「13.消費税における仕入控除税額の控除時期と計算方法」では、仕入税額を全額控除する方式での税額控除の方法について説明しました。
本章では、「個別対応方式」の場合の税額控除の方法を説明したいと思います。
ざっくりとおさらいすると、課税期間中の課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満の事業者であれば、個別対応方式か一括比例配分方式のどちらか有利な方を選択できるのでしたね。
では、実際に個別対応方式での仕入控除税額の計算方法を見ていきましょう。
そもそも消費税の納付税額は、売上によって預かった消費税額から、仕入れによって支払った消費税額を控除して算定するのでした。
仕入控除税額の計算方法で、どのような方式を選択したとしても、この考え方は変わりません。
以上を踏まえ、個別対応方式では、以下のように計算を進めます。
Step.1 課税仕入が、以下のどれに該当するか区分する
1 | 課税売上にのみ対応するもの |
---|---|
2 | 非課税売上のみに対応するもの |
3 | 課税と非課税の両方に共通するもの |
Step2. 1.に対応する消費税額全額と、3.に対応する消費税額に課税売上割合を掛けた金額との合計を仕入控除税額とする
それでは、それぞれのステップについて解説していきましょう。
Step1.で課税仕入を区分したら、次に仕入控除税額を算定します。
消費税の納付額は、預かった消費税額から支払った消費税額を控除するのであり、今は「支払った消費税額」のうち控除する金額を算定しているということを忘れないで下さいね。
具体的には、1.に対応する消費税額全額と、3.に対応する消費税額に課税売上割合を掛けた金額との合計を仕入控除税額とします。
1.については、課税売上に対応する、つまり控除されるべき預かった消費税額が存在する取引ですので、全額控除できます。
3.については、控除すべき預かった消費税額が存在するとは明確に言えない取引です。
したがって、課税売上がどれくらいの割合存在するかを表す課税売上割合を乗じ、理論上これだけは控除して良いだろう(つまり、控除すべき預かった消費税額が存在するだろう)という額を算定し、それが仕入控除税額となります。
なお2.は非課税売上に対応する仕入ですので、控除すべき預かった消費税額が存在しません。したがって、仕入控除税額にも含めません。
仕入控除税額の算定に個別対応方式を選択し、仕入れにかかる対価の返還等がある場合は以下のように計算します。
Step1. 対価の返還等のあった取引を1.~3.に区分する
Step2. 以下に当てはめて、①と②の合計額を仕入控除税額とする
①課税売上にのみ対応する課税仕入消費税額-課税売上にのみ対応する仕入れにかかる対価の返還等の消費税額(※)
(※課税仕入にかかる税込対価の返還等×6.3/108)
②課税売上と非課税売上に共通する課税仕入消費税額×課税売上割合-課税売上と非課税売上に共通する仕入にかかる対価の返還等の消費税額×課税売上割合
なお、仕入れにかかる対価の返還等にかかる消費税額が、課税仕入等の税額の合計額から控除しきれない場合に、控除しきれない額を課税標準額に対する消費税額に加算するのは、全額控除方式の場合と同様です。
この記事の執筆者
OneWorld税理士法人 公認会計士・税理士。
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。
金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。
トーマツ退所後は、OneWorld税理士法人にて開業支援、融資支援、税務顧問などの業務を行う。
また、毎週、補助金と融資の勉強会 を開催し、中小企業の資金繰り支援にも力を入れている。
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事業者の販売する物品やサービス等の価格に上乗せされて広く課税される消費税。みなさまが取引をするなかで、さまざまな形で関わってくる税金です。ここでは知っておきたい消費税の基礎知識から、実践的な計算方法まで、体系的に学ぶことにしましょう。
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