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「仕事が来るポートフォリオ」って? ポートフォリオサービスの人に「3つのコツ」を聞いてきた!

2022.05.25

著者:斎藤充博

こんにちは。ライターの斎藤充博です。

僕は2009年に勤めていた会社を辞めて以来、12年ほどフリーランスをして暮らしています。一見すると、キャリアが長いように思えるかもしれません。

しかし、実態はもらった仕事をこなすだけの、「その日暮らし」を繰り返しということを12年やっていただけです。フリーランスにもイケてるフリーランスと、そうでないフリーランスがいるのですが、僕は後者です。

仕事を増やすのってどうすればいいのでしょう。自分のフリーランスとしての仕事を顧みたときに、ひとつの事実に気がつきました。

「おれってポートフォリオから仕事が来たことがないな…」

ポートフォリオとは、自分の仕事実績や、成果などを一覧できるようにしたもの。パンフレットのように冊子で作る人もいますし、Web上で見られるようにしている人もいます。

作ったポートフォリオは何らかの方法で発注者に見てもらわなくてはいけません。冊子のポートフォリオは営業で持ち込んだり、送付したりします。WebのポートフォリオはSNSのトップページなどにリンクを付けている人が多いです。

発注者はこれを見てその人の実力を推しはかり、「この人に仕事をお願いしてみようかな」……なんて思うわけです。

もちろん僕も、フリーランスとしてWeb上にポートフォリオを作ったことがあります。しかし、そこを経由して仕事をもらえたことが、一度もない……。

現状は、人づてに仕事をもらっている状況です。ポートフォリオからも仕事がきたら、一気に仕事の量が倍増するんじゃないの……? いままでは来なかったような仕事も来るかもしれない。イケてるフリーランスになれるかもしれない。

そこで今回はWebで作れるポートフォリオサービス「foriio」を運営している山田寛仁さんに「仕事が来るポートフォリオの作り方」を聞いてみました。

(※この取材はオンライン会議ツールを使用し、リモートでインタビューしたものです)


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山田寛仁(やまだ・ひろひと)

1988年秋田県生まれ。デジタルハリウッド大学卒業。デザイナーとして制作会社、代理店で勤務した後、フリーランスを経て、株式会社1ne Studioを設立。自社サービスとしてクリエイター向けポートフォリオサービス「foriio」を立ち上げる。

foriioについて

斎藤充博(以下、斎藤):山田さんは、そもそもデザイナーだったそうですが、なぜポートフォリオサービスの「foriio」を運営されるようになったんでしょうか?

山田寛仁(以下、山田):実は私が駆け出しのデザイナーだったころ、知り合いのクリエイターから「ポートフォリオを作って」って頼まれることが多かったんです。当初は、私も「仕事の実績になる」と思って無料で作っていました。

ただ、実際にやってみると頼んでくる人の数が多すぎるんですよね(笑)。とても対応できなくなってしまいました。

斎藤:なんと……。

山田:当時からいろいろなポートフォリオ作成ツールやサービスはあったのですよ。それなのに、私に依頼が来るというのは、フリーランスの人がポートフォリオを作るハードルは高いんだと思いました。そこで、みんなが簡単に使えるポートフォリオサービスを作ればいいんじゃないかと思ったんです。

斎藤:簡単に使えれば、いままでポートフォリオを作ることを諦めていた人もポートフォリオを自分で作るようになりそうですね。裾野がぐっと広がりそう。

そもそもポートフォリオで仕事は来るのか

斎藤:フリーランスが仕事を得るために必要不可欠と世間では言われているポートフォリオですが、そもそも本当にポートフォリオから仕事が入ってくるものなのでしょうか。僕はポートフォリオから仕事に結びついたことがなく、都市伝説では? と思い始めているところです。

山田:質問がストレートですね(笑)。そうですね、まず言っておきたいのは、ポートフォリオを作ったからと言って仕事が来るとは限りません。例えるならば、ポートフォリオはフリーランスにとって履歴書のようなものです。

