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【最新版】働きやすい職場環境を作り離職を減らすともらえる「人材確保等支援助成金」とは?

公開日:

執筆者:渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

【最新版】働きやすい職場環境を作り離職を減らすともらえる「人材確保等支援助成金」とは?

人材確保等支援助成金は、人材の確保・定着に向け、職場や労働環境の改善に取り組む事業主や事業協同組合向けの助成金です。企業の生産性向上には、従業員の定着が重要なポイントになります。転職が当たり前になった今でも企業に人材が定着することは、企業の成長や業務の効率化のために必要。このような考えから従業員が働きやすい環境を整えることで離職を減らそうとする事業主を助成する制度です。人材確保等支援助成金について、申請方法や活用時の注意点などについて詳しく見てみましょう。



POINT
  • 人材確保等支援助成金は、7つのコースがある
  • もっとも活用されている「雇用管理制度助成コース」の主な受給要件は、5つの制度の中から新規で導入する制度を選び、導入1か月前の前日までに管轄の労働局などに提出すること
  • 雇用管理制度助成コースは、制度導入後1年間の離職率が15%以下になれば受給できる

「人材確保等支援助成金」とは

「人材確保等支援助成金」は、職場・労働環境の向上を図ることで、人材確保・定着を目的としたもの。事業主や事業協同組合等が職場や労働環境を改善して、人材の確保や離職率の低下に努めることで助成が行われます。もともとは「職場定着支援助成金」という名称でしたが、内容の拡充などとともに、平成30(2018)年に名称が変更されました。

申請は、法人・個人事業主いずれも可能です。業種も問わず、どのような事業主でも申請可能な助成金です。ただし、雇用保険に加入していることが最低条件です。従業員がいないのはもちろんですが、従業員がいても雇用保険に加入していなければ申請はできません。(これはどの雇用関係の助成金についてもいえることですが。)

人材確保等支援助成金は行う施策によって、以下7つのコースに分かれています。

コース名称対象の施策
雇用管理制度助成コース新たに雇用管理制度(評価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間正社員制度(保育事業主のみ))を導入・実施することで、従業員の離職率低下に取り組む事業主に助成される
人事評価改善等助成コース生産性向上のための能力評価を含む人事評価制度と賃金制度を設けることで、生産性の向上、賃金アップ、離職率の低下を図る事業主に助成される
設備改善等支援コース雇用管理の改善を図る事業主が「雇用管理改善計画」を作成し、生産性向上のための設備等への投資を行い、一定の雇用管理改善や生産性の向上を達成した場合に助成される
働き方改革支援コース人材を確保することが必要な中小企業事業主が、働き方改革のために新たに労働者を雇い、雇用管理の改善に達成した場合に助成される
中小企業団体助成コース改善計画の認定を受けた中小企業団体(事業協同組合等)が、傘下の構成中小企業者のため、人材確保や従業員の職場定着を支援するための事業を行った場合に助成される
介護福祉機器助成コース介護事業主が、新たに介護福祉機器の導入を通じて従業員の離職率低下に取り組む介護事業主に助成される
介護・保育労働者雇用管理制度助成コース介護事業主または保育事業主が、賃金制度の整備を行い、離職率の低下に取り組む介護・保育事業主に助成される

上記の通り、コースごとに企業が行う施策や受給の要件はさまざまです。いずれも「人材確保等支援助成金」という名称ですが、上記7つの助成金が同じ名称で運用されているイメージです。

中でも業種を問わず活用でき、大きな投資を行う必要もない「雇用管理制度助成コース」が最も活用されています。人材確保等支援助成金といえば、この雇用管理制度助成コースといってもよいかもしれません。今回は雇用管理制度助成コースに焦点を当てて説明していきます。

受給の主な要件

人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)の主な受給要件は、以下の通りです。

・雇用管理制度整備計画の認定
いつから、どのような制度を導入するのかということについて、制度を運用する前にあらかじめ管轄の労働局に計画書を届け出ます。その後、管轄の労働局の認定を受けます。
導入する制度は、以下の5つから選択します。

雇用管理制度名詳細
評価・処遇制度役職手当などの手当の制度や、退職金制度や賞与制度、人事評価制度を導入すること
研修制度通常の業務とは別に、10時間以上の研修を労働時間の中で受講させる制度を導入すること。研修にかかる費用は全額事業主が負担し、かつ研修中も給与を支払わなければならない
健康づくり制度法定の健康診断以外に、付加的に受ける検診項目(歯周疾患検診や各種がん検診など)を受けられる制度を導入すること。付加的な検診項目にかかる費用については半額以上を事業主が負担しなければならない
メンター制度従業員の仕事などに関する問題を解決するためのメンタリングの制度を導入すること。メンターについては社内であれば先輩社員で直属の上司以外、社外であればコーチングなどメンタリングに関するスキルを持つ者でなければならない
短時間正社員制度保育事業主のみが対象であり、新たに雇用する者や既存の従業員について、フルタイムに比べて労働時間が短い「短時間正社員」にするための制度を導入すること

導入する制度は、新規であることが条件です。計画を提出する前にすでに制度として運用されている場合は、助成金の対象外となるので注意しましょう。

雇用管理制度整備計画は、遅くとも制度導入の1か月前の前日までには管轄の労働局に提出しておく必要があります。例えば、9月1日から新たな処遇制度として役職手当を導入するという場合は、7月31日までには雇用管理制度整備計画を提出しましょう。

・実施期間
雇用管理制度整備計画の実施期間内に、雇用管理制度を導入・実施しなくてはいけません。

・目標の達成
制度導入後、1年間の離職率が制度導入前1年間の離職率と比較して、一定以上減少していること。減少すべき離職率については、雇用保険の被保険者数に応じて以下の通りです。

