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プロに聞く!個人事業主・小規模事業者が、オンライン面接で良い人材を採用する秘訣

公開日:

執筆者:安田博勇

プロに聞く!個人事業主・小規模事業者が、オンライン面接で良い人材を採用する秘訣

このたびのコロナ禍では、人材採用の領域で「オンライン面接」が増えてきました。個人事業主など人事部門のないスモールビジネス事業者の場合も、オンライン面接を導入すべきなのでしょうか。オンライン面接導入時のポイント・留意点、そしてオンライン面接で良い人材を見極める秘訣について、日経BizGateに「中小企業のためのオンライン採用学」について執筆されている株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達洋駆氏にお話をうかがいました。

(※この取材はオンライン会議ツールを使用し、リモートでインタビューしたものです)



伊達洋駆(だて・ようく)

伊達洋駆(だて・ようく)

株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役。神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。神戸大学大学院経営学研究科在籍中の2009年LLPビジネスリサーチラボ、2011年株式会社ビジネスリサーチラボを創業。人事領域を中心にリサーチ事業を展開する。近著に『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム、共著)がある。2021年2月頃には「オンライン面接」に関する新刊も発表予定。
株式会社ビジネスリサーチラボ

コロナ禍におけるスモールビジネス事業者の悩み

――まずは昨今の人材採用傾向についてうかがいます。スモールビジネス事業者に限らず、このたびのコロナ禍は企業の人材採用全般にどんな影響を及ぼしていますか。

伊達洋駆

伊達洋駆(以下、伊達):コロナの影響として明らかなのは、やはり求人数の減少でしょうか。

厚生労働省やリクルートワークス研究所がコロナ後の有効求人倍率を発表していますが、企業規模・職業別にかかわらず企業の採用意欲が減退し、有効求人倍率・新規求人総数が軒並み減少しています。

特に従業員規模の小さい企業ほど減少の幅が大きいといえます。リクルートワークス研究所が発表した21年度3月卒業予定の大卒求人倍率を見ても、300人未満企業の有効求人倍率はコロナ前には8〜9倍くらいで「大企業よりもはるかに高い数値」を示していましたが、コロナ後には3.4倍に落ち着いています。

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――やがてこの状態が回復に向かえば、必ず「人材」はまた必要になるでしょう。特にスモールビジネス事業者はどのような形式で人材採用活動を行っているケースが多かったのでしょうか。

伊達洋駆

伊達:中小企業は大手企業と違い、人材採用・人材育成・事業が部門として明確に分割されているわけではありません。そのため人材採用においても専任者・専任部門を置けずにいます。

スモールビジネス事業者の場合は特にそれが顕著です。大きなコストも投じられないため、例えば比較的コストのかからない求人系サイト、あるいはSNSや自社ホームページに人材募集の案件を掲載し、選考の方法としては事務所において対面で面接をするケースが多かったと思います。

――2020年、新型コロナウイルスの流行では業務のオンライン化が加速しました。採用活動も例外ではなく、就活生の約7割が「オンラインでの企業説明会・面接」を経験した、というデータも聞いたことがあります。

伊達洋駆

伊達:人事ポータルサイト「HRプロ」が緊急事態宣言後に行った調査(2020年6月末~7月初旬実施)によれば、2021年度卒の採用活動においてオンライン面接を「実施している/実施した」とする企業の割合は、大企業(従業員1,000名以上)」で84%、中堅企業(同301〜1,000名)で76%、そして中小企業(同300名以下)で47%でした。平均を取ると5割強くらいなのですが、企業規模によって「オンライン格差」のようなものが生じているのは確かなようです。

――オンライン面接が大企業で先行している......。考えられるその要因は?

伊達洋駆

伊達:緊急事態宣言のあった2020年4〜5月は、21年度卒の採用面接を大企業が準備・開始しようとしていた時期に重なりました。

そのため、大企業が早期に対応する必要に迫られ、中堅・中小よりも早くからオンライン面接を導入した、という事情がまずはあったと思います。

他方、大企業においてはオンライン面接導入の可否を問う以前からリモートワークの普及が急加速しました。

すでにオンライン化の経験・知見が少しでもあったからこそ、オンライン面接に対しても前向きになれたのではないでしょうか。

――オンラインで採用する場合、求人を掲出する媒体や方法は変わりましたか? また、オンライン面接のときのツールでおすすめはありますか?

伊達洋駆

伊達:求人を掲載する媒体や方法については、オンラインでも対面でもほとんど変わりません。とくに媒体は90年代からオンライン化してきているので変わらないですね。

ツールはいろいろありますが、スモールビジネスであれば、月額利用料のかからないものもありますし、それこそ(Zoomなど)普段よく使われているものを使用するのが安心です。

デバイスは採用する側、される側でそれぞれ能力が発揮しやすいものを選ぶと良いですね。

採用側であれば普段から使用しているPCとか、求職者側は、PCやタブレット、スマートフォンなど......選び方としては採用要件と紐づけることですね。例えばPCを使う仕事であればPCで面接を行う方がいいでしょう。そうすることでスキルチェックもできます。

大人数からふるいにかける採用はスモールビジネスに不向き?