斎藤:ポートフォリオは履歴書ですか……。

山田:履歴書は作らないと就職活動ができないけど、作ったから必ず就職できるというわけではないですよね。ポートフォリオを作ったからといって案件が必ず来るというわけではありませんが、ポートフォリオは作っておくとクライアントに提案しやすくなりますし、案件の獲得率も上がると思います。

斎藤:わかりやすい。すると、ポートフォリオを作ることが、フリーランスとして歩み出す第一歩と言えそうですね。

斎藤:ちなみに、まだフリーランスになりたてで、実績が少ない人もポートフォリオを作ったほうがいいのでしょうか。僕もライターとしての実績はあるのですが、最近はマンガの仕事も始めました。マンガのほうはポートフォリオに書くような実績が少ないんです。

山田:ポートフォリオを書くのは、仕事としての実績であることが望ましいのですが、必ずしもそうでなくてもいいんですよ。「自主的にこういうものを作った」とか、「学校でこういう制作をした」というのでも見せたほうがいいと思います。要は「自分はどんなことができるか」を伝えられればいいんです。

仕事が来るのは「見る人を意識するポートフォリオ」

斎藤:仕事が来やすくなる「いいポートフォリオ」というものはあるんでしょうか。「採用されやすい履歴書の書き方」みたいに……。

山田:そうですね。いいポートフォリオとは「見る人を意識するポートフォリオ」だと思います。まずこれが大前提です。

斎藤:見る人を意識する……。

山田:まず、ありがちなのは「ポートフォリオに載せている実績の数が多すぎる」こと。実績が多すぎると見る人の負担になってしまいますよね。これでは見る人を意識したポートフォリオとは言えません。

斎藤:なるほど。作る側としては「実績が少ないとショボいかな?」なんて思っていろいろ載せてしまいたくなりますが、そうではないんですね。

山田:たくさん載せるよりも「見る相手」によって、選定することが重要です。
例えば、地方創生の仕事を依頼したい人に見せるポートフォリオだとしましょう。動物の撮影やレポート実績よりも、地域イベントの仕事や別の地域で地方創生の企画記事を書いたなどの実績を見せたほうが、この仕事に結びつきやすいと思います。

斎藤:わかりやすいです。「見る人を意識する」ことで、相手が求めていることをこの人は理解しているなと伝わりますね。「foriio」には、タグがあるので、 そこで、ジャンル分けするなどしておくと相手によって提案しやすいですね。

山田:また、特にクリエイター系の方のポートフォリオにありがちなのは、お金や手間をかけて「極端にデザインに凝ったポートフォリオを作る」ことですね。

斎藤:かっこいいポートフォリオには憧れがありますが……。ダメなんですか?

山田:デザインに凝ること自体は、決して悪いことはないんですよ。クリエイターの世界観を反映することにもなりますしね。しかし、見る人は内容よりも、デザインに気をとられてしまうことになりかねません。

斎藤:シンプルでいい、というのは僕みたいにセンスに自信のない人間からするとありがたいです。

ポートフォリオには「どこ」「誰と」「どのように」の3つを書くべき

斎藤:実際にポートフォリオに書く内容は、どんなことに気をつければいいでしょうか。普通に自分の「実績」を書くだけでは、ちょっと弱いですかね?

山田:これもポートフォリオを見る人がどんな情報を欲しいかを考えたらいいと思います。そこで次の3つの点をおさえながら書くのはどうでしょうか。

  • 案件の「どこ」を担当したのか
  • 案件を「誰と」取りくんだのか
  • 案件に「どのように」取りくんだのか

ひとつずつ説明しますね。

案件の「どこ」を担当したのか

山田:そもそも、仕事って基本的に一人では完結しないことが多いと思うんですよ。特にクリエイティブ系の仕事はそうだと思います。

斎藤:確かに! 今回のこの記事も僕がやっているのは「取材」と「文章制作」と「イラスト制作」です。ほかにも記事を制作して公開するには「企画」、「進行」、「編集」、「校正」、「コーディング」などが必要なのですが、それは編集者にやってもらっています……。

