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飲食店がデリバリー登録をしたり、通信販売を始めるときに必要な許認可・申請、助成金は?

公開日:

執筆者:渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

飲食店がデリバリー登録をしたり、通信販売を始めるときに必要な許認可・申請、助成金は?

新型コロナウイルスは、飲食店の経営にも大きな影響を及ぼしました。それまでは、店内での飲食のみだったお店がテイクアウトを始めたり、ECサイトなどで通信販売を始めたりと、目まぐるしい変化が起こっています。こうした新たな取り組みは、お店を継続していく上でも重要です。一方、新規ビジネスの種類によっては許認可が必要なものもあります。今回は、飲食店が業態の拡大や変更をするときに必要な許認可・申請、助成金について知っておくべきことについてまとめました。



POINT
  • 飲食店がテイクアウトやデリバリーを始めるためには、新たに許可を取得する必要はない
  • 移動販売については、キッチンカーを使うか自転車を用いるかなどで必要な手続きが異なってくる
  • テイクアウトなどの新規ビジネスの開始に伴い、投資をしたり新規雇用をしたりした場合にもらえる補助金や助成金がある

「飲食店営業許可」の範囲内でテイクアウトやデリバリーは導入できる

新型コロナウイルスによって、飲食店が始めた対策として最も多いのが、テイクアウトでしょう。2019年10月の軽減税率導入の際にも、消費税率8%の軽減税率対象になるということでテイクアウトの導入を検討したお店が多くありました。

しかし、新型コロナウイルスの影響は、軽減税率導入時の比ではありません。お店の営業そのものが制限されたことで、生き残りのためにテイクアウトを始めた飲食店が大きく増加しました。

このように、迅速にテイクアウトのサービスを提供できるようになったのは、テイクアウトのサービスを始めること自体に許可がいらないためです。もともと持っている「飲食店営業許可」の範囲に、テイクアウトのサービスも含まれているのです。同じ調理場で調理したものを提供する場合、原則的にこれまでの飲食店営業許可で問題ありません。

これは、デリバリーであっても同じです。今では、独自の配達手段がなくても、お店に代わってデリバリーサービスを提供している会社を利用して、どのお店でもデリバリーサービスを提供できるようになりました。デリバリーサービスの利用を開始する場合についても、テイクアウト同様に、特別な許可は必要ありません。

ただし、テイクアウトでも、デリバリーでも、一点注意しておきたいことがあります。それは、扱う食品そのものについて許可が必要なケースです。

たとえば、乳製品や、アイスクリーム、ハムなどの加工肉などの販売については、通常の飲食店営業許可とは別に許可が必要になることがあります。テイクアウトやデリバリーを始めるのを機に、新たなテイクアウトなどのメニューの取り扱いを始めようという際には、その食品の取り扱いそのものに許可が必要かどうか最寄りの保健所に確認しておきましょう。

移動販売は、調理する場所がどこかによって手続きが異なる

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飲食店の移動販売は、調理する場所が判断基準となります。たとえば、キッチンカーの中で調理をする場合は「屋台」という扱いになる一方、お店の調理場で作ったお弁当などを移動販売する場合は、屋台営業の中でも「行商」と分類されます。

それぞれ必要な手続きが異なります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

キッチンカーを始める場合、車検では「構造変更検査」が必要。取り扱うメニューに注意

イベント会場や公園内、オフィス街などでよく見かけるキッチンカー。調理設備が備え付けられて、車の中で調理することができ、かつ移動も自由という形態です。昼はキッチンカーで営業しつつ、夜は店舗で営業というお店もあります。

キッチンカーは、ワゴン車などの自動車を、キッチンカー向けに改造する必要があります。お店を開いて飲食店の営業をするために、飲食店営業許可を受けるための要件(衛生面など)を満たす必要があるように、キッチンカーでもお店同様に営業許可を受けられるように設備を整えなければいけません。