伊達洋駆さん

――しばらくはwithコロナのなかで採用活動をすることになりそうですよね。今後は志望先の大小にかかわらず、就活生の間でオンライン面接が一般化するかもしれません。

コロナという外的要因から始まったオンライン面接とはいえ、効率性の高さからafterコロナにおいてもオンライン面接が定着する可能性もあり得ますね。

伊達洋駆

伊達:そうですね。今は「1次や2次はオンライン面接、最終は対面面接」といった具合に併用して実施されている企業も多いですが、オンライン面接は就活生にとっても利便性が高く、オンライン面接が定着化・主流化する可能性は大いにあり得ます。スモールビジネス事業者も無関係とは言っていられません。

――スモールビジネス事業者が採用活動を行う際に留意すべきポイントは?

伊達洋駆

伊達:まず、オンライン面接の是非とかコロナ対応云々を考える以前に「人材要件」を見直す必要があります。

私も多くの中小企業経営者・スモールビジネス事業者の方とお話しする機会があるのですが、「募集しても人が集まらない」なんて声をよく耳にします。

その考え方の背後にあるのは「より多くの人を集めれば、そのなかによい人材がいるはずだ」という信念です。

――大勢を集めて、ふるいにかけ、最終的に良い人材を見つける......といったような?

伊達洋駆

伊達:はい。しかしそうした採用のやり方は、大企業・有名企業が行う方法です。大企業は入社後どんな部門に配属させるのか決まっていないなかで採用活動や面接をしているので、人材要件の抽象度が高くてもよいのですが、スモールビジネス事業者なら明確にどんな仕事をしてほしいのか決まっているはずです。

何十人・何百人と採用する必要もありませんし、たくさんの応募があればその分だけ選考のための時間・人件費を捻出しなければいけません。

――ということは、スモールビジネス事業者が行う採用では、どのようなことをすると良いのでしょうか。

伊達洋駆

伊達:スモールビジネス事業者の場合は「どういう人材がほしいのか」という人材要件を明確に示し、「自分は当てはまらない」と感じた就活生は応募してこないようにするくらいのほうがベターです。

たとえ少数でも本当にほしい人材だけが応募してくれている、その状態で採用活動をスタートすることが、後に好循環をもたらします。

実はそのことは、スモールビジネス事業者にとても有利な状況なんです。

大企業ではどうしたって「理想=人材要件」と「現実=実際の業務内容」の"距離"が離れていますが、スモールビジネス事業者ならその距離がとても近い。本当にほしい人材を確実に獲得することだってできるはずです。

さらに「どんな業務を任せたいのか」を考えておくことは、後々のオンライン面接でとても有利に作用します。

オンライン面接のメリット・デメリット

伊達洋駆さん

――ではここから、オンライン面接導入のポイントについて伝授していただきます。

伊達洋駆

伊達:まずは「面接」というものについて解説します。そもそも面接は「見極め」と「引きつけ」という2つの機能を備えています。面接官は相手のことを見極めつつ、自社への引きつけを行わなければならない。だから面接は難しい、とも言えます。

見極め :候補者の能力や性格などが自社に合っているのかを評価する機能
引きつけ:面接におけるコミュニケーションのなかで候補者の志望度を高める機能

さらに、これら2つの機能では「見極めはオンライン面接に適している」「引きつけはオンライン面接に不向き(対面面接の方が効果が高い)」という特徴があります。順を追って説明しましょう。

① 見極めはオンライン面接に適している
面接に限らず、オンラインでの会話は対面での会話に比べ、タイムラグが生じたり、画面越しに会話したりするため、非言語的手がかり(言葉以外の情報)を得にくいものです。

対面での会話ならば、相手の表情や目線・ジェスチャー・声色、場の空気や雰囲気などが相手のことを知る手がかりになりますが、オンラインだとそれが難しい。

そのため、候補者は自分の能力を十分に発揮できず、面接官の評価は辛口になりがちで、対面よりも点数が低くなる傾向があるのです。

しかし、非言語的手がかりはバイアスを発生させる源泉でもあるため、オンライン面接は「面接官にとっては、余計な偏見を抱かずに済むため、能力・適性を見極めやすい」ということでもあります。

② 「引きつけ」はオンライン面接に不向き
先述した通り、引きつけとは「候補者の志望度を高める」機能のことです。オンラインだとアイコンタクトがとりにくかったり、会話にタイムラグが生じたりします。