山田:ポートフォリオで最終成果物だけをポンと紹介されただけでは、実際の働きが見えにくいですよね。だから案件における「自分の役割」を明確に書く必要があると思います。そのほうがわかりやすいと思うんです。

斎藤:なるほど……。そうですね。ただ、案件によっては、自分一人で進めているケースもあります。

山田:もしも一人でほぼ完結しているのだったら「この人にはワンストップでなんでも任せられるんだな」と思いますよね。
逆に部分的な仕事が多いのだったら「この人は集団の中でコミュニケーションをとりながら仕事を進めるのが得意なのかもしれない」と思いますよね。どちらにしても、自分のやったことを明確にしておいたほうがいいでしょう。

斎藤:なるほど、その人がどんなふうに働くかのイメージがついてきますね。

案件を「誰と」取りくんだのか

山田:誰と一緒に制作したのかというのも重要です。フリーランスにとって「誰と仕事をしたことがあるのか」というのは、信用につながるんです。

斎藤:たとえばこの記事だと、僕は「弥生株式会社」さんと仕事をしています(「弥報Online」は弥生株式会社の運営です)。

山田:弥生株式会社さんから仕事を発注される斎藤さんは、それだけ信用があるということになりますね。

斎藤:当たり前すぎて気がついていなかったです! 僕はあの弥生会計で有名な弥生株式会社さんからお仕事をもらっている……。スゴいじゃないか。

山田:今回、弥生株式会社さんの場合は、最終的なクライアントになりますよね。ほかにも「あのプロデューサーと仕事をしたことがある」とか「あの制作会社と仕事をしたことがある」というのも信用につながります。

斎藤:フリーランス歴は長いので、業界で有名な人と仕事をしたことはありますね。そういうことは書かないと損ですね!

案件に「どのように」取りくんだのか

山田:たとえば、デザイナーがロゴのデザインをしたという実績があるとします。最終的に表に出ているロゴは素晴らしいとは思うんですよ。

斎藤:ふむ……。

山田:ただ、最終的なアウトプットに結びつくまでどのような工程があったのかを発注者は知りたいんですよ。1案提出して、そのまま採用されたのか。それとも10案出して、その中から絞って決定したのか。それで仕事の内容としては全然違いますよね。

斎藤:確かにそうですね。これはライターの例ですが、インタビューをするライターでも、人によって取りくみ方って全然違うんですよね。事前に完璧に質問案を準備しておいて、その質問しかしないライターもいるし、準備はゆるいけど、その場で臨機応変にいろいろ聞けるライターもいますね。今回のようなリモート取材も、慣れている人と、そうでない人がいると思います。

山田:まさにそういうことだと思います。そして、どちらにも一長一短があるのではないでしょうか。発注者にとって、求めているものはそれぞれ違うので、そこはしっかりと伝えたほうがいいですね。

業種別ポートフォリオのポイント

斎藤:これまでで、山田さんが見たポートフォリオの中でこれはダメだったというのはありますか?

山田:紙で見せていたときに、たとえばカメラマンさんが、ぶ厚いポートフォリオを持ってくることがありました。その中には見たいジャンル以外の作品も入っているなど、あまりにも作品数が多いと、相手のことをあまり理解していないのかなという印象はありますね。誰に見せるのか、相手が何を見たいのかという視点も考えることが必要ですね。

斎藤:逆にいいポートフォリオの制作例はありますか?