雇用保険一般被保険者低下させるべき離職率
1~9人15%以上
10~29人10%以上
30~99人7%以上
100~299人5%以上
300人以上3%以上

離職率は、以下のように計算します。

離職率(%)=期間中の離職による雇用保険一般被保険者資格喪失者数/期間の初日における雇用保険一般被保険者数×100

※雇用保険一般被保険者とは、65歳以上の高年齢被保険者、季節的に雇用される短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者以外の被保険者のことです。65歳未満の雇用保険被保険者は、ほとんどが一般被保険者に該当します。

離職率の計算例:

2020年9月1日から2021年8月31日の1年間の離職率を計算する場合

  • 2020年9月1日時点の雇用保険一般被保険者数が20名
  • 上記期間中の雇用保険一般被保険者で退職した人数3名

離職率=3名/20名×100=15%

となります。
離職率が、制度導入の前と後で、上記の表で示した割合以上に減少していることが、受給の要件です。

要するに、20名の会社で、制度導入前1年間の離職率が25%であれば、制度導入後1年間の離職率が15%以下(離職率の低下が10%以上)になれば受給できるということです。ただし、助成金の受給のための申請は、実際に制度を導入してから1年以上経過した後となります。実際の受給は、労働局の審査を経て、さらに4か月から半年後となります。思ったよりも受給が先になることは認識しておきましょう。

しかし、

  • そもそも離職する人がおらず、制度導入前1年間の離職率が0%の会社
  • 制度導入前の離職率がすでに低下させるべき離職率以下の事業者
  • 新たに創業してから1年間経過していない事業者

上記の場合、制度導入前の離職率の算定ができません。このような事業者については、制度導入後1年間の離職率が0%、つまり一人も退職者が出てないことが受給の要件となります。

助成される助成金額

目標を達成したら、助成の支給申請を行います。

雇用管理制度助成コース
助成金支給額 57万円
(生産性要件を満たした場合 72万円

人材確保等支援助成金には、雇用管理制度助成コースを含め7コースあり、いずれのコースも目標を達成すれば、57万円/1コースの助成金が支給されます。複数のコースで受給することも可能です。ただし、並行して進めることはできません。それは、離職率の低下を判定する際、複数のコースで同時に進めると、どの制度によって離職率の低下が起こったのかということが不明確になってしまうためです。

さらに、生産性要件を満たせば受給額が15万円上乗せされて、72万円となります。

生産性要件の判定には、まず生産性を計算する必要があります。

生産性=付加価値/雇用保険被保険者数

・雇用保険被保険者数
自社の雇用保険者の数

・付加価値
詳細な計算は決算書の話となっているので割愛しますが、簡単に言えば、売上総利益から外注費や消耗品など社外に流れた経費を引いた金額のこと。

細かい計算については、以下のページを参考にしてください。

さらに計算した生産性が、以下の生産性要件のうちいずれか一つを満たせば、助成金の支給額が、「生産性要件を満たした場合」の72万円となります。

【生産性要件】
助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、
1)その3年度前の決算に比べて6%以上伸びていること
2)その3年度前の決算に比べて1%以上(6%未満)伸びており、かつ金融機関から一定の「事業性評価」を得ていること

基本的には1)の6%以上の伸びを見て判定を行う事業者が多いです。
2)の「事業性評価」は、都道府県労働局が、助成金を申請する事業所の承諾を得て、市場での成長性や競争優位性のほか、事業特性、経営資源、強み等、事業の見立てを与信取引等のある金融機関に照会し、その回答を参考に判断を行います。「与信取引」は、金融機関から借入を受けている場合以外で、借入残高がなく、借入限度額(借入の際の設定上限金額)が設定されている場合等も該当します。
1)、2)ともに、3年度前の決算と比較するので、そもそも4期分の決算が終わっていない事業者は生産性要件の対象外となるので、注意が必要です。

申請手続きの流れ

人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)の助成金受給までの流れについては、以下の通りです。

1)雇用管理制度整備計画を、管轄の都道府県労働局(またはハローワーク)に提出し、承認を受ける
※制度導入の1か月前の前日までには提出しておく必要があります。導入時期から逆算して、必ず期限内に提出するようにしましょう。

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)の申請に必要な書類は、「人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)様式ダウンロード」からダウンロードできます。

2)雇用管理制度整備計画で承認を受けた制度を実際に導入
導入した制度については就業規則などで明文化する必要があります。雇用管理制度整備計画で承認を受けた内容を明文化することになりますので、就業規則の改定については、計画の承認を受けた後ということになります。

3)制度を1年間運用後、2か月以内に助成金の支給申請を管轄の都道府県労働局に行う

助成金の受給は、実際に制度を導入してから1年以上経過した後となります。さらにそこから都道府県労働局やハローワークでの審査に数か月を要する場合も。実際に受給できるのは、雇用管理制度整備計画を提出してから、1年半以上経過した後ということになります。

時間が空いてしまうため、支給申請が期限切れになってしまうことがないようにスケジュールを組んでおきましょう。

「働き方改革推進支援センター」を活用しよう

人材確保等支援助成金をはじめ、助成金の手続きは提出する書類が多いです。申請書類のリストを見るだけでも訳が分からなくなってしまうこともあります。

そんなときは、各都道府県に設置されている「働き方改革推進支援センター」を活用するのも一つの手です。
雇用に関するさまざまな問題について、社会保険労務士などの専門家が相談に乗ってくれます。具体的な活用方法や、各センターの所在地については、以下の「働き方改革推進支援センターのご案内」リンクから確認してみましょう。

photo:Getty Images

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この記事の執筆者

渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント(R)。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

・V-Spirits

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