく「ここだったら安全かな」と思ってもらいやすいように、待合室の雰囲気をゆるくしたり、可能な限り診察に時間をかけるよう心がけています。じっくりコミュニケーションを取りながら患者さんの不調の原因を探って行くようにしています。

どんなタイプが要注意!? メンタル危険度の高いフリーランスとは?

どんなタイプが要注意!? メンタル危険度の高いフリーランスとは?

――フリーランスの方が相談に訪れることはありますか?

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:土地柄、フリーランスのクリエイター、声優、編集者やライターといった職業の方が来院されることは多いですね。アイドルやメイドをやっている方も来られます。

フリーランスの中でもクリエイティビティが高い人には繊細な人が多い気がします。繊細でなければ気付けないこともあり、繊細であることがクリエイティビティの源泉だったりしますし。

――そういった方はどんな悩みを抱えているのですか?

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:他人に気を遣い過ぎたり、「いい仕事をしたい」という思いが強すぎて自分を追い詰めてしまったり、「自分はこうするべき」という気持ちが強すぎたりして、疲弊してしまう人が多いですね。

――なるほど。そうやって仕事を頑張り過ぎてしまう人、結構いるかもしれません。

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:仕事第一で、自分の「つらい」とか「苦しい」といった感情に目を向けないでがむしゃらに頑張るというのは、短期的には成果が出やすいかもしれませんが、実際そういう働き方を長期的に続けるのは難しいですよね。職業人生は基本的にずっと続いていくものなので、マラソンのようにうまくペース配分しながらやらないともたない。100m走のようなペースでずっと全速で走り続けてしまうような人は危険だと思います。

――フリーランスは、会社員と比較して収入などが安定しないことが多いです。また、老後の生活面に不安を持っている方もいると思います。このような悩みはメンタルヘルスに影響を与えることもあるのでしょうか?

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:生活面の不安は、メンタルヘルスを確実に悪化させます。貯金額が100万円と、5万円とでは心の余裕が違いますよね? そのため相談者の方に、「お金の不安はありますか」と聴いたり、話してくれる人には実際の貯金額を聞くこともあります。

――そういった不安にはどのように対処しているのですか?

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:そもそも、「貧困妄想」といって、うつの症状のひとつとして「お金の心配が増す」というのがあるんです。そうした背景もあって、金銭面の不安は漠然としたものが多いんですね。あと、思考力が低下していて考えるのがしんどい状態になっていることもあるので、実際にお金が足りないのか、どのくらい足りないのか、頼れるリソースがあるのかを明らかにし、経済的な不安を排除するためのお手伝いをしたりしますね。
前職の傷病手当金や失業手当など、受け取る権利がある手当ての確認とか、生活コストの見直しを行うこともあります。

フリーランスといえば、下請けで立場が弱く、成果物を値踏みされるようなことが起こってしまいます。そのような場合でもお金の交渉となると、強く出られないというケースもあるようです。そういった相談をされた場合は、クライアントに言いにくいことをどうやって伝えるかを一緒に考えていきます。対人関係の構築の仕方に対するアプローチですね。

――なるほど! フリーランスの日頃のメンタルケアにも応用できそうです。

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:「何となく嫌なことがあったな」「モヤモヤするな」と思ったら、書き出してみることをおすすめしています。これは「外在化」というんですが、実際に紙に書いたりして頭の中から切り離して整理することで、自分を客観的に見られて解決の糸口を探ることができます。

「〇〇のどんな態度が嫌だった」「△△にこんなことを言われて傷ついた」など、かなり具体的に細かく書いてみるといいと思います。書き出すだけで、訳の分からない不快感の理由が分かることもあり、気持ちがいくらかスッキリします。心を重くする原因がわかるだけでも軽くなるし、書いたものを一緒に見ることで、それらを取り除いたり、遠ざけたりすることが可能なのかという客観的判断もしやすくなります。

「メンタルが強い」とはどういう状況? 本当にメンタルが強い人とは

「メンタルが強い」とはどういう状況? 本当にメンタルが強い人とは

――仕事やお金の不安がつきもののフリーランスですが、メンタルが強くない人には向いていないのでしょうか?

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:まず、「メンタルが強い」とはどういう状況なのか? そこを勘違いしないことが重要です。

皆さんは、他人に嫌なことを言われてもへこたれない、辛いことがあっても弱音を吐かない人=メンタルが頑強というイメージを持たれているかもしれません。でも、実はそれは自分の感情に見て見ぬふりをしているだけかもしれない。でも、感情を「無かったこと」にはできません。無視していた負の感情がじわじわとボディブローのように効いてきて、ある時突然折れてしまう、そういう方はとても多いです。

僕の考える「メンタルの強さ」というのは、「自分にとって何がストレスなのか」「自分が傷ついてしまいやすいことは何か」「自分が何ができないか」を自覚できて、その上でどう対処するのかを考えられることだと思います。

――自分は傷つきやすいと認めることが難しい人もいるかもしれませんね。

Dr.ゆうすけ

Dr.ゆうすけ:男性、なかでも50代男性は感情を外に出したり、弱音を吐いたりするのが苦手な傾向がありますね。家庭の収入の柱だったり、社会的な責任の大きさなども関係していると思いますが、自殺件数も50代が圧倒的に多くなっています。

「愚痴を言わずに頑張るのが正しい」という価値観を持っている方が多い世代というのもあると思います。本当は傷つきやすい、臆病である、といった自分像を受けいれがたいというのもあるかも知れません。価値観とか気質は容易に変えられるものではないですし、傷つきやすいままでもいいと思ってます。自分を追い詰めないためにも、「自分のメンタルは強いはずだ」とか「強くあらなければならない」と過度に期待しないことが大切です。「傷つきやすくはあっても、対処法はいっぱいある」という状態の方が目指しやすいと思います。僕もそのタイプですし。

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この記事の執筆者

阿部桃子
阿部桃子

早稲田大学卒業後、出版社、テレビ局勤務などを経てフリーランスに。専門分野は教育・育児支援、ビジネス、キャリア。『日経トレンディ』『AERA with Kids』『Bizmom』などで執筆。2児の母。活字好きの子どもを増やすべく、地域で読書ボランティア活動にも励んでいる。

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