山田:ポートフォリオの中に、この案件にはどのぐらいの制作時間だったかとか、いくらで請けたか、こういうツールを使って作りましたというのを書かれている方がいました。このような作品に対するディテールの共有の仕方というのは、見る側(発注する側)からすると便利だなと思いました。

また、イラストなどの場合、なぜこのイラストを描いたのかという背景などが書かれていることで、見る側がその人のひととなりに対して共感でき、「この人に頼みたい」というきっかけにつながることもあると思います。

斎藤:業種によってポートフォリオのポイントのようなものは変わってきますか? ポートフォリオを使うことが多い、ライター、カメラマン、イラストレーター、デザイナーを例に、どんなところがポイントになるのか業種別に教えていただければ。

山田:いずれも、先ほどお伝えした3つのポイントが共通になってきますが、自分はなにが得意なのかということを明示できるといいと思います。それぞれのポイントは…

・ライター
インタビューもできるのか、写真の撮影も可能なのか、特定の分野に関しての専門知識があるのか

・カメラマン
対応できる幅の広さもしくは特化しているジャンル(料理〜ファッションまで対応できるのか、またはハイファッション専門でやっているのか)

・イラストレーター
自分の描きたいイラストのタッチ(昔のタッチで描きたくないタッチがあるのではれば載せない…など)

・デザイナー
ロゴ、ビジュアルなどの得意なデザイン領域はあるのか、どんなプロセスでデザインすることが多いか(制作ノートなどを活用できるかと思います)

また、地元の仕事がしたい場合は、地元を書いたり、好きなものをアピールするのもいいですね。

斎藤:……実は、インタビューをしながら、山田さんの運営されているポートフォリオサービス「foriio」を触っているのですが、自分をアピールする項目がありますね。また、ポートフォリオを作るときに重要な「3つのポイント」は簡単におさえられる機能もあるんですね。

foriioには案件の「どこを取りくんだのか」を書く欄がある
「誰と取りくんだのか」を追加することができる
「どのようにして取りくんだのか」を書く「制作ノート」という欄もある
ちなみにこの「スモビバマン」は、スモビバ!で好評連載中です

山田:はい。実はいま言った「コツ」はforiioの機能を使っていれば、自然に満たされていくと思います。

斎藤:デザインもシンプルですね。

山田:ポートフォリオサービスってforiioのほかにもいろいろあるのですが、デザインのテンプレートを選ぶところから始めるものが多いです。
ただ、僕はポートフォリオのデザインを選んで設定するというのは、ハードルが高いのではないかと思うんです。色を選んだり、フォントを選んだり、考え出すと意外と大変ですよね。
foriioはフォーマットはひとつのみで、選ぶ必要がありません。

斎藤:「いろいろ選べる」っていうのもよさそうですが、逆に「選ぶ必要がない」というのもいいですね……。

山田:foriioなら、アカウントを作っていただいて、必要な情報を入力すればすぐに使っていただけます。

フリーランスって、下請的に使われるとつらいですよね。予算もスケジュールも押しつけられて、言われるままにやらなくちゃいけない。確かに、そういう仕事に応えていくのもフリーランスのひとつの役割だとは思います。ただ、それだけではなくて、自分の能力やスキルをよく理解して尊重してくれる、良きパートナーを見つけたいですよね。

現在foriioのユーザーは増えていて約2万人の方に使っていただいています。foriioが多くの人たちのパートナーシップを結べるきっかけになれればいいなと思います。

foriioを使ってポートフォリオを整備してみました

自分の能力やスキルを理解してくれる良きパートナーに出会えるよう、この度自分のforiioをがっつりと整備してみました。

foriio 斎藤充博のページ

山田さんに聞いたポイントを踏まえると「ポートフォリオがすごくわかりやすくなった」ように思えます。さらに整理したことで「自分で自分のことを理解できた」気がしてきました。

こうして見るとけっこういろいろな人と仕事をしているし、いろんなことができているし、自分って意外とイケてるフリーランスの素質があるのかも……?

お仕事、お待ちしております~!

この記事の著者

斎藤充博

1982年生まれ。ノンバンク金融の営業を退職した後に、指圧師、マンガ家、ライターなどの仕事をしていまに至っています。著書に『いやしのツボ手帳』(永岡書店)、『ツボストレッチ』(日本文芸社)などあり。

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