そのことから候補者は自分の能力を発揮したとの実感を得にくく、同時に、人の心理の働きから能力を発揮できないことを「相手のせい」にしてしまいます。

結果として候補者は、その企業に対してポジティブな印象を持ちにくい。そうした点から、オンライン面接は対面面接に比べ、引きつけに不向きな方法であると言えます。

――オンライン面接は「メリット=候補者に惑わされずに能力・適性を見極めやすい」「デメリット=候補者の志望度を高めにくい」......。まさしく一長一短ですね。

伊達洋駆

伊達:このデメリットはなかなか深刻なことです。せっかく気に入った候補者だからと内定を出しても、オンライン面接での印象が悪かったから、と逆に内定辞退される可能性もあるわけですから。

雑談面接はNG!? オンライン面接を成功に導く対処法

――となれば、企業はどのような対処を行っておくべきなのでしょうか。

伊達洋駆

伊達:結論を先に申し上げれば「構造化面接」がオンライン面接のカギを握ります。

構造化面接とは、事前に面接の質問内容・評価基準などを設定しておく面接のことです。特にスモールビジネス事業者での採用活動となれば、非構造化面接(事前設定を行わず当日"雑談"のような雰囲気のなかで相手の適性を判断するような面接)を行うケースも多いと思うのですが、オンライン面接では厳禁です。

――おそらく「相手の緊張感をほぐしたいから」など、よかれと思ってやってしまいがちですよね。

伊達洋駆

伊達:対面面接だと雑談面接もよい方向に作用するんですよ。実際、対面時に変に構造化された質問をされると、会話も不自然になりがちではないですか?

――確かに。今日はオンラインで取材をさせていただいていますが、例えばこれが対面での取材なら、一問一答のような形式を採るより、雑談のような雰囲気で進めたほうが相手のホンネを聞き出せたりします。

伊達洋駆

伊達:今日のオンラインインタビューも、事前作成された質問事項に沿って(構造化して)進めていただいているので、私(=面接ならば候補者)にとっても「きちんとお話させていただいている」という実感を得やすくなります。

――構造化面接はどんなことを"構造化"しておけばよいのでしょうか。

伊達洋駆

伊達:それほど難しく考える必要はありません。次のような項目を考えておけばよいでしょう。

構造化のポイント

  • 測定内容=その面接でどんな能力・適性を測るつもりなのか
  • 質問内容=測りたいものに対して、どのような質問をするのがベストなのか
  • 評価基準=候補者の回答に対して、どのように評価するのか

繰り返しになりますが「引きつけ」を成功させるコツは、候補者に「うまく乗り切れた!」「能力を発揮できた!」と思わせることにあります。

その点、構造化面接であれば、非言語的手がかりを得にくくタイムラグも生じがちなリモート環境下でも、能力を発揮してもらいやすいはずです。

そのためにも、先ほどの「人材要件」を定めておくことは非常に重要で、万全の準備と明文化がオンライン面接成功の秘訣だとも言えます。

面接では「4種類の評価基準」を設けておく

――先の「評価基準」においては、具体的にどんな基準を設けておけばよいのでしょうか。

伊達洋駆

伊達:評価基準は、次のように細分化して考えればわかりやすいです。

必須要件:自社にとって絶対に必要な要件はなにか?
優秀要件:できれば持っていてほしい要件/あれば優秀と感じる要件はなにか?
ネガティブ要件:持っていた場合、NGとなる要件があれば、それはなにか?
不問要件:社会一般では求められるけど、自社では不要・不問な要件があれば、それは何か?

特に「不問要件」は、スモールビジネス事業者の採用活動において強みになります。

例えば「明るく快活な人」は、面接時に配属先を決められない大企業では「優秀要件」になりがちです。しかし、スモールビジネス事業者の場合、業種・職種によってはそれが不要な場合もある。

不問要件をあらかじめ設定しておけば、せっかくの人材を取りこぼす心配もなくなるでしょう。大企業では内定をもらいにくい優秀な人材を獲得するチャンスになるかもしれません。

――最後にオンライン面接を考えているスモールビジネス事業者に向け、何かメッセージをいただけますか。

伊達洋駆

伊達:冒頭に申し上げた通り、スモールビジネス事業者では人事・総務などの専任者を置けず、経営者自身が行ったり、複数の業務担当が一体となっているケースが多いと思います。

そのことは一見不利なように思えますが、実はよい点もあると思っています。なぜならば、会社・組織を変えられる権限もあるから。大企業ではそうはいきません。

今はコロナ禍でのさまざまな事情からビジネス全般で雇い控えが起こっています。スモールビジネス事業者ではその傾向が顕著だと思いますが、withコロナ、そしてafterコロナを"チャンス"だととらえれば、優秀な人材獲得も可能だと考えます。

人材採用を自社変革の機会にしていただければと思います。

――本日はありがとうございました。

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この記事の執筆者

安田博勇
安田博勇

1977年生まれ。大学卒業後に就職した建設系企業で施工管理&建物管理に従事するも5年間勤めてから退職。出版・編集系の専門学校に通った後、2006年に都内の編集プロダクションに転職。以降いくつかのプロダクションに在籍しながら、企業系広報誌、雑誌、書籍等で、編集や執筆を担当する。現在、フリーランスとして活動中。

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