こうしたキッチンカーは、「屋台」という扱いになります。縁日にでる屋台の焼きそばとかお好み焼きをしているものと同じ扱いです。通常の飲食店営業許可に加えて、屋台独自の注意点も必要となってきます。この注意点は、キッチンカーを営業する上で守るべき事項ですので、しっかりと理解しておく必要があります。

まず、キッチンカーなどの屋台では衛生面から、生ものを提供することはできません。また、キッチンカーの中では、調理は加熱や盛り付けなど簡単なものしか許可されていません。仕込みなどはあらかじめお店で済ませておく必要があります。

キッチンカーでの販売について重要なのは、キッチンカーの内装です。キッチンカーは乗用車ではないので、飲食店営業許可以外にも、車検において「構造変更検査」を受けなければいけません。

キッチンカーへの改造を行っている事業者にお願いすれば、許可要件を満たすように制作してもらえます。予算感にもよりますが、確実に許可を受けるためには、少なくとも内装部分は専門の事業者にお願いしたほうが良いかもしれません。

営業許可を取得するための流れや、必要書類は、東京都の場合、「東京都福祉保健局 食品営業はじめてナビ 自動車を使って食品を調理・販売したいときは...」を参考にしましょう。

飲食店がお弁当等の移動販売を始める場合、「弁当等人力販売業」として、許可が必要

キッチンカーのように車内で調理をするわけではなく、お店の調理場で作ったお弁当などを移動販売するという方法もあります。この場合にも冷蔵庫などの保管設備は備え付けなればならないので、やはり車両の改造が必要になります。

お弁当などの移動販売については、自動車ではなく自転車などの人力で販売することもあります。むしろ、移動販売であれば安い投資で開始できる自転車など人力での販売のほうが多いかもしれません。

こうした人力により、すでに製造された食品を販売する形態は、屋台営業の中でも「行商」といわれています。お弁当以外にも、豆腐の行商などを町で見かけることがあります。行商については、基本的には、届け出制がとられていて、許可制のキッチンカーに比べて簡単に始めらます。

ただし、お弁当や総菜などの行商については、ノロウイルスなどの食中毒防止のため、都道府県によっては通常の行商以上に規制が行われています。例えば東京都では、お弁当や総菜の行商は「弁当等人力販売業」としての許可制です。このように、行商では都道府県によって扱いが異なりますので、各都道府県の保健所に確認しましょう。

そして、いずれの場合も注意しておきたいのが、道路の使い方です。路上で販売を行うには、交通の妨げにならないよう警察署などの許可が必要です。

しかし、基本的に屋台営業のために道路の使用許可が出されることはありません。そのため、ランチタイムに空きスペースなどを借りたり、週末のスーパーマーケットの前、屋台村を展開しているところにエントリーするなど、販売スペースの確保も重要です。

移動販売のメリットは、販売状況や時間帯、曜日の状況で場所の移動ができることです。うまく活用しましょう。

東京都では、「移動・行商関係営業許可申請の手引」で行商関係の営業許可について解説しています。

飲食店がお酒の提供を始める場合は時間帯に注意

レストランなど、食事をすることがメインのお店においてお酒の提供をすることは、飲食店営業許可以外の許可は必要ありません。

一方、お酒を飲むことがメインのお店(居酒屋やバーなど)において、午前0時以降にお酒を提供する場合には、「深夜における酒類提供飲食店営業開始届」を管轄の警察署に届け出なければいけません。

裏を返せば、午前0時前に閉店するお店については、どんな形態のお店であっても、特別な届け出を出さずにお酒の提供が可能ということです。

ただしお酒をテイクアウトで提供するとなると、大きく事情が変わります。時間帯にかかわらず、お酒をテイクアウトで提供するには、税務署に「酒類小売業免許」を提出することが必要です。

この手続きは、同じお酒関係の手続きでも、深夜酒類提供飲食店営業開始届に比べてかなり複雑です。飲食店がお酒をテイクアウトで提供するという場合には、事前に許認可の専門家である行政書士に相談するなどして、準備を整えておく必要があります。

