仕入控除税額の計算方法には、①一般課税方式と②簡易課税方式という2つの方法があります。
さらに、①一般課税方式には、(1)仕入税額を全額控除できる方式と(2)課税売上に対応する部分のみを控除する方式という2つの方法があります。
そしてさらに、(2)課税売上に対応する部分のみを控除する方式には、課税売上への対応のさせかたとして(a)個別対応方式と(b)一括比例配分方式という2つの方法があります。
図で整理すると以下のようになります。
簡易課税を選択できるのは、その課税期間の前々事業年度(これを「基準期間」といいます)の課税売上高が5,000万円以下の事業者です。
したがって、基準期間の課税売上高が5,000万円超である場合には、一般課税が適用されます。
また、簡易課税を選択している場合であっても、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える場合には、その課税期間については簡易課税制度の適用はできません。
なお、簡易課税を選択しようとする場合には、所轄税務署長に、適用しようとする課税期間の開始の日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することが必要です。
また、簡易課税を選択した場合は、2年間は一般課税に変更することはできません。2年経過し、一般課税に戻したい場合には、簡易課税をやめようとする課税期間の開始の日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要があります。
【参考】国税庁
・[手続名]消費税簡易課税制度選択届出手続
・[手続名]消費税簡易課税制度選択不適用届出手続
一般課税となった場合、次は(1)仕入税額を全額控除できる方式と(2)課税売上に対応する部分のみを控除する方式のどちらで仕入控除税額を計算するのかが問題となります。
(1)仕入税額を全額控除できる方式を選択できるのは、「課税期間中の課税売上高が5億円以下、かつ、課税売上割合が95%以上」の事業者です(※注)。
(※注)課税期間が1年に満たない場合には、当該課税期間における課税売上高を当該課税期間の月数で除し、これに12を乗じて計算した金額となることに留意。
したがって、「課税期間中の課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満」の事業者は、(2)の課税売上に対応する部分のみを控除する方式で仕入控除税額を算定します。
課税期間中の課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満の事業者であり、仕入控除税額を(2)の課税売上に対応する部分のみを控除する方式で算定することとなった場合、次に問題になるのは、課税売上への対応のさせかたです。
前述のとおり、これには(a)個別対応方式と(b)一括比例配分方式という2つの方法があります。
個別対応方式と一括比例配分方式のどちらを選ぶかは、納税者に委ねられていますので、どちらか有利な方を選択することとなります。判断に迷う場合には税理士などの専門家に相談しましょう。
それぞれの具体的な計算方法は、以下の記事をご確認ください。
13.消費税における仕入控除税額の控除時期と計算方法
15.消費税における個別対応方式の計算方法
16.消費税における一括比例配分方式の計算方法
17.消費税の簡易課税の仕組みとみなし仕入率
この記事の執筆者
OneWorld税理士法人 公認会計士・税理士。
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。
金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。
トーマツ退所後は、OneWorld税理士法人にて開業支援、融資支援、税務顧問などの業務を行う。
また、毎週、補助金と融資の勉強会 を開催し、中小企業の資金繰り支援にも力を入れている。
知っておきたい基礎知識 の記事はこちら
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事業者の販売する物品やサービス等の価格に上乗せされて広く課税される消費税。みなさまが取引をするなかで、さまざまな形で関わってくる税金です。ここでは知っておきたい消費税の基礎知識から、実践的な計算方法まで、体系的に学ぶことにしましょう。
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