(新型コロナウイルスの影響で経営が悪化した飲食店向けに、2020年6月30日までの申請については、6か月の期限付きで、簡素化された酒類小売業免許の手続きも実施されていました。)

飲食店が通信販売を始める場合

飲食店の中には、デリバリーやテイクアウトのほかにECサイトにより、調理したものを販売しようとする店舗もあります。ECサイトで食品を販売する場合には、販売する食品ごとに許可を取る必要があります。

例えば、おかずやお弁当であれば「そうざい製造業」、焼き菓子であれば「菓子製造業」などです。ECサイトで新たな食品にチャレンジする場合には特に気をつけましょう。

また、通信販売を行う際に注意しておくもう一つのポイントが、「食品表示ラベル」です。食料品を販売する場合には、製造元や賞味期限などを記載しておくことが食品表示法で義務づけられています。

食品表示法に関する最新の情報は、消費者庁の食品表示企画で確認できます。

ほかにも、食品によっては真空パックや専用の容器などをそろえる必要があります。ほかの販売方法同様に、ECサイトを始める場合には事前準備をしっかりと行っておく必要があります。

軒先ビジネスとして店を貸したり、借りたりしはじめた場合

シェアリングエコノミーの発達とともに、軒先ビジネスというものも浸透してきました。大型店舗などの空いているスペースを利用して、月単位などで出店できるというものです。

通常は貸主の審査があり、そこである程度スクリーニングされます。そもそも許可が必要なビジネスを貸し出しの対象から外していたり、貸し出すにあたって許可証を提出させたりするなどしているところがほとんどです。軒先ビジネスを利用する場合には、まずは貸主に確認をとってみましょう。

ちなみに、軒先ビジネスで貸主としてサービスを提供する場合には、あくまで場所貸しなので、特別な許認可は必要ありません。ただし、得た収益は、個人であれば事業所得や不動産所得、法人税であれば売上などで所得税や法人税の申告を行う必要があります。

業態拡大に伴う補助金や助成金

業態拡大によって必要になるのが、新たな設備や備品の購入や、新規の人材採用です。

こうした補助金や助成金は数多くありますが、特に飲食店などで活用されている補助金や助成金には以下のようなものがあります。

小規模事業者持続化補助金

この補助金は、業種ごとの従業員数の要件(例えば飲食店であれば従業員5人以下)を満たす事業者に対して、販路拡大などの取り組みに対して補助を行うものです。

特に2020年は新型コロナウイルスの影響で多くの中小企業が、既存のビジネスの転換や新たなビジネスの開拓を行う必要に迫られました。

そのため、小規模事業者持続化補助金についても、EC販売など非対面型のビジネスを開始するための費用について補助額を引き上げるなどの措置が行われています。

キャリアアップ助成金

この助成金は、有期契約で雇用した従業員を、正社員への引き上げた場合などに受給できます。新規事業を行う上では、人員増加も必要になるでしょう。

一方で、雇ってみて事前に聞いていたスキルよりも足りなかった、というケースも多々あります。それほど人件費に余裕がない中小の事業者にとっては、余剰人員を抱えておくこともできません。

そんなときに、採用時に有期契約で雇用してから、正社員に転換させるということは有効な手段の一つです。こうした取り組みについて助成金を受け取れるということです。

東京都では、「テイクアウト」「宅配」「移動販売」などの新サービスの開始によって売上を確保しようとしている飲食店を支援する「業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)事業」を発表しています。こちらの記事もあわせてご覧ください。

まとめ

許認可が必要なビジネスはあらかじめ定められています。ただし、都道府県によって書式が違ったり、条例で要件が加重されていたりと一筋縄ではいかないケースもあります。事前確認をしっかりと行っておきましょう。

あわせて、新規ビジネスの開始のための補助金などの情報を顧問税理士やインターネット、SNSなどを通して、チェックしておくことでビジネス開始の際の資金繰りに活用できるようにしておくことも重要です。

photo:Getty Images

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この記事の執筆者

渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント(R)。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

・V-Spirits

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